人事・労務の注目用語

アルムナイ

あるむない

公開日時:2022.08.25

アルムナイとは、人事領域では定年退職以外の理由で退職した人のことを指します。語源は英語で「卒業生」や「同窓生」を意味するalumniです。人材の流動化が進む中で退職者を再雇用する「アルムナイ採用」が近年注目されており、日本の大企業や中小企業でも導入されています。採用コストや育成コストを抑えられるなどのメリットがある反面、内部の社員が「一度は退職した人だ」というネガティブなイメージを強く抱く可能性があるなどのデメリットもあります。

アルムナイとは

アルムナイとは、定年退職以外の理由で一度会社を辞めた人のことで日本企業では近年、退職者を再雇用する「アルムナイ採用」が新しい採用手法として注目されています。その背景やメリットについて紹介します。

アルムナイ採用が注目されている背景

アルムナイ採用が注目される背景には世界規模の産業構造の変化があります。欧米では、1970年中頃〜1980年代前半に産業構造が大きく変化したことで人材の流動性が高まり、アルムナイとの関係を見直す企業が増えました。退職者を「コーポレートアルムナイ」と呼び、退職後も関係維持のためにさまざまな取り組みを通し、新しいビジネスの開拓や企業のブランディングにつなげてきました。

日本でも、リーマンショック後の2010年頃から終身雇用や年功序列などの旧来の雇用形態が崩壊し始めました。また、2020年頃から従業員を企業の重要な資本として捉える「人的資本」の概念が広がっています。これらの変化が退職者に対する企業の捉え方を徐々に変え、企業も人事戦略の1つとしてアルムナイとの関係を見直しつつあります。

アルムナイ採用のメリット

アルムナイ採用には、「採用・育成コストを抑えられる」「ミスマッチが起こりにくい」「企業ブランディングにつながる」といったメリットがあります。

・採用・育成コストを抑えられる

企業は退職時の連絡先情報からアルムナイと直接コンタクトを取ることができるため、求人を掲載する費用や手間を減らすことができます。また、アルムナイは企業が求めるレベルのスキルや経験を得ており、会社の理念についても理解しているため、新しく入社する従業員に比べて採用後の育成にかかるコストを低く抑えることができます。

・ミスマッチが起こりにくい

アルムナイは社風を既に知っていてどのような従業員が働いているかも把握しています。そのため、入社後に企業イメージのギャップを抱く可能性は新卒採用や一般の中途採用より低くなります。また、企業側もアルムナイの人柄や能力を理解しているため、採用後に考え方やスキル面のミスマッチが起こるリスクを最小限にすることができます。

・企業ブランディングにつながる

アルムナイ採用の実績を公表することで「一度退職した人が戻りたいと思うほど良い会社だ」というプラスのイメージが社外・社内問わず生まれ、企業ブランディングにつながります。

アルムナイを採用するためには、そもそも従業員が円満に退社していることが前提になります。会社に対する不満が溜まって辞めるなどのネガティブな退職が多ければ、もといた会社に出戻りしてまで働きたい、というアルムナイは現れないでしょう。そのため、会社に関する悪い評判が広まらないよう、退職希望者に対してネガティブな対応をする、かたくなに退職を引き留めるといった対応がある場合は見直さなければなりません。

ブランディングの効果を上げるためにはこうした社内の対応とアルムナイ採用の実績公表はセットで行うことが前提になります。

アルムナイ採用のデメリット

アルムナイ採用には「退職者に対する社内からのネガティブなイメージがある」「待遇差への不満が生じる可能性がある」といったデメリットがあります。

・退職者に対する社内からのネガティブなイメージがある

日本企業では「退職者は会社を裏切った人」という認識が強いかもしれません。退職者を敵視する考え方が強い状況では、アルムナイ採用で入社した従業員の肩身が狭くなるだけでなく、採用しても定着しにくくなったり、社内の雰囲気が悪くなったりする可能性があります。そのため、アルムナイ採用を軌道に乗せるにはまず退職者に対する社内のネガティブな捉え方を変えることが必要です。

・待遇差への不満が生じる可能性がある

アルムナイは外部に出てスキルや能力を高めた人材が多いため、社内の年次や在籍時の職能等級に当てはめずに中途採用と同じ基準で雇用する企業が増えています。そのため、退職せずに働き続けてきた従業員に比べて待遇が良くなるケースが多く、待遇差への不満が社内に発生する可能性があります。待遇差への不満を抑えるためには、アルムナイも一般の従業員も納得できるような公平な評価制度や待遇の基準を設け、その内容について従業員への理解を求める必要があります。

アルムナイ採用を導入している企業の事例

最後に、アルムナイ採用の事例として、アルムナイ向けのネットワーク構築やイベント実施などに取り組んでいる2社を紹介します。

アクセンチュア株式会社

アクセンチュア株式会社は「“卒業”した社員も大切な家族であり仲間である」と考え、世界中で30万人以上のアルムナイが在籍しているアクセンチュア・アルムナイ・ネットワークを持っています。退職した社員は、ネットワークに入ることで求人を確認したり他のアルムナイや社員と協働したりすることが可能になります。

住友商事株式会社

住友商事株式会社はアルムナイを価値創造の重要なパートナーと考え、在籍1年以上の退職者を対象としたSC Alumni Network(SC アルムナイ・ネットワーク)を2019年に設立しました。このネットワークを活用して、アルムナイ向けの総会を開催する、従業員へアルムナイの活動を紹介するといった取り組みを実施しています。

まとめ

アルムナイ採用は、産業構造の変化に対応する上で鍵となりうる新しい採用手法の1つです。退職者との関係性維持によって採用・育成コスト削減や企業ブランディングにつなげることができます。しかし、一度退職した人を雇用することで待遇や人間関係の面でトラブルが発生するリスクもあるため、社内教育や制度設計などでアルムナイに対するネガティブなイメージや不満を解消するための工夫も必要になります。

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