法定休日と法定外休日の違い、深夜労働と重複するケースなど、細かな規定に頭を悩ませている人事労務担当者も多いのではないでしょうか。
本記事では、休日出勤手当の基本から計算方法、正しい適用のポイントまで、わかりやすく解説します。
休日出勤手当とは
まずは休日出勤手当の定義や法的根拠、休日の種類について解説します。法定休日と法定外休日で取り扱いが異なるため、正確な理解が必要です。
休日出勤手当の定義
休日出勤手当とは、従業員が休日に労働した際に支払われる割増賃金のことを指します。割増賃金は、労働基準法第37条において企業に支払いが義務づけられています。
休日の種類
休日には「法定休日」と「法定外休日(所定休日)」の2種類があり、それぞれで以下のように手当の取り扱いが異なります。
法定休日
法定休日とは、労働基準法第35条で定められた週1日(または4週4日)の休日を指します。法定休日に労働した場合、使用者は通常の賃金の35%以上の割増賃金を支払う必要があります。
法定外休日
一方、法定外休日は会社が独自に定める休日のことです。法定外休日の労働に対しては、原則として割増賃金の支払い義務はありません。ただし、法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて労働した場合には、時間外労働として25%以上の割増賃金が発生します。
法定休日と法定外休日の違いや、割増賃金率について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
休日出勤手当と36協定
休日出勤手当を適用するためには、前提として36協定の締結と、労働基準監督署への届け出が必要不可欠です。
36協定とは、労働基準法第36条に基づく時間外・休日労働の取り決めに関する労使間の協定を指します。36協定を締結することで、はじめて時間外労働や休日出勤が可能になることを押さえておきましょう。
36協定の基本については、以下の記事で解説しています。
休日出勤手当が発生するケース
例えば、以下のような場合に休日出勤手当が発生します。
法定休日に出勤した場合
法定休日に出勤した場合、基礎賃金の1.35倍(35%割増)以上の休日出勤手当を支払う必要があります。なお、深夜(22時から翌5時まで)の労働が発生した場合は、さらに上乗せして割増賃金(25%以上)が発生します。
法定外休日の出勤で時間外労働が発生した場合
法定外休日(会社が独自に定めた休日)に出勤し、1日の労働時間が8時間を超えたり、週の労働時間が40時間を超えたりした場合、超過分に対して時間外労働の割増賃金(25%以上)が発生します。
休日出勤に伴い代休を取得した場合
代休とは、休日出勤をした後に、その代償として取得する休日を指します。休日出勤の日は通常の賃金に加え、法定休日なら35%以上、法定外休日なら25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
休日出勤手当が発生しないケース
ここでは、休日出勤手当が発生しない状況について解説します。例外的なケースも含めて正確に把握しておくと安心でしょう。
振替休日を取得し、休日出勤において時間外労働が発生した場合
振替休日は、休日出勤の前にあらかじめ別の日を休日に振り替えておく制度です。振替休日では、休日自体が振り替わるため、休日出勤の日は通常の労働日と同じ扱いになります。すなわち、振替休日を取得する場合の休日出勤では、休日出勤手当は発生しません。ただし、時間外労働が発生すれば、その分の25%以上の割増賃金が発生することになります。
代休と振替休日の違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
法定外休日に出勤し、時間外労働が生じなかった場合
会社が独自に定めた休日に出勤しても、法定時間内の労働であれば、通常の賃金のみで割増賃金は発生しません。
振替休日を取得し、休日出勤において時間外労働が生じなかった場合
先述のとおり、振替休日を取得した場合は、休日出勤の日は労働日と同じ扱いとなります。よって、法定時間内の労働であれば、割増賃金は発生しません。
管理職(管理監督者)が休日出勤をした場合
労働基準法第41条で定める管理監督者(「監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」)の場合は、労働時間、休憩、休日に関する規定の適用除外となるため、休日出勤手当が発生しません。深夜割増賃金(25%以上の割増)のみ支払い対象になります。
みなし残業制を採用している場合
みなし残業とは、実際の残業時間にかかわらず、一定時間分の残業代をあらかじめ給与に含めて支払う仕組みです。この制度のもとでは、法定外休日の労働時間がみなし残業時間内であれば、追加の割増賃金は不要となります。
しかし、法定休日に従業員を勤務させた場合は、みなし残業時間内の労働であっても、別途休日労働に対する割増賃金(通常の賃金の35%以上)を支払う必要がある点に注意しましょう。
みなし残業制の上限については、以下の記事で詳しく解説しています。
休日出勤手当の正しい計算方法
ここでは、月給制の場合における休日出勤手当の計算例を説明します。
まず、事前に1時間あたりの賃金である基礎時給を算出する必要があります。
例)月給が28万円で、月の所定労働時間が160時間の場合
基礎時給:280,000円 ÷ 160時間 = 1,750円
この1,750円を基準に、計算式を適用します。
上記の条件で、休日の種類別に休日出勤手当を計算してみましょう。
法定休日の労働の場合
法定休日労働の割増率:通常賃金の35%以上
計算式:基礎時給 × 1.35 × 労働時間
例)法定休日に8時間勤務した場合(22時から翌5時の深夜時間帯を除く)
給与計算:1,750円 × 1.35 × 8時間 = 18,900円
法定外休日の労働の場合
法定外休日労働の割増率:時間外労働に該当する部分のみ、通常賃金の25%以上
計算式:(基礎時給 × 所定労働時間)+(基礎時給 × 1.25 × 法定時間外労働時間)
例)法定外休日に10時間勤務した場合(22時から翌5時の深夜時間帯を除く)
給与計算:(1,750円 × 8時間) +(1,750円 × 1.25 × 2時間) = 18,375円
なお、1日の労働時間が8時間以内でも、週の労働時間が40時間を超えた場合は割増賃金が発生します。
法定休日に深夜まで働いた場合
深夜労働(22時から翌5時まで)には、休日労働と深夜労働の両方の割増賃金が適用されます。
計算式(法定休日の場合):(基礎時給 × 1.35 × 労働時間 ) + ( 基礎時給 × 0.25 × 深夜労働時間 )
例)法定休日に16時~24時まで8時間勤務した場合
休日労働分(16時から24時までの8時間)の給与計算:1,750円 × 1.35 × 8時間 = 18,900円
深夜労働分(22時から24時までの2時間)の給与計算:1,750円 × 0.25 × 2時間 = 875円
合計休日出勤手当:18,900円 + 875円 = 19,775円
なお、法定外休日においても、深夜労働時間分に対しては、時間外労働の有無にかかわらず25%以上の割増賃金を適用する必要があります。
休日出勤手当を正しく適用するポイント
休日出勤手当を正しく適用し、労使間のトラブルを防ぐためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
36協定の締結
休日出勤手当を正しく適用するためには、第一に36協定の締結が不可欠です。休日労働を含む時間外労働の上限や対象業務などを明確に定め、労働基準監督署に届け出た内容を厳守しましょう。
就業規則への明記
就業規則に休日出勤に関する規定を明確に記載することで、労使間のトラブルを未然に防ぐことができます。休日の定義や休日労働を認めるケース、休日出勤手当の計算方法などについて明確に記しておきましょう。
法定休日と法定外休日、振替休日と代休の区別
休日出勤手当は法定休日か法定外休日か、また振替休日と代休のどちらを取得するかによって計算方法が異なります。個々の従業員の休日を適切に管理し、それぞれの違いを正確に理解したうえで、正確な休日出勤手当を支給できるようにしましょう。
時間外労働や深夜労働との重複
法定外休日の労働に対しては、原則割増賃金の支払い義務はありませんが、時間外労働が発生した場合は、時間外労働分の割増賃金が発生します。また、休日に深夜まで働いた場合、休日割増と深夜割増の両方が適用されます。このような複雑なケースでも正確に割増賃金を計算できるよう、十分な理解と準備が必要です。
特殊な雇用形態への対応
パート・アルバイトであっても、休日出勤が生じた場合には、正社員と同じように休日出勤手当の支給が必要である点に注意しましょう。
一方、管理職は原則として割増賃金の対象外ですが、実態に即した判断が必要です。また、年俸制の従業員については、休日労働の取り扱いを雇用契約で明確に定めておきましょう。
まとめ
休日出勤手当は労働基準法で企業に支払いが義務づけられた重要な制度です。正確な計算と適切な支払いに努め、法令違反や労務トラブルを防ぐことが大切です。
一方で、休日出勤手当にはさまざまな規定があり、計算は複雑になりがちです。このような複雑な計算や管理を人手で行うのは、時間がかかるだけでなく、ミスのリスクも高まります。
そこで効果的なのが、勤怠管理システムの導入です。システムを活用することで、休日出勤の申請・承認から休日出勤手当の計算まで、一貫して正確かつ効率的に管理できます。適切な休日出勤手当の運用は、従業員の権利を守り、働きやすい職場環境を整えるうえでも重要です。正確な管理を通じて、健全な労働環境を維持していきましょう。
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