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【社労士監修】介護離職者がいる企業の半数以上が支援制度を未活用!「介護離職」の現状や要因、対策法とは?

公開日時:2024.04.16

政府による「ワークライフバランス」や「働き方改革」の推奨もあり、社員が自身の生活スタイルに合わせた働き方を望む傾向が強まっています。特に、育児や介護との両立を図りながら就労する社員も増えているといわれています。
このようななか、「介護離職」をした従業員がいた企業のうち、半数以上が介護休業の支援制度を利用しなかったというアンケート結果が公表されました。
この問題を受け、今回は介護離職に関する現状や問題点、改善策について、順に解説します。

「介護離職」とは

介護離職とは、家族の介護のために仕事を辞めてしまうことです。介護とひとことで言ってもその内容は多岐にわたり、月ごと、週ごとの対応ですむケースもあれば、連日の介助が必要なケースもあります。介護施設を利用する場合でも、送迎や洗濯など、必要となるさまざまな対応が挙げられます。

不透明な経済情勢が続くうえに、新型コロナウイルス・インフルエンザなどの感染症まん延、天災への不安などにより、昨今は不安やストレスを抱えながら働く社員が増加しています。このようななかで、仕事と介護の両立をすることは相当の気力や体力を要します。時間が足りない、疲労してしまったなどの理由で退職を選択する介護離職者は後を絶たない状況です。

「介護と仕事の両立者」の現状

2022年10月時点では、介護を行っている人々のうち、半数以上が仕事と介護を並行しています。特に、親の高齢化が進む40代や50代の年齢層では、このような仕事と介護の二重負担を抱える人が多く見受けられます。こうした現状について、以下で詳しく解説します。

総務省統計局が公表している「令和4年就業構造基本調査」によれば、2022年10月1日の時点で介護をしながら働く人は全国で約364.6万人です。10年前の2012年と比較すると約70万人以上の増加、5年前の2017年と比較すると約18万人の増加がみられます。介護をしている人のうち、有業者の割合は58.0%で、半数以上が介護をしながら仕事をしていることがわかります。

世代別のデータで見ていくと、親が高齢化するケースの多い40代、50代が高い割合を占めています。特に、50~54歳の世代で男性では88.5%、女性では71.8%が仕事と介護を両立させているという状況です。働き盛り世代の男性が介護を行っているという実情がデータから見てとれます。

株式会社東京商工リサーチが2023年10月に行った「介護離職に関するアンケート」調査で、約4割の企業が、仕事と介護の両立支援への企業の取り組みが不十分であると回答しました。国では「育児・介護休業法」のたび重なる改正を行い、育児・介護と仕事との両立に向けた対策を講じています。それでも、不安や不満を抱えながら両立生活を送る社員が存在すると推測できます。

同アンケートでは、介護をしながら働く際に必要となるケースが多い休暇取得について、15%以上の企業が「休暇がとりにくい」と回答しています。この数値からも、安心して介護に向かい合うことができる十分な時間が確保できていないことが見てとれます。

引用:東京商工リサーチ 介護離職、 発生企業の5割超で支援制度を利用せず 「休暇がとりにくい」が15%、 支援制度の定着が急務

「介護離職」の現状

近年は、多くの介護離職者が、介護休業や介護休暇を取らずに仕事を辞める傾向にある点が特徴的です。ここからは介護離職に関する現状について、詳しく解説します。


介護離職を選択する社員が増えていることは、介護と仕事を両立させながら働く者を取り巻く状況が要因となっていると考えられます。「介護離職に関するアンケート」によれば、2022年9月から2023年8月までに介護離職が発生した企業の割合は約10%でした。企業の規模別で見ると、大企業が18.3%、中小企業が9.0%で、規模の大きな企業ほど介護離職が深刻な状況であることがわかります。
特に介護離職が多いと回答のあった業種については、運送業や美容院、エステティック業、医療業、小売業、宿泊業など、個人の顧客を相手にすることが多い業種が並びました。逆に、介護離職が少ないと回答があった業種は、自動車整備業や水運業、娯楽業、石油製品・石炭製品製造業、繊維・衣服等卸売業などがありました。

また、介護離職者は男性の方が多いと回答した企業の割合は、女性の方が多いと回答した企業の割合より14.6ポイント上回りました。これは、もともと介護と仕事を両立させている社員の割合が男性のほうが多いという背景があります。また、大企業と比較すると中小企業では女性の介護離職者が増えている傾向も無視できません。

さらに特徴的なのは、介護離職者は、介護休業や介護休暇を利用せずに仕事を辞めてしまう傾向が強いことです。特に介護休業と比較すると日々の介護生活で効果を発揮する介護休暇を利用していないという点も、見過ごせない点となっています。

「介護離職」を防ぐためには

これまでの内容を通して、介護離職が発生する要因として人手不足や休暇をとりにくい企業の状況が挙げられます。「介護離職に関するアンケート」では、企業の介護離職に関する状況に加え、対応策の内容も調査しています。以下でポイントを解説します。

介護休業や介護休暇に関するマニュアル作成と周知

最も多くの企業から回答があった対応策は、就業規則や社内規定などで介護休業や介護休暇に関するマニュアルを作成し、周知させる方法です。特に上の世代の男性社員にとっては、介護休業に関する理解が十分ではない可能性があります。制度の利用を促すためには、当然ながら経営層、中間管理職、一般社員にかかわらず、多くの社員に制度の内容を周知する必要があるでしょう。

介護休業・介護休暇の詳細は以下をご覧ください。

社員の実態調査や相談体制の確率

介護が必要となる社員の実態を調査し、常に最新の情報を仕入れておく、介護に関する悩みを相談できる体制を整えるなども、多くの企業が対策として導入しています。法定を上回る介護休業制度や、在宅勤務、テレワークなどの導入も効果的です。

人材確保や既存社員の業務負担軽減対策

業種の特性上柔軟な対応が難しく、思うように休業や雇用形態の変更ができない場合は、休業を取得する社員に代わる新たな人材を確保するのも一つの手です。とはいえ、少子高齢化による労働力不足の影響により、すぐに代わりの社員を雇うことは困難です。「介護離職に関するアンケート」でも、代替要員を確保しにくいと回答している企業が非常に多く見られました。今後、さらに介護と仕事とを両立しながら生活をする社員が増えると予想されており、各企業は介護離職を防ぐための対策を講じることが急務とされています。すぐに新たな代替要員を確保することが難しいならば、既存の社員で乗り切るためにはどのような方法をとるべきかを考えなければいけません。

人員を補充しないため、既存社員に負担がかかりすぎないよう対策を講じる必要があります。特に、仕事のできる優秀な社員には仕事が集中しやすい傾向があるため注意が必要です。特定の社員に仕事が集中して疲弊を招き、新たな離職者を生み出してしまう可能性も否定できません。

対策のひとつとして、仕事がより効率化されるような業務マニュアルを作成し、ひと目でわかるような業務体制を徹底する方法が挙げられます。ただし、通常業務に新たなマニュアル作成業務が加わることで、本来の仕事がおろそかになったり長時間労働へつながったりするリスクもあります。経営層は、ただ単に「○○日までにマニュアルを作成するように」と指示を出すだけではなく、状況に合わせた対応を心がけましょう。

まとめ

介護離職に関する現状や対策についておわかりいただけたでしょうか。厚生労働省では「介護離職ゼロ ポータルサイト」を公表しており、介護離職に関する問題を深刻な状況と捉え、さまざまな対策を打ち出しています。しかし、働き盛り世代にかかってくる介護の負担は今後も増加する傾向にあり、ヘルパーなど介護業界の人手不足も厳しい状況を加速させています。貴重な人材を手放さないためにも、各企業にはよりいっそうの介護離職対策が求められています。

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