人事・労務なんでもQ&A
残業時間内の休憩時間について、従業員からの質問が増えています。正しい扱い方を教えてください。
Q.残業中の休憩時間に関して従業員からの問い合わせが増えています。休憩時間の正しい扱いを知りたいです。
従業員500人ほどの製造業で、労務管理を担当する者です。最近、社内で残業時間が増加し、従業員から「残業中の休憩時間の取り扱い」についての問い合わせが増えました。そこで、残業時の休憩に関する法律や最適な対策法を調べ、従業員の健康を守りつつ、効率的な労働環境を維持するための方策を考えることにしました。休憩時間の正しい取り扱いについて教えてください。
A.労働基準法では、労働時間に応じて、付与しなければならない休憩時間が定められています。
付与しなければならない休憩時間は、労働基準法にて明記されています。まず、6時間以内の労働時間であれば、休憩付与はしなくとも労働基準法上は問題ありません。連続する労働時間が6時間を1分でも超える場合は、45分以上の休憩を与える必要があります。労働時間が8時間を超える場合は、1時間以上の休憩を付与しなければなりません。
休憩について、労働基準法第34条で次のように定められています。
- 第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
- 前項の休憩時間は、一斉に与えなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りでない。
- 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。
なお、上記のとおり、残業時間中の休憩に対する規定はないため、労働時間が8時間をどれだけ超過しても、労働基準法上で定める休憩時間は「1時間以上」で変わりません。ただし、従業員の心身の健康維持の観点から、独自の社内規則を設けて、残業発生時に追加の休憩を許可するのもひとつの方法です。
休憩時間の付与に関する3原則とは
労働基準法で定める休憩時間は、次の3つの原則に従って付与する必要があります。
- 自由利用の原則
- 途中付与の原則
- 一斉付与の原則
ただし、原則が適用されないケースもあります。原則の説明とともに紹介します。
自由利用の原則
休憩時間は、従業員が自由に過ごすことができるという原則です。そのため、管理職やほかの従業員が業務に関して休憩時間に指示・命令を出すのは原則違反となるおそれがあります。
途中付与の原則
休憩時間は、労働時間の途中に与えるという原則です。実態としては、昼食時間帯に付与するケースが多いでしょう。始業時間後すぐや、終業時間の直前に休憩を付与するのは原則違反とみなされます。もちろん、始業前・終業後の休憩付与も原則違反です。
一斉付与の原則
特に取り決めがない場合は、休憩は一斉に与える必要があります。一方で、労働組合との協定があれば、時間をずらして取得させることも可能です。
実態としては、労働組合と協定を結んで、休憩取得に柔軟性を持たせている職場が多いといえます。仕事内容によっては、すべての従業員が一斉に休憩を取るのは現実的ではないためです。
原則が適用されない場合
特に一斉付与の原則については、労働組合との協定により例外規定を設けている場合が多いでしょう。具体的には、労働者の過半数で組織する労働組合もしくは代表する者との書面協定があれば、原則適用除外が可能です。また、一斉に休憩を取ると公衆の不便が大きいと想定される以下の業種は、一斉付与の原則を適用する必要がありません。
- 旅客業、運送業
- 小売業、卸売業
- 理美容業
- 金融業、保険業、広告業
- 映画制作、映画館、演劇業
- 郵便業、通信業
- 病院やクリニックなどの保健衛生業
- 旅館や飲食店などの接客娯楽業
違反した場合の法的リスク
労働基準法に従って休憩を適切にとらせなかった場合は法令違反となります。違反した場合は、雇用主に対して6ヶ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられます。実際には、罰則を受けるほどの違反を犯せば、不満に感じた従業員から損害賠償を請求される可能性もあるでしょう。
労働基準監督署の監査が入るだけでも、社会的な信用低下などの企業が受けるダメージは大きくなります。休憩に関する制度を正しく理解して、違反が出ないように適切に運用しましょう。
休憩を付与する際のポイント
休憩を付与する際のポイントは以下の5 点です。
- 休憩時間に労働させないように徹底する
- 雇用形態にかかわらず等しく付与する
- 基本的には一斉付与の原則を解除する取り決めをするのが無難である
- 休憩時間は分割付与が可能である
- 従業員の心身の健康を最優先にする
休憩時間に労働させないように徹底
企業が違反するリスクとして高いのは、休憩時間に労働していた実態があるケースです。たとえ休憩時間に業務命令を出していなくても、従業員が休憩時間を自由に過ごせていない状態となれば、法令違反とみなされるリスクがあります。企業側が主導して、適切に休憩を取る・取らせることを、管理者と従業員の双方に周知しましょう。
休憩時間の労働については、以下の記事もご参照ください。
雇用形態にかかわらず等しく付与
休憩時間の付与は労働時間によって決まるため、雇用形態に関係なく付与しなければなりません。パート従業員や契約社員などの非正規雇用者であっても、正社員と同等に休憩を付与しましょう。例えば、7時間働いたパート従業員に休憩を付与しない場合は、労働基準法違反となります。
基本的には一斉付与の原則を解除する取り決めをするのが無難
一斉付与の原則は、多くの職場において労働組合との取り決めによって解除しています。基本的には一斉に取得が可能でも、イレギュラーな対応が昼間に発生する可能性があることから、一斉には休憩を取りにくい局面は多くの職場にあるでしょう。
非常時に柔軟な対応が取れるように、可能な限り労働組合と合意しておくのが無難です。ただし、一斉付与の原則を解除する場合は、各人が適切に休憩を取得していることを正しく管理しましょう。
時差休憩の導入については、以下の記事で詳しく解説しています。
休憩時間は分割付与が可能
休憩時間は、合計時間が法令を遵守していれば分割付与も可能です。例えば、8時間以上の労働時間が想定される職場で、昼の時間に45分、15時ごろに15分の休憩を付与するといった運用も適法となります。職場の実態に即して、従業員が働きやすく、運用しやすい休憩制度を設計しましょう。
従業員の心身の健康を最優先
最低限法令を遵守するだけでなく、従業員の心身の健康を最優先して、適切な休憩制度を整備しましょう。例えば、労働時間が8時間をはるかに超える長時間残業の場合に追加の休憩取得を認めなければ、従業員の心身に大きなダメージを与えるおそれがあります。
そのため、残業時には追加の休憩を許可する職場も少なくありません。従業員が健やかに働くうえで有効な休憩制度を導入しましょう。
まとめ
休憩時間の制度は意外に複雑であり、その日の労働時間によって付与すべき時間が変化します。特に、一斉付与の原則を除外した職場では、従業員それぞれの労働時間と休憩時間を正しく管理する必要があるため、手動での管理はリスクが高いといえるでしょう。
休憩時間を適切に管理するには、勤怠管理システムで勤務時間や残業時間を管理する方法が有効です。労務管理に課題を感じている場合は、ぜひ勤怠管理システムの導入を検討してください。
法令を遵守した管理ができる勤怠管理システム
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