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【2022年1月開始】雇用保険マルチジョブホルダー制度開始に伴う企業対応とは?

公開日時:2022.03.04 / 更新日時:2022.03.09

2022年1月、65歳以上の労働者を対象とした「雇用保険マルチジョブホルダー制度」が新設されました。従来の雇用保険制度は、主たる事業所での労働条件について「週の所定労働時間が20時間以上」かつ「31日以上の雇用見込み」などの要件を満たす場合に適用されるものであるのに対し、雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所での勤務について特定の要件を満たすことで雇用保険の被保険者となれる制度です。 同制度を利用した雇用保険への加入手続きなどは原則として労働者本人が主体となって行いますが、この記事では企業側に求められる手続きや留意点などを中心に解説します。

雇用保険マルチジョブホルダー制度とは

はじめに、雇用保険マルチジョブホルダー制度の全体像について解説します。

制度の概要

雇用保険マルチジョブホルダー制度とは、複数の事業所で働く65歳以上の労働者が特定の要件を満たす場合に、申し出を行った日から特例的に雇用保険被保険者になることができる制度です。2022年1月1日から65歳以上の労働者に限定して試行実施され、5年を目処に効果検証が行われることになっています。

この雇用保険マルチジョブホルダー制度によって特例的に雇用保険の被保険者となる労働者を「マルチ高年齢被保険者」と呼びます。

マルチ高年齢被保険者であった者が失業した場合

マルチ高年齢被保険者だった労働者が失業した場合、「離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上ある」などの一定の要件を満たすことで、高年齢求職者給付金を一時金で受給することができます。

給付額は原則、離職日以前6か月に支払われた賃金の合計を180で割った金額(賃金日額)のおよそ5~8割が1日分の額となり、この30日または50日分が支給されます。

雇用保険マルチジョブホルダー制度が新設された背景

少子高齢化が深刻化し労働人口が減少している日本において、働く意欲をもつ高齢者を支援する仕組みを整える動きが進んでいます。例えば、2020年3月には高齢者が活躍できる環境の整備を目的に高年齢者雇用安定法の改正が行われ、それまで企業に課されていた「65歳までの雇用確保義務」に加えて、「70歳までの就業機会の確保」が努力義務として追加されました。雇用保険マルチジョブホルダー制度もこうした高齢者が働きやすい社会をつくる取り組みの一環です

高年齢者雇用安定法について詳しくは用語集「高年齢者雇用安定法」をご覧ください。

マルチ高年齢被保険者となるための要件

労働者がマルチ高年齢被保険者となるには、下記すべての要件を満たす必要があります。通常の雇用保険とは異なり労働者が希望しなければ加入する必要はありませんが、加入後の扱いは通常の雇用保険被保険者と同じく、任意脱退することはできません

雇用保険マルチジョブホルダー制度の適用要件

(1)複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること
(2)2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(3)2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること

なお、3つ以上の事業所で勤務している場合は、被保険者として申し出る労働者が2つの事業所を選択することになります。例えば、下記のような場合はマルチ高年齢被保険者となる要件を満たしていることになり、申出者は事業所AとB、もしくはAとCいずれかの組み合わせで届け出ることが可能です。

ただし、先述の適用要件(1)~(3)を満たさなくなった場合を除き、加入する事業所を任意に変更することはできません。また、事業所AとBで雇用保険の適用を受けた場合、Bを離職してもAとCでの週の労働時間が20時間以上となるため、改めてAとCでの加入が必要になります。

雇用保険マルチジョブホルダー制度に関して企業に求められる手続き

マルチ高年齢被保険者の「資格取得時」と、失業などによる「資格喪失時」のそれぞれにおいて、企業側に必要な手続きを解説します。

資格取得時の手続き

通常の雇用保険の加入手続きは事業主が行いますが、マルチジョブホルダー制度においては企業側の把握が難しいことから、手続きを行うのは加入を希望する労働者本人です。申し出を行う労働者は、住所または居所を管轄するハローワークで手続きを行います。

企業側は従業員から依頼があった場合、雇用の事実や所定労働時間などの手続きに必要な証明を行わなければなりません。具体的には、「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」の事業主記載事項への記入と確認資料の交付を行う必要があります。

また、申請確認後ハローワークより交付される「雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得確認通知書(事業主通知用)」も企業で保管します。この通知書に記載された申出・資格取得年月日から、企業側に雇用保険料の納付義務が発生します

マルチジョブホルダー雇入・資格取得届の具体的な書き方は「雇用保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット」から確認できます。

資格喪失時の手続き

マルチ高年齢被保険者が失業などにより資格を喪失する場合も、資格取得時と同じく労働者本人が手続きを行わなければなりません

企業側は、申し出をする従業員から依頼があった場合、「雇用保険マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届」の事業主記載事項を記入し、確認資料を交付する必要があります(離職証明書の交付依頼があった場合はあわせて交付)

また、申請確認後ハローワークより交付される「雇用保険マルチジョブホルダー喪失・資格喪失確認通知書(事業主通知用)」を保管します(「離職証明書」を作成した場合はその控えも保管)。この通知書に記載されたマルチジョブ離職年月日から、企業側の雇用保険料の納付義務が消滅します

マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届の具体的な書き方についても「雇用保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット」から確認できます。

雇用保険マルチジョブホルダー制度に関する企業側の留意点

ここまで解説してきたように、マルチジョブホルダー制度に関する各種手続きは基本的に労働者主体で行われますが、企業側にもいくつか留意すべき点があります。

希望者には必ず対応しなければならない

マルチ高年齢被保険者となることは雇用保険法によって定められた労働者の権利であるため、従業員から申し出があった場合、企業側は各種届出書の記載や証明書の交付などに必ず対応しなければなりません。この申し出を理由に解雇や雇い止め、労働条件の不利益変更などを行うことは法律により禁じられています。対応が十分でない場合は、ハローワークから企業に対して確認がなされます。

また資格喪失時についても、労働者がマルチ高年齢被保険者ではなくなった日の翌日から起算し10日以内に本人が届け出なければならないため、従業員から届出書への記載や離職証明の交付などの依頼があった場合は速やかに対応する必要があります

通常の雇用保険の適用を受けるための手続きを並行して行うケースもある

現在雇用している従業員がマルチ高年齢被保険者になる申し出をしたものの、前提として、事業所が雇用保険の適用を受けていない場合においては、マルチジョブホルダー制度に関する手続きと並行して、事業所の所在地を管轄するハローワークに雇用保険適用事業書設置届を提出する必要があります。

企業側が代理で手続きをすることもできる

委任状があれば、企業が労働者本人の代理人として加入や喪失の手続きをすることができます。ただしこの場合、書類等の提出先は事業所の所在地を管轄するハローワークではなく、マルチ高年齢被保険者として雇用保険の適用を希望する従業員の住所または居所を管轄するハローワークとなるため注意が必要です。

また、通常の雇用保険に関する手続きを社労士などに委託している場合、マルチジョブホルダー制度に関する取得届や喪失届の作成も委託することが可能です。ただし、労働者本人が社労士へ委託している場合を除き、書類等の提出代行は委託できません。

雇用保険料は通常の雇用保険と同様

雇用保険マルチジョブホルダー制度の保険料は通常の雇用保険と同じです。原則として賃金総額に保険料率を乗じて計算します。保険料率は厚生労働省の「雇用保険料率について」より確認できます。

まとめ

雇用保険マルチジョブホルダー制度に関する諸手続きの主体は労働者本人ですが、資格取得時や喪失時などの要所で企業にも手続きが求められることに留意しましょう。

マルチジョブホルダー制度は、副業や兼業を行う労働者に対する保障という側面もあります。現在は高齢者に限定して運用されていますが、働き方がより多様化すれば対象が拡大される可能性も十分考えられます。そうなればより複雑な労務管理に対応する必要性が出てくるため、制度開始を機に、企業としても柔軟に対応できる労務管理、勤怠管理の仕組みの整備を検討することをおすすめします。

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