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働き方改革

はたらきかたかいかく

公開日時:2021.01.27 / 更新日時:2022.03.22

2020年の4月から中小企業にも本格施行される働き方改革関連法。メディアでも頻繁に取り上げられているため、ご存じの方は多いでしょう。しかし、働き方改革関連法とはいったいどのような法案なのか、それによって何がどう変わるのかまで詳しく説明できる方は少ないかもしれません。そこで、働き方改革関連法の概要や、今後変わることについてまとめました。

働き方改革関連法とは何か

2018年の6月に成立した働き方改革関連法。労働関係法を新たに改正する法律で、2019年4月より、それぞれ施行されています。性別問わず、働くすべての人の環境をよりよくするための法律です。

働き方改革関連法が成立したことにより、労働に関する8つの法律が改正されました。労働基準法にじん肺法、労働施策総合推進法、労働安全衛生法、労働者派遣法などのほか、労働時間等設定改善法、パートタイム・有期雇用労働法、労働契約法などがそれにあたります。これまでなかなか進展しなかった働き方改革推進のため、政府は既存の労働関係法の見直しに着手。上記の労働関係法の改正に伴い、関連するほかの法律にも微調整が加えられるなど、細かな修正が行われています。

中小企業と大企業で異なる施行時期

すでに改正法が適用されているため、今後は多くの企業が対応を進めていかねばなりません。ただし、法律の適用が開始される時期については、大企業と中小企業とで異なります。
そもそも、何をもって大企業、中小企業と分けているのでしょうか。それを知るために関連法における中小企業の定義を理解しておきましょう。

小売業やサービス業を営む企業において中小企業だと定義づけられるのは、出資金や資本金の総額が5000万円以下の場合です。そのほかにも、卸売業の場合は1億円以下、それ以外の業種では3億円以下となっています。
また、常時業務に携わる従業員の数が、小売業で50人以下の場合は中小企業と判断されます。これも、サービス業や卸売業では100人以下、それ以外の業種は300人以下と定義されています。医療法人や個人事業主の場合だと出資金、資本金といった概念がありません。ただし、その場合には常時業務に携わる従業員の数だけで判断されることになります。
つまり、これらの定義に当てはまらない会社は、すべて大企業だと定義づけられます。それを踏まえた上で、改正法の適用開始時期を見ていきましょう。

まず、残業時間の罰則付き上限規制に関してですが、大企業は2019年の4月から適用されています。対して、中小企業の施行は2020年の4月からです。すでに大企業では適用されている割増賃金率についても、中小企業にも2023年4月から開始されます。同一労働・同一賃金の原則の適用は、大企業が2020年4月から、中小企業はその翌年の4月からです。
勤務間インターバル制度の努力義務や、5日間の有給休暇取得の義務化など、上記以外の改革法については全企業において2019年4月から適用されています。

働き方改革関連法で変わる5つのこと

残業時間に上限ができ、年5日の有給取得、非正規雇用労働者の待遇改善などがこれまでと変わる部分です。また、残業割増賃金のアップや勤務間インターバル制度の導入なども、改正法の施行によって変わります。

年5日の有給取得

10日以上の年次有給休暇のある従業員には、1年のうち5日は時季を指定して有給を与えなくてはならなくなりました。ただ、これだと少々一方的なので、労働する側の意見を尊重しなくてはいけないと定められています。

また、企業は従業員ごとに年次有給休暇基準日や日数、時季などを明確にしたデータを作成し、3年間保存しなくてはなりません。有給を取得させなかった、時季指定をするケースを就業規則に明記していなかったとなると違反となり、30万円以下の罰金となる可能性もあるので注意しましょう。

残業時間に上限ができる

従来だと、ひと月に45時間、年で360時間の残業時間が上限であり、特別な事情があるときはさらにそれを超えて働いてもらうことも可能でした。つまり、特別な事情があり、きちんと届け出さえすれば、実質、残業時間に上限はありませんでした。

しかし法改正後は、特別な事情がある場合でも、年に720時間以内の残業しかできなくなります。また、月に45時間以上の残業ができるのは年間6ヶ月までが上限と定められました。上限を超えてしまった場合には、6ヶ月以下の懲役、または30万円以下の罰金という重いペナルティを受けることになります。

残業割増賃金がアップ

実は2010年の法改正ですでに実施されていた残業割増賃金のアップ。1ヶ月に60時間をオーバーする残業には50%以上の割増賃金率が適用されています。しかし、これはあくまで大企業に限った話で、これまで中小企業は対象になっていませんでした(適用を猶予されていた)。

今回の改正では、中小企業に対する猶予期間の廃止が決定。すべての企業に、一律で50%以上の割増賃金率が適用されます。ただ、従来に比べて大幅に割増賃金がアップしてしまうため、多くの企業に大きな影響を及ぼすことも考えられます。そのため、ほかの改正法に比べるとやや遅めの、2023年4月からの施行と決定されました。

違反すると6ヶ月以下の懲役を科せられる可能性があります。また、30万円以下の罰金を命じられることもあるので、しっかり対応していくことが求められます。

勤務間インターバル制度

仕事の疲労が残った状態では、健康状態に悪影響を及ぼす可能性があります。高所での作業や機械を使った業務、車の運転が必要な仕事などの場合、緊張やストレスからくる疲労が原因で命に関わる重大な事故が起きてしまう可能性も否めません。そうした理由から、勤務間インターバル制度の導入促進が推進されています。

残業時間も含め、終業時刻から次の日の始業時間までにしっかりと休める時間を確保しよう、というこの制度。全企業において2019年4月から施行されていますが、この制度の導入は義務ではありません。あくまで制度の導入促進を目的に定められたものであるため、導入しなくても罰則が科せられることはありません。

しかし、従業員の健康を守るのは企業として当然のことであり、しっかりと休息をとらせることは業務効率の改善にもつながることです。罰則がないからと放置せず、企業は前向きに導入を検討し、従業員のワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を守っていきましょう。

非正規雇用の労働者への待遇改善

昨今問題化している、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との待遇格差。従来では、まったく同じ仕事内容だったとしても、両者の収入や待遇には大きな隔たりがありました。そこで、非正規雇用労働者の待遇を改善することを目的に、同一労働同一賃金が提唱されたのです。

一口に非正規雇用労働者といっても、派遣社員もいればパートタイマー、有期雇用の労働者もいますが、それぞれで改正内容が異なります。ただ、基本的には正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止がベースとなっています。

働き方改革関連法への対応・準備方法

今後の改正法施行に向けて、企業はどういった対応をしていくべきなのでしょうか。すでにお伝えした通り、施行される改正法によっては企業が罰則を受けることも考えられるため、適切な対応が求められます。ここでは、具体的な対応の方法についてご紹介しましょう。

5日の有給取得への対応

2019年4月から施行されていますが、企業によってはまだ完全に対応しきれていないところもあるでしょう。対策としては、従来の業務をより効率化することが挙げられます。

まずは、すべての業務において非効率な部分がないかを見直しましょう。たとえば、社員に日報をつけさせているのならそれを廃止する、もしくは効率のよいシステムに変えるといった方法が考えられます。
企業主導で計画的に有給休暇を取得してもらう方法もあります。基本的に労働者の希望によって有給休暇は取得できますが、労使協定を結ぶことで企業が決めた日に休んでもらうことが可能です。これなら、繁忙期を避けて有給休暇を取得してもらうこともできます。

また、半休制度を活用する手段もあります。企業や業種によっては、丸1日休みを取得されると困るケースもあるでしょう。その場合、半休の積み重ねで5日分の有給を付与できれば、業務への支障も最小限に留められます。

いずれにしろ、労使間でしっかり話し合うことが大切です。一方的に企業の都合を押しつけては、まとまるものもまとまりません。しっかりと話し合った上で、両者が納得できる落としどころを探っていきましょう。

残業時間の上限への対応

まずは、長時間労働が発生しないように心がけることが大切です。そのためには、やはり業務効率の見直しは必要でしょう。可能な限りムダを省き、反対に導入できることは積極的に取り入れ業務の効率化を図ることで、残業時間を減らすことは可能になるはずです。

従業員の労働時間を把握するために、勤怠管理システムを利用するのも方法のひとつです。労働時間をリアルタイムに可視化できるので、具体的な改善策も講じられます。現在では低コストで利用できるクラウドタイプの管理システムもあるため、ぜひこの機会に導入を検討してみましょう。

勤務間インターバルへの対応

あくまで努力義務ではありますが、今後制度を導入しようとする企業は増えると考えられます。すでにさまざまな企業が導入しているため、実際の事例を参考に導入を検討するのもよいでしょう。
導入するには、まず労使による話し合いが必要不可欠です。その上で、労働時間の実態を把握しなくてはなりません。その上で制度設計を検証し、設けた試行期間を経たのちに再検証や見直しをします。

就業規則の整備なども行いながら制度を導入していけば、スムーズに企業内に浸透していくでしょう。

まとめ

中小企業は大企業に比べて働き方改革法の適用に時間的な猶予が与えられています。しかし、だからといってのんびり構えていると、あっという間に時間は過ぎ、何も対策をしないまま開始ということにもなりかねません。今後の改正法施行に向けて、今からしっかりと準備を進めることが大切です。今まで当たり前だったことを変えていくには時間がかかるものです。余裕を持って取り組み、対応できるようにしましょう。

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