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勤務間インターバル

きんむかんいんたーばる

公開日時:2021.05.27 / 更新日時:2022.03.09

勤務間インターバルとは、勤務終了後から次の勤務までに一定時間以上の休憩時間を設ける制度のことをいいます。例えば、休息時間を11時間と設定した場合には、23時まで残業した従業員の次の始業時間は翌日の10時というように、始業時間を調整するものです。これにより、労働者は生活時間や睡眠時間を確保できます。この制度は「働き方改革関連法」が施行された2019年4月より努力義務とされていますが、「令和2年就労条件総合調査」では導入している企業は4.2%、導入を検討している企業は15.9%に留まっています。

勤務間インターバルの基本情報

「勤務間インターバル」は、2019年4月に施行された働き方改革関連法により企業の努力義務として規定された制度で従業員の生活時間や睡眠時間を確保するため創設されました。導入よる従業員のワークライフバランスの向上が期待されています。同制度が規定された背景や基本情報について解説します。

1. 勤務間インターバルが規定された背景

働き方改革関連法施行による、労働時間等設定改善法の改正により、勤務間インターバルが規定された背景には、長時間労働を原因とする過労死が社会問題に発展したことが第一の理由として挙げられます。

勤務間インターバルは欧州では以前から導入されている制度です。EU加盟国では、1993年に制定されたEU労働時間指令に基づいて終業から次の始業までの休憩時間を11時間と定めています。

勤務間インターバルを導入することで、長時間労働の是正や従業員の休息時間の確保が可能になります。勤務間インターバルの制度を導入する場合、事業主は終業から始業までに一定時間の休息を確保することが努力義務として定められています。

現状、実施しない事業主に対しての罰則はなく、現時点では勤務間インターバル導入が義務化される予定はありません。

2. 勤務間インターバルのメリット

勤務間インターバルの導入によって、「従業員の健康維持」「優秀な人材の確保・定着」「生産性の向上」などのメリットが得られると期待されています。

(1)従業員の健康維持

ノルウェーで実施された看護師を対象とした調査では、11時間未満の休息時間がある日が月に3日あると、翌月の病気休暇日は21%増加することが明らかになりました。またIT系労働者を対象に行った調査では、インターバル時間が短いほどストレス反応が高く、インターバル時間が12時間を下回ると起床時の疲労感が残ることが分かりました。

これらの調査結果は、勤務間インターバルで11時間以上の休息時間を設けることで、ストレスや疲労感の軽減をはじめ、病気の予防など従業員の健康の維持につながることを示唆しています。

(2)優秀な人材の確保・定着

勤務間インターバルで一定時間以上の休息が確保できると、従業員は家族や友人と過ごす時間や趣味に費やす時間を取れるようになります。勤務間インターバル導入による長時間労働の是正から、従業員の離職対策や新たな人材の確保などの効果も期待できます。

(3)生産性の向上

勤務間インターバル制度の導入によって、従業員は業務とプライベートの時間を分けることができ、メリハリのある生活を送れるようになります。これにより、仕事の集中力が高まり生産性の向上も期待できます。

勤務間インターバルを導入する方法

勤務間インターバル制度を導入したい企業は、次のフローに沿って導入・運用を進めましょう。

1. 勤務間インターバル導入フロー

勤務間インターバル制度の導入、運用は以下のフローを参考に行います。

(1)制度導入の検討
従業員の労働時間を把握した上で、目的を設定します、経営層だけでなく従業員全員に制度の意義を理解・納得してもらうよう努めることで円滑な導入と運用が期待できます。

(2)制度を設計する
制度の対象となる従業員を設定するとともに、休息時間数の設定、休息時間を確保できない場合の対応方法などを検討・設計します。それをもとに就業規則の改定や労働協約の締結を行います。

(3)導入・運用する
管理職や従業員に、制度導入の意義や制度内容を周知します。さらに、顧客や取引先に対しても制度内容を説明し、インターバル時間を確保しやすい環境を構築します。

(4)制度内容・運用を見直す
制度導入から一定期間が経過したら、制度の効果を検証し、課題の洗い出しを行います。明らかになった課題をもとに、制度内容や運用方法の見直しを行いましょう。

2. 勤務間インターバル導入に使える助成金

厚生労働省による中小企業の事業主向けの助成金として、「働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)」が設けられています。支給対象となる取り組みの実施に要した経費の一部が、成果目標の達成状況に応じて支給されます。

新たに勤務間インターバルを導入する場合、休息時間が9時間以上11時間未満の企業に対して最大80万円が支給されます。さらに休息時間が11時間以上の場合、助成金は1企業あたり最大100万円です。

【新規導入の場合】

休息時間数対象経費の合計額に対する補助率1企業当たりの上限額
9時間以上11時間未満3/480万円
11時間以上3/4100万円

また、勤務間インターバルの適用範囲を拡大したり、時間を延長したりした場合にも助成金が支給されます。休息時間を9時間以上11時間未満にした場合は1企業あたり最大40万円が、11時間以上にした場合は最大50万円が支給されます。

【適用範囲の拡大・時間延長の場合】

休息時間数対象経費の合計額に対する補助率1企業当たりの上限額
9時間以上11時間未満3/440万円
11時間以上3/450万円

まとめ

勤務間インターバルは、終業時間から次の始業時間までに一定時間以上の休息時間を設ける長時間労働の規制を目的とした制度です。制度導入によって、従業員の健康の維持やワークライフバランスの向上による人材の定着、生産性のアップなどのメリットが期待できます。事業主の努力義務として設けられた制度ですが、導入企業はまだ少ないのが現状です。

新たに勤務間インターバル制度を導入するために円滑な勤怠管理を行うシステムの導入や、専門家によるアドバイスを希望する企業は、厚生労働省が用意している助成金の活用を検討してみましょう。

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