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【2025年4月施行】雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付の縮小により、企業が受ける影響とは?

公開日時:2022.08.03

1974年に制定された雇用保険法は、これまで社会の状況を踏まえ何度も改正されてきました。近年では労働人口の不足から、高年齢者の就業を踏まえた制度改正がなされています。今回は、2025年4月1日から施行される雇用保険法に基づく給付制度の1つ、高年齢雇用継続給付の縮小について、縮小の内容と施行後に企業が実施すべき対応を解説します。

雇用保険法とは

雇用保険法は、もともと失業保険法の内容を現代の雇用形態に則した形に発展させる目的で、1974年に制定された法律です。2022年1月に行われた雇用保険法の改正後は、複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者に対する雇用保険の適用をはじめ、65歳以上の労働者が兼業・副業がしやすくなるように制度が変更されています。ここでは現時点の雇用保険の加入条件や給付金などの基本情報を解説します。

雇用保険の加入条件

雇用保険とは、労災保険と共に雇用主が従業員に必ず加入させなければならない国の保険制度です。従業員の雇用継続ができなくなった場合や育児休業を取得した時に従業員の困窮を防ぐため、国から給付金が支給されます。

雇用保険に加入させる必要があるのは以下の加入条件を満たした従業員です。

  1. 適用事業所に雇用されている
  2. 31日以上の雇用見込みがある
  3. 週の所定労働時間が20時間以上
  4. 学生ではない

また、雇用保険の被保険者は雇用形態ごとに以下の4つに区分されます。

  • 一般被保険者
  • 高年齢被保険者
  • 短期雇用特例被保険者
  • 日雇被保険者

このうち、高齢被保険者については、2022年1月のマルチジョブホルダー制度の施行によって雇用保険への加入が容易になる制度に変更が加えられています。また、2022年10月施行の雇用保険法改正により、短時間労働者に対する社会保険の加入条件が拡大されるなど制度変更が加えられました。

マルチジョブホルダー制度についての詳細は以下の記事をご覧ください。

雇用保険の給付金

雇用保険の加入者は、失業や定年後再雇用に伴う収入の減少、育児休業・介護休業を取得した場合に主に以下の給付を受けることができます。

主な雇用保険の給付金

  • 失業等給付(失業手当)…失業した時、再就職するまでの期間を補償する。受給するためには求職活動を行わなくてはならない
  • 高年齢被保険者に対する求職者給付(65歳以降の失業手当)…高年齢被保険者であった人が失業した時に通常の失業手当の代わりに受け取ることができる
  • 高年齢雇用継続給付金…60歳から65歳までの賃金の低下を補償する
  • 育児休業給付…出産後に育児休暇を取得する際、休業期間中の収入を補償する
  • 介護休業給付…介護休業中に休業期間中の収入を補償する

このうち、65 歳までの雇用の継続の援助・支援を目的とした高齢者雇用継続給付金は国の決定により2025年4月1日以降に段階的に縮小されることが決まっています。

高年齢雇用継続給付の縮小が2025年4月に施行

2020年度の政府の決定により、2025年4月から高年齢雇用継続給付が縮小されることになりました。今後の高年齢雇用継続給付の制度と、縮小される背景について解説します。

施行前・施行後の高年齢雇用継続給付率

2025年4月1日より、高年齢雇用継続給付が以下のように縮小されます。

高年齢雇用継続給付の縮小の施行前・施行後の高年齢雇用継続給付率

現行 2003年改正 (同年5月施行)見直し後 2025年4月施行
給付率賃金の原則15%※

賃金と給付額の合計が60歳時賃金に比して
・70.15~75%:給付額は逓減
・75%以上:支給なし
賃金の原則10%

賃金と給付額の合計が60歳時賃金に比して
・70.4~75%:給付額は逓減
・75%以上:支給なし
制度導入時の1995年時は25%

現行では高年齢者の60歳〜65歳までの賃金が60歳到達時の61%以下になった場合、減少額の15%相当額が該当の被保険者に支給されます。2025年4月以降は、雇用保険から給付される高年齢者雇用継続給付の最大給付率が15%から10%に引き下げられることが決定しました。

また、高年齢者雇用継続給付は縮小されるだけでなく、将来的に廃止されることが既に決まっています。

縮小される背景

高年齢雇用継続給付金とは、もともと高齢者の失業を防ぐために雇用継続の援助または雇用継続を促進するための給付として設けられた制度です。

しかし、労働人口の減少と高齢者人口の増加に伴って2013年に施行された「高年齢者雇用安定法」の改正を機に、高齢者の就労環境の整備が進められてきました。例えば、この年齢者雇用安定法の施行により「65歳までの定年の引き上げ」「65歳までの継続雇用制度の導入」「定年制の廃止」のいずれかの措置が企業に義務付けられました。加えて、2021年4月からは努力義務として就労年齢を70歳まで引き上げる「改正高年齢者雇用安定法」も施行されています。

こうした法律の整備により、高年齢雇用継続給付金の制度が創設された当時に比べ、65歳以上の高年齢者でも働ける環境が整ってきました。内閣府の令和4年版高齢社会白書によると「希望者全員が65歳以上まで働ける企業」の割合が80.4%に達したことが分かっています。この様に高年齢者の雇用に関する法改正の積み重ねにより高年齢雇用継続給付金の役割も終わりつつあると考えられ、給付の縮小と段階的な廃止の決定がなされたのです。

2025年に向けての対策

2025年4月からの高年齢雇用継続給付の縮小は、65歳以上の高年齢者を多く雇用する企業ほど大きな影響があります。こうした企業では、高年齢者の雇用を見直し、給付がなくとも働き続けられる環境や、65歳以上でも不公平感が生じないような賃金制度を整備し、より戦略的な雇用の在り方を考えていく必要があります。

この際、65歳以上の従業員を積極的に雇用するにしても、高年齢者だからといって一方的に不合理な賃金格差を設けるのは法違反となります。同一労働同一賃金の観点から高年齢者の処遇を見直していくための準備を進めましょう。同一労働同一賃金の詳細について詳しくは用語集「同一労働同一賃金」をご覧ください。

まとめ

2025年4月以降、雇用保険法に基づく高年齢雇用継続給付が縮小されます。この制度変更後は高年齢雇用継続給付率が現行の15%から10%に引き下げられ、段階的に廃止されることが決まっています。この縮小措置は高年齢者が働きやすい社会では継続給付が不要になる、という考えから決定され、高年齢者雇用安定法による高齢者の継続雇用の促進とセットで行うことが前提です。

65歳以上の高年齢者を雇用する企業では、給付縮小に伴い、現行の賃金制度や高年齢者の処遇について同一労働同一賃金の原則も踏まえ見直す必要があります。今後も加速する労働人口の不足を補うためにも、年齢問わず働きやすい環境の整備、人材確保をしやすい体制作りが重要となります。

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