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有給取得日に従業員が出勤していることがわかりました。有給を取り消すべきでしょうか?

会社都合で従業員に出勤してもらった場合は、その日の有給を取り消し、別の日に代替するのが一般的です。このときの労働時間が、所定の時間に満たない場合には、労働時間分の給与もしくは1日分の平均給与の6割を支払いましょう。もし半日単位や、時間単位の有給制度があれば、所定労働時間に満たない分を有給として処理する方法もあります。
公開日時:2023.02.28
詳しく解説

Q. 有給取得日に従業員が出勤していることがわかりました。有給を取り消すべきでしょうか?

中小企業の労務担当として働いています。自社で働く従業員の1人が、突発的な社内のトラブルで有給取得日に労働をしていたことが発覚しました。この場合、その日に取得していた有給休暇を取り消すべきでしょうか。それとも有給休暇は取り消さずに、働いた分の賃金を追加で支給すべきでしょうか。勤怠処理の方法を教えてください。

A. 会社都合で従業員に出勤してもらった場合は、その日の有給を取り消し、別の日に代替するのが一般的です。

このときの労働時間が、所定の時間に満たない場合には、労働時間分の給与もしくは1日分の平均給与の6割を支払いましょう。もし半日単位や、時間単位の有給制度があれば、所定労働時間に満たない分を有給として処理する方法もあります。

突発的な社内のトラブルで、有給休暇を取っていた従業員に急きょ出社してもらったのであれば、その日の有給は取り消し、他の日に代替するのが一般的です。このときの労働時間が所定の時間に満たなかった場合は、会社側の都合で労働者を休ませたと解釈でき、労働基準法第26条*の「使用者の責に帰すべき事由による休業」(会社側の都合)にあたります。その場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」の保障額である1日分の平均給与の6割と、実労働時間分の給与額とを比べて、多いか少ないかを確認し、多い方を支払いましょう。

労働基準法第26条(休業手当)より

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。

会社が半日単位や時間単位での有給制度を導入しているならば、所定労働時間に足りない分は有給休暇として処理を行う方法もあります。

ただし、有給休暇中の出勤はあくまで従業員本人の同意が必要です。そのため、会社都合で従業員の有給休暇を取り消して無理やり出勤させることはできません。従業員が有給休暇中に出社した場合の対応方法については、以下のフローチャートを参考にしてください。

有給休暇中に出社した場合の対応方法フローチャート
有給休暇中に出社した場合の対応方法フローチャート
「タヨロウ」作成

有給休暇中に通常通りの勤務をした場合

有給休暇中の従業員に、所定労働時間の勤務をさせた場合は有給を取り消し、1日分の給与を支払いましょう。そもそも有給休暇とは取得日の0時から24時まで休みを与える制度であり、短時間でも働かせた場合は、有給を取得させたことにはなりません。

割増賃金については、有給取得日に出勤させたとしても、法定労働時間(1日8時間、週に40時間まで)を超えない限り支払う必要はありません。従業員本人にとっては休日を返上して働いたことにはなりますが、就業規則上、有給取得日は本来出勤日であるためです。ただし、時間外労働が発生した場合は割増賃金が適用されます。

企業側の注意点としては、有給を取り消して給与を支払う場合でも、有給休暇中の突然の呼び出しに従業員側が応じる義務はないという点です。従業員が出勤要請に応じなかったからといって、不当な人事評価をしないようにしましょう。

反対に、従業員が有給休暇の申請を取り消して、通常通り出勤したいと申し出た場合には、企業は必ずしも申請の取り消しを認める義務はありません。業務上問題があれば断ることが可能です。具体的には、従業員の有給取得を前提にシフトの作成や人員の手配を済ませてしまっており、新たな業務の割り当てが難しい場合が該当します。

有給休暇中に所定労働時間未満の勤務をした場合

従業員の有給休暇中に少しでも労働をさせた場合は、基本的に有給を取り消します。「使用者の責に帰すべき事由による休業」の補償額の観点から、どれだけ短時間勤務であっても1日分の平均給与の6割を給与として支払う必要があります。一方、実労働時間の給与が6割を超えるのであれば実労働時間分の給与額が優先されます。

「使用者の責に帰すべき事由による休業」とは、事業主の故意や過失に加えて、経営上や管理上での問題などにより会社都合で休ませることです。前述のように、労働基準法第26条に明記されています。有給休暇中に出勤したにもかかわらず、労働時間が所定の時間に満たなかった場合、所定労働時間の不足分は会社側の都合で労働者を休ませたと解釈でき、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当します。

「使用者の責に帰すべき事由による休業」の場合、企業側は該当する労働者に平均賃金の100分の60以上の手当を払わなければなりません。例えば、ある従業員の1日の平均賃金が1万円であり、労働時間の60%の賃金が6,000円とします。その従業員が有給休暇中に4時間勤務をした場合、賃金相当額は4,000円ですが、企業側は労働時間の60%の賃金である6,000円を支給するのが妥当といえます。

ただし、半日単位や時間単位での有給制度を導入している場合は、所定労働時間の不足時間分の有給処理を行い、労働時間分の給与のみを支払う方法もあります。そのとき、1日分の有給休暇の取り消しを忘れないようにしましょう。

有給休暇中にもかかわらず、無断で働いていた場合

有給休暇中に従業員が無断で働いていた場合、会社側が認識していたかどうかで有給休暇の取り扱いが変わります。会社側が認識していた場合は、会社が勤務させたと解釈できるため、有給休暇を取り消して労働時間分の給与を支払います。会社側が認識しておらず、特に指示もしていない場合は労働時間に当たらないと解釈できるため、有給休暇を取り消す義務はありません。

例としては、有給休暇中に従業員本人がボランティア感覚で仕事をしているケースが考えられます。この場合、従業員側が賃金を求めてないのであれば、賃金支払いの義務はありません。

会社側が認識しているかどうかで有給休暇の取り扱いが変わるのは、労働時間の捉え方が関係しています。労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」*とされています。

上司が無断出勤を黙認していれば、使用者の指揮命令下にあったとして労働時間にあたりますが、上司が従業員の出勤を把握せず、業務上の指示も特にしていなければ労働時間にはあたりません。ただし、業務指示や命令がなくても、事実上業務をやらなくてはならない状況であれば「黙示の指示」*に該当し、有給休暇を取り消して、労働時間分の給与を支払う必要があります。

まとめ

従業員を有給休暇中に出勤させた場合は、原則として有給休暇を取り消し、他の日に代替できるようにしましょう。給与は、実労働時間の賃金が1日分の平均給与の6割以上であればそのままの金額を、6割未満であれば、6割になるように足りない分を上乗せして支払う必要があります。

企業活動では突発的なトラブルは起こるものであり、有給休暇中の従業員に出勤要請をすることもあるでしょう。その場合、出勤させた従業員が納得できるように、有給休暇の取り消しや給与の支払いを行う必要があります。

こうした複雑な勤怠処理は、経理担当者や労務担当者の負担の増加につながることが予想されます。有給休暇の計算の効率化やミスをなくすためには、従業員の勤怠の状況を可視化でき、一括で管理できる勤怠管理ツールや労務管理ツールの導入が有効です。

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