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インターンシップの給料はどうすれば?企業が知っておきたいその制度を解説

公開日時:2024.05.14

今では、当然のように定着したインターシップ制度。2024年卒の学生が参加した割合は9割を超え、2023年度の実施企業も7割を超えています。
参照: 就職みらい研究所(株式会社リクルート)|【2024年卒 就職活動TOPIC】3月時点でのインターンシップ等の参加割合は約9割株式会社ディスコ|2025 年卒・新卒採用に関する企業調査-採用方針調査
自社に適した優秀な人材を獲得するために、もはやインターンシップは必須といえるでしょう。制度への理解を深め、より質の高いインターンシップを実施する必要があります。
そこで今回は、インターンシップを実施する企業の視点で、制度の概要や参加する学生への対応などについて解説します。

インターンシップ制度とは

インターシップとは、「一般的には、学生が企業等において実習・研修的な就業体験をする制度」とされています。

つまり、学生が自身の適正把握や仕事の内容を理解するために、一定期間、企業で就業体験をするプログラムのことを指します。

企業がインターンシップを実施することにより、次のようなメリットが期待できます。

1. 優秀な人材の発掘

実務を通して学生の能力を見極めることができます。

2. 企業の知名度アップ

大学・学生・企業が、相互に接点を持つことで情報交換が促進され、企業の実態について学生の理解が深まります。中小企業やベンチャー企業にとっては、魅力の発信につながる有益な取り組みとなるでしょう。

3. ミスマッチによる早期離職の防止

インターンシップで、学生に職場の雰囲気や実務を知ってもらえれば、入社後のミスマッチ解消につながります。自社で働くイメージが事前に明確となるため、早期離職を防止できるでしょう。

 

インターンシップについてまとめた別の記事もありますので、併せてご覧ください。

「学生のキャリア形成支援活動」における4つの類型

これまでのインターンシップは、あくまでも就業体験が主な目的であり、採用選考とは別のものと考えられてきました。しかし実際には、インターンシップと採用が連動しているケースが少なくありません。

そこで、産学協議会は「学生のキャリア形成支援活動」というかたちで、2025年卒業予定の学生からインターンシップのあり方を再定義しました。

学生のキャリア形成支援活動として定義された、4つの類型について詳しく見ていきましょう。

タイプ1:オープン・カンパニー

個別の企業や業界に関する情報提供・広報を目的として、企業や就職情報会社、大学などが実施するイベント・説明会です。就業体験は必要ありません。

参加期間は1日単位の超短期で、学業の両立に配慮した時間帯やオンラインを活用して実施します。年次不問の全期間で参加が可能で、取得した学生情報を、採用活動へ用いることはできません。

タイプ2:キャリア教育

働くことへの理解を深めるための教育を目的とします。代表的なケースは、大学が主導する授業・産学協働プログラム(正課、正課外問わず)や、企業がCSRとして実施するプログラムです。就業体験は任意です。

参加期間は授業やプログラムによって異なります。学生の年次不問の全期間で実施可能ですが、企業が主催する際は、学業の両立に配慮した時間帯やオンラインを活用して実施します。取得した学生情報を、採用活動へ用いることはできません。

タイプ3:汎用的能力・専門活用型インターンシップ

就業体験を通じて、学生は自らの能力を見極め、企業は学生の評価材料を得ることを目的に実施するインターンシップです。企業独自で行ったり、大学が地域や企業などと連携して実施したりするプログラムが代表的なケースとなります。

就業体験は必須で、次の要件を満たす必要があります。

就業体験要件

学生の参加期間の半分を超える日数で職場での就業体験を行うこと(テレワークが常態化している場合は、テレワークも「職場」とみなす)

指導要件

就業体験では職場の社員が学生を指導し、インターンシップ終了後は学生に対しフィードバックをすること

 

実施期間や実施時期にも要件があります。実施期間の要件は、汎用的能力活用型が短期(5日間以上)、専門活用型は長期(2週間以上)です。実施時期の要件は、学部3年・4年または修士1年・2年の長期休暇期間(夏休み・冬休みなど)です。

この間に取得した学生情報については、採用活動開始以降に限り用いることができます。

タイプ4(試行):高度専門型インターンシップ

就業体験を通じて、学生は実践力の向上、企業は学生の評価材料の取得を目的に実施するインターンシップです。「ジョブ型研究インターンシップ」や「高度な専門性を重視した修士課程学生向けインターンシップ(仮称)」が代表的なケースに想定されています。就業体験は必須です。

実施期間は、ジョブ型研究インターンシップで2か月以上とされ、ほかのケースは検討中です。この間に取得した学生情報については、採用活動開始以降に限り用いることができます。

タイプ1
オープン・カンパニー
タイプ2
キャリア教育
タイプ3
汎用的能力・専門活用型インターンシップ
タイプ4(試行)
高度専門型インターシップ
目的企業や業界の情報提供・PR働くことへの理解を深める学生の評価材料取得学生の評価材料取得
就業体験なし任意必須
就業体験要件および指導要件あり
必須
参加期間
(所要日数)
超短期(単日)授業・プログラムによる汎用的能力は5日間以上
専門は2週間以上
ジョブ型研究は 2か月以上
実施時期年次不問
全期間
年次不問
全期間
学部3・4年ないしは 修士1・2年の長期休暇
学生情報の
活用
不可不可採用活動開始以降に限り
採用活動開始以降に限り

インターン生が労働者とみなされる場合

インターンシップに参加した学生(以下、インターン生)は、企業の実務を体験することで働くことへの理解を深め、自らの能力を見極めます。このとき、体験とはいえ、実務を行えばインターン生でも「労働者」となり得ます。

インターン生が労働者とみなされるのは、以下の要件を満たす場合です。

  • 見学や体験的な要素がない
  • 使用者から業務にかかわる指揮命令を受けている
  • 学生が直接の生産活動に従事し、それによる利益・効果が当該事務所に帰属する
  • 学生に対して、実態としてなんらかの報酬が支払われている

労働基準法第9条で「労働者」は、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者と定められています。

法律上、「インターン」という定義はなく、立場がどうであれ、一定の条件を満たすと「労働者」となるのです。

インターン生へ給与の支払い義務が発生する条件

それでは、インターン生に給与の支払いが必要となるケースや賃金相場などを見ていきましょう。

インターン生への給与支払い

民法上、雇用契約を締結していなければ、報酬を支払う義務は発生しません。したがって、インターン生も契約上の定めがない限り、報酬の支払いは必要ないでしょう。

ただし、インターンシップの条件が先述した労働基準法第9条の「労働者」に該当する場合には、雇用契約の締結が必要です。そうなると、企業はインターン生に対しての給与支払い義務が生じることとなります。

インターン生へ支払う賃金相場

インターン生へ支払われる給与の相場は、時給1,000~2,000円程度です。個人の成績により、インセンティブが支給されるケースもあります。

インターン生とはいえ、労働者と認められた場合には、労働基準法の定めに従わなければなりません。当然、最低賃金法も適用されます。各都道府県で定められている最低賃金を守らないと罰則の対象となるため、適正な給与を支払いましょう。

給与支払以外に押さえておくべき雇用制度

給与以外にも、使用者が知っておくべき雇用に関する制度があります。

割増賃金

インターン生が労働者に該当する場合、労働時間によって割増賃金が発生します。労働基準法にのっとり、正社員と同様に支払わなければなりません。

社会保険の加入義務

労働時間が、通常に雇用している従業員の4分の3以上の場合は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入させる必要があります。

例えば、3か月の有給インターンシップで、通常所定労働時間8時間のところ、1日6時間以上労働させた場合は対象となります。

雇用保険の加入

学生の本業はあくまで学業であるため、基本的に雇用保険に加入する必要はありません。しかし、次のような場合には雇用保険への加入が必要です。

  • 休学中の学生や夜間、定時制、通信制学校の学生
  • 卒業後もインターン先で継続雇用が予定されている学生
  • 週の労働時間が20時間以上であること
  • 雇用見込が31日以上であること

労災保険の適用

インターン生が労働者に該当する場合、労災保険が適用されます。インターン中に事故などでケガを負ったり、後遺症が残ったりした場合には、労災保険から補償を受ける仕組みになっています。

1日限りなど短期無給のインターンシップの場合は、労働者性が認定されず、労災保険は適用されません。ただし、大学の正課としてのインターンシップでは、大学窓口の「学生教育研究災害傷害保険」から補償を受けることがあります。

安全配慮義務

インターンシップを実施する企業は、労働者性の認定の有無にかかわらず、すべてのインターン生に対して安全配慮義務を負います。

企業側の不備により、インターン生がケガを負うなどした場合には、企業に損害賠償責任が生じます。

まとめ

インターンシップ制度は新たなガイドラインが示され、より明確なかたちへと進化しました。

この先、インターンシップ制度がさらに洗練されることで、企業と学生のミスマッチがなくなり、双方にとって有益な制度へと発展していくでしょう。

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