年次有給休暇管理簿とは
年次有給休暇管理簿とは、従業員ごとに有給休暇を管理するための名簿です。有給休暇をどのように管理する書類なのか、概要を説明します。
年次有給休暇管理簿の内容
年次有給休暇管理簿は年次有給休暇取得の基準日、日数、時季を管理するための書類です。有給を取得した従業員ごとに作成と、一定期間の管理が義務付けられています。
企業は年次有給休暇を従業員に付与した日から、1年以内に5日以上の有給休暇を従業員に取得させなければなりません。その有給休暇の取得を正確に管理するために欠かせないのが、年次有給休暇管理簿です。
年次有給休暇の作成を怠ること自体に罰則はありませんが有給取得状況を書面で管理することは法律で義務付けられています。企業側は年次有給休暇管理簿の作成だけでなく、適切な管理体制を整える必要があります。
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株式会社リクルートの転職活動者の意識・動向調査(2021)の調査結果によれば、新型コロナウイルスがきっかけで転職活動を始めた人は63.5%いることが分かりました。
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-->2019年以降作成義務と保存期間が設定されている
2019年4月より施行された、働き方改革関連法により労働基準法が改正され、大企業・中小企業問わず、すべての事業者に対し「年次有給休暇管理簿」の作成が義務付けられました。
改正に合わせ、従業員ごとに有給休暇を適切に取得しているか、管理することも同時に企業に義務付けられました。
年次有給休暇管理簿は従業員に有給休暇を与えた期間中、および期間終了後、3年間保存しなければなりません。
働き方改革関連法施行後に義務付けられた年次有給休暇の付与について詳しくは、年次有給休暇の付与日数は?義務化の概要と有給休暇を年5日取得させるための方法を解説 をご覧ください。
記載の対象者は?
年次有給休暇管理簿を作成する対象者は、有給休暇が10日以上付与される従業員です。雇用形態は関係なく、パートやアルバイトなどの非正規雇用の従業員も対象となります。
なお、10日以上の有給休暇を付与されるのは、勤続勤務年数が半年以上かつ、全労働日の8割以上出勤している従業員です。全てのパートやアルバイトが該当するとは限りませんが、有給付与の対象になっていないか確認する必要があります。
労働条件やその他労務管理について、経営者と一体的な立場である管理監督者も条件を満たしていれば、有給付与の対象です。管理監督者は、1日8時間、1週間40時間という労働時間の上限が適用されない、割増賃金の支払い義務も適用されないなどの例外がありますが、有給付与と年次有給休暇管理簿の作成の対象外とはならないため、注意が必要です。
違反するとどうなる?
年次有給休暇管理簿を作成していない場合でも法律上の罰則はありません。ただし、有給休暇の取得義務に違反する場合には罰則があり、有給を10日以上付与されている従業員が5日以上有給休暇を取得していない場合には、従業員1人あたり30万円以下の罰金が科されます。複数人が該当する場合には、その分だけ罰金額が増える計算です。
年次有給休暇管理簿の作成に関する罰則はないとしても、作成しなければ有給休暇の管理が難しく、取得漏れのリスクもあるため、適切に作成をするのが望ましいと言えます。
有給休暇管理簿の作成方法
適切な年次有給休暇管理簿の作成の手引きとして本項目では、年次有給休暇管理簿に必要な項目やフォーマットをどのようにするべきか、解説します。
必要な項目を記載する
年次有給休暇管理簿に必要な項目は有給休暇の日数・時季・基準日の3つです。
取得した有給休暇の日数
有給休暇が付与された基準日から、1年以内に従業員が有給休暇を利用できる日数です。入社2年目以降は前年度の有給休暇が繰り越されるため、付与された日数ではなく、保有している日数を計算する必要があります。例えば取得日数が5日の場合は「5日」、半日の場合は「0. 5日」のように記載します。
なお、有給休暇の付与日数は請求権の時効が2年と規定されています。それまでに有給休暇を取得しなかった場合には有給休暇は消えてしまい、以降従業員が取得することはできません。
時季
年次有給休暇を従業員が実際に取得した日付です。取得した日数は1日全体の全休と、半日分である半休の2種類で記載し、「5月10日(全休)」のように記載します。なお、有給休暇の時間指定を社内で認めている場合には、取得した時間数も記載する必要があります。
基準日
従業員に対して、有給休暇を付与した日付のことです。前年度分の有給休暇が残っている場合には、前年度の基準日と今年度の基準日の2つを記載します。有給を付与した日付は、企業にもよりますが、従業員ごとに入社してから半年経過した日を基準とする方法と、基準日を統一する方法があります。
従業員ごとに入社してから半年経過した日を基準とする方法の場合、4月1日に入社した従業員であれば10月1日に有給休暇が付与されます。正確に管理できるものの、従業員ごとに基準日が変わり、管理が煩雑になるといったデメリットがあります。
基準日を統一する方法の場合、4月1日と10月1日を基準とする、というようなルールを定めます。この方法を採用する場合、基準日の管理はしやすいものの、入社日によって、有給の付与日が変わるような不公平が発生しないよう、適切なルールづくりが必要です。
管理簿のフォーマットについて確認
年次有給休暇管理簿はフォーマットの指定がなく、上記の日数、時季、基準日の3つが記載されていれば、会社で自由にフォーマットを設定できます。必ずしも書類である必要はなく、システム上のデータで管理しても問題ありません。
なお、書類のフォーマットが必要な場合には厚生労働省のフォーマットを無料でダウンロードして活用することができます。
有給休暇管理簿作成時のポイント
年次有給休暇管理簿を作成する際には、ミスなく正確に管理することが重要です。ここでは、有給休暇管理簿を作成する際に、どのような点に気をつけるべきか解説します。
作成時にミスがないように進める
年次有給休暇管理簿の記載にミスがあると、従業員の有給休暇の取得漏れや罰金の支払いにつながるおそれがあります。
年次有給休暇管理簿は、有給付与の対象となる従業員ごとに個別で作成する必要があるため、従業員数に比例して作成の手間が大きくなります。これらの作業を全て手作業で実施しようとすると、記載ミスや計算ミスが生じやすくなるため、人的ミスの防止のためにはツール導入なども視野に入れるとよいでしょう。
有給休暇を正確に管理できる体制をつくる
有給休暇を正確に管理するには、効率的かつ正確に管理できる体制づくりが重要です。タイムカード、Excel、勤怠管理システムなど労働時間や有給休暇を管理する方法は複数ありますが、現場で労働時間が正確に管理できていない場合には、有給休暇の適切な管理にも支障が出ます。
例えば、有給休暇の基準日と日数を把握できていないために、1年間に5日以上の有給取得ができず、罰則が科される対象となる、といったケースです。こうした事態を未然に防ぐため、社内で有給休暇取得の手続きで非効率な部分やミスが生じやすい部分をあらかじめ洗い出しておき、対策を講じる必要があるのです。
労働者名簿や賃金台帳と合わせて作成すると効率的
年次有給休暇管理簿は、従業員ごとに作成義務がある労働者名簿や賃金台帳などの書類を兼ねて作成、管理する方法もあります。
労働者名簿は、労働基準法107条で従業員ごとに作成が義務付けられている書類です。この書類は従業員の氏名や生年月日などの情報を最新情報で管理します。賃金台帳とは、従業員への給料支払い状況を記載した書類です。こちらの書類も従業員ごとに作成が義務付けられており、労働日数や労働時間数などを管理します。
これらの書類は決まったフォーマットがないため、年次有給休暇管理簿の内容と掛け合わせて記載しても問題ありません。これらの書類を1つにまとめることで、効率的に管理できます。
勤怠管理システムで効率的に管理するのがおすすめ
年次有給休暇管理簿の作成を効率的かつ正確に管理するためには、勤怠管理システムの導入がおすすめです。勤怠管理システムを導入することで、以下のようなメリットがあります。
- 紙のように保管場所を取らない
- 有給休暇の申請から取得までを効率化できる
- 有給休暇を取得していない従業員をピックアップできる機能があるものもある
- 労働者名簿や賃金台帳への転記を自動化できる
紙のように保管場所を取らない
年次有給休暇管理簿は従業員ごとに作成する必要があり、従業員数が多ければ、それに比例して書類の量も増えます。そのため、書類管理のための書類代や書類の保管場所の確保が問題になります。
勤怠管理システムを導入すれば、年次有給休暇管理簿のデータをパソコンややクラウド上に保存でき、保管場所を必要としません。
有給休暇の申請から取得までを効率化できる
勤怠管理システムの導入により、有給休暇の申請から取得までの処理を効率化できます。従業員が有給休暇を取得する場合、管理者に対して申請し、有給休暇の管理者に連絡されて通知されるなど、複数の手順を踏む必要があり、申告漏れのリスクもありました。
一方、勤怠管理システムを活用すれば申請から承認、取得までをシステム上で管理できるため、申告漏れのリスクも少なく、有給取得までに必要な時間を短縮できます。
有給休暇を取得していない従業員をピックアップできる機能があるものもある
勤怠管理システムの中には、有給を年間で5日以上取得していない従業員を自動で集計し、通知できる機能があるものもあります。これにより、有給休暇の取得期限までに従業員に取得を促して、必要分の有給の取得し忘れを防止できます。
労働者名簿や賃金台帳への転記を自動化できる
勤怠管理システムの機能として、労働者名簿や賃金台帳への転記を自動でできるタイプもあります。これらの書類への転記ができることで、処理にかかる時間が短縮されるだけではなく、入力ミスが生じるリスクも少なくなります。
まとめ
年次有給休暇管理簿は2019年4月の働き方改革関連法施行以降、作成と保存が義務付けられました。有給休暇の付与日数が10日以上の企業で作成が義務付けられるため、すべての企業で対応が求められます。
年次有給休暇管理簿を正確かつ効率的に作成するには、勤怠管理システムを活用するのがおすすめです。現在タイムカードやExcelで年次有給休暇管理簿や労働時間の管理を行っている企業は、有給休暇の取得漏れを回避し、ミス削減が可能な体制づくりのためにも、システム導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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