スムーズなお仕事のために知っておきたい 人事・労務の注目用語

変形労働時間制 読み方:へんけいじかんろうどうせい

2021.05.27

変形労働時間制とは、特定の部署やチームの業務量に応じて会社が一定期間内、従業員の労働時間を柔軟に調整する制度です。導入することで繁忙期の残業時間の削減にもつながり、年間・月間などの特定の期間中で繁閑がはっきりしている業種に向いています。なお、この制度は対象期間別に「1年単位」「1か月単位」「1週間単位」の3つに分けられ、それぞれの単位ごとに手続きの内容や労働時間・休日の上限などが細かく規定されています。導入にあたっては、ルールを把握した上で検討・準備することが求められます。

変形労働時間制を導入するメリット・デメリット

変形労働時間制とは業務量に合わせて就業時間を調整でき、「1日〇時間勤務」を毎日続ける代わりに、繁忙期、閑散期で勤務時間を変えた運用も可能になる制度です。制度導入のメリット、デメリットをそれぞれ紹介します。

1. メリット:リソース調整がしやすく残業代削減にもつながる

変形労働時間制の導入によって業務量に合わせて勤務人数の調整が可能になります。「月末は特に忙しい」「1月はそれほどでもないが12月は忙しい」など、業務量に波がある業種、企業にとってはメリットが大きいと言えます。

また、変形労働時間制を適用することで、企業は繁忙期の定時時間を延長でき、従業員の所定労働時間が増えるため、残業時間や残業代を削減することにもつながります。変形労働時間制を導入することで、閑散期は従業員が早く帰りやすく休みを取りやすい体制になるため職場のワークライフバランスにも配慮できます。

毎月3、4週目が繁忙期に該当する企業が通常の勤務時間制と変形労働時間制をそれぞれ選択したケースを比較して具体的にリソース調整のしやすさ、残業代削減のメリットを解説します。

・通常の勤務時間制

通常の勤務時間制で従業員が働くこちらのケースでは、所定労働時間は、40時間×4週、合計160時間に残業時間の20時間がプラスされ、全体の労働時間が180時間となります。

※法定労働時間は週40時間

・変形労働時間制

変形労働時間制を適用したケースでは繁忙期の3、4週目に所定労働時間を長く設定し、閑散期の1、2週目は労働時間を短くすることが可能となります。また、1か月の勤務時間を月あたりの適切な労働時間の目安とされる160時間に収めることもできます。

特に経理など、月末・月初めの業務量増がある程度予想されている業種では変形労働時間制の導入により、残業時間を減らし週の労働時間を法定労働時間に近付けるといった運用も実現しやすくなります。

2. デメリット:制度の導入に手間がかかる

変形労働時間制を導入するには、まず従業員の勤務状況の把握が必要です。その上で、運営方法の検討、労使協定の締結、労働基準監督署への届け出を行います。手続きには相当の手間と時間がかかり、導入手続きを担う担当部署の負担も大きくなる点を、デメリットとして押さえておく必要があります。

また、導入した後は変形労働時間制の適用者とそうではない従業員ごとに労働時間が異なるため、勤怠管理や給与計算も煩雑になりがちです。

変形労働時間制が適用された従業員によっては自分の勤務時間が短い日であっても、他部署の業務対応で必ずしも想定されていた定時時間で帰宅することができない、という事態が発生する可能性や、制度適用後は以前より残業代が減るといった不満が出る可能性があります。

変形労働時間制導入前に押さえておくべきポイント

変形労働時間制の導入手続きを行う前に押さえておくべきポイントを確認しておきましょう。

1. 単位別|変形労働時間制のルール比較

変形労働時間制は単位(1年、1か月、1週間)によって、手続き、休日日数、労働時間の上限ルールは異なります。ルールを把握し、自社の勤務実態に合ったものを採用しましょう。

なお、単位ごとのルールは以下の通りです。

1年単位の変形労働時間制1か月単位の変形労働時間制1週間単位の変形労働時間制
労使協定の締結有無就業規則に規定する場合、労使協定は不要
労使協定の監督署への提出有無就業規則に規定する場合、労使協定は不要
事業・規模の制限有無
(労働者30人未満の小売業、旅館、料理、飲食店)
休日の付与日数週1日週1日または4週4日の休日週1日または4週4日の休日
1日の労働時間の上限10時間10時間
1週の労働時間の上限52時間
1週の平均の労働時間40時間40時間
(特例措置対象事業44時間)
40時間 
就業規則への労働時間・時刻の明記有無
就業規則変更届の提出有無 (規模10人以上)

2. 変形労働時間制の導入フロー

変形労働時間制を導入する際は所定の手続きを適切なタイミング、順番で行う必要があります。具体的には以下の手順に従って導入を進めていく必要があります。

  1. 従業員の勤務実績を調べる
  2. 対象者(どの部署・誰に)、対象期間(いつからいつまで)、労働時間(何時から何時まで)を検討・決定する
  3. 導入内容に応じて就業規則を見直す
  4. 使協定を締結する
  5. 労使協定を労働基準監督署へ届け出る
  6. 従業員に対して変形労働時間制について周知する
  7. 変形労働時間制を適正に運用する

特に、導入前に自社の勤務実績は適切に把握しておくことが重要です。勤務実績の調査を行わなければ変形労働時間制を適切に運用するために必要な対象者、対象期間、労働時間などの検討を十分に行うことができず、導入後に問題が生じる可能性があります。

変形労働時間制を導入した後も、従業員ごとに異なる勤務時間を適切に管理するための勤怠管理や、通常の勤務時間で働く従業員と変形労働時間制適用者ごとに異なる残業時間を考慮した給与計算を適切に実施しなければなりません。バックオフィス部門全体でも導入時の対応や運用後の注意点などをまとめる準備が必要になります。

まとめ

変形労働時間制を導入することで、企業側は適切な従業員の配置が可能となり、残業時間と残業代の削減も実現しやすくなります。

導入には、現時点での従業員の勤務実績の確認、勤務体系の作成、労使協定の締結など、煩雑な手続きを経る必要があります。制度導入後に従業員側から残業代が減ることへの不満が出る可能性もあるため、変形労働時間制の適用対象者には導入の意義や目的、メリットについての説明を事前に行うようにしましょう。また、変形労働時間制の条件を満たしていない場合は適用が無効となり、残業代の支払い請求がなされるリスクがあることも考慮しましょう。

変形労働時間制の導入までの事務作業に加え、導入後も制度適用者と通常の勤務制で働く従業員ごとに行う勤怠管理の煩雑さからバックオフィス部門の負担は大きくなると想定されます。変形労働時間制の導入を進める際には、運用にかかる勤怠管理の手間を削減するための仕組みやシステムの導入も視野に入れるとよいでしょう。

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