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育児短時間勤務制度

いくじたんじかんきんむせいど

公開日時:2021.03.31 / 更新日時:2022.03.22

育児短時間勤務制度は子育てをする労働者の所定労働時間が原則6時間とする制度で、子育てと仕事の両立支援を目的に2009年に義務化されました。フルタイム正社員でなくとも利用可能で、現在は日本の7割弱の企業がこの育児短時間勤務制度を導入しています。利用できる期限は原則子どもが3歳になるまでですが、女性活躍や子育て支援を積極的に行っている企業では小学生入学後も利用可能とするケースもあります。育児短時間勤務制度の充実は、企業の育児支援の取り組み姿勢を示す指標だとも言えます。

育児短時間勤務制度は、育児・仕事の両立支援の取り組み姿勢を示す指標

2009年から義務化されている育児短時間勤務制度は、育児と仕事の両立支援の基本となる制度の1つで、現在では日本企業の約7割弱が導入しています。ここでは、これから自社で育児短時間勤務制度の整備、拡充するという企業に向け、制度の対象者や給与の取り扱いなどのポイントや、就業規則に明記する点などを具体的に紹介します。

所定労働時間を原則6時間とする

育児短時間勤務制度とは、3歳に満たない子どもの養育のため、労働者の1日の所定労働時間を原則として6時間とする制度(所定労働時間の短縮措置)のことです。勤務時間は1日6時間とすることを原則としつつ、5時間45分から6時間まで許容されます。

制度の対象者は?

育児短時間勤務制度は男女の区別なく、フルタイム正社員でない契約社員やパート社員も利用できますが、対象者には以下のような条件があります。

  1. 3歳に満たない子を養育する労働者であること
  2. 1日の所定労働時間が6時間以下でないこと
  3. 日々雇用される者でないこと
  4. 短時間勤務制度が適用される期間に育児休業をしていないこと
  5. 労使協定により適用除外とされた労働者でないこと

「入社1年未満」、「1週間の所定労働日数が2日以下」、「短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事している」などに当てはまる労働者は、労使協定により制度の対象外とすることも可能です。

参考:厚生労働省雇|短時間勤務制度(所定労働時間の短縮等の措置)について

参考:両立支援のひろば(厚生労働省)|Q11 私は正社員でなく、契約期間の定めがある(有期契約労働者)のですが、どのような育児制度が利用できるの?

利用できる期限は、原則子どもが3歳になるまで

育児短時間勤務制度を利用できる期間は原則、「子どもが3歳になるまでの間で、社員が制度の利用を申し出る期間」と定められています。子育て世代が少なく育児短時間勤務制度の利用実績がない企業もありますが、社員から利用の申し出があれば子どもが3歳になるまでの期間、短時間勤務措置に応じる必要があります。

育児短時間勤務制度導入のポイント

育児短時間勤務制度導入時には利用社員との行き違いや法律の趣旨に反した運用がされないよう、給与や残業の取り扱いについて就業規則に定めておく必要があります。

給与・賞与の取り扱い

育児短時間勤務制度を利用した社員に対し、労働時間を短くした時間分を減給としても法律違反とはなりません。 賞与に関しても、勤務しなかった時間を考慮して賞与を減額しても法律違反とはなりませんが、社員の実績や成果を見て柔軟な査定を行うのが望ましいと言えます。

勤務しなかった時間数を超えて賃金を減額する、あるいは時短勤務を申請したことへの懲罰的意味で賞与・昇給で不利益となる算定をすることは法律違反となり、禁止されています。社員が制度の申請・利用をしたことを理由に解雇や雇い止めをした場合も同様に法律違反となります。

参考:両立支援のひろば(厚生労働省)|Q8 従業員が育児のための所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度)の利用を希望する場合

残業の取り扱い

育児短時間勤務制度を利用する社員の残業の取り扱いについても法律で定められています。残業を命じることは法律上禁止されてはいませんが、育児短時間勤務の社員が残業の免除を希望した場合、残業を強制することはできません。

残業分は、他の社員と同様、給与に計上されます。6時間勤務の社員が1時間残業した場合など法定労働時間の範囲内の残業であれば、企業内の特別な規定がない限り割増賃金は発生しません。

参考:両立支援のひろば(厚生労働省)|Q12 従業員が育児・介護のため時間外労働の制限を希望する場合

参考:厚生労働省|育児・介護休業制度ガイドブック(P5)

就業規則へ記載すべきこと

育児短時間勤務制度を整備する場合、以下の点を就業規則に記載する必要があります。

  • 制度を利用できる対象者
  • 労使協定によって制度の対象外となる労働者の条件
  • 給与や賞与に関する影響はあるかどうか、影響がある場合の査定方法
  • 利用する場合の申請期限(適用を受けるためには 1か月前までに申し出なければならない、など)
  • 子どもが3歳になった後も延長できるかどうか

厚生労働省の「30年度雇用均等基本調査」によれば、短時間勤務可能なのは原則通り「3歳まで」としている企業が最も多く、育児短時間勤務制度を活用している企業全体の53.8%を占めます。一方、小学校入学の時期や卒業まで制度利用を延長できるという企業も一定数あり、女性活躍の推進や育児支援に積極的な企業ほど柔軟な運用をしている傾向にあります。

参考:厚生労働省|30年度雇用均等基本調査

「育児時間」との併用も可能

育児短時間勤務制度と混在されがちな制度として「育児時間」があります。これは1日につき通常の休憩時間に加え、30分の「育児時間」を2回取得できる育児支援制度です。男女問わず利用できる育児短時間勤務制度と違い、育児時間を利用できる対象者は「1歳未満の子どもを養育している女性の労働者」に限ります。

制度を利用する従業員は育児時間を取得する時間帯を限定されることなく、就業時間中なら原則自由に請求できます。例えば、始業と終業の時間帯に30分ずつ育児時間を利用して「30分の遅出・30分の早帰り」とする、始業または終業にまとめて1時間利用する、などの使い方も可能です。

育児短時間勤務制度は「育児と仕事の両立」、育児時間は妊婦や出産後の女性の健康を守る「母性保護」のためとそれぞれ異なる目的で設けられた制度であるため、2つの制度は併用することができます。

まとめ

育児短時間勤務制度は2009年の義務化以降、広く活用が進んでいます。法律で定められている以上に柔軟な制度運用をすることも可能で、育児短時間勤務制度の活用によって自社の育児支援の姿勢を明確にできる利点もあります。「子育てしやすい企業」という認知を得るには制度を導入して終わりではなく、利用しやすいような就業規則の整備や、社内外への周知も重要です。

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