人事・労務の注目用語

年末調整

ねんまつちょうせい

公開日時:2021.09.22 / 更新日時:2022.03.09

年末調整とは、給与所得者に給与を支払う際に源泉徴収をした所得税の合計額と、1年間の給与の支給総額について、本来徴収すべき所得税の一年間の総額を再計算したうえで比較し、過不足額の精算を行う制度です。実際より多く源泉徴収をしていた場合、その差額は従業員に還付されます。年末調整は企業側で行いますが、確定申告は個人事業主を始め個人が行う手続きです。企業に所属している従業員でも、年末調整だけでは収まらず、他の所得を合算して所得税を精算する場合、確定申告でしかできない控除を行う場合は確定申告が必要になります。

年末調整の対象となる人と給与

毎年の年末調整の対象となる従業員の条件と給与について具体的に解説します。

年末調整の対象者

年末調整は、企業が給与を支払っている全ての従業員を対象に行います。12月に行う年末調整の対象となる人は会社や公共団体などに1年を通じて勤務している人や、青色事業専従者も含む年の中途で就職し年末まで勤務している人です。ただし、次の2つのいずれかに当てはまる人は対象から除かれます。

(1) 1年間に支払うべきことが確定した給与の総額が2,000万円を超える人
(2) 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人

年の中途で行う年末調整の対象となるのは、次の5のいずれかに当てはまる人です。

(1) 海外支店等に転勤したことにより非居住者となった人
(2) 死亡によって退職した人
(3) 著しい心身の障害のために退職した人(退職した後に再就職をし給与を受け取る見込みのある人は除く)
(4) 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
(5) いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職後その年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人は除く)

年末調整の対象となる給与

年末調整の対象となる給与は、その年の1月1日から12月31日までの間に支払うことが確定した給与です。年の中途で死亡により退職した人については、その退職までの給与が年末調整の対象となります。実際に支払ったかどうかに関係なく、未払の給与もその年の年末調整の対象です。そのため、前年に未払になっている給与を今年になって従業員に支払っても、支払った年の年末調整の対象となる給与には含まれません。

また、年末調整の対象になるのは、年末調整する会社が支払う給与だけでないことにも押さえておく必要があります。以下に当てはまる場合、現在従業員を雇用している会社が前の会社の給与を含めて年末調整を行います。

  • その年の中途で入社した人で就職前にほかの会社で給与を受け取っていた
  • 前の会社で「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している

年末調整で適用される控除

年末調整時に受け取ることのできる控除が所得控除です。所得控除とは、一定の要件にあてはまる場合に所得の合計金額から一定の金額を差し引く制度のことで、具体的には以下の控除が該当します。

  • 基礎控除(所得2,400万円以下の場合、控除額は48万円)
  • 配偶者控除・配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 社会保険料控除
  • 障害者控除
  • ひとり親控除・寡婦控除
  • 勤労学生控除

年末調整が終わった後に受けることのできるのが以下の控除です。

  • ふるさと納税などの寄附金控除
  • 医療費控除
  • 雑損控除

上記の控除は年末調整時にまとめて控除することができず、確定申告を行なうことによって個別に従業員に対応してもらう必要があります。

この他、所得控除以外に控除できるのが住宅ローン控除です。14種類の所得控除を適用した後でさらに差し引くことで受け取ることができます。

年末調整の期間とやり方

年末調整の具体的進め方を、手続きが必要な期間ごとにそれぞれ解説します。

従業員への書類配布と回収(11月下旬まで)

年末調整の担当者は以下の書類を従業員に配布し、記載してもらったうえで回収します。この作業は11月下旬までに完了させる必要があります。

・従業員全員に渡す書類
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

・該当する従業員から回収する書類:
保険料控除申告書と控除証明書類
配偶者控除等申告書
住宅借入金等特別控除申告書
(転職してきた人は前職での)源泉徴収票

年末調整の計算(12月下旬)

必要な書類を回収後、年末調整の担当者は12月下旬までに、書類の記入漏れや記入ミスがないかを確認します。また、年末調整に必要な所得税額を算出するための計算をこの時期に完了させます。

年末調整の計算

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,625,000円まで550,000円
1,625,000円から 1,800,000円まで収入金額×40%-100,000円
1,800,000円から 3,600,000円まで収入金額×30%-80,000円
3,600,000円から 6,600,000円まで収入金額×20%-440,000円
6,600,000円から 8,500,000円まで収入金額×10%-1100,000円
8,500,001円以上1,950,000円(上限)
課税される所得金額税率控除額
1,000円から1,949,000円まで5%0円
1,950,000円から3,299,000円まで10%97,500円
3,300,000円から6,949,000円まで20%427,500円
6,950,000円から8,999,000円まで23%636,000円
9,000,000円から17,999,000円まで33%1,536,000円
18,000,000円から39,999,000円まで40%2,796,000円
40,000,000円以上45%4,796,000円

⑤従業員が住宅ローン控除を受ける場合、所得税額から住宅ローン控除額の差し引きを行います。

源泉徴収票の作成

従業員の源泉徴収税額と年調年税額の比較をし、源泉徴収票にまとめます。

法定調書の届出(1月31日まで)

年末調整後は、翌年の1月31日までに税務署と市区町村にまとめた源泉徴収票と法定調書を提出します。この際に必要なのは以下の書類です。

  • 源泉徴収票等の法定調書合計表
  • 源泉徴収票
  • 支払調書
  • 給与支払報告書

これらの書類の届出が完了したら、源泉徴収税の納付を行います。

2020~2021年の変更点

税制改革によって2020年から2021年にかけて年末調整に関する以下の変更がなされました。

  • 給与所得控除と基礎控除の見直し
  • 所得金額調整控除の創設
  • 基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除の申告書一体化
  • ひとり親控除の新設/寡婦控除の改組
  • 配偶者・扶養親族等の合計所得金額要件等の見直し
  • 住宅ローン控除(消費税増税後の住宅取得等(特別特定取得)への支援策)
  • 法定調書の様式変更
  • 法定調書の電子的提出義務の対象枚数を引き下げ(1,000枚以上から100枚以上へ変更)

特に基礎控除の見直しや申請方法変更については必ず確認しておき、電子化推進のために効率化が可能になった変更点も今後の年末調整のために把握しておきましょう。

2021年の年末調整にかかわる変更の詳細については、HR News「2021年の税制改革に関連する、年末調整手続き変更のポイント」をご参考ください。

まとめ

年末調整は、企業が給与を支払っている全ての従業員が対象です。企業の総務担当者は毎年11月下旬までに従業員に必要書類を配布し、記載してもらったうえで回収します。その後、翌年の1月31日までに税務署と市区町村に源泉徴収票と法定調書を提出するまでが基本的な年末調整手続きの手順となります。

2020年、2021年と立て続けに年末調整に関する法改正がなされたため、特に押印廃止や電子申請可能な書類についての変更点についても確認しておきましょう。年末調整の各種手続きは電子申請が便利です。2020と2021年に行われた年末調整に関する変更にも対応したシステムの活用を検討し、手続きの効率化を進めましょう。

関連記事

年末調整はもちろん各種社会保険手続きやe-Govにも対応した電子申請システム

GUIDE

勤怠管理のパイオニア「AMANO」のノウハウをぎゅっと凝縮してお届けします!

01基礎知識

勤怠管理の意義と
重要性

02選び方

勤怠管理システム
選び方の基本

03実践編

勤怠管理システム
導入のポイント

全てを1つの資料にまとめた総集編「勤怠管理の選び方完全ガイド」無料配布中!

「高いシステムと安いシステムでは何が違うのか」を徹底解説