勤怠管理ガイド

労働時間とは?その定義と計算方法を解説!正しく計算して適切な運用を

公開日時:2024.03.01 / 更新日時:2024.03.07

「労働時間とは?」と聞かれたとき、その定義まで答えられるでしょうか。さらに労働時間の正しい計算方法を問われたら、返答がもっとあいまいになってしまうかもしれません。
今回は「労働時間」に焦点をあて、その定義についてあらためて確認します。また、労働時間の正しい計算方法についても具体例を交え、わかりやすく解説します。

労働時間とは

労働時間とは、「労働者が、使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指し、賃金計算の基準となるものです。

「法定労働時間」と「所定労働時間」の違い

労働時間には、「法定労働時間」と「所定労働時間」があります。それぞれの違いを見てみましょう。

法定労働時間

法律で定める労働時間を指します。労働基準法第32条では、1日の労働時間を8時間以内、1週間の労働時間を40時間以内と定めています。

所定労働時間

企業が就業規則等で定める、始業から終業までの時間を指します。ただし、休憩時間は含みません。所定労働時間は、法定労働時間の上限を超えない範囲で自由に設定が可能です。

労働時間と混同しやすい用語とその意味の違い

普段使われている言葉のなかに、労働時間と混同されやすい表現があります。その言葉と意味の違いを確認しましょう。

実働時間・稼働時間

労働時間と同義の言葉です。一般的に、始業から終業までの時間を指し、休憩時間は含まれず、残業時間は含まれます。

勤務時間・就労時間・就業時間

一般的に、就業規則で定められた始業から終業までの時間を指します。休憩時間は含まれますが、残業時間は含まれません。

拘束時間

一般的に、実際の始業から終業までの時間を指します。休憩時間や手待ち時間、残業時間などがすべて含まれます。

労働時間として認められる時間と認められない時間の例

労働に関連する行動のなかで、労働時間として認められる時間と、認められない時間があります。その違いについても確認しましょう。

労働時間として認められる時間の例

  • 着替え時間
  • 業務命令で参加する勉強会や研修会
  • 健康診断
  • 始業前の朝礼
  • 必要な手待ち時間

手待ち時間とは、電話や来客応対の待機、タクシー運転手の客待ち時間など、指示があればすぐに従事できるよう待機している時間を指します。使用者の指揮命令下にある状態では、実作業が伴わなくても労働時間として認められる場合があります。

労働時間として認められない時間の例

  • 通勤時間
  • 出張先への移動時間
  • タイムカードの打刻
  • 休憩時間
  • 朝の準備や清掃
  • 始業よりも早く出社した分の時間

使用者の指揮命令下にあるときには、労働時間として認められるケースもあります。朝の清掃は、従業員が自主的に行う場合は労働時間として認められませんが、会社の指示による場合は労働時間に含まれます。また、移動時間は一般的に労働時間として認められませんが、状況によっては認められる場合もあるので確認が必要です。

労働時間を計算する際の注意点

労働時間が正確に計算されないと、給与計算にも影響がおよび、重大なミスが生じるおそれがあります。労働時間を計算する際の注意点を見てみましょう。

労働時間は1分単位での計算が原則

労働時間は、1分単位での計算が原則です。労働時間を切り捨てるなどの行為は、労働基準法第24条に定める「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」という原則に違反します。

労働時間を、15分単位や30分単位で切り上げたり切り捨てたりすることを、まるめ処理といいます。このまるめ処理を所定労働時間内で適用することは違法です。

しかし、厚生労働省では、事務処理の簡素化を目的に、まるめ処理を下記の事例により認めています。

「1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に、1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」

ここでのポイントは、「1か月間」の時間数の合計であることと、「時間外労働、休日労働、深夜労働」に限られることです。日々の労働時間には適用できないためご注意ください。

労働時間に応じて休憩時間を付与

労働基準法第34条には、休憩について以下の定めがあります。

「使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」

労働時間を計算する際には、この休憩時間を差し引きます。なお、休憩時間は労働時間の途中で与えると定められています。始業前や終業後の休憩時間を、法定で定める休憩時間に含めることは認められません。

遅刻や早退、欠勤は労働時間から差引

従業員が1か月間に行った遅刻や早退、欠勤などは、該当する時間をその月の労働時間から差し引きます。

遅刻や早退についても、労働時間と同様に1分単位で計算します。この場合、まるめ処理の事例には該当しないため、切り上げや切り捨てはできません。

時間外労働などの割増賃金と割増率への理解

時間外労働や深夜労働、法定休日労働などをした場合は、割増賃金の支払いが発生します。労働時間を計算するときは、これらの取り扱いに関する理解も必要です。

  • 時間外労働:法定労働時間を超えて働かせたときは、25%以上割増
  • 深夜労働:午後10時から午前5時までの時間帯に働かせたときは、25%以上割増
  • 法定休日労働:法定休日に働かせたときは、35%以上割増
1か月60時間を超える時間外労働については、50%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

36協定の締結

「36協定」の締結がされているか、あらかじめ確認しておきましょう。

「36協定」とは、労働基準法第36条に定められている労使協定です。法定労働時間の範囲を超える労働についての協定を、労使間で締結します。

36協定で定めた範囲を超えて残業や休日労働をさせた場合には、労働基準法違反で罰則の対象となります。

労働時間の計算方法

労働時間の計算方法について、具体例を交えて解説します。

時間外労働がない場合

時間外労働をせず、法定労働時間内で労働した場合には、始業時刻から終業時刻までの勤務時間を計算し、勤務時間から休憩時間を差し引いた時間がその日の労働時間となります。

所定労働時間:9:00~18:00(拘束時間9時間)

始業時刻:9:00

終業時刻:18:00

休憩時間:12:00~13:00(1時間)

労働時間=18:00-9:00-1時間=8時間

時間外労働(残業)をした場合

時間外労働が発生した場合には、実働時間から休憩時間分を差し引いた時間がその日の労働時間となります。残業時間は、労働時間から法定労働時間(8時間)を差し引いて算出します。

所定労働時間:9:00~18:00

始業時刻:9:00

終業時刻:20:00実働時間:9:00~20:00(拘束時間11時間)

休憩時間:12:00~13:00(1時間)

労働時間=20:00-9:00-1時間=10時間

残業時間=10時間-8時間(法定労働時間)=2時間 ※残業時間2時間分は25%以上の割増賃金が発生

労働時間を管理する方法

労働時間の管理には、いくつか方法があります。そのなかから、3つの手法を紹介します。

タイムカード

タイムカードは、以前からさまざまな企業で使われてきた手法です。出退勤の時刻を従業員自ら打刻し、労働時間を記録します。

最近では、打刻データを自動で集計するシステムも登場し、効率化が図れるようになっています。

ただし、打刻もれや打刻ミス、代理打刻による不正が起こりうることがデメリットとして挙げられます。

エクセル

マイクロソフト社の表計算ソフト、エクセルを使って労働時間の計算と管理をする方法です。

エクセルの関数を用いることで、正確な計算ができます。テンプレートをダウンロードできるWebサイトも存在するので、比較的容易に導入できるでしょう。

ただし、パソコン操作に不慣れな従業員による入力ミスやデータ破壊などのリスクがあります。

勤怠管理システム

勤怠管理システムとは、勤怠にかかわる業務をサポートするシステムです。自社のスタイルに合わせた柔軟な設計が可能で、テレワークやリモートワーク、変形労働時間制、派遣社員の雇用などの、あらゆる勤務形態に対応します。複雑な勤怠管理も、正確かつ効率的に管理、集計できます。

操作は簡単で、パソコン作業に不慣れな従業員も安心して利用できます。打刻もれや打刻ミスの際にはアラート通知があるため、迅速に修正可能です。さらに、残業や長時間労働を警告する機能もあり、適正な労働時間の管理が実現します。

ただし、勤怠管理システムの導入には一定のコストがかかるため、慎重に検討する必要があるでしょう。詳しくはこちらの記事で解説しています。

労働時間の管理や集計には勤怠管理システムがおすすめ

労働時間の管理や集計をするには、勤怠管理システムを利用するのが最も効果的です。勤怠管理システムのメリットについて詳しく見てみましょう。

多様な働き方に対応

テレワークや変形労働時間制などのさまざまな働き方に対応します。複雑な労働時間の管理もすべて自動で行えます。

アラート機能で適正な管理

打刻や労働時間に関するアラートを個人単位で表示できるため、エラーの修正も即座に対応できます。従業員の労働時間への意識が向上し、残業や長時間労働の是正にもつながります。

業務の効率化と生産性の向上

労働時間の集計は、日々のデータから自動で計算します。タイムカードに印字された時間を手計算で集計する作業は皆無です。計算ミスもなくなり、業務の効率化と生産性の向上が実現するでしょう。

コンプライアンスを徹底した運用が可能

法律改正や就業規則の変更などもシステムに反映し、新制度に準じた処理へと迅速に対応できます。気付かずに法律違反をしていたというミスもなくなります。

まとめ

働き方改革関連法の施行で、より厳密な労働時間の管理が求められています。そのような状況下において、勤怠管理システムは、コンプライアンスを重視した運用を実現すると同時に、業務の効率化や生産性の向上にも寄与する、大変優れたシステムです。

残業の削減や長時間労働の是正など、労働環境の改善にも絶大な効果をもたらす勤怠管理システムの導入を、ぜひご検討ください。

■労務リスク防止と業務効率化を同時に実現する勤怠管理システム

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01基礎知識

勤怠管理の意義と
重要性

02選び方

勤怠管理システム
選び方の基本

03実践編

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導入のポイント

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