タイムレコーダーとは
タイムレコーダーとは、従業員の毎日の勤怠状況を正確に把握するための機械です。市販のタイムカードをタイムレコーダーにさして出退勤時間を印字して記録します。
従業員の勤怠状況を記録するため、Excelや手書きの出勤簿に本人が入力・記入する方法を採用する企業もありますが、これらの方法による出退勤記録は従業員本人の自己申告にもとづきます。自己申告制の勤怠管理は客観的な労働時間把握ができず、遅刻や早引きをごまかすといった出退勤時間の不正申告を防ぐことが難しいというデメリットがあります。
また、タイムカードは管理が煩雑で、人数が多い職場では従業員一人ひとりの勤怠状況をリアルタイムに把握するのが難しくなります。自動集計に対応していないタイムレコーダーでは従業員の残業時間を把握しきれず、残業上限を超えていることに月末まで気付けない場合もあります。
過重労働によって従業員が心身に不調をきたし離職してしまった、労災に至り損害賠償の請求をされた、などの事態を避けるためには従業員の自己申告制の勤怠管理方法ではなく、勤怠状況を客観的に把握できるタイムレコーダーの導入が有効です。
【課題別】タイムレコーダーの選び方
市販のタイムレコーダーにはさまざまなタイプがあります。自社に適したタイムレコーダーの導入を検討する場合、まずは現在の勤怠管理における課題を洗い出してみましょう。課題を把握したうえで、機能を付帯する種類のタイムレコーダーを選ぶことで、勤怠管理業務が大幅に効率化されます。
種類 | 特徴 |
時刻記録タイムレコーダー | 紙のタイムカードで出退勤と休憩の時刻を記録できる |
時間集計機能付きタイムレコーダー | 打刻記録から労働時間、残業時間、深夜時間などを自動集計してくれる |
PC接続タイムレコーダー | PCに勤怠データを取り込めるようになっており、複雑な自動集計にも対応可能(打刻データを勤怠管理システムと連携可) |
ICカードタイムレコーダー | 交通系ICカードや社員証などで打刻できる (打刻データを勤怠管理システムと連携可) |
生体認証タイムレコーダー | 指紋や静脈、顔などで認証して打刻できる (打刻データを勤怠管理システムと連携可) |
1. 手書き、アナログでの運用で客観的な打刻ができていない
Excel入力や手書きの出勤簿による出退勤管理は、従業員の自己申告であり客観的な労働時間把握ができないため、厚生労働省の定める「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では推奨されていません。
同ガイドラインでは、「使用者が自ら現認することにより確認し、適正に記録すること」および「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」を使用者が講ずべき措置としています。
Excel入力や手書きの出勤簿を採用している企業は、手軽に客観的な労働時間を把握が可能な手段として、紙のタイムカードに打刻する「時刻記録タイムレコーダー」を導入するとよいでしょう。
2. 毎月の労働時間の集計に手間がかかる
出退勤の時刻のみを記録するシンプルなタイムレコーダーを導入している場合、労働時間の集計や給与計算に多くの手間がかかります。
給与の締め日前は毎月労務担当者や経理担当者の残業が発生している、従業員ごとの労働時間を集計して給与ソフトに入力する手間が発生している企業は、「集計機能付きのタイムレコーダー」の導入を検討してみてください。
集計機能付きのタイムレコーダーであれば、打刻の際に労働時間が自動で集計されるため、各従業員の実働時間数や残業時間数を手間なく把握でき、毎月の集計業務にかかる工数削減にもつながります。
導入コストは集計機能付きのタイムレコーダーよりかかりますが、「PC接続タイムレコーダー」を導入する方法もあります。「PC接続タイムレコーダー」は、従業員の労働時間をPCにデータとして記録できるため、勤怠管理システムとの連携や、給与管理を行うシステムにデータを取り込むためのCSVファイルも出力でき、データを給与計算ソフトに入力する手間も省くことができます。
3. インターネット環境がない
インターネット環境がない企業の場合は、紙のタイムカードで打刻できる「時刻記録タイムレコーダー」の導入を検討してみてください。
ただし、「時刻記録タイムレコーダー」は紙のタイムカードで出退勤と休憩の時刻を記録する、シンプルなタイムレコーダーです。集計には人の手が必要になるため、従業員数が増えた場合には労働時間管理が難しくなることも予想できます。
従業員数が多く、人の手によるタイムカード管理が難しい企業は、「時間集計機能付きタイムレコーダー」や「PC接続タイムレコーダー」を選びましょう。
「時間集計機能付きタイムレコーダー」の価格やランニングコストは、集計機能なしのレコーダーとほぼ同じです。「PC接続タイムレコーダー」は、「集計機能付きタイムレコーダー」に比べ機器自体が高額で導入コストが上がってしまうため、自社の規模や予算に合わせて機器を選ぶようにしてください。
4. 早く出退勤管理を実施したい
なるべく早く自社の出退勤管理を実施したい企業は、「時刻記録タイムレコーダー」を選ぶことをおすすめします。時刻記録タイムレコーダーは導入コストが低く、また操作も「タイムカードを挿入するだけ」とわかりやすく、利用する従業員に負担がかかりません。タイムカードと専用インクをそろえれば導入してすぐに運用できます。
コスト面よりも管理業務の負担軽減に重きを置く場合は、「時間集計機能付きタイムレコーダー」や、「PC接続タイムレコーダー」も選択肢に入ります。これらのタイムレコーダーは労働時間を記録・集計できるため、出退勤管理にかかる工数を大幅に削減できます。
5. 不正打刻を防ぎたい
不正打刻を防ぎたい場合は、「生体認証タイムレコーダー」や「ICカードタイムレコーダー」を検討しましょう。「生体認証タイムレコーダー」は、個人の静脈や指紋を読み取り打刻するため、本人以外は打刻できないシステムとなっています。
「ICカードタイムレコーダー」は、交通系ICカードや社員証を使って打刻するタイムレコーダーです。こちらも本人が所有する交通系ICカードや社員証が必要になるため、本人以外が打刻するのは難しくなります。
紙のタイムカードで打刻する「時間記録タイムレコーダー」、「時間集計機能付きタイムレコーダー」、「PC接続タイムレコーダー」では、本人以外でも打刻機にタイムカードを通せば簡単に打刻できてしまいます。
不正打刻対策を重視するのなら、「生体認証タイムレコーダー」や「ICカードタイムレコーダー」が適しています。
6. タイムレコーダーのデータを有効活用したい
タイムレコーダーが記録する出退勤データを活用したい場合、データとして記録できる「PC接続タイムレコーダー」や、勤怠管理システムと連携できるタイムレコーダーの導入を検討してください。
「時間集計機能付きのタイムレコーダー」は、打刻記録から労働時間、残業時間、深夜時間などを自動集計するため、各従業員の労働時間の把握・管理が容易になります。ただし、勤怠管理システムとの連携はできません。
「PC接続タイムレコーダー」、「ICタイムレコーダー」、「生体認証タイムレコーダー」の多くは、出退勤データを勤怠管理システムと連携できます。
勤怠管理システムに連携させるタイムレコーダーを使用すると、打刻記録が自動でアップロードされるようになり、勤怠情報をリアルタイムにシステム上で確認できるようになります。
これにより、各従業員の残業超過を防げるようになるだけでなく、従業員ごと、所属ごとの勤怠状況の分析が可能になります。
7. 打刻待ちの行列を解消したい
出勤・退勤時間に、タイムレコーダーの前に行列ができてしまう場合、打刻機にかざすだけで打刻できる「ICカードタイムレコーダー」を選択するとよいでしょう。
打刻の待ち行列が発生するのは、打刻したい人が同じ時間に集中してしまったり、タイムカード式のタイムレコーダーを利用している場合は自分のタイムカードを探すのに時間がかかってしまったりすることが主な原因です。
「ICカードタイムレコーダー」の中には、自分が管理している交通系ICカードや社員証を取り出し機器にかざすだけで打刻できるタイプもあります。タイムカードを探して、挿し込んでから抜き、元の場所に戻すという一連の動作にかかっていた時間を短縮できるため、打刻待ち行列の解消に役立ちます。
8. 複数拠点の出退勤管理をスムーズにしたい
複数拠点を持つ企業では、支店や支部ではタイムカードで出退勤を管理し、労働時間の集計や給与計算は本部が行うケースが少なくありません。各支点・支部から集計に必要なデータがなかなか送られてこない、といった勤怠管理の運用に課題を抱えている場合は、各支店・支部に「PC接続タイムレコーダー」や「ICカードタイムレコーダー」、「生体認証タイムレコーダー」を導入し、勤怠管理システムと連携させるとよいでしょう。
これにより、本部は支店・支部の勤怠情報をリアルタイムにチェックできるようになり、給与計算ソフトとの連携で給与計算にかかる負担も大幅に軽減できます。
9. タイムレコーダーに必要な消耗品費用を節約したい
タイムレコーダーは導入時だけでなく使用中にもコストが発生します。タイムカード式のタイムレコーダーは、時間を記録するタイムカードやインクなどの消耗品を都度購入しなければなりません。
これらタイムレコーダーにかかるランニングコストを軽減したいのなら、「ICカードタイムレコーダー」の導入を検討しましょう。
10. コロナ対策をしたい
新型コロナウイルス感染症への対策として新たにタイムレコーダーを導入するのなら、「生体認証タイムレコーダー」の中でも「顔認証」が可能なシステムを選ぶとよいでしょう。
顔認証が可能なタイムレコーダーなら、事前に登録している顔写真と一致するかを確認してどこにも触れずに打刻できるため、感染リスクを低減できます。また、最近では、マスクやメガネを付けていても本人確認ができ、さらに検温までできるタイプの高性能なタイムレコーダーもあります。
打刻時に検温ができれば、体に不調をきたしている従業員を業務が始まる前に把握でき、場合によっては帰宅や在宅勤務を促し、新型コロナウイルスの感染リスクを抑える対策が可能になります。
タイムレコーダー選びのポイント
自社の課題を解決してくれるタイムレコーダーのタイプが決まったら、実際に導入するタイムレコーダーを選定します。どの機種を選定するか迷った時には、次のポイントを踏まえてみてください。
1.自社の規模にあっているか
自社の規模を加味して導入するタイムレコーダーを選びましょう。タイムレコーダーの機種によっては、対応する人数が限られているもの、少人数向けとなっている場合があります。また、大企業向けのタイムレコーダーでは導入・運用コストがかかりすぎてしまう可能性があるため、機能やコストが自社の実情にマッチするか確認します。
自社の規模にあったタイムレコーダーを導入することで、コストの最適化も図れます。
従業員が少ないうちは、導入コストを考え、紙のタイムカードを利用するタイムレコーダーを使用して、従業員の増員にあわせて集計機能付き、勤怠管理システムと連携できるPC接続タイプなどに変更することもできます。
2.サポートは充実しているか
タイムレコーダーを提供する企業のサポート体制のチェックも重要です。自社の社内規則や雇用体系が複雑で、従業員数も多い場合、初期設定や運用が困難なこともあります。導入から運用後までサポートをしてくれる企業のタイムレコーダーなら、初期設定や導入後の設定変更、機器の不具合などの相談にも対応してもらえます。
まとめ
タイムレコーダーは、従業員の勤務状況を正確に記録するための機械です。タイムレコーダー導入により自己申告制よりも客観的な勤怠管理が可能になり、不正打刻や過重労働を防止し、離職や労災などの労務リスクの回避に役立ちます。
これからタイムレコーダーを導入する企業や、タイムレコーダーを刷新したい企業は出退勤管理に関する自社の課題を整理し、事業規模にあっているか、自社の課題を解決できる機能が付帯されているか、サポート体制の充実度などを基準に、自社に合ったタイプを選ぶとよいでしょう。
複数拠点の勤怠管理を本部が行っている企業は、各支店・支部の勤務情報をリアルタイムに把握し自動で集計できる勤怠管理システムと連携可能なタイムレコーダーへの切り替えをおすすめします。このほか、残業超過を通知するアラートや、有給休暇取得日数を一目で把握できる機能などを活用したい場合は、オンライン上で打刻できる勤怠管理システムへの切り替えを検討しましょう。
【お役立ち資料】
【製品リンク】
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業務改善ガイド 2021.07.07
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