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所定休日と法定休日の違いとは?正しく理解してトラブルを回避

公開日時:2023.03.29

「法定休日」と「所定休日」はどちらも労働義務が免除される日ですが、法律での要件や運用方法は大きく異なります。例えば休日出勤する場合、どちらに出勤したかによって、休日手当にも違いが生じます。2つの休日の違いを理解することは、正しい勤怠管理への第一歩とも言えます。

今回は、各休日の定義や賃金割増率の違いに加え、具体的な給与計算方法や休日出勤の注意点まで詳しく解説します。

法定休日と所定休日の違い

ひと口に休日と言っても2種類存在します。1つは法律によって付与が義務づけられている「法定休日」、もう1つは会社が任意に設ける「所定休日」です。所定休日は法定外休日と呼ばれることもあります。まずは両者の法的な違いから見ていきましょう。

法定休日とは

労基法第35条で規定されています。使用者は、労働者に対して毎週少なくとも1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。法定休日を満たさなければ、労基法第119条により6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。

違反条項

違反内容

罰則規定

罰則内容

労働基準法第35条

1週間に少なくとも1回、4週間に4回以上与えなかった場合

労働基準法第119条

6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金

なお、休日は必ずしもカレンダーに従う必要はないため、何曜日に設定してもかまいません。

所定休日とは

一方の所定休日は、法定外休日と称されるように法によって定められたものではなく、会社が独自に設ける休日です。そして、法定休日と所定休日の合計が年間休日です。

どちらの休日もカレンダーと連動する必要はありませんが、土日休みを採用する企業が一般的です。この場合、土曜日を所定休日、日曜日を法定休日としているパターンが多く見受けられます。また、国民の祝日についても労働基準法とは関係ないので必ずしも休日にする必要はありません。会社によって、法定外休日・所定休日・労働日のいずれにもなり得ます。

法定休日の意外な盲点

週に1日という法定休日を遵守していたとしても、1日8時間・週40時間という法定労働時間をオーバーする可能性があります。例えば、1日の労働時間を8時間とした場合、週1日の法定休日だけでは1週間で48時間労働することになります。つまり法定休日はクリアしても、法定労働時間が成立しません。休日を設定する際には、つねに労働時間とセットで考えなくてはなりません。

休日の設定例

<週5日勤務の場合> 8時間×5日=40時間

 ・1日の勤務時間:8時間

 ・1週間の休日:2日(法定休日+所定休日)

<週6日勤務の場合> 6時間40分×6日=40時間

 ・1日の勤務時間:6時間40分

 ・1週間の休日:1日(法定休日)

給与にも影響する法定休日と所定休日

法定休日に労働をさせた場合、労働基準法第37条によって法令で定める割増率以上の率で算定した割増賃金を支払うことが義務づけられています。また所定休日の労働も、一定の基準を超えると割増賃金が発生します。労働者にとっては同じ休日出勤でも、給与計算に違いが発生するので、使用者は常に法定休日と所定休日を区別して勤怠管理する必要があります

法定休日の割増賃金

法定休日労働の場合、通常賃金の35%以上の割増賃金を上乗せして支払うことが定められています。また、法定休日労働が午後10時〜翌5時の深夜時間帯に跨る場合には、深夜労働手当を加えた60%以上の支払いが必要となります。一方で時間外労働の規制は及ばないので、1日8時間を超えて勤務しても割増賃金は35%のままです。

所定休日の割増賃金

所定休日の労働は、基本的に割増賃金を支払う必要はありません。ただし、1日8時間・週に40時間を超えた労働は法定時間外割増の対象になります。従って、40時間を超えた労働時間に対しては25%の割増賃金が発生します。その他、条件に応じた割増率が加算されるので下表を参考にしてください。

条件別賃金割増率

条件

賃金割増係数

① 法定時間外労働/法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた場合

1.25

② 法定休日労働/法定休日に労働した場合

1.35

③ 深夜労働/22:00~翌5:00に労働した場合

1.25

④ 月60時間を超える法定時間外労働

1.5

⑤ ①法定時間外労働+③深夜労働

1.5(1.25+0.25)

⑥ ②法定休日労働+③深夜労働

1.6(1.35+0.25)

⑦ ③深夜労働+④月60時間を超える法定時間外労働

1.75(1.25+0.5)

代休と振替休日の違い

休日出勤を命じた際に、給与以外に配慮しなければならないのが代わりの休日です。「振替休日」と「代休」は混同しやすいですが、この2つは性質が異なるためこちらの違いもしっかりと押さえておきましょう。

これらは任意の制度ですので、付与する場合は就業規則に規定する必要があります。原則としていずれも事業主が付与するかどうかを決定することができ、付与する義務があるものではありません。前提として、休日はあらかじめ決められた日程で取得するのが原則ですので、安易に休日を変更することは避けましょう。

■振替休日

本来の休日をあらかじめ労働日とし、他の労働日を振替休日とするものです。前もって交換している場合は休日労働に当たらないため、割増賃金の支払い義務はありません。ただし、法定労働時間が40時間を超える場合には25%以上の割増賃金が発生します。

■代休

休日労働をした後に、その代償として休日を与えるものです。休日労働に当たるため、35%の割増賃金を支払う義務があります。

振替休日と代休の相違点

項目

振替休日

代休

どんな場合に行われるのか

36協定が締結されていない場合などに休日労働をさせる必要が生じたとき。

休日労働や長時間労働をさせた場合に、その代償として他の労働日を休日とするとき。

行われる場合の要件

①就業規則に振替休日を規定

②4週4日の休日を確保した上で、振替休日を特定

③遅くても前日までに本人に予告

特になし

振替後の休日または代休の指定

あらかじめ使用者が指定します。

使用者が指定することもあるし、労働者の申請によって与えることもあります。

賃金

休日出勤日に通常の賃金を支払えばよく、振替休日に賃金を支払う必要はありません。

休日出勤日に割増賃金の支払いが必要です。代休日に賃金を支払うかどうかは就業規則等の規定によります。

※なお、振替休日が週をまたがった場合、週の法定労働時間を超えて労働させた時間について時間外労働に係る割増賃金の支払いも生じることもあります。

【ケース別】休日出勤の給与計算例を解説

実際の出勤パターンを想定し、具体的な給与計算例を考えてみましょう。

①法定休日に労働させた場合

対象時間

賃金割増係数

区分

9:00~22:00/休憩1時間を除く12時間

1.35

法定休日労働

22:00~24:00/2時間

1.6(1.35+0.25)

法定休日労働+深夜労働

法定休日に労働させた場合

 

②所定休日と法定休日に労働させた場合

<本文>

▼(例)月~金:各7時間+所定休日の13:00から法定休日の1:00に跨って労働させた場合

     ※時間外労働が月60時間を超えていない前提とします   

 

対象時間

賃金割増係数

区分

月~金

9:00~17:00/休憩1時間を除く7時間

1.0

所定労働時間

13:00~18:00/休憩1時間を除く5時間

1.0

法定時間内残業

(所定休日)

 

18:00~22:00/4時間

1.25

法定時間外労働

22:00~24:00/2時間

1.5(1.25+0.25)

所定休日労働+深夜労働

(法定休日)

0:00~1:00/1時間

1.6(1.35+0.25)

法定休日労働+深夜労働

上記勤務の場合、割増賃金は4種類に分けて計算する必要があります。勤務パターンによって最適な割増率を判断した上で分計するのはかなり複雑、かつ負担が大きく、給与計算ミスを引き起こす一因でもあります。こうした複合的な計算に対応していない勤怠管理システムもあるので、導入を検討する際の評価軸とすると良いでしょう。

休日出勤のトラブルを防ぐポイント

就業規則に明記する

事業主は、労働者が働くにあたって何曜日を休日とするか、祝日を休日と扱うか否か、といった休日を定めなくてはなりません。使用者と労働者で認識を合わせ、正しい給与計算を行うためにも、下記の項目について、就業規則や雇用契約書、また月々の勤務カレンダーを通して明確にしておく必要があります。

  • 法定休日・所定休日はいつなのか
  • 休日出勤した場合の賃金
  • 休日出勤した場合の振替休日や代休の扱い

36協定の締結が必須

法定休日に出勤を命じる場合には、事前に36協定の締結が不可欠です。未締結で休日出勤を命じることは法律違反となり、労働基準法第119条により6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

一方で、所定休日の出勤は休日労働には該当しませんが、時間外労働に該当する可能性があります。そのため休日の労働が予想される場合には、休日の種類に関わらず36協定を締結しておくべきです。

締結方法や様式など、36協定について詳しく知りたい方は、36協定の新様式の変更点を解説!電子申請の方法も紹介をご覧ください。

まとめ

法定休日・所定休日は給与計算にも直結するため、分けて管理する必要があります。また、労働時間によって賃金割増率が左右されるため、厳密な時間把握ができる勤怠管理の仕組みが不可欠です。

解決策の1つとして、就業管理システムの導入がおすすめです。法定休日と所定休日をあらかじめ指定しておけば、システムが自動的に区別して管理してくれます。両者にまたがる勤務や、労働時間が絡む複雑な割増賃金の計算から解放され、給与計算ミスなどのリスクも軽減できます。

さらにデータの見える化で年度別の比較や部門・従業員ごとのスムーズな比較も可能になり、勤怠管理を超えた生産性の向上も期待できます。

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