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忙しさを理由に健康診断を受けない従業員がいます。会社側に対する罰則はありますか?

対象となっている従業員の健康診断は絶対に受けさせなければなりません。でなければ、法違反となり罰金が科されます。
公開日時:2022.06.27 / 更新日時:2022.06.29
詳しく解説

Q.忙しさを理由に健康診断を受けない従業員がいます。対象者に健康診断を受けさせなかった場合、会社側に対する罰則はありますか?

健康診断を受けるよう案内していますが、「忙しく予定が合わない」と言って診断を受けない従業員がいます。従業員に健康診断は絶対に受けさせなければならないのでしょうか。もし受けさせなかった場合、従業員の希望だったとしても企業に罰則は科されますか。

A. 対象となっている従業員の健康診断は絶対に受けさせなければなりません。でなければ、法違反となり罰金が科されます。

健康診断を受けるのは従業員の義務であり、企業は従業員には絶対に健康診断を受けさせなければなりません。従業員が拒否していた、予定通りに受けてくれなかったという事情があったとしても健康診断を受けさせなければ違法となります。健康診断を受けさせていない場合は労働基準監督署から指導が入ります。指導がされた後も従業員に健康診断を受けさせるための対応を怠るなど、状況の改善が見られない場合50万円以下の罰金が科されます。

健康診断を受けさせないと違法になり、罰金が科されるケースも

健康診断を従業員に受けさせるのは企業の義務です。労働安全衛生法第66条1項では、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない」と定めています。同法第120条では、これらの義務を怠った場合、「50万円以下の罰金に処する」としています。

ただし、健康診断を受けなかったら即罰金が科されるという対応は考えにくく、健康診断を受けさせていない実態が明らかになり、労働基準監督署の指導を受けても対応しないでいると罰金が科される、という流れです。

企業が義務として受けさせなければならない健康診断は「一般健康診断」です。対象は以下に該当する従業員ですので、確認しておきましょう。

健康診断を受けさせる必要がある対象者

・正社員:常時使用されるため正社員は全員対象
・パート・アルバイトの労働者:1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上で、1年以上継続して雇用される予定の人
・契約社員:1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上で、1年以上継続して雇用される予定の人

派遣社員については派遣元企業で健康診断を実施します。役員や監査役は労働者性がないため健康診断を実施させる義務はありません。

なお、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、「定期健康診断結果報告書」を所轄労働基準監督署長に報告する必要があり、これを怠ると労働安全衛生法の違反となります。

健康診断を拒否する従業員への対応

健康診断を拒否する従業員には、健康診断は任意ではなく義務であること、受けさせなければ会社が違法行為をしているとみなされるということを伝えましょう。従業員側も仕事が多忙である、予定が合わないなど指定された日に健康診断を受けられない事情がある場合もあります。そのため、企業側は従業員が受けやすいように検診日を複数設定する、日程変更も認めるなど、対応を工夫しましょう。それでも従業員が健康診断を受けようとしない場合、懲戒処分の検討も視野に入れる必要があります。

なお、懲戒処分を検討する場合、就業規則に定期健康診断の受診義務があること、受診拒否が懲戒処分の対象となることを規定し、周知しておく必要があります。

従業員に受けさせる必要がある健康診断の種類

企業が従業員に受けさせる義務がある「一般健康診断」についてそれぞれ紹介します。一般企業では以下の表のうち「雇用時の健康診断」と年1回定期的に行う「定期健康診断」、6か月以内ごとに1回定期的に行う「特定業務従事者の健康診断」の内容を把握しておきましょう。

従業員に受けさせる必要がある健康診断の種類

雇入れ時の健康診断

従業員を雇い入れた直前や直後に行う健康診断で、企業に実施義務があります。対象者は、正規雇用・非正規雇用問わず、1週間の所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上で、1年以上継続して雇用される予定の者(常時雇用される者)です。

雇入れ時の健康診断の項目

1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9 血糖検査
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11 心電図検査

定期健康診

1年に1回のペースで行う定期的な健康診断です。対象者は雇入れ時の健康診断と同じく、常時雇用される労働者です。

定期健康診断の項目

1 既往歴及び業務歴の調査
2 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
3 身長(※2)、体重、腹囲(※2)、視力及び聴力の検査
4 胸部エックス線検査(※2) 及び喀痰検査(※2)
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量及び赤血球数)(※2)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)(※2)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)(※2)
9 血糖検査(※2)
10 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)
11 心電図検査(※2)

(※2)定期健康診断の健康診断項目については、それぞれの基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略することができます。

特定業務従事者の健康診断

有害業務に常時従事する労働者に対しては、年1回のペースではなく当該業務への配置替えの際および6か月以内ごとに1回、定期健康診断の項目について健康診断を行う必要があります。

まとめ

健康診断を受けさせるのは企業の義務として定められており、従業員側にも健康診断を受ける義務があります。健康診断を拒否する従業員がいたとしても、診断を受けさせないで放置しておくと法違反となり、罰金が科されるおそれもあります。健康診断を拒否する従業員がいた場合、診断を受ける必要性や法的な義務を説明し、それでも従業員が拒否したら懲戒処分も検討しましょう。懲戒処分とする場合はあらかじめ就業規則で健康診断を受ける義務があることと、拒否すると懲戒処分となることを明記し周知しておきましょう。

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