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残業を減らすには? 残業が慢性化する原因と今からできる削減方法を解説

公開日時:2022.08.30 / 更新日時:2023.10.11

2019年に働き方改革関連法が施行されたことにより、企業は残業時間を把握し、残業時間を減らすことが求められるようになりました。しかし、企業の中で残業が常態化している場合、残業を減らすためにどこから手を付けていいか分からない担当者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、残業が減らない原因と、残業削減のための具体的な方法について解説します。

なぜ残業がなくならないのか

残業が減らない要因としては、効率化が進まない、顧客の要望に対応するためなど、実務上の課題だけではなく、従業員に残業を減らさなければいけないという意識が薄いことも挙げられます。残業が減らない理由や、残業削減のために何が必要かを解説します。

残業が減らない要因

残業が減らない大きな理由は、会社の労働環境に問題があるためです。残業が減らない具体的な要因としては以下の要素などが挙げられます。

  • 業務量が多い
  • 顧客対応に追われている
  • 職場の雰囲気や上司、同僚につきあって残業せざるを得ない
  • 従業員が残業代を得たいと考えている
  • 長時間労働により会社への貢献を評価してもらいたい
  • 自らが納得いくまで働きたい

会社によって残業が減らない原因はさまざまです。闇雲に制度を導入するなどしても、課題と合っていなければ思うような効果が出せず、形骸化してしまう可能性もあります。まずは残業の減らない原因を分析し、対処方法を検討することが大切です。

残業削減が必要なことであると認識させる

残業を減らすためには、残業削減への取り組みが法律上必要になったことを、従業員に認識してもらわなければいけません。従業員の過労死や過労自死が社会問題化し、2019年から施行された働き方改革の一環として、時間外労働時間の上限規定が導入されました。

時間外労働の上限規制に違反した場合には、「6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金」が課せられるため、適切な管理体制を整え、残業を減らすことが法的に求められています。

時間外労働の上限規制により、新たに定められたものとしては以下が挙げられます。

  • 年720時間以内
  • 休日労働を含み、1か月100 時間未満
  • 休日労働を含み、2か月~6か月平均で80時間以内
  • 月45時間の時間外労働を拡大できるのは年6か月まで(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)

従来であれば、36協定の特別条項を結ぶことで、時間外労働を制限なく従業員に行わせることが可能でした。しかし、明確な残業時間の上限設定と、適切な管理体制を整えることが求められるようになり、違反してしまうと、経営者だけでなく、残業に関する権限を持っている上司も罰則の対象となります。

詳細は用語集「時間外労働の上限規制」をご覧ください。

残業を減らすための方法

残業削減の第一歩は残業が慢性化している原因を探り、それぞれの課題に対して対応策を施す必要があります。

勤怠管理システムを導入する

残業を減らす対策として、勤怠管理システムを導入し、効率的かつ正確に残業時間の管理ができる体制を整えることが効果的です。勤怠管理システムとは、スマートフォンなどで出退勤の打刻ができ、勤怠データを自動で集計できるシステムのことです。勤怠管理システムを導入することで、正確かつ効率的に労働時間の管理ができ、残業時間の削減に対して何が課題なのか、把握しやすくなります。

紙のタイムカードや出勤簿などのアナログな管理方法の場合、従業員がどのくらい残業しているか、合計時間を集計するまで把握できません。その結果、長時間労働になっていることに気付けない可能性があります。

勤怠管理システムを導入すれば、リアルタイムで残業時間がどのくらいか正確な集計ができます。そのため、長時間残業をしている従業員は誰かが簡単に可視化され、必要に応じて業務を見直し、労働時間を削減させる施策を検討できます。

適切な勤怠管理体制を整えることで、従業員が労働時間を意識して働くことを促せるため、残業削減対策としても効果が期待できます。

業務にかかる工数を可視化する

従業員の業務にかかる工数が最適か把握するため、どの業務にどのくらいの時間をかけているか、1つひとつ実態を確認する必要があります。業務の内容やかかっている時間を見直すことで、対象の業務の必要性や業務量が適切かどうか確認できます。

業務を見直す際には、対象の業務の配分を見直す、業務自体をなくす、業務を効率化して短時間で処理できるようにする、という3つの観点から考えることが重要です。たとえば、現時点で1時間かかっている作業を、ツールの導入や工夫によって30分に削減できるか検討するなどの工夫が考えられます。

改善案を考案する際には、非現実的な案にならないよう、実現可能な範囲の工数に調整していきます。

業務内容やタスク量が担当者のスキルに合っているか

業務内容やタスク量が担当者のスキルに合っていない場合、その業務の処理に必要以上の時間がかかってしまい、労働時間が増えてしまいます。そのため、従業員のスキルを見極め、適切な人材配置を行い、勤務時間内に業務が終了できるよう工夫することが必要です。

従業員のスキルを見極め、適切な人材配置をするためには、管理職が従業員1人ひとりのスキルや適正を見極め、人材配置するマネジメント能力が求められます。そのうえで、明らかに人手が不足している場合には人員補充も検討しましょう。

属人化を減らし、業務を標準化する

業務が属人化すると業務が滞る要因となるため、標準化することが大切です。属人化とは、スキルやノウハウの問題で、特定の人しか対応できない状態を示します。属人化し、特定の人しか対応できない、問い合わせが入ったときや、確認事項があったとき、その人に確認するまで業務の進行が止まってしまいます。

属人化を避けるためには、マニュアルを作成する方法が効果的です。ノウハウを共有することで、特定の従業員に業務が偏ることを防ぎ、作業が止まることがないように対応します。もし専門性が高いなどの要因で、標準化が難しい場合には、副担当をつける方法や、少人数にノウハウを共有するなどの手法で対応すると効果的です。

残業を事前申請制にする

残業を事前申告制にし、残業する際には、日にちや所要時間、理由を管理職に申請し承認する制度を導入する方法もあります。申告制にして、心理的なハードルを設けることで、残業を抑制できます。また「残業して残業代を稼ぎたい」という不必要な目的による残業を防ぐ効果があります。

事前申告制にすることで、「決められた時間に終わらせなければいけない」という意識が芽生え、メリハリがついた仕事ができ、業務効率改善の効果が期待できます。

残業時間が評価に関わっていないかを検証

残業をすることが評価につながると感じている従業員がいる可能性もあります。特に一昔前は「残業することで一生懸命働いている」と評価される風潮がありました。そのような風習が残っていると、残業を減らすのは簡単ではありません。

具体的な対処法としては、経営者や管理職の意識改革、社員への周知徹底、評価制度を明確化するなどの方法で、社員の意識を変える方法があります。また、ルールや制度を定めたら、経営者や管理職が率先して実施し、残業をしないように働きかけることが大切です。経営者層の意識が変わらなければ、ルールが守られなくなり、残業を減らすことが難しくなります。

強制力のある仕組みをつくる

どうしても残業を削減できない場合、強制的に残業させない仕組みづくりも方法としては考えられます。長年染み付いた習慣を強制的に断ち切る方法として効果的です。

たとえば、「上司が帰らないから帰りにくくて残業する」など会社の組織風土が残業の要因として関係していることもあります。そのような場合に強制力のある仕組みがあることで、組織風土を変える効果が期待できます。

具体的には以下の手法があります。

  • ノー残業デー
  • 定時にオフィスを消灯
  • PCの強制シャットダウン

ただし、残業しなければ業務が回らないような状態になっている場合、ルールが守られずに形骸化する可能性があります。そのような場合には、業務の効率化や見直しから始めることを検討してください。

残業削減に成功した企業の事例

残業を減らすために、どのような取り組みするべきなのか、これは企業の抱えている課題によって変わります。そのため、自社に合わせた取り組みとして何から取り掛かればよいかわからない、という企業もあるかも知れません。

残業削減した企業の事例は、厚生労働省の働き方改革特設サイトにて、多数取り扱っています。業務のデジタル化により、時間外労働を削減した運送会社や、残業時間のポイント制を導入した電子機器メーカーなど、さまざまな事例を閲覧することができます。

思うように従業員から賛成を得られなかった場合にどうするか、どのような制度を取り入れた結果どのような成果があったのかを具体的に確認できるため、残業削減に向けた取り組みの参考になります。

まとめ

残業削減に取り組むことは、法律遵守の観点からはもちろん、従業員の負担を軽減するとともに会社の人件費の削減にもづながり、従業員と会社の双方にメリットがあります。

それぞれの企業の状況によって抱えている問題や働き方が異なるため、残業削減のための施策の最適解は1つではありません。

残業が恒常化する要因の多くは、労働環境や経営者や管理者の意識にあります。そのため、経営者やマネジメントする側の人間が、現場の状況を観察・分析し、自社の課題に合わせた改善方を見つけることが大切です。

残業削減のためには原因を探り問題を解消することが、解決策につながる一歩になります。

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