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2022年4月より順次施行!育児・介護休業法改正のポイントを解説

公開日時:2021.08.30 / 更新日時:2023.04.18

2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月1日より段階的に施行されます。今回の改正では、男性の育児休業取得促進のための枠組みが新たに追加されました。そのため改正法を「男性育休」と呼ぶこともあります。この他にも、育児休業を取得しやすい環境整備や従業員への個別の周知・意向確認なども義務化されました。この記事では、順次行われる育児・介護休業法の改正内容について解説します。

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育児・介護休業法改正による変更点

2021年6月に育児・介護休業法が改正されました。この法律には従業員が育児・介護を理由として離職することを防ぎ、男性・女性問わず仕事と育児、介護の両立を可能にするために新たに変更が加えられました。

今回の改正では以下の点が変更されています。

育児・介護休業法改正による主な変更点

■2022年4月1日施行
・雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化
・有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

■2022年10月1日施行
・産後パパ育休(出生時育児休業)の創設
・育児休業の分割取得

■2023年4月1日施行
・育児休業取得状況の公表の義務化

育児・介護休業法の改正に合わせて、雇用保険法の整備も行われています。今まで育児休業給付の支給要件として、育児休業開始前2年間に、12か月以上の被保険者期間が必要でした。しかし、従来の規定では出産のタイミングによっては給付の受給要件を満たせない場合も生じるという問題もありました。

2022年からは育児休業給付についての規定が整備され、被保険者期間の計算起点日に関する特例も設けられます。

具体的には以下のように変更されます。

■現行(2021年8月時点)
育児休業開始前2年間に12か月以上の被保険者期間(※)が必要
※1か月に11日以上の賃金支払い基礎日数(就労日数)が必要

■改正後
被保険者期間にかかる要件を満たさない場合であっても、産前休業開始日前の前2年間に12か月以上の被保険者期間がある場合には、育児休業給付の支給にかかる被保険者期間要件を満たすものとする

【2022年4月1日施行】雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化

育児休業を取得しやすい雇用環境の整備
今回の法改正で事業主に対し、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備が新たに義務付けられました。現行の制度では環境整備に関しての規定はありませんでしたが、「研修」「相談窓口の設置」など、複数の選択肢からいずれかを選択して実施しなければなりません。

① 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
② 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
※複数の措置を講じることが推奨されています

環境整備については、短期的なものはもとより、1か月以上の長期休業の取得を希望する労働者が「希望する期間の休業を取得できるよう」事業主に配慮が求められます。

■妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
従業員、もしくは従業員の配偶者が妊娠・出産したと申し出があった場合、従業員に対して、現行・新制度の育児休業制度を周知し、取得意向を確認するという義務が事業主に課せられました。現行の制度では個別周知の努力義務のみで、周知、確認は厳密に事業主に求められていませんでした。

周知方法には該当従業員との面談や書面を通じた伝達のいずれかの方法を選択します。また、育児休業取得意向の確認の際は、従業員に対し休業の取得を控えるよう促したり圧力をかけたりすることは認められません。

【2022年4月1日施行有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

現行制度では、以下の2点が有期雇用従業員の育児・介護休業の取得要件でした。

 1.引き続き雇用された期間が1年以上
 2.1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない

制度の改正により、1が廃止され、2のみが取得要件となります。

ただ、引き続き雇用された期間が1年未満の有期雇用従業員の場合、労使協定を締結すれば、育児・介護休業取得要件の緩和対象外とすることも可能です。有期雇用従業員の休業の扱いについては企業内でよく検討しておきましょう。

【2022年10月1日施行】産後パパ育休(出生時育児休業)の創設

「産後パパ育休」は男性従業員の育休取得を目的に今回の法改正で新設されました。「産後パパ育休」は通称であり、法律上の正式名称は「出生時育児休業」です。今回改正によって加わった新制度の内容は具体的には以下の表の通りです。

新制度(産後パパ育休)現行の育休制度
取得期間子供の出生後8週間以内に4週間まで取得可能原則子供が1歳(最長2歳)まで
申請期限原則休業の2週間前まで原則1か月前まで
分割取得2回まで分割可能原則分割不可(今回の改正で2回まで分割可能)
休業中の就業労使協定を締結している場合、従業員が合意した範囲で就業可能原則就業不可

育児休業を取りたいタイミングは各従業員の家庭の事情により異なることが予想されます。各家庭の都合に合わせて休業が取得できるように、「子供が生まれてから8週間以内に4週間まで」の取得が可能となり、さらに2回まで分割しての休業取得ができるようになりました。

また、改正により現行の育休制度と新制度の男性版産休を合わせて利用する、という方法も可能になりました。 具体的には以下の利用が想定されます。

  • 出生後8週間以内に4週間までに「新制度(男性版産休)」を利用して休業し、子供が1歳(最長2歳)までの期間に育児休業を「現行の育休制度」で取得
  • 「新制度(男性版産休)」で2回まで分割して休業取得し、その後、育児休業を「現行の育休制度」で2回分割して取得 (後述の「育児休業取得促進のための柔軟化」によって育児休業の途中交代も可能)

この他、従来の規定通り「保育所に入所できない」「育児予定の家族が病気、ケガ、妊娠した」などの理由があり、条件を満たしている場合、子供が2歳になるまで育児休業を延長できます。

申請期限についても、「休業希望日の2週間前までの申請」が可能になるように変更されました。妻の出産予定日に合わせて夫が育休を取ろうと1か月前に休業申請をしても、現制度であれば、子供が生まれる前から夫が育休期間に入る可能性もありました。改正により、出産日が遅れることがあっても現制度よりも出産日に合わせて、夫の育休を取得することが容易になります。

加えて、「休業希望日の2週間前までに申請が必要」としつつも、労使間で求められる義務を上回る取り組みの実施を定める場合は、1か月前までの申請としても良いことが今回の改正で定められました。

また、労使協定を締結している場合は、条件付きで休業中にも就業が可能となります。その場合は、従業員から提出された条件をもとに労使間で日程を調整する必要があります。その際、就業できるのは、4週間のうちの10日、80時間以内です。合意にもとづき従業員の手を一時的に借りるとしても、基本的には休業中の扱いであることは変わりません。休業前と同じ条件で働かせることはできない点について留意しておきましょう。

具体的な休業中就業の手続きは以下が想定されています。

  1. 従業員が就業してもよい場合は事業主にその条件を申出
  2. 事業主は、従業員が申し出た条件の範囲内で候補日・時間を提示
  3. 従業員が同意した範囲で就業
    なお、就業可能日等の上限(休業期間中の労働日・所定労働時間の半分)を厚生労働省令で定める予定

【2022年10月1日施行】育児休業の分割取得

現行の制度では育児休業の分割取得はできませんでしたが、改正によって育児休業を2回まで分割して取得できるようになります。

さらに、保育所に入れないなどの理由で育児休業を1歳以降も延長する場合も、開始日を柔軟に決めることが可能になりました。
具体的には、現行では、1歳以降に延長した場合の育休開始日が、各期間(1歳~1歳半、1歳半~2歳)の初日に限定されています。これまで夫婦で交代取得したい場合は各期間の開始時点でしか取得ができなかったという現状から、今回の改正によって各期間の途中でも取得も可能となります。また、1歳以降の再取得に関しても特別な事情がある場合に限り、再取得可能となります。

これにより、従業員側には夫婦で交代して育児休業を取得することができるというメリットが得られます。

■改正後の働き方・休み方のイメージ(例)

1歳以降の育児休業が、他の子についての産前・産後休業、産後パパ育休、介護休業または新たな育児休業の開始により育児休業が終了した場合で、産休等の対象だった子等が死亡等したときは、再度育児休業を取得できます。

【2023年4月1日施行】育児休業取得状況の公表の義務化

現行制度では「プラチナくるみん」認定企業のみが公表していた育児休業取得状況ですが、改正後は従業員1,000人超の企業を対象に公表が義務付けられます。公表の具体的な内容は以下が予定されています。

  • 男性の育児休業の取得率
    または
  • 育児休業等及び育児目的休暇の取得率
    ※上記からいずれかを選択

育児休業取得状況の公表の義務化は2023年4月1日施行予定です。

育児・介護休業法に違反したらどうなる?

育児・介護休業法に違反している場合、事業主は行政から報告を求められます。さらに、行政より必要な措置を講ずるように「助言」「指導」「勧告」を受ける場合もあります。

勧告に従わない、報告を怠った、もしくは虚偽の報告を行った場合などは罰則として、企業名の公表と、最大20万円の過料の処分が行われます。

育児・介護休業法改正に伴う対応

この育児・介護休業法の法改正には男性の育児休業取得促進の取り組み、有期雇用の従業員の育児・介護休業取得要件の緩和について盛り込まれており、性別や雇用形態に関わらず、仕事と育児・介護を両立できるようにサポートする目的があります。

企業側も新制度をもとにした従業員の求めに応じられない、といったことがないよう、社内規定の見直しや新たな労使協定の締結を行っておくことが重要です。

まとめ

2021年6月に育児・介護休業法が改正されました。改正では男性の育児休業取得推進、有期雇用従業員の育児・介護休業取得条件緩和のために、育児休業の枠組みが新たに追加されました。育児休暇を取得しやすい環境整備、および従業員への個別の周知や意向確認も義務化されています。

法律に違反した場合は行政から報告を求められるだけでなく、改善のための勧告を受ける場合があります。報告や勧告を無視する、さらには虚偽の報告を行うと、罰則として企業名の公表や最大20万円の過料が科されます。

従業員がより柔軟に働きやすい環境を作るためには、労働時間の管理だけでなく、従業員一人ひとりの休暇についても把握することが重要です。従業員の勤怠状況、休暇の取得状況を確実にチェックするためにも勤怠管理システムの見直しを行っておきましょう。

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