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荷待ち時間とは?実態・原因や改善のためのルール、義務化のポイントを解説

公開日時:2024.11.15

物流業界で大きな課題となっている「荷待ち時間」についてご存じでしょうか。荷待ち時間は、トラックドライバーの労働環境を悪化させるだけでなく、物流全体の効率を低下させる要因となっています。2024年からは新たな労働時間規制が始まり、この問題への対応がよりいっそう急務となっています。

本記事では、荷待ち時間の定義から最新の法規制まで、わかりやすく解説します。また、荷主や運送会社が実践できる具体的な対策も紹介します。

荷待ち時間の定義

まずは、荷待ち時間とは何かについて、労働時間との関係性も含めて解説します。

荷待ち時間とは

荷待ち時間は、トラックドライバーが荷物の積み下ろしのために待機する時間を指します。この時間は、荷主の都合や物流施設の混雑状況、天候などによって発生するため、ドライバー側でのコントロールは難しいのが現状です。

具体的には、以下のような時間が荷待ち時間に該当します。

トラックの列待ち

物流施設に到着したものの、ほかのトラックがすでに列をなして待機しているときに、自分の順番を待つ時間を指します。大規模な物流センターや港湾施設では、しばしば見られる光景です。

荷物の準備の遅延

荷主側の荷物の準備が完了していないため、積み込みができずに待機する時間です。製造ラインの遅延や在庫管理の問題が原因となることもあります。

積み下ろし場所の混雑

荷役スペース(バースやプラットフォーム)が混雑しているときの待ち時間を指します。特に繁忙期や特定の時間帯に集中して発生しがちです。

時間指定による調整

指定された配送時間に合わせるために、意図的に待機する時間です。例えば、到着が早すぎた場合や、次の配送先の受け入れ時間まで待つ必要がある場合などが該当します。

荷待ち時間と労働時間の関係

厚生労働省のガイドラインでは、「労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たること」とされています。

荷待ち時間はその性質上、労働時間とみなされることが多く、1958年の行政通達では、荷物の積み込みを待機している時間は労働時間と解されるとされています。一方で、1964年の行政通達では別の解釈がされています。貨物の到着の発着時刻が指定されており、トラックドライバーが待機中に休憩時間を1時間設けている場合に、その時間を労働者が自由に利用できる時間であれば休憩時間であるとされています。

このように、場合によっては荷待ち時間は休憩時間とみなされる可能性があるため、実態に即した判断が必要といえます。

荷待ち時間を巡る現状

荷待ち時間は、なぜ近年問題視されているのでしょうか。ここでは、荷待ち時間の実態や発生要因を解説します。

荷待ち時間の実態

国土交通省が行った2021年の調査によると、荷待ち時間の平均は1運行あたり1時間34分でした。

 

 

また、荷待ち時間がある運行は、荷待ち時間のない運行よりも平均して約2時間拘束時間が長くなることが示されました。荷待ち時間の存在が、トラックドライバーの拘束時間を大幅に延長させていることがわかります。

 

さらに、2022年の同調査では、実運送業者、元請事業者ともに半数以上が「荷待ち時間が発生している」と回答しました。一方、荷主側の多くは荷待ち時間の発生状況を把握していない現状が読み取れます。

 

こうしたなか、国土交通省は2023年7月に「トラックGメン」という名の専門部隊を創設しました。荷主の悪質行為に対して「働きかけ」「要請」「勧告・公表」を行うことで、荷主の意識改革を促しています。

2024年6月末時点で、働きかけ635件、要請174件、勧告2件が実施されました。

荷待ち時間が発生する要因

荷待ち時間の発生には、荷主の認識不足以外にも複数の要因が絡み合っています。主な要因として、荷主都合による積み込み準備の遅れや、天候や交通状況による車両到着時間のずれ、トラックバース(荷物の積み降ろしを行う場所)の不足などが挙げられます。

また、繁忙期の人員不足や、手荷役作業の存在も大きな要因でしょう。これらの問題が複合的に作用し、長時間の荷待ち時間を引き起こしています。

長時間の荷待ち時間がもたらす影響

長時間にわたる荷待ち時間は、トラックドライバーや運送会社だけでなく、物流業界全体へも悪影響をおよぼす可能性があります。

ドライバーへの影響

長時間の荷待ちは、トラックドライバーの拘束時間を延ばし、疲労の蓄積や交通事故のリスクを高める可能性があります。また、労働意欲の低下にもつながり、ドライバー不足を加速させる一因にもなり得ます。

運送会社への影響

運送会社にとって、荷待ち時間の増加は勤怠管理の複雑化やコストの増加を招きます。また、業務効率が妨げられるため、事業運営にも悪影響を与えます。

物流業界全体への影響(2024年問題)

2024年4月から、自動車運転業務にも時間外労働の上限規制が適用され、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が、年960時間に制限されました。

一方で、この上限規制に伴って生じる諸問題は物流業界の「2024年問題」として注目されています。具体的には、労働時間の短縮による輸送能力不足が懸念されています。国の試算では、2024年問題に対して対策を講じなかった場合、2024年に14.2%、2030年には34.1%の輸送能力不足が生じる可能性があるとされています。

荷待ち時間の増加は、物流業界全体の輸送効率を低下させ、ドライバー不足を加速させる要因となるため、2024年問題とも密接な関係があるのです。

荷待ち時間削減に向けて遵守すべきルールと義務

こうしたさまざまな問題を背景に、荷待ち時間の削減に向け、荷主や運送事業者が守るべきルールや義務が策定されています。特に押さえておくべき内容は、以下のとおりです。

荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール

時間外労働の上限規制に対応するために、2023年6月に経済産業省、農林水産省、国土交通省の連名でガイドラインが策定されました。その際、発荷主事業者・着荷主事業者・物流事業者が早急に取り組むべき事項として「荷待ち・荷役作業等時間2時間以内ルール」が示され、注目されました。

2時間以内ルールとは、荷主事業者が物流事業者に対して荷待ちや荷役作業にかかる時間を原則として計2時間以内に収めることを求める規定です。

荷待ち時間と荷役作業の合計を2時間以内に

荷主事業者は、運送事業者に対して長時間の荷待ちや運送契約にない荷役作業をさせてはなりません。運送事業者の荷待ち時間および荷役作業等(荷積み・荷卸し・附帯業務)にかかる時間を適切に把握したうえで、それらの作業を計2時間以内に収めることが求められています。

目標時間の短縮

荷待ち時間と荷役作業の合計が2時間以内に収まった、あるいはすでに収まっている場合は、目標時間を1時間以内に設定し、さらなる時間短縮を図る必要があります。

ここでの荷待ち時間と附帯業務は、ガイドラインで以下のように規定されています。

  • 荷待ち時間とは、集荷又は配達を行った地点(集荷地点等)における到着日時から出発日時までの時間のうち、業務(荷積み、荷卸し、附帯業務等)及び休憩に係る時間を控除した時間(待機時間)を指す。
  • 附帯業務とは、品代金の取立て、荷掛金の立替え、貨物の荷造り、仕分、保管、検収及び検品、横持ち及び縦持ち、棚入れ、ラベル貼り、はい作業その他の運送事業に附帯して一定の時間、技能、機器等を必要とする業務をいう。

また、荷主事業者は、物流事業者が貨物自動車運送事業法などの法令および法令に基づく命令を遵守できるよう、必要な配慮をしなければなりません。荷主事業者が、貨物自動車運送事業者に法令違反を引き起こす可能性のある行為(違反原因行為)を行っている疑いがある場合、その荷主事業者は国土交通省からの働きかけ、要請、勧告・公表の対象となります(貨物自動車運送事業法附則第1条の2)。違反原因行為には、「長時間の荷待ち」、「依頼されていない附帯業務」、「運賃や料金の不当な据置き」などがあります。

なお、運送事業者が法令違反を犯した際、その違反の原因に荷主が関与していると認められる場合に、国土交通省が荷主に対して是正措置をとるべきことを勧告する制度を「荷主勧告制度」といいます。

荷待ち時間削減計画の策定義務

2024年2月、大手の荷主や運送事業者に対して荷待ち時間削減計画の策定を義務化する閣議決定がなされ、2026年度までに全面的に施行されることになりました。対象は、荷主約3,000社やトラック事業者約400社が想定されています。

取り組みが不十分な場合は、国による勧告や命令が下ります。勧告に従わなければ是正命令や社名公表の措置がなされ、命令に違反した場合は最大100万円の罰金が科される可能性があるため、適切な対応を徹底しましょう。

荷待ち時間の記録義務

荷待ち時間の記録は2017年7月から法律で義務化されており、運送事業者には正確な記録と報告が求められています。義務づけの対象は車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の中型・大型トラックとされています。小型トラックは記録義務の対象外ですが、荷待ち時間の削減を実現するために適切な時間管理は必要でしょう。

荷待ち時間を改善する方法

定められたルールや義務を遵守すること以外にも、荷待ち時間削減につながる対策はいくつかあります。

バース予約管理システムの導入

バース予約管理システムとは、物流施設のトラック積み降ろし場所(バース)の使用時間を事前に予約・管理するデジタルツールです。このシステムの導入により、荷待ち時間の大幅な削減が期待できます。

パレット化の推進

パレット化(荷物を載せるための荷役台であるパレットを使用して、荷役、運搬、保管の作業を効率化すること)は、荷役作業の効率化は荷待ち時間削減に大きく寄与します。こうした効率化への取り組みにより、荷物の積み下ろし時間を短縮し、全体の待機時間を減らすことができます。

ハンディターミナルの活用

ハンディターミナルを使用し、荷物に付けられた二次元バーコードを読み取ることで、検品作業時間を短縮できます。

まとめ

荷待ち時間の削減は、2024年問題を見据えた物流業界に差し迫った重要な課題です。法令・ルールの順守やデジタル技術の活用を通じて、荷待ち時間の改善に努めましょう。一人ひとりが意識を高め、具体的な対策を実施することで、トラックドライバーの労働環境改善と物流業界の発展を実現することにつながります。

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