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変形休日制の考え方とスムーズに導入するためのポイント

公開日時:2024.01.05

労働基準法では、本来週1日の法定休日が定められています。しかし、業種によっては全従業員に週1日の決まった曜日に休日を付与するのが困難な場合もあるでしょう。
そこで、4週4休の休日を確保する「変形休日制」という制度があります。この記事では、変形休日制の導入ポイントや注意点を紹介します。事業の実情をふまえて変形休日の導入を検討している企業担当者は、ぜひ参考にしてください。

変形休日制とは

変形休日制は、「4週4休」(4週間を通じて4日の休日のこと)以上の休日を確保する条件で、例外的に認められている休日付与の制度です。本来、労働基準法では、1週に1日以上の休日を付与する定めとなっていますが、遵守が難しい場合に、4週間を通じて合計4日以上の休日を確保する仕組みを認めています。

定休日が少なくシフト制を採用している小売業や、プロジェクト進行中は継続的に作業が発生する建設業など、週1日の休日確保が難しい業種でも、労働基準法の定めを逸脱せずに労務管理が可能です。

変形休日制のルールや考え方

変形休日制はあくまで労働基準法の例外事項であるため、ルールや考え方を理解して適切に運用しなければなりません。拡大解釈して意図せぬかたちで法令違反を起こさないよう注意が必要です。

起算日について

変形休日制を導入する際は、起算日を就業規則に明記しなければなりません。起算日は、例えば「2023年4月1日」のように記載し、起算日以降は自動的に4週ごとに休日を4日以上取得させるルールとなります。

「毎年4月の第1日曜日」といった変動日付での設定も可能ですが、この場合、各年の最後の期間が4週間にならないため、その期間だけ通常の1週間に1日以上の休日を付与しなければなりません。

連続勤務(連勤)の上限について

変形休日制のもとでは、4週間に4日休日を取得させていれば問題ありません。

例えば、2サイクル8週で考えたときに、前半4週の最初の4日に連休を与え、後半4週では最後の4日に連休を付与すれば、間の期間をすべて勤務日にして48日間の連勤が可能です。

ただし、このような勤務サイクルは休日付与日数では要件を満たしていても、過重労働の指摘を受けるおそれがあり、従業員の心身の健康に害をおよぼす可能性もあります。法制度として厳格に決められていなくても、従業員の健康を第一に考え、適切に休日を付与しましょう。

割増賃金について

労働基準法では、休日出勤に対して35%以上の割増賃金を支払う定めとなっており、変形休日制でも同ルールが適用されます。すなわち、あらかじめ定められた法定休日に出勤した場合は、休日割増賃金が発生します。

また、労働基準法では法定労働時間が週40時間と定められています。変形休日制でも平均40時間となるようにし、もし超過した場合は、25%の割増賃金の支払いが必要です。

4週4休が取得できなかった場合について

もともと定めていた休日をすべて取得できなかった場合、休日出勤をしたとみなして休日割増賃金を支払えば、法令違反とはみなされません。まず、休日出勤を可能とするためには、休日労働に関して36協定の締結・届出が必要です。そのうえで、休日労働をした日について休日割増賃金を支払わなければなりません。

以上の条件を満たしていれば、休日出勤をしたかたちにして一時的に4週4休以下にすることが可能です。しかし、法律違反とはならないものの、従業員の健康のためには極力避けるのがベターでしょう。

4週4休の休日出勤について

変形休日制でも、当初定めた休日に働くと休日出勤となります。同制度では、起算日をもとにしたサイクル初日の前日までにシフトを提出して休日を明確にする必要があります。この休日が「法定休日」とみなされ、サイクルが始まると動かせません。

働いた場合は休日出勤となり、企業は休日割増賃金を支払わなければなりません。法定休日については次の記事もご参照ください。

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年次有給休暇について

年次有給休暇のルールは変形休日制でも同様に適用されます。すなわち、6ヶ月間継続勤務し、かつ出勤率が8割以上の労働者には年10日以上の有給休暇を与えなければなりません。それ以降は、勤務1年ごとに1日ずつ、勤務3年6ヶ月以降は2日ずつ付与日数を増やし、最高で年20日の有給休暇を付与します。

変形休日制を導入する際の手順

変形休日制を導入するためには、次の3つのステップを踏む必要があります。

従業員との合意を得る

変形休日制を採用するにあたって、まずは従業員の合意を得ましょう。変形休日制の導入時に特段の協定締結などは必要ないものの、休日の急な変更は従業員の反発や流出を招くおそれがあります。従業員向け説明会の実施や社内報での情報共有などで丁寧に従業員に説明し、納得を得たうえで準備を始めます。

就業規則に記載する

変形休日制を実行に移すためには、就業規則を変更する必要があります。「制度を導入する旨」を就業規則に新たに追加したうえで、「変形休日制の起算日」を明記します。起算日には特に制限はないので、企業の準備期間とその後の管理のしやすさを加味して、適切な日を設定しましょう。

起算日が到来したら制度が施行される

変形休日制は、起算日が到来したら自動的に制度が適用されます。起算日までに変形休日制に則した休日管理が可能な体制を整えておきましょう。

変形休日制を導入する際の注意点

変形休日制を導入する際には、過重労働にならないよう精緻な労務管理が求められます。法定休日を守り切れずに割増賃金が発生するケースが増えるリスクも考えられます。従業員により法定休日がバラバラになるため、休日の管理が煩雑化するおそれがあり、労務管理への対策が必要です。

過重労働にならないよう配慮する

変形休日制は、制度上原則の週休1日以上に比べて連勤を実施しやすい制度です。管理者は従業員が過重労働にならないよう、注意深くシフトを組まなければなりません。「法制度を最低限守る」意識ではなく、あくまでも従業員が心身の健康を維持して快適に仕事に取り組める状態にすることが大切です。

万が一、過重労働によるトラブル・問題が発生した場合には、たとえ最低限の基準を守っていたとしても、企業は責任を問われる可能性があります。

法定休日に労働させない企業努力が必要

通常の制度と異なり、法定休日が従業員によって異なる変形休日制は、しばしば休日出勤の割増賃金の増大要因となります。一定の従業員が法定休日を取得していても、企業としては営業しているため、不測の事態により急な休日出勤が発生しがちだからです。

ある程度の人件費の増大は想定しておくとともに、勤務シフトを極力堅持するよう促すなど、休日出勤を回避する努力が求められます。

休日管理の煩雑化に備える

従業員ごとに、またはシフトごとに法定休日が異なるため、休日関連を中心とした労務管理が煩雑化する傾向があります。割増賃金の頻発により給与計算が複雑化する点にも注意が必要です。手動で正確にデータを集計することは困難なので、勤怠管理システムの導入など、担当者が少ない負担でスムーズに管理できる方法を取り入れるとよいでしょう。

変形休日制の運用には勤怠管理システムがおすすめ

4週4休の変形休日制を適切に管理するためには、次の3つの理由から勤怠管理システムの導入がおすすめです。

休日制度が混在していてもスムーズに管理できる

部署や担当者により、通常の休日制度と変形休日制度が混在している企業は少なくありません。勤怠管理システムがあれば、異なる休日制度をスムーズに並行管理できます。

例えば、製造業の場合、工場では機械を止められないため変形休日制のもとで操業する一方で、本社の従業員には通常の休日制度を採用するケースがあります。このとき、手動で従業員ごとに異なる休日ルールを適切に管理するのは容易ではなく、不備の温床ともなります。勤怠管理システムを導入して管理を自動化すれば、ミスなく効率的な労務管理が実現します。

シフト編成を効率化できる

勤怠管理システムを活用すれば、各従業員の法定休日のタイミングを適切にずらしながら、休日出勤が発生しにくいシフトパターンの作成が可能です。法制度に則したかたちで各従業員のシフト編成を効率的に生成できるため、シフト編成を担当する管理者の負担も削減できます。シフト編成のミスによる意図せぬ法令違反を予防し、割増賃金の増大を防ぐことも可能です。

法定休日の管理・給与計算を効率化できる

法定休日の管理や休日出勤の増大に伴う給与計算の煩雑化にも対応が可能です。従業員ごとに休日が異なると、タイムカードやエクセルでの管理では、さらに手間が増大します。勤怠管理システムなら、従業員別の法定休日を加味して自動計算されるので、変形休日制を取り入れても手間なく正確な労務管理が可能です。

まとめ

24時間操業の工場を抱える製造業や工事が継続する建設業など、週1日の休日を確保できない業種は、変形休日制を活用して法令遵守しながら事業経営を継続しましょう。導入する際には、ルールを正確に理解したうえで、従業員との合意や就業規則の変更などを正しく実施してください。

また、制度開始後にスムーズに労務管理を実行するために、ぜひ勤怠管理システムの導入を検討しましょう。

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変形休日制の導入をお考えの方は、効率的で正確な労務管理を実現するために、ぜひ「TimePro-VG」の導入をご検討ください。

GUIDE

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勤怠管理の意義と
重要性

02選び方

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選び方の基本

03実践編

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導入のポイント

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