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2023年4月1日に育児休業取得状況公表が義務化。企業の対応方法を解説

公開日時:2023.04.18

仕事と育児を両立できる社会の実現を目的として、2021年6月に育児・介護休業法が改正されました。2022年4月から段階的に施行されており、2023年4月1日には大企業に対して育児休業取得状況の公表が義務化されました。
公表しないことでの明確な罰則はありませんが、厚生労働大臣から事業主に対して勧告が行われます。それでも従わなかった場合は、育児休業取得状況の公表義務を果たさなかったことと企業名が公表されてしまいます。企業のイメージを下げないためにも、育児休業取得状況の公表は忘れずに行う必要があります。
この記事では、育児休業取得状況の公表に関する基礎知識や計算・公表方法について解説します。

育児休業取得状況の公表義務化とは

大企業は「男性の育児休業等の取得率(割合)」もしくは「育児休業等と育児目的休暇の取得率(割合)」の年1回公表が義務付けられています。公表義務化は、育児・介護休業法の改正の目的である「出産・育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにするため」((令和3年法律第58号、令和3年6月9日公布))」を達成するための取り組みの1つです。この章では、公表義務化の基礎知識について解説します。

公表義務化の対象企業

「男性の育児休業等の取得率(割合)」もしくは「育児休業等と育児目的休暇の取得率(割合)」の公表義務化の対象は大企業です。ここでいう大企業とは「1000人を超える企業」です。この場合、一時的に1000人以下になることはあっても常態で1000人を超えていれば大企業としてカウントします。

公表しないことでの罰則

公表しないことでの明確な罰則は存在しません。ただし、公表義務を守らなかった場合は育児・介護休業法違反となり、厚生労働大臣から勧告を受けます。その勧告に従わないのであれば、企業名などの基本情報と育児休業取得状況の公表義務を果たさなかったことが開示されます。これは、育児・介護休業法の第56条の2に記載されています。

似たような事例として、障害者の雇用の促進等に関する法律に基づいて、厚生労働大臣が勧告を実施したにもかかわらず、改善が見られなかった企業の企業名を公表したケースがあります。公表されている情報は「企業名・本社の所在地・代表者・業種」であり、育児・介護休業法の場合も同様の情報が公表される可能性が高いでしょう。

勧告に従わずに企業名が公表されてしまえば、従業員に十分な育児休業を取らせていない企業ではないかとイメージダウンは免れず、求職者の低下や取引先への悪影響が起こりかねません。

育児休業取得状況の公表の決まり

育児休業取得状況の公表の際の決まりとしては、主に「公表する情報」「公表する方法」「公表期限の目安」があります。基本的な情報は以下の表にまとめています。自社が対象の企業であった場合は、表を参考に公表する準備をしてください。「公表する情報」の計算方法については2章で、「公表する方法」「公表期限の目安」については3章で詳しく説明します。

公表する情報
公表する方法
公表期限の目安
「男性の育児休業等の取得率」または「男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率」・自社のホームページ
・「両立支援のひろば」
・その他、適切な方法 など
公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度終了後、おおむね3か月以内

なお、公表する内容は、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度です(以降、公表前事業年度)。つまり、2023年度に公表するのは2022年度の育児休業等の取得率になります。

育児休業取得状況の計算方法

育児休業取得状況である「男性の育児休業等の取得率(割合)」か「男性の育児休業等と育児目的休暇の取得率(割合)」を求める計算方法はそれぞれ以下の表のとおりです。

「育児休業取得状況の計算方法」

①育児休業等の取得割合

①育児休業等の取得割合
②育児休業等と育児目的休暇の取得割合
育児休業等をした男性労働者の数

配偶者が出産した男性労働者の人数
育児休業等をした男性労働者の数

小学校就学前の子どもの育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数の合計数

配偶者が出産した男性労働者の人数

育児休業等や育児目的休暇の範囲

育児休業等と育児目的休暇はそれぞれ育児・介護休業法に規定されています。

まず、育児休業等は以下のものが該当します。

  • 育児休業、産後パパ育休(2条第1号)
  • 3歳に満たない子を養育する労働者に関する代替措置(23条2項)
  • 小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者に関する措置(24条第1項)

次に、育児目的休暇は、育児を目的とするものが明らかにされている休暇制度を指します。「失効年休の育児目的の使用」や「配偶者出産休暇制度」など、育児を目的とすることが明らかであるならば育児目的休暇に該当します。ただし年次有給休暇は取得者が育児の目的で休んだとしても、育児目的休暇に含まれないので混同しないようにしましょう。

育児休業取得状況の計算の手順

育児休業取得状況の計算の手順は以下のとおりです。

それぞれの手順について詳しく説明します。

手順1:配偶者が出産した男性労働者の人数を求める

手順2:育児休業等、育児目的休暇を取得した男性労働者の合計数を求める

手順3:手順2で求めた数値を手順1で求めた数値で割り、育児休業・休暇の取得率(割合)を算出する

手順1:配偶者が出産した男性労働者の人数を求める

まずは、公表前事業年度において、配偶者が出産した男性労働者の人数を求めましょう。このとき、配偶者が出産していたとしても育児・介護休業法において育児休業等の対象とならない者は計算に入れなくても問題ありません。加えて、子が死亡していたり、事業前年度末日時点で育児休業・休暇を取得した者が退職したりしているのであれば計算から除外しましょう。ただし、事業所の労使協定に基づいて、育児休業等の対象外とされている従業員は計算に含めます。この結果、配偶者が出産した者の数が0の場合は、割合が計算できないため「-」と表記して公表してください。

手順2:育児休業等、育児目的休暇を取得した男性労働者の合計数を求める

次に、育児休業等、育児目的休暇を取得した男性労働者の合計数を求めます。ただし、男性の育児目的休暇がないのであれば、育児休業等の数のみ計算します。このとき、年度をまたいで育児休業等を取得した労働者は、前の年度の育児休業としてカウントしましょう。加えて、育児休業等の分割取得や、同一の子供の育児に育児休業と育児休暇を併用して取得した場合は1人としてカウントします。

手順3:手順2で求めた数値を手順1で求めた数値で割り、育児休業・休暇の取得率(割合)を算出する

最後に手順2で求めた育児休業等・育児目的休暇を取得した男性労働者の合計数を手順1で求めた配偶者が出産した男性労働者の人数で割ります。算出する割合は小数第一位を切り捨てましょう。例えば、公表前事業年度において、育児休業・休暇を取得した人数の合計が50人で、配偶者が出産した男性労働者の人数が75人だった場合、50÷75=0.66666……となり、66.66……%と求められます。小数第一位を切り捨てると、育児休業・休暇取得率は66%になります。

育児休業取得状況の公表方法

求めた数値の公表方法も、計算方法と同様に手順は3つです。

この章では、公表方法の手順をポイントごとに説明します。

手順1.公表する内容である以下の3つを明示する

 ①育児休業・休暇の取得率(割合)
 ②算定期間
 ③求めた割合が育児休業のみのものか育児休暇も含めたものか

手順2.自社のホームページか「両立支援のひろば」のどちらで公表するか決める

手順3.公表の期限の目安である3ヶ月以内に公表する

【手順1のポイント】育児休業の取得率の他に公表する情報

公表する際は、2章で算出した取得率の他に算定期間(公表前事業年度の期間)、算出した取得率は育児休業のみか育児目的休暇も含めたものなのかを明示する必要があります。また任意ではありますが、厚生労働省は「女性の育児休業取得率」や「育児休業取得日数」なども合わせて公表し、自社の実績をPRすることを推奨しています。

【手順2のポイント】インターネットにおける育児休業の取得率の公表方法

育児休業の取得率は、自社のホームページか厚生労働省が運営しているサイトである「両立支援のひろば」のどちらかで公表しましょう。インターネットの他にも、その他の一般の方が確認できるような方法であれば可能とされていますが、厚生労働省は2023年3月時点ではその方法の具体例について定めていません。そのため、インターネットでの公表方法である2つのどちらかで公表するのが妥当です。

「両立支援のひろば」で公表する場合、「登録状況一覧」から「自社の行動計画・取組の新規登録・修正ページ」に入り、「 育児・介護休業法に基づく育児休業等の取得の状況を新規登録・修正する」を選択しましょう。そこで情報の入力が可能です。より詳細な説明は「両立支援のひろば」にあるマニュアルを参照しましょう。ただ、企業情報を入力したことがないのであれば、まずは新規で企業登録をする必要があります。

【手順3のポイント】育児休業取得状況の公表タイミングの目安

1章でも述べたとおり、公表期限の目安は事業年度開始から3か月以内です。厚生労働省が発表している以下の「事業年度末ごとの初回公表期限」を示した表と自社の事業年度を照らし合わせて公表期限はいつなのか確認し、期限内に公表しましょう。例えば、事業年度末が2023年3月だった場合は、2023年6月までに公表しなければなりません。

「事業年度末ごとの初回公表期限」

育児休業取得状況の公表タイミングの目安

まとめ

この記事では、育児休業の取得状況の公表の対象や算出・公表方法について解説しました。最後に計算フェーズと公表フェーズの手順を簡単にまとめたので、公表の準備を行う際の参考にしてください。

▼計算フェーズ
手順1:公表前事業年度において、配偶者が出産した男性労働者の人数を求める

手順2:育児休業等、育児目的休暇を取得した男性労働者の合計数を求める

手順3:手順2で求めた数値を手順1で求めた数値で割り、育児休業・休暇の取得率(割合)を算出する

▼公表フェーズ
手順1:公表する内容である以下の3つを明示する
 ①育児休業・休暇の取得率(割合)
 ②算定期間
 ③求めた割合が育児休業のみのものか育児休暇も含めたものか

手順2:自社のホームページか「両立支援のひろば」のどちらで公表するか決める

手順3:公表の期限の目安である3か月以内に公表する

育児休業・休暇取得率の公表は大企業の義務であり、対応しなければ最悪の場合企業名が公表され、企業のイメージダウンにつながりかねません。

育児休業・休暇を取得している男性労働者の人数を把握するには、勤怠管理で一括管理するのが便利です。育児休業・休暇を取得している男性労働者の人数を把握することで、育児休業取得率がスムーズに求められ、期日に余裕を持った公表が可能です。

TimePro-VGはさまざまな雇用形態の従業員の勤怠状況を一括で管理でき、多くの従業員を雇用する大企業向けにメリットが有る勤怠管理システムです、従業員の休暇取得状況をはじめとした労務データが抽出しやすいことから、育児休業状況を把握する以外にも幅広く活用できます。ぜひ導入をご検討ください。

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