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マイナンバーの提出を拒否する従業員に対し、提出を義務付けることは可能ですか?

マイナンバー法には従業員に提出を義務付ける規定はありません。拒否された場合はその経緯を行政に証明できるようにしておく必要があります。
公開日時:2022.12.19 / 更新日時:2024.05.07
詳しく解説

Q. マイナンバーの提出を拒否する従業員に対し、提出を義務付けることは可能ですか?

従業員100人程度の企業の労務担当です。新しく入った従業員の社会保険手続きのためにマイナンバーの提出を求めたところ、「会社から情報が洩れるのではないか心配」と、プライバシー保護の懸念から提出を拒否されました。このようなケースは初めてなので対応に困っています。今後は入社時のマイナンバー提出を就業規則で義務付けることはできるでしょうか。

A. マイナンバー法には従業員側にマイナンバーの提出を義務付ける規定はありません。従業員への説明を尽くしても拒否される場合は、書類提出先機関の指示に従いましょう。

マイナンバー法では、企業に対して従業員のマイナンバーを収集するよう義務付けていますが、従業員の側に提出を義務付ける規定はありません。就業規則で「原則入社時にマイナンバーを提出しなければならない」と規定している企業もありますが、拒否された場合に提出を強制することはできません。

企業は従業員の理解が得られるよう丁寧に説明することが重要です。それでも提供を拒否される場合には、以下のとおり、関係機関の指示に従って対処する必要があります。

「社会保障制度や税制などの決められた書類にマイナンバーを記載することは、法令又は条例で定められた義務であることを周知し、提供を求めてください。それでも提供を受けられないときは、書類の提出先の機関の指示に従ってください。(2023年6月更新)」

1. 従業員のマイナンバー提出は義務ではない?

企業にはマイナンバーの収集が義務付けられており、就業規則によって「原則マイナンバーを提出する必要がある」と規定できます。一方で、マイナンバー法では従業員に対して提出を義務付ける規定はなく、提出せずとも従業員への罰則はありません。

とはいえ、企業が故意に収集をしなかった場合は義務違反となるため、注意が必要です。マイナンバーの収集が不十分であることや、記載対象の書類へ記載しなかったことに対する罰則はありませんが、従業員に提出を拒否されたら一連の経緯を記録し、義務違反ではない(故意に提出を怠ったわけではない)と証明できるような準備が必要です。

ただし国税庁の以下見解のとおり、経緯を記録するために多大な労力を割く必要はないと考えられます。

「マイナンバー(個人番号)の提供を受けられない場合における、「提供を求めた経過等の記録、保存」は法令上の義務ではありません。『いつ提供を求め、その結果として提供を受けられなかった事実』を事後的に明らかにすることが可能であればよく、提供を受けることができなかった個別の事情までは記録する必要はありません。」(2018年4月27日更新)

2. 企業がマイナンバーを収集・管理する理由

2016年1月以降、源泉徴収票や支払調書の発行、社会保険や税の手続きにおいてマイナンバーの印字・提出が必要となりました。そのため企業は従業員からマイナンバーを収集し、社会保険関連や源泉徴収票などの提出に利用します。

マイナンバーの利用は、以前は税・社会保障・災害対策のみでしたが、2023年6月以降、税・社会保障・災害対策以外の行政分野における事務でも利用できるようになりました。

ただし、マイナンバーの提供を受けた時点で利用目的としていなかった事務には利用できません。その際には、新規の利用目的を明示して再度マイナンバーの提供を受けるか、利用目的を変更し、変更後の利用目的を通知、あるいは公表しなければなりません。

また、企業はガイドラインに規定されている4つの義務を守り、提出されたマイナンバーやマイナンバーが記載された書類を適切に保管する必要があります。従業員の退職により保管の必要がなくなった場合や、法定保存期間が経過した場合などには、速やかに破棄しなければなりません。

なお、法定保存期間は書類等の所管法令によって異なるため、誤って破棄しないよう注意が必要です。

ガイドラインに規定されている4つの義務は以下のとおりです。

1)本人確認 写真付きのマイナンバーカード(個人番号カード)の提示または、住民票などのマイナンバーが記載された公的書類および身分証明書を確認する。代理人からの提供を受けるためには、併せて代理人の身分証明書および代理権が確認できる書類の提示を求める。

2)安全管理措置 マイナンバー法で定められている、マイナンバーを利用できる範囲等の制限をもとに、従業員に対してマイナンバーを利用する事務の範囲やそれに付随する事務等の明確化および規定等の策定が必要。また、組織的安全管理措置や物理的安全管理措置といった細部にわたる対策をしなければならない。

3)監督責任 委託先からの情報流出があった場合、委託元である自社の責任は免れない。そのため、適切な委託先の選定や安全管理措置に基づいた契約の締結、マイナンバーの取り扱い状況を確認するなどの対策が必要である。

4)説明責任 マイナンバーの取得および委託先等へ提供するに当たり、本人に対して用途や利用範囲を明示し説明しなければならない。

3. マイナンバーなしで社会保険加入は可能?

マイナンバーを提出しなくても社会保険への加入自体は可能です。

ただしマイナンバー提出をしないことで、以下のような不便が生じることを従業員に説明しなければなりません。2024年秋には健康保険証が廃止され、マイナンバーカードと健康保険証の一体化が予定されている点も、周知しておく必要があるでしょう。

  • 保険証の発行が遅れる
  • 戸籍謄本や住民票を取得する際、別途費用が発生する
  • マイナポータルを活用したサービスの利用ができなくなる
  • 健康保険証で医療機関を受診した際、健康保険の資格確認に支障が生じる可能性がある

そもそもマイナンバー提出の拒否が起きるのは過去年金情報流出問題などから、個人情報の流出を懸念する人が増えた背景があります。また、国による管理だけでなく企業の情報管理に懸念を抱く人もいます。

したがって、原則通りマイナンバーを提出してもらうために企業は次のような対応求められます。

  1. マイナンバー制度について丁寧に説明する
  2. 自社では収集したマイナンバーを厳重に管理していることを伝える

なお、従業員へ説明する際には、以下の4つのポイントを意識し、十分な理解を得られるような伝え方を心がけてください。

  1. マイナンバーをはじめとした個人情報関連の取り扱い規定の制定や、システム等で個人情報の利用状況を適時チェックするといった組織的安全管理措置を講じている
  2. 人的安全管理措置のために、マイナンバー関連の個人情報を扱うためのマニュアル策定、教育・研修を行っている
  3. 個人情報の保管は、厳重な入退室管理がされている専用の部屋で行い、物理的安全管理措置を講じている
  4. 個人情報がインターネット経由で漏れないよう、技術的安全管理措置としてウイルス対策を徹底している

マイナンバー制度についての詳細については「用語集 マイナンバー制度」をご覧ください。

まとめ

社会保険加入をはじめとする各種手続きのため、企業はマイナンバーを収集および管理する義務があります。従業員は原則マイナンバーを提出しなくてはなりませんが、提出を拒否しても法律上、従業員への罰則はなく、強制もできません。

また、マイナンバーなしでも社会保険自体は加入できますが、マイナンバーのメリットであるスムーズな事務処理はできない場合があり、反対に手間や費用が掛かるというデメリットもあります。

そもそもマイナンバーを提出拒否する理由として、個人情報の流失など管理方法に懸念があるケースが多く見受けられます。こうしたケースへの対応として、マイナンバーを効率的かつ人的ミスが起きにくい状態で管理できるシステムの導入なども有効です。

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