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【社労士監修】改正雇用保険法等法律案要綱から読み取れる、今後の雇用保険の展望

公開日時:2024.05.14 / 更新日時:2024.06.13

2024年1月12日に開催された第202回労働政策審議会職業安定分科会で、「雇用保険法等の一部を改正する法律案要綱」が示されました。これは、今後予想されている雇用保険法の改正に関連する内容になります。 今回は、改正雇用保険法等法律案要綱の内容をわかりやすく説明したうえで、雇用保険の今後について解説します。
加藤 知美 氏

加藤 知美 氏

社会保険労務士

愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。

総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。

「労働政策審議会 職業安定分科会」とは何か

そもそも、労働政策審議会とはどのような機関なのでしょうか。

労働政策審議会は、その名のとおり「労働政策」に関する審議が行われる委員会をいいます。
労働政策とは、簡単にいえば労働者の生活や雇用を安定させることや、福祉を充実させるための政策のことです。賃金や労働時間に関する国のルールや安全衛生体制の充実、労使関係の均等性、失業者への対策など、すべての人が安心して働ける環境づくりのために話し合う機関ととらえるのがよいでしょう。

労働政策審議会は厚生労働省内に設置されており、審議内容の種類に応じて以下の7つの分科会に分かれています。

  1. 労働条件分科会
  2. 安全衛生分科会
  3. 職業安定分科会
  4. 障害者雇用分科会
  5. 雇用保険・均等分科会
  6. 勤労者生活分科会
  7. 人材開発分科会

このうち、今回取り上げる「3. 職業安定分科会」は、労働者の職業の安定を図る環境を整えるために何をすべきかを検討する機関です。

職業の安定を図るにおいては、労働者が自身の望むとおりの職業を選択できる環境づくりを大前提としています。現在の職場で働き続けたい人には雇用維持のための体制づくりを、転職や開業を求める人については支援策を講じ、できるだけリスクを抑えて実現させることが同機関の役割です。

雇用保険法改正の概要

労働政策審議会の概要や職業安定分科会の審議内容について見てきたところで、次は同分科会で実際に話し合いが行われた雇用保険の改正内容について、ポイント別に解説します。

1.雇用保険法の適用拡大

2028年10月に、雇用保険の加入要件である「週あたりの所定労働時間20時間以上」が、「週あたりの所定労働時間10時間以上」へと変更される運びとなりました。これにより、これまでは雇用保険の対象外で、失業保険や育児・介護休業給付金の受給を諦めていたパートタイマーやアルバイトも、新たに雇用保険の加入対象となる可能性が高まりました。総務省の「労働力調査」によれば、この改正により500万人前後の労働者が適用対象となる見込みです。
同時に、企業にとっては、雇用保険の適用拡大に伴う事務手続きの負担が増すことが予想されます。すでに社会保険の適用拡大は段階的に実施されているため、今のうちに社内体制を整え、準備をしておくとよいでしょう。

2.教育訓練・リスキリング支援の強化

現行の法律では、会社を自己都合で退職した場合、基本手当(雇用保険)の受給手続日から原則として7日経過した日の翌日から2か月間は、基本手当を受給できない期間があります。これを「給付制限」と呼びます。

しかし2025年度以降、雇用安定・就職促進に関する教育訓練を自らの意思で受けた離職者は、退職が自己都合によるものであっても、7日間の待機期間が満了した段階で基本手当を受給できるようになります。つまり、「給付制限」がなくなるということです。なお、教育訓練を受講しないケースにおいては、給付制限期間が現行の2か月より1か月へと短縮される予定です。

また、雇用保険加入者である労働者が、自らの能力を高めることを目的に、教育訓練受講のための休暇を取得した際には、基本手当に相当するかたちで新たに給付金が創設される予定です。

なお、2024年10月には、同じく教育訓練に関し、教育訓練給付金に関する改正が予定されています。具体的には、雇用保険より支給される教育訓練給付金の給付率が、受講にかかる費用の70%から80%へと引き上げられます。この改正は、企業で教育訓練がより多く行われることを目指した施策となります。

このように、近年の法改正では、優秀な人材を一人でも多く増やすための投資を行うという考え方に基づく措置が多くみられます。「リスキリング」とは、将来にわたって必要とされるであろう新たな知識やスキルを習得し、仕事に役立てていくことをいいます。
IT技術やAIの進化などにより、労働者の働き方は大きく変化しています。会社で今後必要となる知識や技術について、労働者に学んでもらう人材育成手段として、リスキリングが重要視されているのです。

3.育児休業給付制度の変更

2025年4月に、育児休業給付の国庫負担の引き下げの暫定措置が廃止されます。暫定措置では、国庫負担割合が80分の1と引き下げられていましたが、今後は本来の内容となる8分の1負担へと戻ります。

また、同年4月以降、育児休業給付の保険料率が現行比率の0.4%から0.5%へと引き上げられる運びとなりました。ただし、国の財源内容に応じて、法改正をしていない状況においても保険料率を調整することが可能な「弾力条項」が設定されます。よって、当面の間は現行比率のままで様子を見ながら、給付総額が一定を超えて増額された場合は料率が変更されることになります。

これは、男性の育児休業取得率向上を目指した国の支援に伴い、育児休業給付金額が増える状況を想定して設けられた改正内容です。

4.教育訓練支援給付金制度の見直し

教育訓練支援給付金の給付率が、基本手当の80%から60%へと引き下げられます。ここで覚えておかなければならないのは、「教育訓練支援給付金」と「教育訓練給付金」はまったく別物であるということです。

教育訓練給付金とは、「会社に在籍している者」や「離職者」が、自発的に自身の能力向上やキャリア形成を図るために厚生労働大臣指定の教育訓練を修了した場合に、受講費用の一部が支給される制度です。
以下の3種の給付金制度が設けられています。

  • 中長期的なキャリア形成を図り、専門性の高い資格取得を目指す講座なども設けられている「専門実践教育訓練」
  • 再就職において有利となるよう、速やかにキャリア形成を図るための「特定一般教育訓練」
  • 上記の2種よりも一般的な資格取得などを目的とした内容の「一般教育訓練」

一方、教育訓練支援給付金とは、「失業者」が対象となる制度です。厚生労働大臣指定の「専門実践教育訓練」を受ける失業者(失業認定を受けている者)で、「専門実践教育訓練給付金」の受給対象となる者のうち、次の内容に該当する者が教育訓練支援給付金を受けることができます。

  1. 45歳未満の者
  2. 昼間に通学する教育訓練を受けている者

なお、教育訓練支援給付金制度はもともと期間限定の制度でしたが、2026年度末まで暫定措置が継続される運びとなっています。

まとめ

雇用保険に関する今後の改正予定について、おわかりいただけたでしょうか。少子高齢化の影響による労働力不足を受け、いずれの内容も、限られた数の労働者一人ひとりがスキルアップし、自身の望むかたちで働くことができるような環境づくりを後押しするものとなっています。法改正の内容は厚生労働省のサイトをはじめ、新聞やテレビ、インターネットでも随時配信されています。今後の動向についても注視しながら、企業として適切な対応ができるよう備えておきましょう。

参考

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