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年次有給休暇の付与日数は?計算や最大取得数、年5日取得させる方法を解説

公開日時:2021.07.02 / 更新日時:2024.02.28

年次有給休暇は、働く従業員にとって取得する権利があり、企業は取得させる義務があります。年次有給休暇の付与日数や取得状況の管理を徹底しなければ、意図しないうちに法令違反を犯すリスクがあるので注意が必要です。
今回の記事では、年次有給休暇の付与日数の計算や最大取得数、取得状況の管理における注意点をまとめました。休暇に関する労務管理に課題を感じている企業の担当者は、ぜひ参考にしてください。
休暇については、下記記事でも解説しています。
独自の休暇制度を導入しようと考えています。休暇制度を導入するにあたって注意点はありますか?

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年次有給休暇とは

年次有給休暇とは、労働基準法第39条で以下のように定められています。

「使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

つまり、6か月以上の継続雇用があり、さらに所定労働日の8割以上出勤している従業員に対しては、原則10日間の有給休暇を付与しなければなりません。

なお、パート・アルバイトでも上記の要件を満たしていれば、有給休暇付与の対象者となります。パート・アルバイトの場合は、基準となる所定労働日数が少なくなるため、正社員よりも出勤日が少なくても、有給休暇付与の要件を満たす可能性がある点に注意しましょう。

有給休暇の詳しい解説については、下記記事もご覧ください。

年次有給休暇付与の要件と日数

労働基準法の改正によって、2019年4月より義務化された年5日の年次有給休暇取得について理解するため、まずは年次有給休暇を付与する要件と日数について確認しましょう。

一定期間勤続した従業員への有給付与

年次有給休暇の取得が可能な従業員の要件は、雇い入れの日から6か月継続勤務していて、全労働日の8割以上出勤していることです。有給休暇の付与日数は勤続年数によって変わります。以下の表を参考に確認しましょう。

パート・アルバイトなどの従業員へは比例付与を行う

パートやアルバイトなどの従業員には、所定労働日数に応じて年次有給休暇が比例付与されます。比例付与とは、正規雇用のフルタイム従業員よりも所定労働日数が相当程度少ないパートやアルバイトなどの従業員に、その所定労働日数に応じた日数の年次有給休暇を与える方法です。

比例付与の日数は、以下の計算式で算出されます。

通常付与される日数(10日)×従業員の週所定労働日数÷厚生労働省令で定められている1週間の平均所定労働日数(5.2日)

例えば、週4日働く従業員に対しては、10×4÷5.2≒7.7日となり、小数点以下を切り捨てるため「7日」が付与されます。パートやアルバイトなどの従業員で比例付与の対象となるのは、労働時間が週30時間未満で、所定労働日数が4日以下もしくは年間の所定労働日数が216日以下の従業員です。

比例付与日数は以下のとおりです。

なお、週4日勤務であっても労働時間が週30時間を超えている場合は、通常どおり、年次有給休暇が付与されます。

有給休暇の年5日取得義務

2019年の法改正により、年間10日以上の有給休暇が付与された従業員に対して、年5日以上の有給休暇取得が義務付けられました。企業は、休暇取得が進んでいない従業員に対して有休取得を促していかなければなりません。

フルタイム従業員は、入社後半年から要件に当てはまります。パート・アルバイトでも、勤続年数や勤務日数によっては要件に該当するので、見落としがないように注意しましょう。

年5日の年次有給休暇取得義務に違反した場合の罰則

年5日の年次有給休暇を取得させなかった場合、労働基準法第120条の規定により、1人あたり30万円以下の罰金が科される可能性があります。義務に違反した場合 、罰則は対象となる従業員1人につき1罪です。つまり、有給休暇を取得させていなかった従業員が事業所内に2人いた場合、違反が2回起きたとカウントされます。

2人では60万円、10人の場合では最大300万円の罰金が科される計算です。ただし、厚生労働省の資料によれば、義務を遵守していない企業は労働基準監督署の指導を受けるとあります。法違反した企業に対して罰則を科す前に、適切な有給休暇付与ができる体制を整備するための改善指導が行われると考えられます。

有給休暇にまつわるポイント

有給休暇に関しては、次のポイントも押さえてルールを正しく理解しましょう。

繰り越しと繰越保持日数

有給休暇は、翌年に限り残った有給休暇の繰り越しが可能です。この繰り越しは従業員の権利なので、企業は拒むことはできません。なお、原則として繰り越しは翌年まで(有効期間2年間)ですが、企業が独自にルールを定めて繰越期間を延伸することは可能です。

有給休暇付与日数の上限

有給休暇付与日数は20日が上限です。前述のとおり有給休暇は翌年に限り繰り越せるため、もし、義務付づけられている5日を取得して、新たに20日の付与を受けた場合では、有給休暇の残日数は35日となります。企業が法令を遵守して休暇急患を管理している場合は、有給休暇の残日数が35日を上回ることはありません。

時季変更権

時季変更権は、従業員が希望した日の有給休暇取得が「事業の正常な運営を妨げる場合」において、使用者が出勤を指示できる権利です。たとえば、代替のきかない業務がその日に発生する、休暇取得者が重なっているなどのケースが考えられます。

ただ、あくまで権利の行使は管理者の判断となります。とはいえ、有給休暇の取得は労働者の権利なので、時季変更権を濫用して取得を過度に妨げるようなことがあってはいけません。

半日休暇(半休)・時間単位年休

半日休暇は、半日単位で取得できる休暇です。法令上の定めはありませんが、社内規則で定義すれば付与・取得が可能です。一方で、時間単位年休については法令に定めがあり、年5日の範囲内だけを時間単位年休として消化できる仕組みとなっています。また、勤務時間に応じて付与できる時間数も定められています。詳しくは下記記事をご覧ください。

積立有給休暇

積立有給休暇は、失効した年次有給休暇を積み立てて、病気やケガなどで療養する際に利用できる制度です。法令で義務付けられた制度ではないので、企業の福利厚生の一環として設定します。従業員が長期療養する際に、すぐに欠勤・休職に至らずに済み、有給休暇であれば給与が支給されるので安心です。企業としても、病気やケガを理由とした離職を予防できる点で、導入するメリットがあります。

年次有給休暇の取得を従業員に促す方法

年次有給休暇の取得は、従業員の心身のリフレッシュにつながるため、業務の生産性向上も見込めます。年5日の有給休暇の取得はあくまで「最低でも5日は有給休暇を取得させなければならない」という基準です。

5日にとどまることなく、従業員が年次有給休暇を取得しやすい環境を整えることが重要です。ここでは、企業が従業員に年5日の年次有給休暇の取得を促すことで、従業員が年次有給休暇を取得しやすくなる方法について解説します。

使用者が時季指定をする

時季指定とは、使用者が従業員ごとに年次有給休暇の取得時季を指定する方法です。使用者は従業員に年次有給休暇をいつ取得したいかの意見を聴取し、できるだけ希望に沿う時季に取得できるよう努めます。

 

年次有給休暇の付与日から数か月後や半年後などの一定期間が経過したタイミングで、年次有給休暇の請求・取得日数が5日未満の従業員に対して、使用者から時季指定をすると効率的な管理が可能です。

過去の年次有給休暇取得日数の実績が極端に少ない従業員に対しては、付与日に使用者から年間の時季指定をする方法もあります。一方で、年次有給休暇の請求・取得がすでに5日を超えている従業員に対しての時季指定はできません。

使用者が時季指定をする場合は、対象となる従業員の範囲や指定の方法について就業規則に記載が必要です。就業規則に記載がない状態で使用者が時季指定した場合、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

計画的付与制度を活用する

計画的付与制度は、使用者が事前に年次有給休暇の取得日を割り振る方法です。企業側は労務管理がしやすくなり、従業員側はためらいなく年次有給休暇を取得できるメリットがあります。使用者は、付与日数から5日を除いた残りの日数を計画的付与の対象とできます。

ただし、計画的付与制度を活用するには、就業規則に規定したうえで労使協定の締結が必要です。この労使協定については労働基準監督署に届け出る必要はありません。

 

具体的には、ゴールデンウィークや夏季休業時などに全従業員に対して一律に付与する方法や、班・グループごとに交替で付与する方法、誕生日や結婚記念日など、従業員の個人的な記念日に優先的に付与する方法などがあります。

年次有給休暇取得の計画表を作成する

年次有給休暇取得計画表を作成して、従業員ごとの休暇取得予定を明らかにする方法です。予定を明示することで、上司や同僚に気兼ねなく年次有給休暇を取得できたり、職場内で取得時季の調整がしやすくなったりする効果が期待できます。

年次有給休暇取得計画表は、年次有給休暇を付与した時点で一度作成し、その予定を前提とした業務体制の整備や取得状況の確認を行うと、従業員が年次有給休暇を取得しやすくなります。また、年度別、四半期別、月別などの期間で作成しておくと、予定変更や業務都合に対応して、より細かく調整できるようになります。

時間単位で取得できるようにする

時間単位での取得が可能になれば、従業員の年次有給休暇取得率を上げる効果が期待できます。労使協定を結ぶことで、年5日の範囲内であれば、1時間単位での年次有給休暇を取得させることが可能です。従業員自身の通院や子どもの学校行事への参加、家族の介護など、さまざまな事情に柔軟に対応できることがメリットです。

ただし、時間単位での取得は、確実に取得が必要な5日間の有給休暇取得から差し引くことはできません。例えば、時間単位の有給休暇取得の通算が8時間となり、1日分の所定労働時間を超えていても、確実に取得が必要な5日の有給休暇を4日に減らすという運用はできません。

時間単位の有給休暇取得の制度は、柔軟な働き方の推進や社内全体の有休取得率アップを目的としています。積極的な活用を勧めましょう。

年次有給休暇は原則1日単位なので、時間単位で取得させるには、就業規則に規定したうえで労使協定を締結する必要があります。この労使協定についても労働基準監督署に届け出る必要はありません。

まとめ

年間5日の有給休暇取得ができない場合には、企業側は労働基準法の違反となります。有給休暇のルールを正確に理解したうえで、有休付与数の管理や取得数・残有休数の管理を正確に行わなければなりません。有給休暇を手動で管理するのは容易ではないため、勤怠管理システムを導入して管理を自動化するのがおすすめです。

自動で正確に管理することで意図せぬ法令違反を回避し、休暇取得が進まない従業員を早めにケアすることもできます。休暇の管理を効率化するために、ぜひ勤怠管理システムの導入を検討しましょう。

法令を遵守した管理ができる勤怠管理システム

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