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労災発生時に労基署に何を報告する?手続きや届出書類も解説!

公開日時:2021.07.02 / 更新日時:2022.12.23

企業にとって労災を防ぐための安全衛生の取り組みはもちろん、労災が発生したときに適切な対応が取れるような準備は必須です。ここでは、労災発生時に企業が労働基準監督署に対して届け出なければならない報告や申請手続きを解説します。あわせて、労働基準監督署が行う調査の内容や、届出書類についても紹介します。

労災発生時に必要な労働基準監督署への報告とは

自社内で労災が発生してしまった際に労働基準監督署に対して行う報告対応と申請手続きの流れを解説します。

労災発生時に必要な労働基準監督署への申請手続き
労災発生時に必要な労働基準監督署への申請手続き

労災状況の把握と報告

仕事中や通勤途中に怪我をするなど、従業員が負傷し、労災が発生したと報告を受けたら速やかに状況を確認します。従業員が死亡もしくは治療による休業が4日以上発生する場合は、別途「労働者死傷病報告」の提出が必要になります。休業4日未満の場合でも、事業主には期間ごとに発生した労働災害を取りまとめて報告する義務があります。

発生した労災が重大災害であれば救急車の出動要請に加え、警察、労働基準監督署に連絡してその後の処置についての指示を仰ぎます。労災の申請は通常従業員本人や家族が行いますが、怪我や入院手続きなどによってすぐに対応できない場合は、企業側が手続きを代行するケースもあります。労災申請は業務災害か通勤災害であるかにより提出する書類や提出先の部署が異なります。労災申請に必要な書類は以下のページからダウンロードできます。

事故現場を保存する

工場や建設現場など企業の管轄範囲で労災が発生した場合は事故現場を立ち入り禁止にしたうえで保存しなければなりません。発生したのが重大事故である場合、警察や労働基準監督署が現場検証を行うことがあるためです。

また、労災において企業にどれだけ過失があるかの判断は事故現場の状況や関係者の証言が大きく影響します。事故現場の保存に加え、できるだけ労災発生時の正確な状況が後からも分かるよう企業側でも記録をしておく必要があります。

従業員へ休業補償を行う

労災事故が発生した場合、事業主は労働基準法により補償責任を負わねばなりません。労災保険に加入している場合は、労災保険による給付が従業員に対して行われ、事業主は労働基準法上の補償責任を免れます。しかし、労災によって労働者が休業する際の休業1~3日目の休業補償は労災保険から給付されないため、労働基準法で定める平均賃金の60%を事業主が直接従業員に支払う必要があります。

また、事業主が労災保険加入の手続きをしていない場合、従業員が未加入であっても労災の給付を受けることができます。従業員を1人でも雇用する場合は、労災保険の加入が必須であり、企業が保険料を納めていなくとも、法律上の保護として従業員は労災保険の給付の申請を行うことができます。労災保険に未加入の状態で労災が起きた場合は労災給付金額の全額を事業主が費用徴収される可能性もあります。

労基署へ労働者死傷病報告書を届け出る

事業者は労災によって従業員が死亡・休業した場合には、労働安全衛生法第100条および施行規則の規定、第97条に基づいて各種必要書類を労働基準監督署長に届け出なければなりません。この時点で届け出る必要がある書類は労働死傷病報告書や、労災の再発防止に関する書類などです。労働者死傷病報告は労災発生から遅滞なく速やかに届出なければならないとされており、概ね1週間か2週間以内には提出する必要があります。1か月以上遅延した場合は遅延理由を記した文書の提出を求められることがあります。

労働基準監督署にその労災による労働者死傷病報告をしなかったり虚偽の報告を行ったりした場合、「労災隠し」に該当します。労災隠しは事業主に対しては刑事責任が問われる可能性があり、刑法上の業務上過失致死傷罪等に問われるケースもあります。

労災隠しが行われると、被災した従業員や家族が補償を受けられなくなることから、労働基準監督署は労災を隠蔽しようとする悪質な労災隠しに対しては積極的に書類送検などの処分を下しています。

再発防止に向けた取り組みを実施する

労災発生後の対応としては、災害の原因を分析し、コンプライアンスを意識した再発防止対策を策定、実施することが重要です。再発防止対策は、労働基準監督署の指導の後に提出を求められるケースもあります。

具体的には、従業員に対して安全教育を行う、危険な事例を社内で共有する仕組みをつくるなどが挙げられます。

労災再発防止対策の例

・機器のメンテナンス頻度を増やす
・事故防止のため定期的に点検を行い、正しい作業方法を周知する
・過重労働が起きていないか、事故が起きた現場の労働状況を見直す
・新入社員には事故を踏まえ、正しい作業方法についての周知を安全教育として実施する
・労災に関する調査で分かったことや原因の詳細を文書化し、社内の関係部署に周知する
・危険な作業があった場合は都度従業員が共有できるミーティングの機会を週1回で設ける

労働基準監督署が労災発生後に行う調査の内容

ここでは、労働基準監督署が労災発生後に行う調査の対象や調査項目、調査が行われる際に企業側に求められる対応を解説します。

調査の対象と調査項目

労働基準監督署による調査は、労災により被災者が死亡した場合や同時に複数人が被災する重大災害の場合、被災者が1人でも重篤な傷害を負った場合に実施されます。調査項目は、災害発生現場の元々の状況、被災の状況、災害発生の原因、労働安全衛生法等の法違反の有無などです。

調査の中で、法違反が災害の発生原因になっていると認められる場合には、司法審査に切り替わります。調査の結果は全て都道府県労働局に報告され、労災の内容によっては、厚生労働本省労働基準局に報告されることもあります。

調査が行われる際に企業側に求められる対応

重大な労災が発生した際には、原因究明や再発防止のために労働基準監督署による災害時監督が実施されます。災害時監督の際は労災事故の原因究明とともに、労働安全衛生法違反や業務上過失致傷罪などが起きていないかも調査します。労働基準監督署の調査は拒否することはできず、企業側は現場に調査に来た労働基準監督官による事情聴取に対応しなければなりません。

また、労災後に労働基準監督官から二次災害防止のための指示がされた場合には、可能な限り協力することが求められます。調査後に企業側に問題があれば再発防止のために是正勧告が行われることもあり、是正の指導に沿った改善を行わなければなりません。このほか、災害発生の原因として労働安全衛生法と同法に基づく規則などへの違反があったと判明した場合には、労働基準監督署への出頭命令に応じる必要があります。

労災発生時に労働基準監督署に提出する書類

ここでは、労災が発生したときに企業から労働基準監督署へ提出する「労働者死傷報告」と「労働災害再発防止書」について解説します。

労働者死傷病報告書

労働者死傷病報告書は、以下に当てはまる場合に労働基準監督署へ提出しなければなりません。

  1. 労働者が労働災害により、負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき
  2. 労働者が就業中に負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき
  3. 労働者が事業場内またはその附属建設物内で負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき
  4. 労働者が事業の附属寄宿舎内で負傷、窒息または急性中毒により死亡しまたは休業したとき

労働者死傷病報告書には、傷病名や労災が発生した原因などを記載します。労災によって従業員が4日以上休業する場合は、労災発生から1~2週間以内に提出します。この場合提出する必要があるのは様式第23号と呼ばれる緊急性が高いケースについて報告する労働者死傷病報告です。

休業が3日以内の労災については、1月~3月、4月~6月、7月~9月、10月~12月の各期間に起きた労災を3か月に1度、最後の月の翌月末日までに労働基準監督署に報告する必要があります。この場合に提出が必要な労働者死傷病報告は様式第24号と呼ばれます。

書類を作成する際は、厚生労働省の「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を利用するとスムーズに作業ができます。

また爆発や火災、クレーンの倒壊、ワイヤロープの切断などの特別な事故については、負傷者の有無に関わらず事故報告書(労働安全衛生規則様式第22号の)も併せて提出する必要があります。

労働災害再発防止書

労働災害再発防止書は、労働基準監督署から書類の作成・提出を求められた場合に提出します。労働災害再発防止書等の様式はその都度、所管の労働基準監督署から示されます。様式例を確認したい場合は厚生労働省が公開している「労働災害再発防止書様式例」をご覧ください。
また場合によっては、労働基準監督署から「
労働災害再発防止のための自主点検サイト」による自主点検表の作成・提出を依頼されることもあります。

厚生労働省は労災が発生した事業所に対し、労働基準監督署からの求めの有無にかかわらず、公開している労働災害再発防止書を使って災害原因の分析・対策の策定などを実施するよう推奨しています。

まとめ

企業には労災を防止するため労働安全衛生法に基づく安全衛生管理責任を果たす義務があり、また労災事故が発生した場合、労働基準法により補償責任を負う義務があります。労災発生後の対応として従業員への休業補償や労働者死傷病報告の提出などの作業を適切に行う必要があり、再発防止への取り組みや労働基準監督署の調査に伴う対応も求められます。労働基準監督署の是正指導に従わなかったり、労災の事実を故意に隠そうとした場合は厳格な処分が下されます。

労災防止のためには日頃から産業医と連携し、従業員の健康意識や事故防止の意識を高める取り組みが重要です。特に、従業員の心身の安全を守るためには、現場の安全確保や安全教育の実施に加え過重労働や連続勤務などを事前に防止する仕組みを取り入れることが望ましいです。

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