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コーチング

こーちんぐ

公開日時:2022.08.25

コーチングとは、相手が新しい気付きを得て目標を達成できるように、問いかけを通して支援する手法です。ビジネス分野では近年ボトムアップ型の組織体制が求められていることから、新しいマネジメント手法としてコーチングが注目を集めています。コーチング型マネジメントを行うと、部下の自己成長につながる、上司と部下の信頼関係を構築できる、社内のコミュニケーションが活発になるといった効果が期待できます。

コーチングとは

コーチングとは、クライアント(コーチングを受ける相手)が新しい気付きを得て目標を達成できるように、コーチ(コーチングをする人)が問いかけを通して支援する手法です。クライアントの自主性や主体性に重きを置いており、コーチはクライアントに対して指導や教育、アドバイスは行いません。コーチの役割は、対話を通して、クライアントが課題に対する考え方・行動の選択肢を増やしたり目標達成のために必要な行動を取ったりできるようにサポートすることです。

コーチングはコーチ(Coach)という言葉から派生して誕生しました。コーチの語源は「馬車」で、相手が目的地までたどり着けるようにサポートするという意味で使われていましたが、次第に「人の目標達成を支援する」という意味に発展しました。

コーチングはこれまでは主にスポーツの分野で広く用いられてきましたが、近年ではビジネス分野でも新しいマネジメント手法として注目を集めています。

ビジネス分野でコーチングが注目されている背景

IT革命やグローバル化などにより企業を取り巻く環境が急速に変化し、将来の見通しを立てにくくなっています。このような状況を指して、2010年ごろから「VUCAの時代」と言われるようになりました。VUCAとは、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の4単語の頭文字です。

変化が激しいVUCAの時代を生き抜くために、各企業は組織構造をトップダウン型からボトムアップ型へ変化させる必要性が出てきました。そのため、組織内コミュニケーションも上司からの指示や命令ではなく、部下の自発的行動を促すものに変化することが求められています。

クライアントの自主性に重きを置くコーチングは自分で考えて行動する人材を育てることができるため、企業の中では近年、人材育成の方向性としてティーチングやトレーニングといったこれまでの手法にコーチングの概念をプラスする動きが強まっています。

コーチングとティーチングの違い

コーチングもティーチングも部下の目標達成を促すためのマネジメント手法ですが、両者は「問題の解決策を教えるかどうか」という点で異なります。

ティーチングの場合は、部下が課題にぶつかったときに、何が原因でどうすれば解決できるのかを提示したりアドバイスしたりします。しかしコーチングでは、「答えは相手の中にある」という前提の下、まずは部下の話を傾聴します。そして必要に応じて質問を投げかけ、部下が自分自身で答えを見つけられるようにサポートします。

コーチング導入によって期待される効果

マネジメント手法として社内にコーチングを導入することで「部下の自己成長につながる」「上司と部下の信頼関係を構築できる」「社内のコミュニケーションが活発になる」といった効果が期待できます。

部下の自己成長につながる

コーチングはティーチングのように答えを教えないため、部下は問題を解決するために自分で考えて答えを導き出さなければなりません。その過程を経験することで、部下は会社に依存せずに必要な知識を身に付けたり深い思考ができるようになったりします。また、コーチングによって個性を生かした人材育成が可能になるため、企業側はこれまでトップダウン型の育成で埋もれてしまっていた新しい課題や解決策を見付けることができます。

上司と部下の信頼関係を構築できる

上司の知識やスキルなどを部下に伝える旧来のマネジメントでは、部下の話を聞く機会が限られ、部下が持っている能力や個性、価値観などに気付きにくいという面がありました。しかし、コーチングでは上司と部下で一対一の対話を定期的に行うため、上司はこれまで見えていなかった部下の良い面を知ることができるようになります。部下も、上司に自分の考えを伝えられる機会が増えることで不安や不満を解消することが可能です。このようにお互いの理解が深まることで信頼関係が構築され、目標達成へのモチベーションを維持することも可能になります。

社内のコミュニケーションが活発になる

コーチングの考え方が社内に浸透していけば、コーチングの場面だけでなく普段の業務の中でも相手の意見を尊重し傾聴する雰囲気を作り出すことができます。この雰囲気が「自分の率直な意見を出しても否定されない」という従業員の心理的安全性の醸成につながり、社内コミュニケーションがより活発になってアイデアや意見が集まりやすくなります。

コーチングを導入するには

新しいマネジメント手法としてコーチングを取り入れる際には、コーチングを正しく理解した人材を増やした上で、コーチングを活用する場面を明確にすることが大切です。

マネジメント層が資格取得などを通してコーチングを学ぶ

コーチングに関する本やセミナーなどは数多く存在しますが、コーチングを習得するには座学だけでなく実践も重要です。そのため部下の育成を行うマネジメント層は、資格取得などを通してコーチングの手法を身に付ける必要があります。

コーチング資格には「一般財団法人生涯学習開発財団認定資格」「国際コーチング連盟認定資格」「日本コーチ連盟のコーチング資格」などの種類があります。それぞれ、受験資格や資格を活用できる場面などが異なるため、目的に合わせた資格を選択することが大切です。

実際にコーチングの資格取得を実践している企業もあります。例えば株式会社TMJでは、経営者ががコーチング型マネジメントプログラムを受講した後に認定コーチの資格を取得し、その後経営メンバー全員が同プログラムに取り組んでいます。

コーチングが向いている場面を見極める

コーチングにおいて上司ができることは部下の目標達成のサポートだけです。そもそも目標が明確に定められていなかったり、目標達成に対する部下の意欲や能力が足りていなかったりする場合はコーチングの効果が発揮されにくくなります。また、コーチングによる人材育成は答えを教えることを前提としておらず目標達成までに時間がかかることが多いため、なるべく早い問題解決や対処が求められる仕事には適しません。

コーチングは、部下に主体的になってほしいとき、部下のモチベーションが下がっている場合、自信が持てない場合などで有効に活用できます。

まとめ

コーチングは問いかけを通して部下の自発的行動を促すマネジメント手法です。マネジメント層がコーチングを身に付けることでVUCA時代に求められる社内コミュニケーションのスタイルの実現につながります。コーチングを有効に活用するには、コーチングの手法が向いている場面を見極めた上で実践することが大切です。

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