人事・労務なんでもQ&A
連勤は何日まで許されるのでしょうか?違法になるケースはあるのでしょうか
Q.従業員の連勤は何日まで許されるのでしょうか?法律で定められた上限はありますか?
大手IT企業の人事部門で働いています。大型プロジェクトの締め切りが迫り、最近、開発部門から連勤に関する相談が急増しています。法律で定められた連勤の上限はあるのでしょうか?また、連勤を行う際の注意点や、従業員の健康を守るための対策について教えてください。
A. 連勤は原則12日間が上限ですが、変形休日制では最大48日間(1カ月で24日間)まで可能です
休日に関して、労働基準法第35条では以下のように定められています。
使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
②前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
すなわち、企業は従業員に対して、毎週少なくとも1日の休日を与えなければいけません。この規定に基づくと、連勤の上限は原則12日間となります。
例えば、1週目の日曜日を休日とし、月曜日から土曜日まで6日間勤務します。2週目は日曜日から金曜日まで6日間勤務し、土曜日を休日とします。この場合、1週目の月曜日から2週目の金曜日まで、12日間の連勤が可能となります。
ただし、4週間で4日以上の休日を確保する変形休日制を採用している場合は、最大48日間の連勤が認められます。
例えば、2サイクル8週間(56日間)のうち、前半4週の最初と後半4週の最後に4日間の連続休暇を設けた場合、理論上は48日間(1カ月あたり24日間)の連勤が可能となるのです。
変形休日制については、以下の記事で詳しく解説しています。
しかし、長期の連勤は従業員の健康に悪影響をおよぼす可能性が高いため、実際の運用においては十分な注意が必要です。従業員の健康管理と労働生産性の維持のため、可能な限り連勤は避け、適切な休息期間を設けることが望ましいでしょう。
そもそも連勤・休日とは
連勤と休日は、労働管理において重要な概念です。これらの定義と法的な位置づけを正しく理解することで、適切な労務管理が可能になります。
連勤とは
連勤とは連続勤務の略称で、デジタル大辞泉(小学館)では「休日をはさまず連日出勤すること」と解説されています。連勤は法律用語ではありませんが、労働基準法における休日や労働時間の規定と密接に関連しています。
休日とは
労働基準法で定められた休日(毎週少なくとも1日の休日、または4週間で4日以上の休日)は、「法定休日」と呼ばれ、企業が従業員に必ず付与しなければならない休日です。一方、企業が任意で設定する休日を「法定外休日」または「所定休日」と呼びます。週休2日制の企業では、1日が法定休日、もう1日が所定休日となることが一般的です。
両者の詳しい違いについては、以下の記事をご覧ください。
なお、休日出勤の際は割増賃金の支払いが必要になります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
雇用形態による連勤の取り扱い
連勤の上限は、基本的に雇用形態にかかわらず適用されます。労働基準法第32条で定める法定労働時間(1日8時間、週40時間)に満たない契約社員や派遣社員、パートやアルバイトであっても、労働基準法の休日規定は適用されます。原則として、すべての労働者に同じ上限が適用される点に注意しましょう。
一方、労働基準法第41条で定める管理監督者(「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」)には、労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されません。しかし、健康管理の観点から、一般の従業員と同様の配慮が必要です。
連勤の上限を超えるとどうなる?
連勤の上限を超えることは、単なる規則違反にとどまらず、さまざまな問題に派生するリスクが伴います。法的な罰則が科されたり、従業員に健康被害がおよぶなど、その影響は多岐にわたります。
労働基準法の違反・罰則
連勤の上限を超えることは労働基準法違反となります。具体的には、労働基準法第35条(休日に関する規定)に違反することになり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。
労働基準法の基本や労働基準法に違反した場合については、以下の記事で詳しく解説しています。
労働基準監督署による調査
労働基準法違反が発覚した場合、労働基準監督署による調査や指導が入る可能性があります。この調査では、勤怠記録や労働関係帳簿の確認、従業員へのヒアリングが行われることがあります。調査の結果、違反が認められた場合は、是正勧告や改善指導が行われ、悪質な場合は書類送検される可能性もあるでしょう。企業は真摯に対応し、速やかに是正措置を講じることが求められます。
従業員の健康への悪影響
過度の連勤は従業員の身体的・精神的健康に悪影響をおよぼす可能性があります。これは生産性の低下や、優秀な人材の損失につながりかねません。連勤が原因で従業員が退職した場合は、「会社都合退職」とみなされる可能性もあります。
安全配慮義務違反のリスク
過度の連勤は、使用者の安全配慮義務違反とみなされる場合があります。労働災害や健康被害が発生すると、企業側の法的責任を問われる危険性が高まり、企業イメージの低下につながります。
連勤の上限を超えないために
連勤の上限を超えないためには、計画的かつ継続的な取り組みが必要です。具体的には、以下のような対策を講じることが望ましいでしょう。
休日取得の奨励
計画的な休暇取得を推奨し、連勤を避けるよう努めましょう。従業員の心身の健康を守るためにも、定期的な休息は欠かせません。休暇を取得しやすい職場環境づくりに取り組みましょう。
労働時間の可視化
勤怠管理システムやタイムレコーダーを活用し、連勤や長時間労働が続いている従業員を把握しましょう。労働時間の状況を従業員と共有し、適切な対策を講じることが大切です。データに基づいた労務管理により、問題の早期発見と解決が可能となります。従業員の働き方を客観的に分析し、改善につなげていくことが重要なのです。
アマノでは、適切な労働時間の把握に役立つ多様な勤怠管理システムやタイムレコーダーを用意しています。
シフトの見直し
適切なシフト管理を行い、特定の従業員に負担が集中しないようにしましょう。業務量の平準化や人員配置の最適化を図ることで、より効率的な運営が可能になります。定期的にシフトの見直しを行い、従業員の声を反映させることも大切です。
変形労働時間制の導入
業務の繁閑に合わせて労働時間を調整できる、変形労働時間制の導入も検討しましょう。この制度により、繁忙期の長時間労働を抑制し、閑散期に休日を確保することが可能です。ただし、導入にあたっては労使間での合意形成が不可欠です。従業員の理解と協力を得ながら、慎重に進めていく必要があります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
勤務間インターバル制度の導入
勤務終了から次の勤務開始までに一定時間(11時間以上推奨)の休息時間を設ける、勤務間インターバル制度の導入も効果的です。この制度は、従業員の十分な休息時間を確保し、心身の疲労回復を促進します。結果として、労働生産性の向上や労働災害のリスク低減にもつながるのです。
詳しくは以下の記事で解説しています。
まとめ
本記事では、連勤の法的上限が原則12日間(変形休日制では最大48日間)であることを解説しました。この上限は労働基準法に基づいており、雇用形態にかかわらず、ほぼすべての従業員に適用されます。
上限を超える連勤は、法的リスクのほか、従業員の健康被害や企業イメージの悪化といったさまざまな問題を引き起こすおそれがあります。これを防ぐために、労働時間の可視化やシフトの見直しなどの対策が重要です。
このような複雑な労働時間管理を確実に行うためには、勤怠管理システムの導入も有効です。勤怠管理業務の負担を軽減しながら労務リスクを防止し、働きやすい職場環境の維持につなげていきましょう。
アラート機能で労務リスクを防止できる勤怠管理システム
アマノの勤怠管理システム「TimePro-VG」は、90年の実績・ノウハウを集結させて、使いやすい操作性と高い機能性を兼ね備えたシステムです。個々の従業員の勤務状況を楽に把握できるだけでなく、労働関連法に関するアラート機能を備えているため、労務リスクを未然に防止できます。
日々の勤怠管理業務にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。