シフト管理とは?
シフト管理とは、シフト制で働くパートタイマーやアルバイト、契約社員などの非正規の従業員や、正規雇用の従業員などのそれぞれの勤務希望に沿いながら、自社の勤務体制を管理することです。ただ従業員からの希望に沿うだけでなく、来客見込み数や売り上げ、従業員教育なども考慮しながら人員配置をしなくてはいけません。
シフト制は、1日の営業時間が長く、土日祝日も業務が必要な以下に挙げるような業界で採用されています。
- 小売業
- 飲食業界
- 製造業
- 運送業
- 医療、介護業界
- 宿泊業 など
シフト制を採用している企業の管理職にとっては「シフト管理」や毎月や週ごとに行う「シフト作成」自体が大きな負担になっています。
シフト作成時に発生する悩み
紙やExcelなどシフト作成を手作業で行っていると、以下のような5つの悩みが発生しがちです。
- 提出期限までにシフト希望がそろわない
- 突発的なシフト変更に対応しなくてはならない
- シフト希望が合わず従業員の不満が生まれやすい
- 経験や特性を考慮したシフトを組むに手間がかかる
- シフト内容が法令違反になっていないかチェックが必要
前述したとおり、シフト作成は従業員からの希望に沿うだけでは成立せず、来客見込み数や売り上げも考慮しなければなりません。それに加えて、以上に挙げる悩みも常に発生するため、シフト作成者には大きな負担がかかっています。
提出期限までにシフト希望がそろわない
従業員の中には、ギリギリまでシフト希望が決まらない人や提出期限までにシフトを出すのを忘れてしまう人がいます。従業員からのシフト希望日と休み希望日がそろわなければマネージャーはその月や週のシフトを作成できません。提出期限までにシフト希望が全てそろわなければ、マネージャーが従業員に出勤可能な日や希望休を直接問い合わせる手間が発生し、シフト作成により時間かかります。
さらに、シフトがなかなか決まらず、決められた日に従業員にシフトを発表できない状態が続くと、従業員から「予定を立てられない」と不満の声が上がるようになり、マネージャーの心理的プレッシャーも増加します。
突発的なシフト変更に対応しなくてはならない
シフトが一度決まってから、急病や子供の世話、学校の予定などで「シフトを変更してほしい」「休みにしてほしい」と従業員から連絡が入るケースが往々にしてあります。
突発的なシフト変更が起きると、人手が足りずに業務に支障が出る可能性もあります。そのため、シフト変更が起きるたびに、マネージャーや正規雇用の従業員がシフト埋めに出勤したり、シフトに入れる人がいないか連絡して探したりしなければなりません。全体に連絡する手間やシフト調整のための時間外労働などの負担が増加し、生産性が下がる要因となります。
シフト希望が合わず従業員の不満が生まれやすい
従業員からのシフト希望にすべて応えられないことで従業員からの不満が生まれてしまうのもシフト作成者の悩みの種です。
自分が出したシフトの希望休が他の従業員の都合で採用されなかったり、企業の都合で希望した日すべてに入れなかったりすると従業員からの不満が生まれやすくなります。また、忙しい時間帯に少ない人数でシフトに入る日が続くと、一部の従業員に負担が集中して不満や離職につながる可能性もあります。
希望休やシフトに入る日数など、なるべく従業員の希望に沿った公平なシフトを作ろうとしても手作業だと時間がかかりすぎてしまいます。シフトの確定が遅れると新たな不満発生の原因になりかねません。
経験や特性を考慮したシフトを組むのに手間がかかる
シフト作成者の悩みは、以下に挙げるように経験や特性を考慮した上で、無理なく営業できるシフトを組む必要があるため、シフト作成に手間と時間がかかることです。
- 経験豊富なアルバイトやパートタイマーには忙しい時間帯に入ってもらう
- 新人には教育係の従業員を付ける
- 空いている時間帯は人員を少なくする
- 連休に合わせて人員を増やす など
一人ひとりの経験や特性を考慮して人員配置するのは、従業員からもらった希望をそのまま反映してシフトを組むよりも手間がかかります。メンバーについて理解が浅い新任のマネージャーでは、自力でシフトを組むのが困難な場合もあります。
シフト内容が法令違反になっていないかチェックが必要
労働基準法で定められている法定労働時間や休日、休憩のルールに違反したシフト作成をしていてもマネージャー側が気付かない場合があり、常態化すると労働トラブルにつながる可能性があります。ちなみに、労働基準法で定められている労働時間や休日、休憩の主なルールは以下のとおりです。
労働時間・休日・休憩のルール
労働時間 | 原則として1日8時間、1週間40時間を超えて労働させてはいけない |
休日 | 少なくとも毎週1日の休日、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない |
休憩 | 労働時間が6時間を超えて8時間以内の場合は45分以上、労働時間が8時間を超える場合は60分以上の休憩を与えなければならない |
労働基準法違反がないかチェックしながら手作業でシフト作成するには手間がかかり、間違いがないか他の従業員の手を借りて二重チェックをしてもらうとなると、さらに手間と時間がかかります。
また、従業員の雇用形態・働き方に応じて、以下の点についてもシフト作成時に法違反がないか確認する必要があります。
- インターバル規制や変形時間労働制の適用者のシフトが法違反になっていないか
- 年少者や留学生のアルバイトの働き方が法違反になっていないか など
シフト作成の自動化で解決可能なこと
シフト作成をシフト管理システムやアプリを利用して自動化すると、上記で示した悩みの解決に役立ちます。悩みを解決できる理由をシフト管理システムや専用アプリの機能と合わせて解説します。
シフト作成の業務効率化
シフト管理システムには、従業員の働き方や属性、経験を以下の表のように登録できるのに加えて、時間帯や曜日ごとに必要な人数も登録可能です。
働き方 | 週○日まで、年間○万円まで、できるだけ入りたい など |
属性 | 高校生、大学生、フリーター など |
経験 | バイトリーダー、教育担当、研修中 など |
これらの情報を登録しておくと、希望シフトに応じて自動で適切なシフトを作成できます。
シフト希望を見ながらマネージャーが手作業でシフトを作る手間が省けるため業務効率化につながり、シフトに費やしていた時間を、新人教育や売り上げ増加のための施策立案などの時間に充てられます。
また、シフト管理システムでは、シフト希望を紙に書いたり電話で伝えたりせずとも、社内の端末や従業員自身のスマートフォンから希望シフトを入力可能です。
突発的にシフト変更があった際の負担軽減
シフト管理システムの利用により、シフト変更があってもシステム上ですぐ確認・調整ができるため、シフトに入れる人がいないか連絡する手間や、一度作ったシフトを何度も作り直す負担を軽減できます。
また、シフト表を社内端末や自分のスマートフォン等で確認できると「シフト希望の出し忘れ」が減る効果も期待できます。さらに、システム上で従業員もシフト状況を確認できるようにしていると、人が足りない時間帯を埋める希望を出しやすくなり、調整がスムーズになります。
公平性のあるシフトが作りやすい
上述したように、シフト管理システムには従業員の働き方や属性、時間帯や曜日ごとに必要な人数を登録できます。これらの情報をシフト管理システムで一元管理すると公平性のあるシフトも作成できるようになります。
例えば、数か月分のシフトを確認できるシステムを導入すれば「夜間勤務が一部のメンバーに偏っていないか」などの内容を簡単に確認できるため、手作業より公平性のあるシフトが作りやすくなります。
バランスを考えたシフト案を自動で作成できる
シフト管理システムに、属性や経験に応じたシフトパターンをあらかじめ登録しておくことが可能です。これにより、従業員の能力に応じた配置やベテランと新人の配置バランスを考慮するシフトを自動で作成できます。
例えば、ベテラン2人の場合は要員3人のところを2人にしたり、新人が入る場合は一定以上の経験がある人が入ったりといったパターンを登録できます。能力差や忙しい時間帯に応じた人員配置を実現しやすくできるため、従業員の負担も減り離職率低下にもつながります。
法令を遵守したシフト作成が簡単にできる
シフト管理システムには、労働基準法上問題があれば自動でアラートを出したり、不正なシフトを強調して表示する機能があるタイプもあります。
休憩は規定通り取れているか、法定労働時間を超えていないか、休日は適切に取れているかなどを、この機能で可視化することで、大きな問題につながりやすい労務リスクを防ぐことが可能です。
また、従業員の中には、一般の従業員と同じ働かせ方でシフトを組むと法違反になる働き方の人もいます。
シフト管理システムの機能には勤怠管理と連動して、登録した雇用形態とシフト内容が法違反となっていないかシステム確認できるタイプもあり、これらを有効活用することでシフト作成時のコンプライアンス違反防止が可能です。
チェックの必要があるのは以下のような働き方や雇用形態です。
働き方・雇用形態 | チェックしなくてはならないポイント |
変形労働時間制の適用者 | ・1週間単位のシフト勤務の場合、1週間の労働時間が40時間を超えていないか ・1か月単位シフト勤務の場合、1か月の労働時間を平均して1週間当たり40時間以内になっているか ・1年単位のシフト勤務の場合、年間の労働時間が約2085時間(閏年の場合約2091時間)内になっているか |
勤務間インターバル制の適用者 | 前日の終業時間から翌日の始業時間まで9~11時間の休息時間が確保できているか |
36協定の適用者 | 自社の労使協定で決めた時間外労働時間に収まっているか |
満18歳未満の年少者 | ・1日8時間、1週40時間の法定労働時間の労働時間の制約は守れているか ・午後10時から午前5時までの深夜労働をさせていないか |
外国人留学生 | 週28時間労働になっているか ※違反すると留学生は「不法就労」、雇用主は「不法就労助長罪」に問われ企業側も罰則を科される場合があります。 |
まとめ
希望や従業員の経験などをバランスよく反映したシフト作成には非常に大きな負担がかかります。シフト作成時にありがちな悩みは、シフト管理システムを導入してシフトを自動化すると解決できます。システム導入は業務効率化や労務リスク対策に加えて、従業員の満足度や教育効果などの効果も期待できます。
また、シフト作成・管理の自動化によって、新人教育や売り上げ増加のための施策立案など、他の業務に割く時間がとれるようにもなるのも大きなメリットです。勤怠管理とシフト管理を連携させると、さらに業務効率化が期待できます。
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