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週休3日制度とは?正社員を対象にした企業の導入事例を交えて解説

公開日時:2023.01.26

「週休3日制」は、政府の「骨太の方針2021」によって今後に普及を図ることが盛り込まれ、働き方改革と併せて実際に導入する企業が増えています。

働き手が職場を選択する際にも、ワークライフバランスが重要視されることから、今後さらに「週休3日制」への注目が予想されます。一方で、労務管理の複雑化や業務の遅滞といった懸念から、導入を決断しかねている企業も多いのではないでしょうか。

本記事では導入事例を交えて、週休3日制によるメリット・デメリットや、導入する場合の労働パターン、定めるべきルールなどを具体的に解説します。
参照:内閣府丨「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針2021)23頁

週休3日制が企業から注目される背景

週休3日制が企業に注目されている背景は大きく2つあります。1つは政府による奨励です。2021年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)に「選択的週休3日制」が盛り込まれました。

また、義務化はされていないものの、2022年6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2022」でも「選択的週休3日制」は引き続き盛り込まれています。

なお、選択的週休3日制とは、希望者に週休3日制度を適用することです。

2つ目は、従業員がワークライフバランスを重要視するようになり、企業として多様な働き方に対応する必要が生まれたことが挙げられます。

すでに週休3日制を導入している企業もあり、今後さらに人的資本活用の観点において、企業側・働き手側の双方から注目される可能性が高いでしょう。

週休3日制導入のメリット

週休3日制導入による企業側のメリットとしては、下記の3点が考えられます。

  • 離職の防止につながる
  • 求職者にアピールできる
  • パフォーマンスが向上する

週休3日制度では従業員の休日が増えるため、仕事以外の趣味や家庭に割ける時間が増加します。そのような従業員側に発生するメリットが、離職防止や生産性向上といった企業側のメリットにつながるといえるでしょう。

ここから、それぞれのメリットについて具体的に解説します。

離職の防止につながる

週休3日制の導入によって、ライフイベントによる、やむを得ない理由での離職の防止につながります。

妊娠・出産・介護・子育てといった家庭環境の変化を迎えた際に、仕事と両立できる柔軟な働き方を選択しやすくなるため、従業員は同じ職場で働きつづけられる可能性が高くなります。そうすれば、自社よりも休みが取りやすい他社への人材流出を防ぎ、離職率の低下を実現できます。

求職者にアピールできる

週休3日制の導入が、企業のイメージアップとなり、求職者にアピールできる点もメリットの1つです。

人生設計を見越してフレキシブルな働き方を望む求職者から、ライフスタイルに合わせた勤務形態が選択できる企業だと認識され、イメージアップにつながります。また、企業イメージの向上により、優秀な人材からの応募増加も考えられます。

従業員のパフォーマンスが向上する

週全体の労働時間が短くなる週休3日制度を導入する場合、売上を維持するためには生産性を保つ必要があり、必然的に仕事のパフォーマンスが向上します。従業員が限られた時間内に効率よく業務を行うようになるため、無駄な業務の削減につながります。

また、休日の増加が、従業員のパフォーマンス向上に寄与するというデータも発表されています。英レディング大学が週休3日制を導入したイギリス企業を対象に行なった2019年の調査によると、約6割が「生産性が改善した」と回答しました。

さらに、日本マイクロソフトは2019年8月限定で、週休3日制を試験的に導入・実施しました。その際に集計したアンケートでは、9割を超える従業員が「週休3日制を評価する」と答えたと発表しています。加えて生産性も前年同月と比較し39.9%向上したという結果が示されました。

ただし、日本マイクロソフトの見解として、さまざまな要因が生産性向上につながり、週休3日制のみの影響ではないと補足しています。

週休3日制は週休2日制だった頃と比べて、企業全体の生産性が必ず向上するとは判断できないものの、短い時間で集中することによって総じて従業員のパフォーマンスが向上するといえるでしょう。また、経験を積んだ人材の流出を防いだり、魅力ある制度で求職者にアピールできたりするといった恩恵につながります。

週休3日制導入の注意点

週休3日制の導入は、企業・従業員双方にメリットをもたらす一方、下記の2点に注意が必要です。

  • 労務管理が複雑になる
  • ビジネス機会を損失する可能性がある

この章では、これらの注意点について具体的に解説します。

労務管理が複雑になる

週休2日制と週休3日制では、労働時間や休日の日数が異なります。そのため、条件を満たす限られた従業員のみに週休3日制を適用する場合、勤怠管理や労務管理が煩雑化したり、複雑化したりする傾向があります。変形労働時間を採用している場合は、1年や1か月単位の労働時間の平均が所定の時間を超えないように調整しなければならなかったり、残業代を支払う必要がある場合とない場合を判断したりするなどの、さらに複雑な計算が求められます。

週休の違いや変形労働を適用した場合などの働き方の多様性に対して、最適な管理方法が提供できる勤怠管理システムを導入し、労働時間の可視化や管理などの環境整備を行うことで対策をしましょう。

ビジネス機会を損失する可能性がある

クライアントとの予定調整が難しくなったり、連絡が滞ったりすることで顧客獲得に支障をきたすといったビジネス機会の損失が考えられます。

従業員同士の休みをずらしたり、予め取引先に週休3日制で勤務している旨を伝えて理解を得たりして、業務がスムーズに進行するよう対策を講じましょう。

上記のように、週休3日制導入により従来の方法では対処できない課題発生が想定されます。しかし、いずれも環境整備や取引先との擦り合わせを事前に行うことで、問題回避が可能です。

週休3日制を導入した場合の3つの労働スタイル

週休3日制導入の就業形態には、大きく分けて下記の3パターンがあります。

  • 週の労働時間が減り、給与は変わらない
  • 週の労働時間が減り、給与も下がる
  • 1日あたりの労働時間が増え、給与は変わらない

この章では、各パターンの詳細とそれぞれのメリット・注意点を解説します。

週の労働時間が減り、給与は変わらない

労働時間が減り、給与が変わらないタイプは、勤務を1日8時間・週4日とし、労働時間が減少しても賃金は維持されるという就業形態です。給与は減らずに労働時間のみが減少するため、従業員にとっては最も魅力的なタイプといえます。

ただし、少ない業務時間でも週40時間勤務と同じ業務量をこなす必要があるため、1日あたりの生産性を向上させるよう効率化しなければなりません。

週の労働時間が減り、給与も下がる

労働時間が減り、給与も下がるタイプは、1日8時間労働、週4日勤務で労働時間・賃金ともに減少します。

勤務時間が40時間から32時間に2割削減された分、仕事量と給与も2割減するのが一般的です。このタイプの利点は、多くの場合、従業員の意思で週休3日制が選択可能となるため、自分の価値観によって判断できる点です。

従業員は自分のライフプランと照らし合わせて、給与と休みのどちらを優先するかを決められます。

1日あたりの労働時間が増え、給与は変わらない

労働時間が増加し、給与は変わらないタイプでは、1日あたりの労働時間を増やして10時間勤務としますが、賃金は変わりません。

1日あたりの勤務時間について、週40時間を勤務日数の4日で除算して算出するため、一週間全体の時間数や仕事量、給与は変化しないことが特徴です。この就業形態は、給与や週単位での労働時間を維持した状態で、週休3日が取得可能という利点があります。

一方、1日あたりの労働時間が長時間に及び、負担となる場合があるため、残業を削減したり、休憩の取り方を工夫させるなどの配慮が必要です。また、時間外労働へ対応するため変形労働時間、またはフレックスタイム制の適用を検討する必要があります。

週休3日制の導入で企業が定めるべきルール

週休3日制導入において企業が定めるルールは、下記のとおり大きく5つに分類できます。それぞれ検討した上で、就業規則改定・労使協定を締結してください。

なお、「新たに休日とする曜日」や「対象となる従業員」の設定といった制度運用方法は法的に規定されていないため、企業側が任意で設定可能です。

①目的を明確化する

②対象者を決める

③制度を設計する

④副業や兼業の可否を定める

⑤有給休暇・平均賃金を算定する

ここから、それぞれのルールについて具体的に解説します。

①目的を明確化する

「ワークライフバランスの実現」や「介護・育児との両立支援」といった週休3日制導入の意図を明確化しましょう。

目的が「仕事よりも介護・育児に注力したい人向けの両立支援」なら、週全体の労働時間と給与が下がる制度を検討し、「仕事とプライベートのどちらも重視したい人向けの両立支援」であれば1日あたりの労働時間を増やして給与は維持する方法が妥当と考えられます。

このように、目的によって制度設計が異なるため、週休3日制導入で何を目指すのかを第一に考える必要があります。なお、従業員との目的共有が不十分な場合、不平不満や不信感を招きかねないため、丁寧かつ徹底した周知が必要です。

②対象者を決める

「全従業員」「希望する者」「条件を満たす従業員」といった、制度を適用する対象者を検討しましょう。条件を付ける場合は、「未就学児を育成している人」など前述の導入目的をもとに決定します。

また、長時間労働を削減したい場合は、業務内容に合わせて対象とする部署を限定する方法もあります。全従業員や希望する者を対象とする場合は、混乱を避けるため段階的に適用すると良いでしょう。

なお、従業員の不満を回避するため、対象者選定については事前アンケートを行うことが大切です。

③制度を設計する

制度の設計とは、労働スタイルの3パターンの中から、自社に合った週休3日制度を選び、休日を決めることです。前章で述べた労働スタイル3から、目的や自社の体制などをもとに選択してください。その後、新たに休日とする日も定めます。

ただし、労働基準法で「使用者は原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならない」と規定されているため、法定労働時間を遵守しなければなりません。

そのため、1日あたりの勤務時間を増やすパターンを採用する場合には、変形労働時間制の利用により導入可能です。

④副業や兼業の可否を定める

休日が3日になることで、副業を希望する従業員の増加が想定されるため、予め可否を規定もしておきましょう。

特に賃金が減少する制度を設計した場合、従業員の生活維持が困難になる可能性を含むため、従業員の給与減少には十分配慮して副業や兼業の可否を検討してください。

ただし、従業員の副業・兼業を許可した場合、労働時間の通算が法定労働時間を上回るなど、会社にとって不利益を被らないよう注意する必要があります。

⑤有給休暇・平均賃金を算定する

週休3日制の導入によって、年次有給休暇の日数や、平均賃金の算出が必要な場合があります。

年次有給休暇は週4日勤務以下かつ週30時間未満の労働時間の場合は比例付与となるため、取得できる日数を計算しなければなりません。また、日給制や時間休制を導入している場合、平均賃金の最低保証額より下回っていないか確認してください。

週休3日制の内容によっては従業員から反発や不満を招く可能性があります。離職や職場の雰囲気の悪化を回避するため、一つひとつ慎重に設計していきましょう。

正社員を対象に週休3日制を導入している企業例

正社員を対象に週休3日制を導入している企業は多くありますが、この章では3つの企業の事例を紹介します。

日本マイクロソフトの週休3日導入事例

日本マイクロソフトでは、2019年・2020年と試験的に、1日の労働時間は変わらず、給与は維持する制度設計を導入しました。短時間勤務で休暇・自己研鑽に当てる時間や家族と過ごす時間を増やし、生産性や創造性の向上を目指すことが目的です。

制度導入に伴い、会議は30分以内、人数は多くて5人でTeamsを用いるなどのルールを設定し運用しました。効果測定には「削減系」「向上系」「満足系」という3点を採用し、生産性向上や書類の印刷にかかる枚数、消費電力の削減などにつながりました。

さらに、週休3日制は9割の従業員から好意的に受け止められ、従業員の意識や行動変化に影響があったと発表されています。

みずほフィナンシャルグループの週休3日導入事例

みずほ銀行が導入している週休3日制は、1日の労働時間は変わらず、給与を減少させる方法です。2020年11月からフレックス制を拡大する形で、従業員が金融・非金融かかわらず専門知識を深め、社内外で活躍できる人材となり、金融の新しい価値を創造するという目的から導入されました。

実際に、従来よりも増えた休日を生かして社内外兼業や副業を行うなど、従業員が自らチャレンジし専門性を高める工夫を行っていることが特徴です。

なお、2020年からは希望する従業員に対し、週休3日制・4日制を取り入れています。

ユニクロの週休3日導入事例

ユニクロでは、1日の労働時間を10時間に増やし、給与を維持する制度が導入されています。「公私を両立・充実させたい」という従業員の要望から、多様な働き方に対応することを目的として制定されました。

出勤日数が減っても業務に支障が出ず、かえって集中して取り組めたり、人材育成が捗ったりするなど効果を発揮しています。

従業員からは「介護と自分の時間確保の両立が可能になった」「家事育児を夫婦でバランスよく分担できるようになった」「自己研鑽をする時間が作れた」などの声が挙がっています。

上記3社以外にも週休3日制を実施している企業があるため、参考にしながら導入を検討してみてください。

まとめ

週休3日制が注目されている背景から、制度導入のメリット・注意点、企業での事例などを解説しました。

今後、働き方の多様化はさらに進み、週休3日制を取り入れていく会社の増加が予想されます。人材が求める職場選択の基準も移り変わるため、企業は時代に合った働き方を実現する環境整備が必要です。

なお、週休3日制導入のためには、柔軟な働き方に対応できる労務管理ツールを準備しておくことが重要です。先を見通した勤怠管理システムの導入をお勧めします。

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