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残業時間の計算方法とは?勤務形態ごとに実例を交えて詳しく解説!

公開日時:2024.04.11

働き方改革関連法の施行により、労働時間の管理が厳格化されました。それに伴い、残業時間の管理についても同様の対応が求められます。勤務形態の多様化が進む昨今、残業時間の正確かつ適正な管理は重要な課題です。
今回は、残業時間について説明するとともに、複雑な残業代の計算方法について、実例を交えて詳しく解説します。

残業時間とは

残業時間とは、「法定労働時間」と「所定労働時間」の範囲を超えて労働した時間を指します。まずは、残業時間の特性と、基礎賃金へ上乗せされる割増率について見てみましょう。

 

なお、「法定労働時間」と「所定労働時間」の定義は以下のとおりです。

法定労働時間:法律で定める労働時間を指します。労働基準法第32条では、1日の労働時間を8時間以内、1週間の労働時間を40時間以内と定めています。

所定労働時間:企業が就業規則等で定める、始業から終業までの時間を指します。ただし、休憩時間は含みません。所定労働時間は、法定労働時間の上限を超えない範囲で自由に設定が可能です。

労働時間については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

法定時間内残業と法定時間外残業の違い

残業時間は、「法定時間内残業」と「法定時間外残業」の2種類に分けられます。

法定時間内残業

所定労働時間を超え、法定労働時間の範囲内で働いた時間を「法定時間内残業」といいます。

法定時間外残業

法定労働時間を超えて働いた時間を「法定時間外残業」といいます。

法定労働時間を超えて労働させる場合は、「36協定の締結」と「所轄労働基準監督署長への届出」が必要です。

「36協定」については以下の記事もご覧ください。

残業が発生したときの割増率

法定時間外残業が発生した際は、その内容によりあらかじめ規定された割増率が基礎賃金に加算されます。

  • 法定時間外残業の割増率:25%以上 ※1か月60時間を超えたときは50%以上
  • 法定休日に労働させたときの割増率:35%以上
  • 深夜時間帯(22時から翌5時)に労働させたときの割増率:25%以上

法定休日や深夜の労働については、以下の記事もご覧ください。

残業時間の計算方法

残業時間の計算方法を、例を挙げて説明します。

法定時間内残業の場合

1日の所定労働時間が9時~17時(休憩1時間)で、その日の終業時刻が18時の場合

所定労働時間7時間に対して、実労働時間は8時間となります。

残業時間=実労働時間-所定労働時間(8時間-7時間)=1時間

この例では、実労働時間が法定労働時間の上限を超えないため、賃金の割増は発生しません。

 

法定時間外残業の場合

1日の所定労働時間が9時~17時(休憩1時間)で、その日の終業時刻が20時の場合

所定労働時間7時間に対して、実労働時間は10時間となります。

残業時間=実労働時間-所定労働時間(10時間-7時間)=3時間

残業時間3時間の内訳は、1時間が法定時間内残業、2時間が法定時間外残業となります。したがって、後者の2時間について、賃金の割増が発生します。

 

残業代の計算方法

次に、残業代の計算方法を確認しましょう。

1時間あたりの基礎賃金を算出

残業代を計算するためには、まず1時間あたりの基礎賃金を算出します。

1時間あたりの基礎賃金=月給÷1か月の平均所定労働時間

1か月の平均所定労働時間=(365日-年間所定休日)×1日の所定労働時間/12か月

1時間あたりの賃金を算出する際には、あらかじめ月給に含める手当と含めない手当を選別する必要があります。
月給に含める手当の例:役職手当・地域手当・調整手当・業務手当など
月給に含めない手当の例:家族手当・扶養手当・通勤手当・単身赴任手当・住宅手当・結婚出産手当など

残業代の計算実例

それでは、具体的なケースから残業代の計算をしてみましょう。

 

【モデルケース】
基本給300,000円、役職手当15,000円、家族手当20,000円、通勤手当15,000円、
年間所定休日125日、1日の所定労働時間9時~17時(休憩1時間)の7時間

1か月の平均所定労働時間=(365日-125日)×7時間/12か月=140時間

月給=300,000円+15,000円(役職手当)=315,000円 ※家族手当・通勤手当は除外

1時間あたりの基礎賃金=315,000円(月給)÷140時間(1か月の平均所定労働時間)=2,250円

法定時間内に収まる残業の場合

実労働時間 9時~18時(休憩1時間)の8時間

残業時間=8時間-7時間=1時間(法定時間内残業)

残業代=2,250円×1時間=2,250円 ※法定時間内残業のため賃金割増なし

法定時間外残業が発生する場合

実労働時間 9時~20時(休憩1時間)の10時間

残業時間=10時間-7時間=3時間(法定時間内残業1時間、法定時間外残業2時間)

残業代=(2,250円×1時間)+(2,250円×1.25%×2時間)=2,250円+5,625円=7,875円

 

残業代の計算について、以下の記事でさらに詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

 

勤務形態別の残業代計算方法

近年、働き方の多様化により、勤務形態もさまざまとなっています。通常とは異なる勤務形態の残業についても確認しましょう。

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業時刻や終業時刻、労働時間を自ら決めることができる制度です。

フレックスタイム制のもとでは、清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が、法定時間外残業としてカウントされます。

清算期間が1か月以内の場合

清算期間が1か月以内の場合は、通常と同様に総労働時間から法定労働時間を差し引き、法定労働時間の総枠を超えた分が法定時間外残業となります。

清算期間が1か月を超える場合

清算期間が1か月を超える場合には、次の条件を満たす時間が法定時間外残業となります。

  1. 1か月ごとに、週平均50時間を超えた労働時間
  2. 清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(1でカウントした労働時間を除く)

以下のモデルケースで計算してみましょう。

清算期間:4月1日~6月30日の3か月

実労働時間:4月220.0時間 5月180.0時間 6月140.0時間 合計540.0時間

清算期間における法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間×清算期間の暦日数/7日
=40時間×91日(3か月)/7日=520時間

週平均50時間となる月間の労働時間数=50時間×各月の暦日数/7日
=4月214.2時間 5月221.4時間 6月214.2時間

フレックスタイム制の枠組み

引用:厚生労働省|フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

 

1. 1か月ごとに、週平均50時間を超えた労働時間

4月の実働時間220.0-週平均50時間となる月間労働時間数214.2=5.8時間

4月は5.8時間の法定時間外残業が発生しており、その分の割増賃金を支払います。

5月、6月の実労働時間は、それぞれ週平均50時間となる月間労働時間数以内のため、法定時間内残業となります。

2. 清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(1でカウントした労働時間を除く)

清算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えた時間外労働=清算期間内の実働時間(540.0時間)-各月の週平均50時間超過分として清算した時間外労働合計(5.8時間)-清算期間における法定労働時間の総枠(520時間)=14.2時間

清算期間終了月の6月に、14.2時間を法定時間外残業として処理します。

詳しくは下記記事もご覧ください。

変形労働時間制

変形労働時間制とは、「労使協定または就業規則等において定めることにより、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させること」ができる制度です。

変形労働時間制には、1か月単位、1年単位、1週間単位があります。それぞれの法定時間外残業の算出方法は、次のとおりです。

1か月単位および1年単位の場合

法定時間外残業は、「1日」、「1週間」、「設定された変形期間」に定められた基準のもと、それぞれ算出します。

1日の法定時間外残業

8時間以上の所定労働時間を定めている日は、実働がその日の所定労働時間を超えた時間が法定時間外残業となります。所定労働時間を8時間未満に設定している日は、8時間を超えて労働した時間が法定時間外残業です。

 

1週間の法定時間外残業

40時間以上の所定労働時間を定めている週は、実働がその週の所定労働時間を超えた時間が法定時間外残業となります。所定労働時間を40時間未満に設定している週は、40時間を超えて労働した時間が法定時間外残業です。

ただし、1日ごとの基準で法定時間外残業になった時間は除外します。

 

対象変形期間の法定時間外残業

実働がその月の上限労働時間を超えた時間が法定時間外残業になります。ただし、1日ごと、1週間ごとの基準で法定時間外残業となった時間は除外します。上限労働時間の算出方法は、次のとおりです。

上限労働時間=40時間×対象期間の暦日数/7日

28日の月は160時間、29日の月は165.7時間、30日の月は171.4時間、31日の月は177.1時間

年2085.7時間(うるう年2091.4時間)

変形期間を通じて、実働が各上限労働時間を超えた時間が法定時間外残業になります。

なお、1年単位の変形労働時間制には労働時間の制限が設けられており、原則として1日10時間、週52時間までとされています。また、特別措置対象事業場の特例は適用されません。

1週間単位の場合(非定型的変形労度時間制)

1週間の労働時間が40時間以下になるように定め、かつ、実働がその時間を超えた時間が法定時間外残業になります。

変形労働時間制について、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

裁量労働制(みなし労働)

裁量労働制(みなし労働)とは、あらかじめ規定した時間をすでに働いたものとみなし、その分の賃金を一律に支払う制度です。原則として、時間外労働の上限である月45時間・年360時間を超えることはできません。

裁量労働制での残業は、あらかじめ一定の残業があったとみなす「みなし残業」で、毎月「固定残業代」が支給されます。

ただし、次のような場合には、それぞれ基礎賃金に割増する手当が発生します。

みなし労働時間が法定労働時間を超える場合

法定労働時間を超えた労働時間に対し、25%以上の割増率を適用します。例えば、みなし労働時間を9時間と定めたとき、法定労働時間を超えた1時間分が割増対象となります。

22時から翌5時までの深夜に労働した場合

深夜手当として、25%以上の割増率が適用されます。

法定休日に労働した場合

休日手当として35%以上の割増率が適用されます。

残業管理には勤怠管理システムがおすすめ

働き方が多様化するなか、残業時間や残業代の正確な管理は、大変に複雑で困難を極めているといえるでしょう。

そこで、おすすめなのが「勤怠管理システム」の活用です。勤怠管理システムを用いた残業管理のメリットについて解説します。

残業時間や残業代の計算が手間なく正確にできる

勤怠管理システムでは、どのように複雑な勤務形態であっても、それぞれの残業時間を正確に計算します。エクセルで集計しチェックするといった、わずらわしい手間もかかりません。

給与計算システムとの連携で生産性が上がる

勤怠管理システムは、給与計算システムとの連携が可能です。残業時間や残業代、給与計算がすべてシステム内で行われるため、計算ミスや残業代未払いなどの心配もありません。

残業時間の見える化で長時間労働の是正につながる

勤怠管理システムは、残業時間の見える化を実現します。長時間労働の発生を予測し、アラートで知らせる機能もあります。本人だけでなく上長も同時に勤務状況を把握し、多角的なマネジメントで長時間労働を回避することが可能です。

勤怠管理システムの導入メリットについて解説した記事がありますので、あわせてご覧ください。

参考記事

まとめ

残業時間の管理は、労働時間を管理するよりも複雑です。勤怠管理システムを導入して残業時間を効率的に管理すれば、残業削減や長時間労働の是正にもつながります。企業の労務管理に勤怠管理システムは、もはや欠かせないアイテムといえるでしょう。

残業時間と残業代の計算には、ぜひ勤怠管理システムをご活用ください。

また、2024年4月からは、「建設業」「トラック・バス・タクシードライバー」「医師」に対し「時間外労働の上限規制」の適用が新たに開始されます。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

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