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【社労士監修】2024年4月実施予定の改善基準告示のポイントを解説!トラック・バス・タクシー運転手等が対象に

公開日時:2022.07.20 / 更新日時:2023.04.12

厚生労働省の有識者検討会で、トラック・バス・タクシー等の運転手について、長時間勤務による過労対策として勤務時間を見直すことが決まりました。大幅な改正は1997年以来となり実に25年ぶりです。 本記事では、2024年施行予定の改善基準告示概要と、変更のポイントを解説します。
ドライバーの働き方改革へ向けて、ぜひ押さえておいてください。
松井 勇策

松井 勇策

社会保険労務士、公認心理師

フォレストコンサルティング経営人事フォーラム代表。情報経営イノベーション専門職大学 客員教授(専門領域:雇用法制度・経営人事実務)名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて組織人事コンサルティング、経営管理部門で上場監査・ITマネジメント等に関わる。その後独立。東京都社会保険労務士会 先進人事経営検討会議議長。
企業の経営や人事制度についての研究、労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

改善基準告示とは?

改善基準告示は正式には「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」と言います。トラック・バス・タクシー等の自動車運転者について、労働時間等の労働条件の向上を図るため拘束時間、休息時間等の基準を定めたものです。

改善基準告示はいつから適用される?

改善基準告示は2022年12月に改正され、2024年4月から適用される予定です。

対象となるのは改正以前と同様、会社に雇用されている4輪以上(主にトラック・バス・タクシー運転手等)の自動車運転業務を行っている従業員です。二輪のバイクライダーや、自動車運転する雇用主(事業主)は対象となりませんので、ご注意ください。

今回、トラック・バス・タクシーをはじめとした運転手の改善基準告示が改正された背景には、自動車運転手を取り巻く労働環境にあります。

ここ5年ほど、働き方に関する法律や制度などのルールが大きく変わってきました。そもそものきっかけは、2019年からの働き方改革関連法の改正です。社会的に少子高齢化が進む中で、多様な働き方が広まるに伴い、さまざまな法令が施行されてきました。

これは戦後の労働法の管理方法全体の見直しであると言え、労働契約の提示の仕方から同一労働同一賃金のルールまで含むような大変広い改革です。後述する勤務間インターバルに関するルールも、この法改正により設けられました。

働き方改革の中でも労働時間に関する規制が最も重要であり、法定労働時間を超えて労働者に時間外労働(残業)させる場合に締結する36協定の様式などまで見直されました。働き方改革関連法では、時間外労働の上限規制が設けられ、企業に過重労働の緩和を求める法改正がなされています。

改善基準告示が改正される背景

しかしながら、自動車運転者・医師・建設業などの特定業種は一般的な規制になじまないものとされ、例外とされました。理由としては働き方の特性に理由がありますが、特に自動車運転者に関しては、長時間を自分の裁量で運行するような業務であるという特殊性があります。

2024年に適用予定である自動車運転者に関する働き方改革については、こうした特殊性を考慮に入れたうえで新しいルールを設けるものです。特に業種特性のもとに、特に合計労働時間については一般よりも少し緩和されたルールとなっており、反対に拘束時間や勤務間インターバルについては一般よりも厳格なルールになっています。

自動車運転者の働き方改革の状況

もともとタクシー・バス運転手、トラック運転手ら含めた自動車運転者については、今までも拘束時間・休息時間に関する改善基準が存在していました。時間外労働の上限規制については2019年4月1日の働き方改革関連法の施行後5年間(2024年3月末まで)は現行制度が適用されることとなります。2024年4月1日以降は、改善基準含めて変更され、年間の上限規制も導入される見通しです。

2024年から適用される改善基準告示の変更点とは?

今回の改正においておさえておくべきポイントは、

  • 拘束時間
  • 運転時間
  • 休息時間
  • 休日労働

の4点です。

以下、詳しく解説していきます。

拘束時間

始業から終業までの休憩時間等を含めた時間が拘束時間です。今回の改正により、運転手の拘束時間の上限が短縮されることになります。

トラック運転手の拘束時間

トラック運転手は、1日の拘束時間が13時間以内(上限15時間、ただし14時間を超えるのは週2回までが目安)とされました。
また、1か月の拘束時間目安として、従来は原則293時間、最大320時間だったのに対し、改正後は原則284時間、最大310時間に短縮されます。

バス運転手の拘束時間

1日の拘束時間は現在と変わらず、13時間のまま据え置かれました。ただし、最大で16時間となっている拘束時間の上限を1時間短い15時間に設定し、拘束時間14時間を超える回数は3回までを目安とし、なるべく少なくするよう努めることも基準に盛り込まれました。

バス運転手については、年間の拘束時間の上限にも変更があり、現在の年間3380時間から変換3300時間へ削減されます。

タクシー・ハイヤー運転手の拘束時間

バス運転手と同じく、1日の拘束時間は現在と変わらず、13時間のまま据え置かれ、最大で16時間となっている拘束時間の上限を1時間短い15時間に設定し、拘束時間14時間を超える回数を3回までを目安とし、なるべく少なくするよう努めることも基準に盛り込まれました。
タクシー・ハイヤー運転手には1か月あたりの拘束時間の上限に変更があり、1か月の上限は299時間から288時間に削減されます。

運転時間

トラック・バス運転手は運転時間が制限されます。運転時間とは、実際に自動車を運転している時間です。運転時間が長時間に及ぶと、心身の疲労から注意力が散漫になったり、眠気に襲われたりと事故の危険性が高まります。そうしたリスクを起こさないために、運転時間にも制限が設けられることになりました。

トラック運転手の運転時間制限

トラック運転手の運転時間は、2日間で平均1日9時間以内、2週間で平均1週44時間以内に定められます。

連続して運転できる時間は4時間以内とされ、運転の中断時には、原則として休憩を与える(1回約連続10分以上、合計30分以上)必要があります。例外として、サービスエリア・パーキングエリア等に駐車できないことにより、やむを得ず4時間を超える場合には4時間30分まで延長することが可能です。

バス運転手の運転時間制限

バス運転手の運転時間は、2日間で平均1日9時間以内、4週間で平均1週40時間以内に定められます。ただし、貸し切りバス等乗務員(一時的需要に応じて運行されるもの、高速バス乗務員等)の場合は、労使協定により4週間で平均1週44時間まで延長することが可能です(52週のうち16週まで)。

連続運転は4時間以内で、運転の中断は1回連続10分以上、合計30分以上とされます。高速バス・貸し切りバスの高速道路の実車運行区間を運転している時間は、概ね2時間までとするよう努力義務が課せられます。例外として、緊急交通車両の運行等の軽微な移動時間を、30分まで連続運転から除いて計算することができます。

休息期間

今回の改正で、トラック・バス運転手の休息期間の基準が設けられました。ここで言う休息期間とは、業務が終了してから次の業務開始までの時間、いわゆる勤務間インターバルを指します。いずれも、1日の休憩期間は継続11時間以上与えるよう努めることを基準とし、原則的に9時間を下回らないことと定められています。

ただし、長距離運行を余儀なくされるトラック運転手には例外もあります。宿泊を伴う長距離貨物運送(※)の場合、継続8時間以上(週2回まで)、また休息時間のいずれかが9時間を下回る場合は、運行終了後に継続12時間以上の休息時間を与えるよう努めなければなりません。

休日労働

やむを得ず休日に労働させなければならない場合の基準も設けられます。これはトラック・バス・タクシー・ハイヤー運転手に共通して、休日の労働は2週間に1回を超えないこと、また休日労働によってそれぞれの拘束時間の上限を超えないことを原則としています。

予期し得ない事象

これらの基準が設けられたものの、日々の業務にトラブルはつきものです。予期しないトラブルに遭遇してしまい、改善基準告示に則れないケースについても紹介しましょう。

トラック運転手とバス運転手の予期し得ない事象と処置

  • 運転中に業務している車両が予期せず故障した
  • 運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した
  • 運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖されたまたは道路が渋滞した
  • 異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった

これらに該当したら、予期し得ない事象への対応時間を、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間から除くことができます。さらに、勤務終了後、通常通りの休息時間(継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らないこと)を与えるようにしましょう。
この処置を行う場合、運転日報上の記録に加え、客観的な記録(公的機関のホームページ等)が必要です。

タクシー・ハイヤー運転手の予期し得ない事象と処置

  • 運転中に業務している車両が予期せず故障した
  • 運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した
  • 運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖されたまたは道路が渋滞した
  • 異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった

これらに該当したら、予期し得ない事象への対応時間を、1日と2暦日の拘束時間から除くことができます。
また、この処置を行う場合は運転日報上の記録に加え、客観的な記録(公的機関のホームページ等)が必要です。

改善基準告示に違反した場合の罰則は?

改善基準告示は努力義務とされており、2023年1月時点では具体的な罰則に関する告示はありません。ただし毎年、改善基準告示を元にした労働基準監督署による指導等はさまざまに行われています。
厚生労働省から発表されている資料によれば、改善基準だけでなく改善基準を運用するための基礎となる事項も含めれば

  • 労働時間を適正に把握していないことに対する指導
  • 未払いの給与が発生していることに対する指導
  • 改善基準に違反している運用に対する、ダイヤ改正等を含む指導
  • 改善基準の違反の結果としての事故・過労死等に関する企業側の送検

等が行われています。監督実施した事業所数は令和3年は3000事業所以上にのぼります。安全な業務を行うためにも、新しい改善基準への対応を前もって検討すべきであると言えるでしょう。

違反企業は労働基準監督署の行政指導の対象となる可能性も否定はできません。

2024年4月から適用が始まる「運送業の働き方改革」と改善基準告示

さて、改善基準告示と同じく2024年4月から適用が始まる「運送業の働き方改革」について触れておきましょう。自動車運転手の雇用主らが実施しなければならない対応について、具体的に解説します。

運送業・運輸業の労働問題

トラック運転手らを雇用する運輸・運送業では長時間労働による人手不足が大きな課題です。また、長時間労働が健康面で深刻な影響を及ぼすと判明していることは事実であり、トラック運転手の勤務間インターバル、拘束時間のルール変更が行われる際の重要な観点となるでしょう。

例えば、厚生労働省が発表した令和3年度の「過労死等補償状況」によると、脳・心臓疾患による労災支給決定件数は運輸業・郵便業が全業種の中で最も多く、58 件(うち死亡件数は 22 件)となるなど、依然として長時間・過重労働は大きな課題とされています。

ゆえに、今回の改正により自動車運転手の労働問題が大きく改善するのではないかと期待されています。また、自動車運転者を雇用している企業においては、働き方改革関連法と改善基準をいかに遵守できるかが課題になります。

2024年の「運送業の働き方改革」について対応すべきこと

改めて、今までの内容をもとに2024年に行われる、運送業(自動車運転者)の働き方改革についての要点をまとめます。

①運送業には2024年4月より時間外労働に対して年間960時間の罰則付き上限規制が適用される(休日労働は含まれない労働時間で計算)

②ドライバーをはじめ、現状人手不足、長時間労働の問題の解決がすぐには難しい自動車運転業務は一般の企業に適用される時間外労働の上限規制とは別の扱いがなされる

③ただし、トラック運転手などにも今回の勤務間インターバル、拘束時間の適用が検討されていることから、長時間労働対策は厳しく求められる。

これらを踏まえ、運輸業の企業は長時間労働の是正だけでなく、人手不足解消のため短時間勤務など柔軟な働き方を取り入れ働きやすい環境整備を行う必要があります。

具体的な規制の内容について詳しくは、業務改善ガイド【2024年】運送業の働き方改革で変わることは? 取り組みを進める上での注意点も解説をお読みください。

関連記事【運送業向け】勤怠管理のお悩み改善

慢性的な労働力不足の原因となっている長時間労働の是正のため、運送業では2024年から時間外労働の上限規制が始まります。そのため、ドライバーを始めとした長時間労働削減の取り組みが必須となります。2024年の「運送業の働き方改革」に向け、どのように課題解決するか? アマノからのご提案です。

まとめ

運送・運輸業界は2024年4月から時間外労働に対して年間960時間の罰則付き上限規制が適用されるなど本格的な働き方改革の制度導入がされます。この改革と時を同じくして、改善基準告示が適用される予定です。これらを踏まえ、運送・運輸業の企業はトラック・バス・タクシー運転手をはじめとした自動車運転手の長時間労働の是正だけでなく、人手不足解消のため短時間勤務など柔軟な働き方を取り入れ働きやすい環境整備を行う必要があります。

※本記事は2023年1月時点の情報に基づきます

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