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時間休(時間単位年休)がどのような制度なのか、またどのように導入すればよいかを教えてください
Q. 時間休(時間単位年休)がどのような制度なのか、またどのように導入すればよいかを教えてください。
宿泊・飲食業界の企業で労務担当として働いています。自社の業界は常に人手不足で、日ごとの有給が取りづらく、有給消化率が低いという問題を抱えています。そのため、有給消化率の向上を目的として、時間単位で有給が取れる時間休(時間単位年休)の導入を検討中です。
しかし、導入の仕方はおろか、時間休(時間単位年休)について、あまり理解できておりません。時間休(時間単位年休)とはどのような制度なのでしょうか。具体的な導入方法を教えてください。
A. 時間休(時間単位年休)とは、柔軟に休暇を取得できることを目的に制定された、時間単位で有給休暇が取れる制度です。時間休(時間単位年休)を導入する場合は就業規則への記載と労使協定の締結が必要です。
時間休(時間単位年休)とは、治療のための通院や子どもの学校行事への参加、家族の介護といった従業員の事情に応じて、休暇の取得に柔軟性を持たせることを目的として制定されています。従業員にとっては、1日や半日の有給休暇を取るほどではないものの、家族のちょっとした介護・通院や行事のために、という場合などの利用に便利な制度です。
時間休(時間単位年休)を導入する場合は、就業規則に時間単位での年次有給休暇付与について規定しなければなりません。加えて労使協定にも「時間休の対象者の範囲」「年間で時間休が取得可能な日数(年5日以内)」「時間休1日分の時間数」「1時間以外の時間休取得単位」の4つを定める必要があります。
なお、時間休(時間単位年休)の利用は取得が必須である年5日以上の年次有給休暇としてはカウントされないため、別途年次有給休暇を1日単位で取得しなければなりません。
時間休(時間単位年休)とは
時間休(時間単位年休)とは、時間単位での年次有給休暇の取得を有効とする制度です。この制度は、2010年4月施行の改正労働基準法により制定されました。
原則として、年次有給休暇は1日単位で取得しますが、時間休(時間単位年休)は1時間単位で取得可能です。
時間休(時間単位年休)導入のメリット
時間休(時間単位年休)が取得可能となれば、有給休暇取得率の向上や企業のイメージアップにつながります。さらに「離職率の低下」「採用力の強化」などのメリットが期待でき、従業員の生産力も向上するでしょう。
就業規則の記載と労使協定締結の方法
就業規則および労使協定で時間休(時間単位年休)について記載すべき事項は、ほぼ同様です。ここから、厚生労働省によるそれぞれの記載例をもとに具体的な記載方法を解説します。
まずは就業規則への時間休(時間単位年休)についての記載例をご覧ください。
就業規則では、年次有給休暇を時間単位で付与する旨の規定が必要です。
次に労使協定の記載例をご紹介します。
労使協定締結は、労働者の過半数で組織された「労働組合」または「労働者の過半数を代表する者」との間で、書面によって行う必要があります。ただし「労働組合」か「労働者の代表者」のどちらと締結するかは企業の就業規則によって異なるため、自社の規定を確認してください。
以上を踏まえて、就業規則および労使協定に共通する事項は次のとおりです。なお、これらは労使協定には必ず定めなければなりません。
1.時間単位年休の対象者の範囲
2.1年間で時間休(時間単位年休)が取得可能な日数
3.時間休(時間単位年休)1日分の時間数
4.1時間以外の場合の時間休(時間単位年休)の単位
就業規則と労使協定において必要事項を定める
労働基準法に準拠した、就業規則と労使協定に必要な上記の4つの項目を定める具体的な方法を解説します。
1.時間休(時間単位年休)対象者の範囲を定める
「すべての労働者」など、時間休(時間単位年休)の取得対象となる従業員の範囲を定めます。正常な事業運営を妨げる場合に限り、一部の従業員を範囲外とする規定も可能です。注意点は、「育児を行う労働者」「通院する労働者」といった取得目的での範囲限定はできないことです。あくまでどの従業員を対象から外すかの観点で範囲を定めましょう。
2.1年間で時間休(時間単位年休)が取得可能な日数を定める
1年間での時間休(時間単位年休)取得の上限は5日と規定されているため、その範囲内で定めます。
3.時間休(時間単位年休)1日分の時間数を定める
年次有給休暇1日分が、時間休(時間単位年休)の何時間分にあたるかを定めます。ただし、労働時間に1時間未満の端数があった場合は、時間単位に切り上げて計算しなければなりません。
計算例:労働時間が1日6時間30分の場合は7時間
4.1時間以外の場合の時間休の単位を決める
時間休(時間単位年休)は基本的に1時間単位で取得可能と規定されていますが、企業において1時間以上の単位にて定めることも可能です。その場合、1日の所定労働時間を上回らない範囲で何時間単位にするかを定める必要があります。
時間休(時間単位年休)の注意点
時間休(時間単位年休)の就業規則制定および労使協定締結に際しての注意点には次の2つが挙げられます。
- 年5日以上の有給取得義務には含まれない
- 従業員の労働時間管理が煩雑になる
以下で、それぞれ詳しく解説します。
年5日以上の有給取得義務には含まれない
労働基準法改正により、2019年4月から有給休暇付与日数が10日以上の全ての労働者に対し、年次有給休暇を5日間取得させることが義務化されました。
その5日には、時間休(時間単位年休)の取得分を含まないため、企業は時間休以外に5日間の有給休暇を別途取得させなければなりません。
つまり、時間休(時間単位年休)と1日単位の年次有給休暇は異なるものとして日数計算をする必要があります。時間給(時間単位年休)のみを与え、年次有給休暇を付与しないことで、知らず知らずのうちに労働基準法に違反しないように注意しましょう。
従業員の労働時間管理が煩雑になる
労務・総務の担当者にとっては、時間単位で従業員の労働時間を管理しなければならず、年次有給休暇取得日数の計算が複雑になります。その複雑さゆえに計算ミスにつながり、年次有給休暇の残日数が曖昧になったり、給与を誤支給してしまったりするといったケースもあるため、十分な注意が必要です。
このような問題を防止するためにも、時間休(時間単位年休)の取得実績に漏れがないよう慎重に計算しましょう。対策としては、勤怠管理ツールや人事労務ツールといったシステムの導入により、計算や管理が容易になります。
時間休の制度を取り入れることは、企業・従業員の双方にメリットがある一方、導入後の注意点も踏まえる必要があります。しかし、システムの活用により問題の減少が期待できるでしょう。
まとめ
時間休(時間単位年休)制度の概要から具体的な導入方法などについて解説しました。
時間休の導入は、従業員にとって弾力的な休暇取得が可能となるため、働きやすい環境への改善となります。
制度を取り入れるためには、就業規則への記載と労使協定締結が必要であり、それぞれ「時間休対象者の範囲」「1年間で取得可能な時間休の日数」「時間休1日分の時間数」「1時間以外の時間休取得単位」について定めます。
しかし、時間休の導入は、労働時間管理の複雑化を招く可能性があります。時間休制度を取り入れた場合に懸念される問題を解消するためには、勤怠管理ツールや労務管理ツールの導入が有効です。
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