人事・労務なんでもQ&A
社内行事に参加しない従業員がいます。強制参加させることはできるのでしょうか?
Q. 社内行事に参加しない従業員がいます。強制参加させることはできるのでしょうか?
私は企業の人事総務担当者で、社内行事の企画と運営を任されています。社員のエンゲージメントやチームワークを向上させるために、社内行事として行っている労働時間外の飲み会で親睦を深めてもらいたいのですが、たびたび参加しない従業員がおります。社内行事へ強制参加させるのは法的に問題となりますか。また、従業員にはできるだけ主体的・前向きに参加してもらいたいのですが、そのためにはどのような工夫が必要でしょうか。
A. 社内行事を労働時間内に行うか、労働時間外に行う場合は残業扱いとして残業代を支払うのであれば、強制参加させても違法にはなりません。
強制参加が違法になる・ならないのラインは「社内行事を業務命令とするかどうか」になります。従業員は会社と雇用契約を結んでいますので、社内行事への参加を業務命令とすれば、強制的に参加させても違法にはなりません。ただし、業務命令とするからには当然ながら労働時間として扱う必要があるため、労働時間内に行うか、労働時間外の場合は残業扱いとして残業代を支払う必要があります。
労働時間外に業務命令をする場合の注意点
残業を業務命令とする場合には、次の要件を満たさなくてはなりません。これらの要件を満たさずに労働時間外の社内行事へ強制参加させた場合は、法違反となってしまうので注意しましょう。
1)会社と労働組合・労働者代表との間で、時間外労働に関する36協定(労使協定)を締結している
2)36協定で定めた時間を超えない範囲で業務命令を出している
3)雇用契約書か就業規則に、残業命令について記載している
4)労働基準法にしたがって残業代を支払っている
また次のようなケースでは、従業員に残業を命じることはできません。よって、社内行事を計画する際は、これらに該当しないよう注意する必要があります。
1)業務上の必要性が認められない
2)健康を害するレベルの長時間拘束となる
3)妊娠・育児・介護中の従業員が参加を断った
特に飲み会形式の社内行事となると、業務上の必要性を持たせるのが難しくなります。そのため、例えば「業務で関わるメンバーと打ち解け、コミュニケーションを円滑にする」といった目的を設定し、それを達成できるようなプログラムの計画が必要となります。
参加を促すための対応がパワハラとみなされる場合も
社内行事を任意参加としたにも関わらず参加を強要したり、または不参加の従業員を仕事から外したりと該当従業員の不利益になるような扱いをすれば、パワハラとみなされる可能性があります。参加を促す場合はどのようなケースがパワハラに該当するのかをよく理解しておき、適切な対応を取るようにしましょう。
また、コロナ禍においては、新型コロナウイルスの流行前とは事情が異なると捉えておきましょう。例えば業務命令で対面のイベントへ強制参加させようとした場合に、感染を恐れた従業員の欠席を「業務命令違反」として懲戒処分にすれば、懲戒権濫用に当たるおそれがあります。飲食を伴うコミュニケーションは感染リスクを高めるため、業務命令とするかどうかはその時の感染状況を踏まえて慎重に検討しましょう。また対面で飲食を伴う行事を行う際は、感染対策を万全にし、従業員の不安を払拭する必要があります。
従業員に主体的に参加してもらうようにするには?
従業員にはできるだけ前向きな気持で参加し、行事を楽しんでもらいたいものです。強制参加ではなく、主体的に参加してもらうために次のような対応を検討しましょう。
・労働時間内&アルコールなしに変更する
労働時間外の飲み会形式の社内行事となると、子育てや介護をしている従業員、お酒が苦手な従業員など、参加しにくい従業員がいることも事実です。例えば飲み会をランチ会に変更し、労働時間内に実施するといった方法も検討してみましょう。
・従業員の希望を取り入れる
社内行事に参加しない従業員には、本人なりの理由や事情があります。アンケートを取るなどして参加できる・したくなる社内行事の形式や企画内容について意見をもらい、参考にするといいでしょう。
・参加のハードルをできるだけ下げる
「事前の準備が多い」「拘束時間が長い」「楽しめる人が一部に限られてしまう」といった社内行事は、参加のハードルが高くなってしまいます。気軽に、前向きな気持で参加できる企画を心掛けるようにしましょう。
・案内は複数回行う
メールやチャットで案内をする場合、連絡が埋もれてしまう恐れがあります。多忙な従業員に見落とされないよう、複数回の告知をするといいでしょう。
まとめ
社内行事は、労働時間内に行うか、労働時間外に行う場合は残業扱いとして残業代を支払うのであれば、強制参加させても違法にはなりません。ただし、労働時間外の飲み会だと参加しにくい従業員がいることを再認識しましょう。欠席者が多い場合は、行事の形式を見直して参加しやすい内容に改善することも視野に入れてみてください。
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