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15分単位の残業時間切り捨ては違法?残業代の計算の方法、違法となるケースについても解説

公開日時:2022.07.28

近年問題視される5分や15分単位での残業時間の端数切り捨て処理について、労働基準法の観点から問題となるのはどのような点でしょうか。1分単位で考える残業代の計算方法、労働時間として1分単位で計上すべきケース、切り捨て処理により未払い賃金が請求された実例なども挙げながら具体的に解説します。

残業時間の15分や10分の切り捨ては違法

残業時間(時間外労働時間)のうち、10分や15分の端数を切り捨てて残業代を計算していると、法違反だと労働基準監督から指導される、または従業員から未払い賃金を請求されるおそれがあります。残業時間は何分単位で計算すればよいのか、何分を切り捨てたら違法になるのか、これらの疑問について法令を元に解説します。

残業時間や労働時間は1分単位で計算する必要がある

原則として労働時間は1分単位で計算します。残業時間も同様で、法定労働時間を超えて残業をしたら、1分単位で残業代を計算して支払う必要があります。法定労働時間とは、労働基準法によって定められた労働時間の上限のことで、1日8時間以内、1週間40時間以内と定められています。

残業代の支払いは以下の法令に基づいて規定されています。1日ごとなど1か月より短い単位で、企業の都合で勝手に残業時間を切り捨てることは法違反であり、残業時間の端数処理について、労働者の不利となるような切り捨ては認められません。認められるのは事務の簡略化を目的とした労働者に有利な処理のみで、例えば、「59分の残業代を1時間とする」といったケースです。

1分や5分単位でも切り捨てると違法になる

労働時間に関する判例や行政通達では1日単位での端数の切捨て処理を認めていません。1日単位の残業した時間については切り上げや切り捨てをせず、1分単位で計算を行う必要があります。

この労働時間の計算のルールについては、判例や通達で確立されているもので、労働基準法の本文には記載はありません。ただし、法令の解釈においては必ず参照されるルールであり、「1日単位での労働時間の端数の切り捨て」については違法性があるものと判断されます。労働者が残業代の未払いを指摘し、5分単位で労働時間を切り捨てていた企業が未払い分の支払いを求められたケースも多くあります。そのため、自社の労働時間は1分単位で記録し、給与計算に反映できるようにしておかなければなりません。

法違反となった場合の罰則

残業代を切り捨てることにより、未払い分が発生した場合、雇用主は以下の法律に違反することになります。

  • 「賃金全額払いの原則」を規定した労働基準法第24条
  • 時間外・休日・深夜労働の割増賃金支払義務を規定した労働基準法第37条

残業代切り捨てにより法違反が認められた場合「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(第37条違反)」もしくは「30万円以下の罰金(第24条違反)」を科せられる可能性があります。

1か月単位なら端数切り捨て処理が可能

1日単位で残業時間の切り捨てや四捨五入などの端数処理をすることはできませんが、1か月単位で集計した残業代の端数切り捨てと切り上げを行う処理が認められます。

なお、切り捨てと切り上げは片方だけを行うことはできず、運用上、両方を行う必要性があります。また、原則として社内全体で一貫したルールとして運用する必要があり、個人や特定のケースによって労働時間の合算のルールを変えると、恣意的な運用であり不適切だと見なされるおそれがあります。

1か月の残業時間に「30分未満の端数」が出た場合は切り捨ても可能

1か月の残業時間の合計として30分未満の端数が出た場合はその分の切り捨てが認められます。

例えば、その月の残業時間の合計が8時間20分であった場合に、「30分未満の端数」となる20分を切り捨て、残業時間を8時間、として処理することは可能です。もちろん、端数を処理せず、8時間にプラスして20分の残業代を計上しても構いません。

1か月の残業時間に「30分以上の端数」が出た場合は残業時間を切り上げる

1か月の残業時間に「30分以上の端数」が出た場合は、残業時間を切り上げ「1時間」として計算することが可能です。

例えば、その月の残業時間の合計が8時間40分であった場合に、「30分以上の端数」となる40分を切り上げ、残業時間を9時間、として処理することは可能です。また、端数として切り上げをせずに8時間にプラスして40分の残業時間を計上する方法を採用しても構いません。

残業代の計算方法

残業時間(時間外労働時間)に対して支払う残業手当の割増賃金率は25%以上です。法定労働時間を超えて残業した分の残業代は1時間あたりの基礎賃金(時給)に25%以上をのせて算出します。

この場合、1時間あたりの基礎賃金は次の計算式で算出できます。

基礎賃金÷1か月の平均所定労働時間=1時間あたりの基礎賃金

以下の事例をもとに具体的に計算してみましょう。

<月給制で働くAさん>

  • 月給24万円
  • 通勤手当1万円※
  • 出勤日数20日(平日)
  • 1か月の平均所定労働時間160時間(月平均所定労働日数20日×労働時間8時間のケース)
  • 1日あたりの残業時間50分、月の残業時間合計1,000分(50分×20日)
諸手当に該当

法令に基づき、Aさんの残業時間は、分単位で1日ずつ記録されています。分単位で切り上げ・切り捨てをせず合計して1,000分になりました。(今回は事例としてわかりやすくするため1,000分という切りが良い数字にしています)

Aさんの月の残業時間は1,000分、つまり約16時間40分です。切り上げて17時間にするルールで残業時間の計算を行っているため、今回は17時間で計算します。1か月30分以上の端数が出た場合の労働時間の切り捨ては違法なため、40分を切り捨てて16時間として計算することは認められません。

また、法令上、残業代の対象からの控除が認められた諸手当は、以下になります。これらの手当は省いて残業代を計算します。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 など

上記を踏まえAさんの残業代は以下のように求めます。

基本給(24万円※)÷1か月の平均所定労働時間(160時間)=1,500円

基礎賃金(時給)=1500円

1,500円×1.25(割増賃金)×17時間=31,875円(残業代)

通勤手当は残業代計算に含まないため、Aさんの通勤手当1万円は合算しません。

企業に求められる対応

残業時間を含む労働時間の端数切り捨てや1分単位での労働時間の計算方法について、ケース別にどのような対応を取るべきかそれぞれ解説します。

遅刻・早退をした場合

遅刻や早退して労働時間が少なくなった場合、その分を差し引いた労働時間を計算する方法は適法です。例えば9時から就業開始の企業で2分遅刻し9時2分に出勤、18時ちょうどに退勤したという場合、1分単位で2分の労働時間を差し引きます。

「15分単位で労働時間を計算しているので1分遅刻したら、15分の労働時間を切り捨てる」などの自社ルールを定めるのは不適切であり、遅刻・早退の場合でも1分単位で労働時間を計算しなくてはなりません。

朝礼や終礼に出た場合

朝礼や終礼の時間も労働時間に該当するため、かかった時間を勤務外の活動時間として切り捨てることはできません。例えば9時から18時までが勤務時間の企業で8時55分から毎日5分朝礼がある、という場合この5分も切り下げず労働時間に含めて計算します。

店舗が閉店した後に仕事をした場合

店舗が閉店した後の閉店作業や掃除、翌日の準備などの仕事も労働時間に該当します。閉店後の仕事にかかった時間が1時間以下の端数であっても労働時間に含める必要があるため、仕事が完了した時点でタイムカードや勤怠管理システムで退勤打刻をするようにします。実際は閉店後も業務が発生しているにも関わらず「閉店後の仕事は労働時間に含めない」などの独自ルールを定めるのはサービス残業を強制していると言え、違法な状態です。

制服に着替える時間

制服に着替える時間など、業務の準備として必須で行われる行為も労働時間に含まれます。そのため、「制服に着替えている時間は労働時間に換算しない」と伝え着替え時間を切り捨てるルールを設けるのは不適切です。出勤した従業員にタイムカードや勤怠管理システム上で打刻してから着替えるような形のルールとし、着替えにかかる時間を労働時間として記録するようにしましょう。

残業時間の切り捨てで未払い賃金が請求されたケース

実際に1分単位で残業時間を含む労働時間を計算せず、従業員から切り捨て処理の是正や未払い賃金の支払いを求められた企業の事例について紹介します。

5分未満の切り捨てにより全従業員に未払い賃金が支払われたケース

全国に店舗を持つ飲食店大手で、労働時間の5分未満の切り捨ては違法と労働組合に加入した従業員が未払い賃金支払いを求めたケースです。この従業員の訴えにより、企業側はアルバイトを含む数万人の全従業員に2年にさかのぼって計算した未払い分の賃金を支払うことになりました。また、企業は今後、全社的に1分単位で労働時間の集計を行うことを決定しています。

15分単位の労働時間切り捨てが問題となったケース

薬局チェーンに勤める従業員が、店舗のタイムカードの打刻が15分単位であることが労働基準法違反であると労働基準法違反の是正を求め、労働基準監督署に申告したケースです。本来なら1分単位で計算する残業時間を含む労働時間の切り捨てを行い実際の労働時間を少なく処理していました。従業員側の弁護士によると、この切り捨てにより、チェーン全体として数億円規模の未払い賃金が発生していたといいます。

まとめ

近年、15分単位や10分単位などで残業時間を切り捨てている企業が問題視され、訴訟に発展するケースが増えています。労働時間は1分単位で計測し、残業代を払うのが現在の労働基準法等の法令の解釈上のルールです。

残業代の切り捨て処理が法違反であった場合「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(第37条違反)」もしくは「30万円以下の罰金(第24条違反)」を科せられる可能もあるため、問題となったケースを参考に労働時間の計測を見直す必要があります。

残業代の切り捨てに関連する未払い残業代請求の事例では支払いを求めた従業員だけでなく、全従業員対象にこれまで切り捨ててきた分の残業代の総額の支払いが求められるケースもあります。残業代未払いなどのリスク対策として、原則の1分単位で労働時間の計測ができ、給与計算に反映できる勤怠管理システムの導入が必要です。

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