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ジョブ型雇用とは?メンバーシップ型との違いやメリット・デメリットが知りたいです

ジョブ型雇用とは、職務を限定し、その職務に対して適切な人材をマッチングさせる雇用形態です。職務内容・評価基準・報酬などが明確なため、公平で透明性の高い人事制度を実現できます。一方で、職務が限定されることで柔軟な人員配置が難しくなるといった課題もあります。
公開日時:2024.12.25
詳しく解説

Q.ジョブ型雇用とは何か教えてください。従来の雇用形態とどのように異なるのでしょうか?

企業の人事・労務担当をしています。当社では従来の日本型雇用(メンバーシップ型)を採用していますが、最近ジョブ型雇用への移行を検討する企業が増えていると聞きます。ジョブ型雇用とは具体的にどのような雇用形態なのでしょうか。また、従来の雇用形態とはどのような違いがあるのか、メリットやデメリットを含めて教えてください。

A.ジョブ型雇用とは、職務内容を明確に定義し、その職務に必要なスキルや経験を持つ人材を採用する雇用形態です

ジョブ型雇用とは、職務内容(ジョブ)を明確に定義し、その職務に必要なスキルや経験を持つ人材を採用する雇用形態です。欧米では一般的な雇用形態で、採用時に「職務記述書(ジョブディスクリプション)」という形式で業務内容や必要な能力が詳細に規定されます。

近年は、専門性の高い人材の需要増加や働き方改革の推進により、日本企業でも導入が進んでいます。企業にとっては、「必要な人材を効率的に確保できる」「評価基準を明確にできる」といったメリットがあります。一方で、人材流出のリスクや制度設計・運用の負担が生じる点には注意が必要です。以下、詳しく解説します。

ジョブ型雇用の基本

ジョブ型雇用では、職務記述書に基づいて雇用契約を結び、労働時間ではなく職務や役割で人材を評価します。数年前から注目され、日本でも徐々に導入が進んでいる雇用形態です。

メンバーシップ型雇用との違い

メンバーシップ型雇用とは、会社のメンバーとしての採用を重視し、入社後は会社が従業員の育成や職務配置を担う仕組みです。終身雇用や年功序列といった伝統的な雇用方式と深く結びついています。

メンバーシップ型雇用が「人」を採用してさまざまな職務を担当させるのに対し、ジョブ型雇用は「職務」に対して適切な人材をマッチングさせる考え方といえます。主な違いをまとめると以下のようになります。

メンバーシップ型ジョブ型
特徴職務範囲が柔軟職務範囲が明確に限定される
採用方針人物・職務経験などを総合的に判断職務遂行に必要な具体的なスキルや経験を重視
評価・報酬体系年功序列的な要素が強い傾向・職務等級制度が一般的
・「同一労働同一賃金」の考え方が基本
配置・異動会社都合での配置転換が可能本人の意思を尊重
キャリアパス・幅広い職務経験を通じた成長
・長期雇用を前提とした人材育成
専門性を軸とした段階的な成長
・新卒一括採用
・総合職採用
・即戦力となる経験者の中途採用
・専門職採用

同一労働同一賃金の考え方については、以下の記事をご覧ください。

なぜ今ジョブ型雇用が注目されているのか

ジョブ型雇用が注目されている背景には、以下のような複数の要因があります。

経団連の提言

日本経済団体連合会(経団連)は、2022年の春季労使交渉・協議を行うなかで、従来のメンバーシップ型の雇用システムを見直し、ジョブ型雇用の導入・活用を含む「自社型雇用システム」の確立を目指すよう提案しています。

専門性の高い人材の不足

AI(人工知能)、DX(デジタルトランスフォーメーション)などの新しい専門領域では、即戦力となる人材の確保が急務となっています。職務内容と求められるスキルを明確にするジョブ型雇用は、専門人材の採用と定着に効果的です。

働き方改革とテレワークの浸透

コロナ禍を機に普及したテレワークでは、職務内容の明確化が不可欠です。ジョブ型雇用は、場所や時間にとらわれない新しい働き方と親和性が高いとされています。

若手のキャリア意識の変化

若い世代を中心に、自身の市場価値を高めたい、専門性を生かしたいという意識が高まっています。ジョブ型雇用は、キャリアの方向性が明確で、スキルに応じた処遇が期待できます。

ジョブ型雇用のメリット

企業側と従業員側それぞれの視点から、ジョブ型雇用がもたらす具体的なメリットを見ていきます。

企業側のメリット

必要な人材を確保しやすい

職務要件を明確にすることで、必要なスキルや経験を持つ人材を的確に採用できます。特に専門性の高い職種では、即戦力の確保がしやすいでしょう。

評価・報酬制度を明確にできる

職務に基づく評価基準により、公平で透明性の高い人事評価が可能です。また、職務の市場価値に応じた報酬設定により、優秀な人材の獲得・維持がしやすくなります。

適材適所の人材配置・生産性の向上につながる

職務要件と人材のスキルを明確に照合できるため、適材適所の人材配置が実現できます。また、職務範囲が明確なため、業務の進捗や成果を測定しやすく、組織全体の生産性向上も期待できます。

従業員側のメリット

専門性を生かしたキャリア形成につながる

自身の専門性や得意分野を生かせる職務に就けるため、計画的なキャリア形成につながります。また、スキルアップにより、社内外での活躍の機会が広がります。

職務範囲が明確で働きやすい

担当業務の範囲や責任が明確なため、効率的な業務遂行が可能です。残業や突発的な業務の発生も抑制されやすく、ワークライフバランスがとりやすくなります。

ジョブ型雇用のデメリットと課題

ジョブ型雇用にはさまざまなメリットがある一方で、注意すべき課題もあります。

企業側のデメリット

人材流出のリスクがある

職務内容や処遇があらかじめ明確に定められているため、柔軟性に乏しくなりがちです。同じ職務でより良い条件を提示する企業があれば、転職されるリスクがあります。

制度設計・運用の負担が発生する

職務記述書(ジョブディスクリプション)の作成や評価制度の整備など、制度設計に多大な時間とコストがかかります。また、職務の再定義や人材の再配置など、運用面での課題も発生します。

柔軟な事業・人員変更が難しくなる

職務が細分化されることで、急な業務変更や人員配置の柔軟な調整が難しくなる可能性があります。繁閑の差が大きい組織では特に慎重な検討が必要です。

従業員の理解を得にくい場合がある

従来の日本的な経営とのギャップが生じる可能性があります。特に、中高年層の従業員や管理職の理解を得ることが重要な課題です。

従業員側のデメリット

職務消失時に失職するリスクがある

担当職務が不要となった場合、新たな職務への配置転換が難しく、最悪の場合、職を失うリスクが高まります。特に技術革新の激しい職種では注意が必要です。

キャリアアップの機会が限定される

職務が限定されることで、多様な経験を通じた成長機会は減少する可能性があります。また、組織によっては社内での配置転換や昇進の機会が限られるケースもあります。

ジョブ型雇用の導入を検討する際は、企業・従業員双方にとってのメリットとデメリットを踏まえ、総合的に判断しましょう。

ジョブ型雇用の導入手順と方法

ジョブ型雇用は段階的に導入していくことが大切です。ジョブ型雇用の導入に必要なステップを解説します。

ジョブ型雇用の適用範囲の設定

全社一括導入ではなく、特定の部門や職種から段階的に導入することが推奨されます。混乱を防ぐため、まずは専門性の高い職種や新規事業などから始めるとよいでしょう。

職務記述書(ジョブディスクリプション)の作成

業務内容、必要なスキル、評価基準などを詳細に記載した職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成します。現場の実態を反映させるべく、定期的に見直しも行います。

評価制度の策定

職務の価値を適切に評価し、等級制度として体系化します。等級は細かく分けすぎると運用が難しく、大まかすぎると適正な評価が困難です。自社の規模や職種の特性に応じて適切に設定し、評価者の視点を考慮に入れた公平な評価体制の確立に努めます。

報酬体系の整備

各等級に対して市場相場を考慮した報酬を設定します。この際、同業他社の報酬水準も参考にし、競争力のある報酬体系を整備するとよいでしょう。

段階的な移行

既存社員へ丁寧な説明を実施し、移行期間を設定します。また、メンバーシップ型との併用など自社に適した形態を模索することが重要です。

まとめ

グローバル化やデジタル化の進展により、ジョブ型雇用の重要性は今後さらに高まると予想されます。導入に際しては、自社の経営戦略や組織文化を踏まえ、段階的にアプローチをかけることが大切です。従業員との丁寧なコミュニケーションをとりながら、ジョブ型雇用について検討してみてはいかがでしょうか。

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