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【社労士監修】2025年施行!改正育児・介護休業法のポイントや企業の対応策を解説

公開日時:2024.08.30

2024年5月31日に改正育児・介護休業法が公布されました。今回改正が発表されたのは、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)」と「次世代育成支援対策推進法」です。この改正では、子育てや介護の責任を担う従業員の柔軟な働き方を実現するためのさまざまな施策が実施されます。
2024年7月時点ではまだ改正内容の詳細は定められていませんが、今回の改正点の大まかな内容とポイントについて解説します。
井上 敬裕 氏

井上 敬裕 氏

中小企業診断士・社会保険労務士

青果加工場の工場長を約9年間務めた後、40歳の時に中小企業診断士として独立。販路開拓支援、事業計画作成支援、6次産業化支援、創業支援などを行う。
平成27年社会保険労務士として開業し、現在は社会保険労務士として給与計算を中心に労務関連業務を行っている。

社会保険労務士法人アスラク 代表社員
https://sr-asuraku.or.jp/about/

改正育児・介護休業法で義務化される措置

この改正では、男女ともに仕事と育児・介護を両立できることを目的とし、以下のような措置が講じられます。

  • 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
  • 育児休業の取得状況の公表義務の対象拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
  • 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等の措置

2025年10月施行見込み:テレワークや始業時刻の変更などの措置を義務化

柔軟な働き方を支援するため、3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に対し、以下5つの措置のなかから2つ以上を選択して実施することが、すべての企業において義務化されます。なお、テレワーク等と新たな休暇は、原則時間単位での取得が可能になります。

  1. テレワーク等(10日/月)
  2. 始業時刻等の変更
  3. 保育施設の設置運営等
  4. 新たな休暇の付与(10日/年)
  5. 短時間勤務制度

企業は選択した措置について、該当する労働者に対し個別の周知・意向確認を行う必要があります。

 

なお、3歳に満たない子を養育する労働者に対しては、2025年4月から、希望に応じてテレワークを選択できるようにすることが努力義務化されます。現行の措置としては、所定労働時間を1日6時間とする育児短時間勤務制度がありますが、労使協定により短時間勤務が困難な業務に従事する労働者を適用除外とする場合の代替措置として、テレワークが追加されることになりました。

2025年4月施行:小学校就学前の子を養育する労働者の残業免除が可能に

現行の法律では、請求すれば所定外労働の制限(残業の免除)を受けられるのは、3歳に満たない子を養育する労働者に限られていました。しかし、今回の法改正により、対象が小学校就学前の子を養育する労働者に拡大されました。本改正により、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限の対象は、小学校就学前の子を養育する労働者となります。

2025年4月施行:小学校3年生修了まで子の看護休暇が可能に

子の看護休暇制度が大きく見直され、名称が「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」に変わります。まず、対象となる子の範囲が、「小学校就学の始期に達するまで」から「小学校3年生修了まで」に延長されます。取得事由には、従来の「病気・けが」「予防接種・健康診断」に加え、新たに「感染症に伴う学級閉鎖等」「入園(入学)式、卒園式」が追加されます。

労使協定の締結により除外できる労働者は、「週の所定労働時間が2日以下」の労働者のみが対象です。「引き続き雇用された期間が6か月未満」の労働者は対象外である点に注意しましょう。

そのほかの改正育児・介護休業法の改正点

上記以外の改正点としては、妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮を行うことが事業主に義務づけられます。また、男性の育児休業取得率の公表義務対象が、従業員数300人超の企業に拡大されます(現行は従業員数1,000人超の企業が対象)。

介護休業法の改正については、以下の措置等が事業主の義務になります。

  • 介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
  • 介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供
  • 仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備(研修や相談窓口の設置等)

介護期の働き方については、労働者がテレワークを選択できるようにすることが努力義務となります。また、介護休暇について、勤続6カ月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みが廃止されます。

次世代育成支援対策推進法の改正点

「次世代育成支援対策法(通称次世代法)」は、次代の社会を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備するための施策です。この法律は、現行では2025年3月31日までの時限立法となっていましたが、2035年3月31日まで延長されることになりました。

次世代法に基づく一般事業主行動計画(企業が従業員の仕事と子育ての両立支援や、多様な労働環境の整備のために策定する計画)については、以下の点が義務化されることとなりました。なお、常時雇用労働者100人以下の企業は努力義務となります。

  • 従業員数100人超の企業は、計画策定時に育児休業の取得状況や時間外労働および休日労働の把握等を行うこと
  • 育児休業取得率や時間外労働および休日労働の労働時間に関する数値目標を設定すること

また、一般事業主行動計画の目標を達成し基準を満たした場合に行われる、厚生労働大臣による認定(くるみん認定)については、認定基準の見直しが行われました。新たな認定基準として、育児休業取得率の引上げ、時間外労働時間の基準の引上げ、男性の育児休業取得期間の延伸のための基準の追加が行われる予定です。

2025年の改正育児・介護休業法施行に向けた企業の対応策

企業は改正内容を正しく理解し、来年4月の改正法施行までに社内規定の変更や労働者への周知などのさまざまな準備が必要です。また、法改正への対応にあたっては、国や地方自治体の助成金を活用するのもおすすめです。

厚生労働省の「両立支援等助成金」は、育児・介護と仕事の両立を支援する助成金です。助成金の受給を目指す取り組みによって、制度導入に対しての目的や動機が明確になる、制度の内容に対しての理解が深まるといったメリットがあります。

また、地域独自の助成金もあります。例えば東京都では、「東京都働きやすい職場環境づくり推進奨励金」や「魅力ある職場づくり奨励金」などがあります。国の両立支援等助成金と合わせて、地域の支援策の活用も検討してみてください。

まとめ

今回の育児・介護休業法および次世代育成支援対策推進法の改正は、育児や介護の責任を持つ労働者が、離職することなく育児・介護と仕事を両立できるように、柔軟な働き方が必要であるという理由から実施されています。ここでいう「両立」は、もう少し広い意味でいうと生活と仕事の両立であり、なかには労働者の健康やキャリアなども含まれます。

今後も、柔軟な働き方を実現する措置のニーズはますます大きくなると考えられます。企業は適切な対応を行い、労働者が働きやすい環境づくりに務めましょう。

参考:

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