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【社労士監修】社員寮、社有社宅、借り上げ社宅?違いやメリット、制度の導入法を解説

公開日時:2024.04.11

社宅制度は、昔から日本に存在する代表的な福利厚生制度のひとつです。
今回は、社宅とはそもそもどのような存在か、どのような種類があるのかを紹介します。また、社宅制度を導入するメリットやデメリット、導入方法についても解説します。
加藤 知美 氏

加藤 知美 氏

社会保険労務士

愛知県社会保険労務士会所属。総合商社、会計事務所、社労士事務所の勤務経験を経て、2014年に「エスプリーメ社労士事務所」を設立。

総合商社時では秘書・経理・総務が一体化した管理部署で指揮を執り、人事部と連携した数々の社員面接にも同席。会計事務所、社労士事務所勤務では顧問先の労務管理に加えセミナー講師としても活動。

「社宅」とは

社宅とは、社員やその家族が住み、生活をしていくために企業が付与する住宅のことです。
同じような意味として「社員寮」が挙げられます。社宅と社員寮には、法律による明確な決まりはありません。一般的には、社宅は家族と同居する社員向けの住宅、社員寮は単身社員向けの住宅として分類されるケースが多いです。

社宅制度は、「法定外福利厚生」という福利厚生制度にあたります。
法定外福利厚生とは、自社に勤務する社員が安心して生活できるような環境づくりのために、企業の裁量で任意導入できる施策です。福利厚生制度には、法定外福利厚生のほかに、「法定福利厚生」があります。法定福利厚生は、法律で義務づけられている社員に対する付与制度で、雇用保険料や健康保険料などの保険料が代表的です。
法定外福利厚生は、法定福利厚生とは異なり、企業が状況に応じて柔軟に定めることができます。社宅制度もそのひとつで、導入するか否かも自由です。国のルールがないことから、罰則規定もありません。

社宅の種類

社宅には、主に次の2種類があります。

1.社有社宅

社有社宅とは、企業が保有する社宅です。企業の資産となるため、管理費用や固定資産税などは企業負担になります。土地や建物を企業が購入することになるため、規模の大きい企業が多く取り入れている制度です。

2.借り上げ社宅

借り上げ社宅とは、企業が賃貸物件を借りたうえで、その物件を社員へ住居として貸し出すことです。社有社宅とは異なり、社宅を「企業が保有していない」点が最大の特徴です。
不動産として土地や建物を購入するだけの体力はないものの、各地に営業所を構え、比較的転勤の多い業種の企業が借り上げ社宅を導入する傾向が多くみられます。また、海外に支店を構える企業の場合も、社員が一定期間ごとに引っ越す機会が多いことから、借り上げ社宅制度を導入するケースがあります。

社有社宅のメリット・デメリット

1.メリット

企業側

社有社宅のメリットは、なんといっても「不動産」を保持できるという点です。不動産は資産になることから、不動産取得税や固定資産税、修繕費などの費用を経費扱いにすることができます。社有社宅に社員が入居すれば、社員から社宅の使用料金を毎月受け取れます。

また、社有社宅に住む社員同士の交流が深まることで、会社全体のチームワークを強化できることも期待できるでしょう。

社員側

社有社宅はすでに企業が保有している物件であることから、賃貸料を支払う必要がありません。

また、社有社宅が存在することで、安心して生活できるという点もメリットのひとつです。転勤時にも社宅の存在があれば、面倒な引越しに関する手続きがかなり簡略化されます。

2.デメリット

企業側

社宅の維持に苦心する企業も少なくないようです。以前は、物件の価値上昇をもくろみ、社有社宅を購入する企業が多くみられました。しかし、景気が不透明な昨今では、維持費や管理費を支払うことが困難な状況に陥るケースがあります。

社宅の建物が老朽化した場合は、居住する社員のモチベーションが下がったり、企業への不満が募る危険性も否定できません。

社員側

社有社宅はすでに企業が保有している物件であるため、建物や居住地の選択肢の幅が狭いことが懸念点としてあげられます。

また、勤務時間外でも同じ社宅に住む他の従業員と出くわすことがあるため、仕事とプライベートの切り替えが上手くできないケースもあります。

借り上げ社宅のメリット・デメリット

1.メリット

企業側

借り上げ社宅は社員個人が契約している物件ではないため、賃料の一部を「住宅手当」として給料に上乗せして支給するのではなく、社員の給料から直接借り上げ社宅料を天引きすることになります。よって、社会保険料や所得税などの節税対策につながる点が企業側のメリットといえるでしょう。

また、物件の維持費や管理費などは貸主となる不動産業者が負担するため、管理の手間やコストもかかりません。

社員側

社員にとっても、借り上げ社宅制度の利用には節税効果があります。先述のように、住宅手当は給料に含まれる一方で、借り上げ社宅を利用し定められた家賃を支払う場合は、企業が負担する賃貸料を給料の一部として申告する必要がありません。そのため、所得税や住民税、社会保険料といった税金の負担額が少なくなるのです。

また、それぞれの家族構成や家庭環境に合わせて最適な物件を借りることができる点も大きなメリットです。
社有社宅の場合は物件の選択肢が豊富ではありませんが、借り上げ社宅の場合は、「駅の近くに住みたい」「学校のそばが良い」「一軒家に住みたい」など、社員の要望に沿った場所を借りることが可能です。
企業側が社員の意向をくみ取ったうえで物件を探すパターンが多いことから、引越しの負担も軽減できます。

2.デメリット

企業側

借り上げ社宅制度を導入する場合、企業側がその都度物件を借りる手間がかかる点はデメリットといえます。企業側が社員の状況に応じて物件を探す場合は、希望に沿った物件を探す時間が必要です。また、既存の契約済み物件を借り上げ社宅として提供する場合は、社員側が希望する場所や間取りの物件に住むことができない可能性があります。

退去時には修繕が必要となるケースもあり、その場合は借主である企業側が費用を負担しなければなりません。住宅手当を支給する場合に比べて節税効果はあるものの、想定外の違約金や修繕費が発生した際には企業の負担費用が増してしまいます。

社員側

先述したように社会保険料の負担が減るメリットはありますが、その分、将来受け取れる年金や失業保険といった社会保障額も減ってしまう点に注意が必要です。

社宅制度の導入法

社宅制度を新たに導入しようとする場合、まずは「社有社宅」「借り上げ社宅」のどちらの社宅制度を導入するかを検討する必要があります。企業の資産状況や業種、業態、社員の構成などをかんがみて、総合的に判断しなければいけません。

社宅の種類を決定したところで、次は社宅管理規程を作成する段階に移ります。社宅は社員にとって欠かせない居住地となるものであり、企業にとっても一定の費用がかかる重要な存在になります。
社宅管理規程では、社宅の賃貸時や実際の使用に関するルールや、社宅管理で必要となる内容、トラブルを避けるための注意点をまとめる必要があります。社内であらかじめルール化しておくことで、スムーズな社宅利用が可能になります。特に賃料に関する内容は、賃金規程への記載が必要になる重要な項目であるため、慎重に検討しましょう。駐車場が必要になる社員が発生するケースもあるため、駐車場に関するルールもあわせて盛り込んでおくと安心です。

まとめ

社宅制度は代表的な法定外福利厚生制度のひとつです。人間の生活に欠かせない「衣・食・住」のうちの住居に関する問題は、社員に常にのしかかる重要な存在となります。企業が「社宅」というかたちで住居の提供や賃料負担を行うことで、社員はより安心して仕事にまい進することができます。仕事に集中できる環境が整うことで、社員のモチベーションアップや仕事の効率化へとつながるのです。

社宅制度の存在は、対外的なアピールポイントにもなります。住宅に関する法定外福利制度は非常に人気が高く、「取り入れてほしい」と考える社員が多いのが現状です。自社が取り入れている社宅制度を対外的にアピールすることで、採用活動で有利に立ち、より優秀な人材を確保する可能性も広がります。労働力不足がうたわれる昨今、人材確保の機会が得られるということは、企業の存続・発展に欠かせない強みとなるでしょう。

コロナ禍を経て、社員の働き方は大きく様変わりしました。職場へのアクセスが便利な場所に住むことを好む社員ばかりではなく、あえて郊外に住み、テレワークや在宅勤務をメインとして自身のペースで働く社員も少なくありません。

社宅に関するルールづくりと同時に、社員の勤務状況の把握や業務効率化に関する改善対策を検討していく方法が有効です。

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