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障害者法定雇用率

しょうがいしゃほうていこようりつ

公開日時:2021.05.27 / 更新日時:2022.03.09

障害者法定雇用率とは、企業に雇用が義務付けられている障害者の割合を指します。障害者雇用率制度により、一定数以上の従業員を雇用している企業は、法定雇用率以上の割合で障害者を雇用することが義務付けられています。法定雇用率を設けることで、一般の労働者と同様の水準で、障害者が常用労働者になり得る機会を確保することにつながります。2021年(令和3年)時点の民間企業の障害者法定雇用率は2.3%です。43.5人以上の従業員を雇用している企業が対象になります 。

障害者法定雇用率の概要

障害に関係なく、誰もが社会参加できる「共生社会」の実現のため、一定数以上の従業員を雇用する企業は、全従業員のうち一定の割合以上の障害者を雇用することが義務付けられています。2021年3月1日より、障害者法定雇用率が引き上げられ、障害者の雇用が義務付けられる企業の範囲も拡大されました。対象となる企業に求められる対応について説明します。

1. 各企業の法定雇用障害者数の計算方法

各企業が雇用すべき障害者の人数は、次の計算式で算出できます。

法定雇用障害者数の計算式

自社の法定雇用障害者数=(常用労働者数+短時間労働者数×0.5)×障害者雇用率(2.3%)

※常用労働者の定義…期間を定めずに雇用されている、または1か月以上の期間を定めて雇用されている、1週間の労働時間が30時間以上の労働者
※短時間労働者…1年以上の雇用の見込みがあり、1週間の労働時間が20時間以上30時間未満の労働者

上記の計算式により算出された法定雇用障害者数は、「1=1人」とそのまま数えないケースもあり、障害の種類や障害者の週所定労働時間によって「1=2人」や「1=0.5人」など値が変化します。障害の種類と週所定労働時間による値の変化やカウント方法は以下の表を参考に確認しましょう。

週所定労働時間30時間以上20時間以上 30時間未満
身体障害者10.5
身体障害者(重度)21
知的障害者10.5
知的障害者(重度)21
精神障害者10.5 ※

※20時間以上30時間未満で働く精神障害者の短時間労働で、次の1かつ2を満たす方は、通常「0.5人」とカウントするところを特例として「1人」とカウントします。

1. 新規雇入れから3年以内の方、または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内の方
2. 2023年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した方

2. 対象企業に求められること

障害者の雇用が義務付けられる企業は、障害者法定雇用率を満たす必要があります。2021年3月から、障害者法定雇用率が民間事業主は2.3%、国・地方公共団体は2.6%に引き上げられ、また労働者数が45.5人から43.5人に変更となり対象企業の範囲が拡大されました。

障害者法定雇用率は、企業全体で満たす必要があります。事業主が同一の複数事業所を抱える企業の場合は、法定雇用率を事業所ごとに満たす必要はありません。ただし、グループ会社で親会社・子会社それぞれで事業主が異なる場合は、事業主ごとに法定雇用率を満たさなければなりません。

また、障害者法定雇用率を満たす義務がある企業は、法定雇用率以上の障害者を雇用するのと同時に、次の2点を守ることも義務付けられています。

  • 毎年6月1日時点の障害者雇用状況をハローワークに報告する
  • 障害者の雇用の促進と継続を図るための「障害者雇用推進者」を選任するよう努める

障害者法定雇用率を下回った場合、被る不利益

障害者法定雇用率を満たすよう義務付けられている企業が、規定の雇用率を下回った場合、納付金の支払い、行政指導の対象になるなどの不利益が生じます。

1. 不足1人につき月額5万円の納付金を支払う

常用労働者が100人を超える企業が障害者法定雇用率を下回った場合、不足している人数につき月額5万円の納付金を支払わなければなりません。

納付金は、障害者を多く雇用している企業の経済的負担を調整して、障害者雇用の水準を向上させるために「障害者雇用納付金制度」によって規定されているもので、罰金ではありません。障害者雇用納付金制度では、障害者法定雇用率を下回る企業から納付金を徴収する一方で、障害者を多く雇用している事業主に報奨金等の各種助成金を支給しています。

一方、法定雇用率を達成し、規定の雇用率を上回る障害者を雇用している企業は、超過1人当たり2万7000円が支給されます。

2. 法定雇用率を下回った場合、行政指導の対象になる

法定雇用率を下回る事業主には、雇用率達成のためにハローワークによる行政指導が行われます。この行政指導では、「雇入れ計画作成命令」が下されます。雇入れ計画は翌年1月から2年間分の計画を作成し、その後実施状況を確認され、計画通りに実施できていない場合は計画実施の勧告が行われます。

勧告後も改善されない場合、特別指導の対象となり、厚生労働省のホームページに企業名が公表されます。

障害者法定雇用率に関係する罰則規定

障害者の雇用に関して定められた義務を怠った企業には、「障害者雇用促進法」に規定されている罰則が科されます。民間企業は、次の義務に違反した場合30万円以下の罰金刑に処されます。

  • 常用雇用労働者数が43.5人以上の事業主で、「障害者雇用状況報告書」をハローワークに提出していない
  • 常用雇用労働者数が100人超の事業主で、毎年提出義務のある「障害者雇用納付金申告書」を提出していない、または虚偽の記述がある
  • 法定雇用率を達成せずハローワークから「雇入れに関する計画」の作成命令を出されたのにも関わらず、提出しない
  • 雇用していた障害者を解雇する際、ハローワークに解雇届を提出しない
  • 障害者雇用に関して立ち入り検査があった際に拒む、虚偽の報告を行う、質問に答えないなど対応が非協力的

※すべて障害者雇用促進法 5章の罰則規定による

これらに該当する企業は、納付金とは別に、罰則による罰金の支払いを命じられます。

まとめ

障害者法定雇用率とは、障害者雇用促進法に基づき、企業に達成が義務付けられている障害者の雇用の割合のことです。

常用労働者数が43.5人以上の企業は、法定雇用率(民間企業は2.3%)以上の障害者を雇用する義務があります。また、障害者雇用状況報告書や障害者雇用納付金申告書をハローワークに提出しなければなりません。

もし、企業が法定雇用率を達成できなかった場合には、不足1人につき月額5万円の納付金を国に収める必要があります。これらの規定を守らない企業に対しては行政指導や勧告が行われ、勧告を受け入れない企業に対しては企業名を厚生労働省のホームページ上に公表する措置が取られます。

また、法定雇用率を下回った企業に対する直接の罰則規定はないものの、「障害者雇用促進法」には罰則が設けられており、障害者法定雇用率に関わる必要書類の提出を怠る、障害者雇用に関する報告を行わない、虚偽の報告を行うなどした企業には罰金が科されます。誰もが社会参加できる共生社会の実現に向け、障害者法定雇用率の規定を守った経営に努めましょう。

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