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マイナンバーカードの交付状況と自治体の活用事例を詳しく解説

公開日時:2023.04.18

日本全国のマイナンバーカードの交付状況は、2023年2月末時点で63.5%となっており、2016年1月の交付開始以来、国や自治体の取り組みによって普及が進んできました。

マイナンバーカードの利用については、身分証としての利用をはじめ、さまざまな活用方法があります。自治体ごとにユニークな活用方法が打ち出されたり、自治体職員の方が率先して庁内で利用できる仕組みを整えたりするなどの取り組みも行われています。

ここでは、各自治体のマイナンバーカードの交付状況から、普及・利活用の取り組みの事例、手軽に始められる活用方法について具体的に解説します。

マイナンバーカードの交付状況と普及の取り組み事例

総務省の調査によると、日本全国のマイナンバーカードの交付枚数は、2023年2月末時点で約8000万枚となり、人口に対する交付状況は63.5%となっています。同年3月26日時点での申請受付数は9500万を超えて76.1%となっており、マイナンバーカードの普及は日々進んでいる状況です。この章では、マイナンバーカードの具体的な普及状況と、普及のための自治体の取り組みの事例をご紹介します。

マイナンバーカードの交付状況

マイナンバーカードの交付率の高い地域を都道府県別に見ると、2023年2月末時点での上位3県は、宮崎県77.1%、愛媛県70.0%、山口県 69.1%で、上位10県は次の表の通りとなっています。

【都道府県】

団体名人口に対する交付枚数率
宮崎県77.1%
愛媛県70.0%
山口県69.1%
鹿児島県68.9%
佐賀県68.6%
広島県68.2%
奈良県67.3%
岐阜県66.7%
鳥取県66.6%
兵庫県66.4%

また、特別区・市別で見た場合の上位3市は、宮崎県都城市91.8%、兵庫県養父市91.5%、山口県柳井市 83.4%で、宮崎県都城市は、マイナンバーカードの交付率が全国の市区で1位です。

【特別区・市】

団体名人口に対する交付枚数率
宮崎県都城市91.8%
兵庫県養父市91.5%
山口県柳井市83.4%
石川県加賀市82.5%
兵庫県小野市81.0%
宮崎県串間市80.9%
宮崎県西都市80.7%
高知県宿毛市80.6%
鹿児島県西之表市79.1%
滋賀県米原市78.7%

普及の促進に向けた様々な施策が結実している都城市の取り組みについては、次の項で紹介します。

マイナンバーカード普及のための自治体の取り組み事例

全国の市区で交付率が1位の宮崎県都城市(人口約16万人・2023年3月時点)では、市民生活の利便性を向上させるため、制度の開始以来、マイナンバーカードの普及活動を行っています

市民の中には、申請方法がわからない方や、市役所が遠い方も多かったことから、市役所の職員が人の集まる場所に出張して特設ブースを作り、マイナンバーカードの取得希望者にはその場で申請完了までをサポートする取り組みを行いました。出張場所は市内のイオンモールのほか、大学、図書館、温泉施設や、市内の各企業など多岐にわたっています。

出張先で行った、申請のための顔写真をタブレット端末でその場で撮影する方法は「都城方式」と呼ばれて、全国の各自治体に広まりました。また、マイナンバーカードを作ってもらう動機づけとして、市はカードの便利な活用方法も多く用意しています。

都城市のマイナンバーカード活用例

各種証明書のコンビニ交付サービスコンビニなどで、住民票の写しなど各種証明書の取得が可能
電子母子手帳スマートフォンで、予防接種や検診などの情報が確認できるアプリを利用できる
デジタルケア避難所避難所入所の際、用紙に記入せずに入所可能なシステム
おくやみ窓口死亡の申請書に記入する情報をマイナンバーカードから読み取り、記載した状態で申請書を出力。窓口に来た申請者の負担を軽減

そのほかの自治体での普及活動としては、広報誌やSNS、町中や鉄道でのポスター掲示などを利用した一般的な広報活動や、横浜市では好評を博したプロの写真家による顔写真撮影サービスの実施などの例があります。

また、宮崎県に次いで普及率の高い愛媛県では、マイナンバーカード取得の特典で、国が最大2万円分のポイントを付与する「マイナポイント」にプラスして、愛媛県版マイナポイントの付与を実施しました。県が最大4000円分のポイントを上乗せするサービスを行ったことが普及の一助となるなど、各自治体はさまざまな普及への取り組みを行っています。

マイナンバーとマイナンバーカードの違い

マイナンバーとマイナンバーカードが混同されていると、マイナンバー制度自体の理解がなかなか進みません。一方で、両者は混同されやすく、誤解されることがあります。

「マイナンバー」は12桁の番号そのもので、「マイナンバーカード」はマイナンバーを記載したICチップ付きのカードのことです。例えば、マイナンバーカードを社員証などの個人認証に利用する場合は、ICチップ内の空き領域を活用し、マイナンバーそのものは利用しません。この章では、双方の誤解されやすいポイントと違いについて、わかりやすくご紹介します。

【マイナンバーカードの見本】
【マイナンバーカードの見本】
マイナンバーマイナンバーカード
特徴12桁の番号そのものマイナンバーを記載したICチップ付きのカード
持っている人日本に住民票がある人すべて日本に住民票がある人で、交付申請をした人
用途行政手続きの事務処理 (利用範囲は、社会保障・税・災害対策) マイナンバーの証明、本人確認
利用範囲マイナンバー法第9条で規制された限定的な事務の範囲同左で限定されている「マイナンバー」のほか、ICチップ内にある「空き領域」と「電子証明書」は、民間も含めて幅広く身分証などに利用可能

誤認されやすいポイントは、マイナンバーとマイナンバーカードのそれぞれの利用範囲です。

上の表のように、マイナンバーの利用範囲は、マイナンバー法第9条によって規制されています。そのため、マイナンバーは定められた事務の範囲内でのみ利用が可能で、具体的には同法の「別表第1」で定められた部分だけに限られています。原則としてそれ以外に利用することは不可能のため、例えば、社員の管理のためにマイナンバーを社員番号として利用することは不可能であり、違法となります。

マイナンバー法第9条で、限定的に定められたマイナンバーの利用範囲の例

・健康保険法、国民健康保険法等による保険給付の支給、 保険料の徴収に関する事務

・国民年金法、厚生年金保険法による年金の支給に関する事務

・児童扶養手当法による児童扶養手当の支給に関する事務

一方、マイナンバーカードは、利用範囲が法的に規制される「マイナンバー」のほかに、ICチップの中に「電子証明書」と「空き領域」の部分があるため、チップ内の両部分については民間事業者も含めて幅広く利用が可能です。「空き領域」には民間事業者が独自に各種のカードアプリを搭載することもでき、例えば出勤・退勤時の入退館の管理などにも利用ができます。

マイナンバーカードの自治体等の活用事例

マイナンバーカード普及のためのポイントは、利用者にとって、活用しやすく役立つものであることです。そのため、利用する市民にとっても、また普及を担う自治体職員にとっても、マイナンバーカードの利便性の向上が大切です。この章では、自治体の職員の方が実際に行っているマイナンバーカードの活用の事例や、市民の方にとって利便性向上となる自治体の取り組みの事例をご紹介します。

なお、国から自治体職員に推奨されているマイナンバーカードの主な活用例として、職員証としての利用が挙げられます。職員証としての認証場面には、出退勤や入退室の打刻、システムへのログイン、プリンタでの認証印刷、食堂や売店などの自動精算などの例があります。

マイナンバーカードを職員認証に活用する例

・出退勤管理、入退室管理
・備品管理、鍵の管理
・会議室の予約管理
・認証印刷や認証スキャン
・システムへのログイン
・食堂や売店の自動精算

【姫路市】職員証利用と「ひめじポイント」制度

姫路市では、職員の方々自身がマイナンバーカードを使う取り組みとして、職員証としての利用を進めています。具体的には、マイナンバーカードを職員証として用い、出退勤の管理や、庁舎への入庁・退庁管理、プリンタ利用時の認証印刷などに活用しています。

認証プリンタでの活用方法は、プリンタに付いているICカードリーダに職員証としてのマイナンバーカードをかざすと認証サーバーで職員資格が認識され、プリントが可能となる仕組みです。職員の方はプリントしたいプリンタにICカードをかざすだけで印刷ができます。

姫路市の市民向けのマイナンバーカードの活用事例としては、「ひめじポイント」制度があります。前出の愛媛県版マイナポイント事業と同様で、姫路市独自のマイナポイント事業です。健康づくりやボランティア、結婚・出産などのライフイベントなどに対して、市から、マイナンバーカードを持つ人にポイント(自治体マイナポイント)が付与される制度です。付与されたポイントは、民間のキャッシュレス決済サービスに交換でき、買い物などでの利用が可能となっています。

「ひめじポイント」制度を利用したいためにマイナンバーカードを取得した市民の方も多く、ポイント制度が市民のマイナンバーカード取得の動機づけにつながった事例です。

ひめじポイント制度でもらえるマイナポイントの例(令和4年度)

ハッピーバースポイント
(姫路市民として生まれた新生児へのお祝いポイント)
5,000ポイント
多子世帯への出産祝いポイント第3子=25,000ポイント
第4子=35,000ポイント
第5子以降=45,000ポイント
介護支援ボランティアポイント上限5,500ポイント(活動実績に応じる)
栄養食事指導ポイント
(栄養食事指導の対象となり、栄養指導を受けた人)
1,000ポイント
禁煙チャレンジポイント
(禁煙外来を受診し、禁煙にチャレンジする人)
参加者=1,000ポイント
成功者=1,000ポイント

また、マイナポイントの制度を利用しやすいよう、マイナポータルの利用が可能なパソコンを、姫路市独自に市内各所に設置する取り組みも、マイナンバーカード普及の一助となっています。設置場所は、市役所の庁舎や支所だけでなく、市のスポーツセンターや青少年センター、図書館(分館含む)、保健所など、市民の方々がアクセスしやすい場所です。設置したパソコンは、マイナポイントの申し込みや健康保険証利用申し込みなど、多くの市民の方に活用されています。

【都城市】出退勤管理システムへの活用

マイナンバーカードの交付率が全国の市区で1位となっている都城市では、市職員の方々の活用として、マイナンバーカードによる出退勤管理システムの利用を行っています。

具体的には、庁舎の入口などに設置されたタイムレコーダーに、マイナンバーカードをかざすことで出退勤の打刻を行います。マイナンバーカードのICチップ内の空き領域に、アプリケーションを入れて職員IDを書き込むことで、職員証としての利用が可能となっています。

マイナンバーカードを活用した出退勤の打刻によって、従来の紙ベー スでの出勤簿管理から脱却することとなり、勤怠管理事務の効率化・デジタル化にもつながりました。

【山梨県庁】認証印刷と鍵の貸出し管理

山梨県庁では職員の方のマイナンバーカードを、認証印刷と認証スキャン、鍵の貸出管理に活用しています。認証印刷では、本人の出力データのみを印刷するため、印刷物の取り違いや、誤印刷が大きく減り、紙の節約にもつながりました。

職員の方への鍵の貸し出し管理へのマイナンバーカード活用も、さまざまな効果を生んでいます。山梨県では、本庁舎の入り口の守衛室で執務室の鍵を管理しており、従来は紙の記録簿に、どの部署の誰が何時に入室するという記入を行っていました。そのため順番待ちの人の列ができていました。そこで、新型コロナウイルスの流行もあって混雑を避けるために、鍵の貸し出し管理に職員のマイナンバーカードを導入し、鍵の受け渡し記録と登退庁記録を電子化したところ、省力化と庁舎入り口(鍵の受け渡し場所)の混雑回避につながりました。

一方で、他の自治体も同様ですが、職員証としてのマイナンバーカード活用を進めるためには課題もあります。マイナンバーカードの取得は義務ではないため、職員に取得を強制することはできません。そのため、山梨県職員のマイナンバーカードの取得率も100%ではないことから、取得しない職員の方は引き続き紙の管理簿に鍵の貸出を記入するなど、別の対応が並行して必要となってます。

【国立大学】職員証・学生証・図書館の入退館等

国立大学法人では、「デジタル社会の実現に向けた重点計画工程表」(2021年12月24日閣議決定)により、2022年度から職員証や学生証などをはじめとして、マイナンバーカードを学内で活用することが目標とされ、実施が進んでいます。

職員証・学生証としての利用例には、図書館での活用や学内でのPCログイン等をはじめ、次のようなケースが挙げられます。

職員証・学生証としての利用例

・図書館の入退館や図書の貸し出し利用
・学内の情報室や演習室などでのPCログイン
・在学証明書などの書類の自動発行
・駐車場の入出庫

また、職員証・学生証としてだけでなく、大学付属病院でマイナンバーカードを健康保険証として利用できるなど、大学関連機関でのマイナンバーカード対応を可能とする取り組みも進んでいます。

【市民向けの活用例】図書館利用・市の有料施設に無料入場ほか

自治体など公的機関の職員の方たちが、自らマイナンバーカードの活用を庁内で進めると同時に、市民の方向けにも、マイナンバーカードの便利な活用方法が増えています。例としては、前出の都城市のように、各種証明書をコンビニで取得できるコンビニ交付サービスや、電子母子手帳のサービスのほか、以下のようなサービスが挙げられます。

市民向けのマイナンバーカード活用例

図書館利用 貸出証・利用者カードとして、本の貸し出しや予約などが可能
健康保険証医療機関で健康保険証として利用でき、保険資格の確認などが可能
お薬手帳処方薬の履歴を記録する「お薬手帳」をマイナンバーカードに一体化。薬局や医療機関で薬の処方履歴が確認できる
子育て関連手続きの申請マイナポータルから、児童手当の認定請求、保育所の入所申請、妊娠の届出などができる
障害者手帳マイナンバーカードに障害者手帳の情報を記録。事業者に提示でき、乗車割引などを受けられる
コロナワクチンの接種証明書取得証明書取得時に利用可能
オンライン確定申告での活用マイナポータルを活用すると、株取引の年間取引報告書や、保険料控除証明書等のデータの内容を、確定申告書の該当項目に自動入力できる
在留手続きのオンライン申請マイナンバーカードを持つ外国人の方は、在留資格の手続き、就労資格証明書の交付、再入国許可申請ほか、「短期滞在」と「外交」を除く全ての在留資格のオンライン手続きが可能
民間企業の社員証NEC、NTTデータ等の各企業が導入
民間サービス各種オンライン証券口座の開設、決済サービスでの口座登録ほか

図書館でのマイナンバーカードの活用の取り組み事例においては、姫路市の図書館が独自の取り組みを行っています。姫路市では2023年3月1日から、通常の貸し出し時の上限数は1人6冊までのところを、マイナンバーカード利用者の場合には、上限が12冊となるサービスを開始しました。貸し出しの上限冊数が増えるメリットを取り入れることで、マイナンバーカード利用の動機づけを行っています。

そのほか、マイナンバーカードを持つ市民が、市の有料施設に無料で入場できる活用例もあります。たとえば、滋賀県彦根市では、マイナンバーカードを持つ彦根市民は、彦根城・彦根城博物館をはじめ、市の複数の有料施設に無料で入場・観覧することができ、高齢の方を中心に好評を博しています。

マイナンバーカード導入時の注意点

マイナンバーカードには上述のような利便性の高い活用例がある一方で、デメリットや導入時の注意点もあります。利用者にとってのデメリットとしては、マイナンバーカードは申請から発行までに時間がかかってしまうこと、申請時に設定した暗証番号をよく忘れてしまうことなどがあります。

マイナンバーカードを利用者が取得しない主な理由には、申請に手間がかかることや、カードを取得するメリットを感じられないこと、個人情報の流出が怖いこと、なども挙げられます。デジタル庁によれば、マイナンバーカードのICチップには、税金・年金の情報や病歴などのプライバシー性の高い情報は記録されません。そのため、個人情報の流出の危険性は今のところ問題ないとされています。詳しくは、デジタル庁の「よくある質問:個人情報の保護について」をご参照ください。

また、自治体や事業者にとって、マイナンバーカードの活用を始める際の注意点やデメリットとしては、導入・運用にかかるコストの問題が挙げられます。マイナンバーカードの活用には、4桁の暗証番号(PIN)とICチップを読み込むためのカードリーダーの端末が必要となるため、初期費用や運用コストがかかってしまいます。一般的に、小さなプランでも初期費用が200万円程度、運用コストが毎年100万円程度はかかる見通しです。

まとめ

マイナンバーカードの普及の背景には、自治体や公的機関を中心としたさまざまな取り組みや工夫があります。そして普及に伴い、マイナンバーカードを活用した各種のサービスの利用が市民の間にも広がりつつあります。

一方で、マイナンバーカードの利用に対応する製品や機器はまだ多くないのが現状です。そうした中で、マイナンバーカードの利用に対応したタイムレコーダーなどは、自治体や企業において職員証や社員証として出退勤管理などに活用されている機器です。

マイナンバーカードの職員証利用をこれから始めたいと検討されている自治体の方は、ぜひ「【官公庁・公共機関向け】勤怠管理のお悩み改善」をご覧ください。アマノのマイナンバーカード対応のタイムレコーダーは、マイナンバーカードの活用を比較的気軽に始められる第一歩であると同時に、庁内全体のデジタル化の第一歩にもつながっています。

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