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ダイバーシティとは?注目される理由や実践するメリット、取り組み事例を紹介

公開日時:2021.10.29 / 更新日時:2022.03.09

ダイバーシティという考え方が普及してきているものの、まだ取り組めていない、具体的に何をしたらいいか十分理解できていないという企業の現状もあります。この記事では、ダイバーシティの意味や導入のメリット、課題と解決策を解説しています。また、企業で行われている事例も紹介していますので、参考にしてみてください。

ダイバーシティとは

ダイバーシティは、直訳すると多様性という意味です。ビジネスの現場では、性別・人種・国籍・宗教・学歴・性的指向など異なる多様な人材を生かして、企業の競争力を向上する取り組みのことを指します。企業の好感度やCSR(企業の社会的責任)などとしてではなく、経営戦略の一環として行われます。ダイバーシティ経営やダイバーシティ&インクルージョンなどとも呼ばれます。

ダイバーシティの考えは、1960年代に米国で、国内のマイノリティが差別を受けない社会を実現するための公民権運動などをきっかけにして生まれました。1990年代になるとダイバーシティの受容が進み、事業の発展が多く見られるようになったため、経営戦略としても効果的であると認知されるようになりました。

ダイバーシティが注目される背景

日本でダイバーシティが注目される背景として、企業のグローバル化や消費者の価値観の多様化、少子化による生産年齢人口の減少が挙げられます。

▼グローバル化
グローバル化が進み、海外進出する日本企業が増加しました。多様な価値観を踏まえた商品やサービスの開発、外国市場での競争力向上のためにダイバーシティが注目されています。

▼価値観の多様化
「流行よりも自分らしさを重視したい」「商品の購入にお金を使うよりも、ライブや旅行などの体験にお金を使いたい」など、消費者の価値観が多様化しています。企業は、多様化するニーズに応えるための商品やサービスを提供する必要があります。そのためにも、社内にいる多様な価値観や考え方を持つ人材を活用するダイバーシティが注目されています。

▼少子化による生産年齢人口の減少
少子化に伴い生産年齢人口が減少しています。日本の生産年齢人口(15歳~64歳の人口)は1995年の8,716万人をピークに減少傾向にあり、2021年1月現在は、約7,556万人となっています。人手不足を解消するために、子育て世代の女性や障がい者、外国人、シニアなどの雇用を促進するためにダイバーシティが注目されています。

ダイバーシティに取り組むメリット

ダイバーシティに取り組むことで、企業は新たな視点による新商品・サービスの開発や人材不足の解消につながるといったメリットがあります。それぞれのメリットについて詳しく解説します。

新たな視点を取り込める

ダイバーシティに取り組むと、性別や国籍、人種などが異なる多様な人材を獲得できます。異なる考え方・バックグラウンドを持った人材を登用することで、今までなかった新たな視点を取り込み、新サービスや新商品のアイデアが生まれやすくなることがメリットです。

また、さまざまな視点があることで以下のように多様化する消費者のニーズに臨機応変に対応できる効果も期待できます。

多様な視点とニーズの例

  • 女性従業員を積極的に活用することで、男性従業員だけでは、掴みきれなかった女性向け生活用品のニーズに対応した商品開発ができる。
  • 高齢者や身体障がい者の従業員の意見を取り入れることで、足の不自由な人や高齢者でも利用しやすい施設の設計が可能になる。
  • ヴィーガンやイスラム教徒の従業員の意見を取り入れ、外国人観光客が利用しやすいフードコートを作り利用者を増やす。 など

人材不足を解消できる

ダイバーシティに取り組むと、子育て世代の女性や障がい者、シニア層など、今まで労働意欲があっても働けなかった人材の活用が進み、人材不足を解消できます。その証拠として、生産年齢人口が減少しているものの、労働力人口(15歳以上の就業者と完全失業者の合計)は増加しています。これは、女性や生産年齢人口に含まれない65歳以上の高齢者の労働参加が増えているからです。ただし、多様な人材が柔軟に働けるようにリモートワークやフレックスタイム制などを取り入れる必要があります。

ダイバーシティの課題と解決策

ダイバーシティの推進はメリットがある一方で、既存従業員から受け入れられない、働く環境が整備されていないなどの課題があります。ここでは、ダイバーシティを推進する上での課題と解決策について解説します。

既存従業員から受け入れられない

多様な人材の雇用を促進しても、日本は歴史的に同質性を重視する傾向があるため、既存従業員から受け入れられないという課題があります。例えば、従業員の中には、従来の企業文化や固定観念から脱せずダイバーシティの推進に抵抗感を抱く人や、ダイバーシティへの理解が足りておらず「ダイバーシティ=マイノリティが優遇される」と間違った解釈をしている人がいます。

既存従業員向けにダイバーシティの理解を深めるための研修が必要です。特に、既存のルールや文化に慣れている従業員や管理職の意識改革が重要になります。長年慣れ親しんだ制度に問題を感じておらず、わざわざダイバーシティに取り組むことに疑問を持つ人もいます。ダイバーシティのメリットや必要性を伝え、多様な人材を受け入れられる意識を醸成してください。

多様な人材が働く環境が整っていない

多様な人材が働きやすいような制度や職場環境が整っておらず、離職してしまうことも課題として挙げられます。多様な人材が働きやすいような取り組みとして、以下の例があります。

  • 外国人従業員がコミュニケーションを取りやすいように同じ部署に外国語を話せる従業員を配置する。
  • 外国人従業員の日本語習得をサポートする。
  • 従業員の宗教に配慮して食堂のメニューを整備する。
  • 子育てや介護と仕事を両立できるように、リモートワークや短時間勤務、有給休暇の時間単位取得制度を設ける。 など

例えば、外国人従業員が意見を発しても、言語の壁があり意図を汲み取りきれないと、せっかくのアイデアが生かせません。また、外国人従業員も不満を感じてモチベーションの低下、最悪の場合離職する可能性もあります。多様な人材のモチベーション維持や定着率向上のために、従業員が働きやすい環境を整備してください。

ダイバーシティが成功している事例

ダイバーシティに取り組んでいる企業は多くあります。ここでは、女性・障がい者・外国人・LGBTの雇用促進や定着率向上のために取り組んでいる企業の事例を紹介します。

1.女性活躍の推進

▼株式会社日立ハイテク
株式会社日立ハイテクでは、女性活躍推進のために、男性応募者が多い中でも女性採用の割合を全体の30%とする目標を掲げて母数を増やし、女性研究者や女性エンジニアが長期的なキャリアを構築できる環境整備に取り組んでいます。

具体的な取り組みの内容としては、結婚や出産などのライフイベントを考慮して、海外赴任の機会を前倒して設ける、女性管理職育成向けの研修やメンタリングの機会を提供するなどが挙げられます。これらの取り組みによって、女性管理職や女性部長の比率が増加しており、えるぼし認定の基準全てを満たしたえるぼしの3段階目や、なでしこ銘柄、健康経営優良法人の認定などにおいて、高く評価されています。

えるぼし認定基準の5つの評価項目

  1. 採用
  2. 継続就業
  3. 労働時間等の働き方
  4. 管理職比率
  5. 多様なキャリアコース

※3~4つの基準を満たすのが、えるぼしの2段階目、1~2つの基準を満たすのが、えるぼしの1段階目

▼ケイアイスター不動産株式会社

ケイアイスター不動産株式会社では、2011年に7人だった女性営業従業員が2020年までに85人まで増加しています。

不動産営業は夕方以降の商談が多く、子育て世代の女性従業員にとっては働きづらく、復帰後も同等のキャリアを形成できないという課題がありました。そこで、地域の不動産会社を顧客とする法人営業部を2015年に新たに設置しました。法人営業部は、女性営業従業員が働きやすく、結婚・出産後でもキャリアを形成できるように、定時で帰宅でき、土日も休むことが可能です。さらに、時差出勤や時短勤務、在宅勤務制度などを拡充して、女性が安心して働けるような仕組みを整えています。

障がいのある従業員の活躍

▼オムロン株式会社

オムロン株式会社では、社内にダイバーシティ推進部を設置し、グループ全体での障がい者雇用を促進しています。グループ全体で260人の障がい者を雇用しており、営業や企画など多岐に渡る業務を任せています。

本人が最大限能力をはっきできる環境作りを目指しており、2016年から各事業所に障がい者職業生活相談員を配置して上司と連携を取りながら支援できるようにしています。また、障がいのある従業員と年に一度の定期面談を実施しています。面談を通して必要な配慮がされているか、職場環境に問題点はないかなどの意見をもらい、環境改善に役立てています。

 

▼横関油脂工業株式会社

横関油脂工業株式会社では、障がいの有無にかかわらず従業員の能力を伸ばす取り組みを実施し、事業拡大につなげています。

障がいのある従業員にも資格の取得を促し、課題であった生産管理系基幹システムの導入に貢献してもらっています。また、障がいのある従業員が働きやすいように、定期的な通院ができる勤務形態にした上で、主治医と連携しながら能力を発揮できるような職場環境を整備しています。

外国人従業員が働きやすい環境整備

▼カシオ計算機株式会社

カシオ計算機株式会社では、イスラム教徒の外国人従業員のためにお祈り部屋の設置、宗教戒律を考慮した食堂のメニュー表記の工夫などを行い、外国人従業員が安心して働ける環境を整備しています。イスラム教徒の従業員が抱える、礼拝できない不安や食事に対する不安を払拭することで、最大限の能力を発揮してもらう狙いがあります。

また、外国人従業員が母国での重要な行事に参加できるようにするために、母国帰国休暇の制度も設けています。母国帰国休暇は、入社3年経過後から3年に1度のペースで特別休暇を付与する制度です。今までも有給休暇を取得して帰国する従業員もいたものの数が少なかったため、制度化することで休暇を取得しやすくする狙いがあります。

LGBTの理解促進のための社内外の活動

アクセンチュア株式会社では、社内のLGBTへの理解促進のために、アンコンシャスバイアス研修やeラーニング研修を実施しています。これらの研修により、LGBTについての基礎知識や職場での接し方を理解できます。社外での活動としては、LGBTイベントへの協賛、ブース出展、パレードへの参加などをしています。

ここでいう、「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」とは、無意識のうちに偏見を持った発言をしてしまうことです。アンコンシャスバイアスにより、LGBTの従業員がオフィスで肩身が狭くなってしまい、最悪の場合離職してしまう可能性があります。

また、LGBTは以下の言葉の頭文字をとった言葉です。

  • Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)
  • Gay(ゲイ、男性同性愛者)
  • Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)
  • Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別と異なる人)

この他にも、自らの性のあり方について、分からない人や特定の枠に属さない人であるQuestioning(クエスチョニング)やQueer(クイア)があり、「LGBTQ」と呼ばれることもあります。

まとめ

ダイバーシティとは、性別・人種・国籍・宗教・学歴・性的指向など異なる多様な人材を生かして、企業の競争力を向上する取り組みのことです。ダイバーシティの推進に取り組む上では、多様な人材と働き方を受け入れる環境づくりが重要です。

そのため、週5回、1日8時間の出勤を前提とした就労や、日本国内の慣習やコミュニケーションに沿った業務進行など、従来の働き方のモデルと必ずしも一致しない従業員を雇用する場合でも、企業側は柔軟な対応が必要になります。

このような多様な働き方の実現のため人事制度や企業理念の見直しが必須となりますが、システム導入で解決できる部分もあります。例えばテレワーク、時短勤務、障害者雇用枠の従業員、外国人の従業員など、柔軟に設定をカスタマイズして対応できる勤怠管理システムや、従業員の情報を集約できる人事管理システムの導入などを検討してみてください。

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