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選択的週休3日制の導入について検討すべきでしょうか?労務管理上のデメリットやリスクを知りたいです。

選択的週休3日制を導入する場合、生産量が落ちる、勤怠管理が煩雑になる、給与や評価などの制度の見直しが必要になるといったデメリットが考えられます。メリットとデメリットをしっかり把握した上で検討することが重要です。
公開日時:2021.11.24 / 更新日時:2022.03.09
詳しく解説

Q.選択的週休3日制導入について今後社内で検討すべきかを悩んでいます。導入する場合、労務管理上どのようなデメリットやリスクがあるのでしょうか?

200人程度の従業員が在籍する会社の労務担当をしています。2021年6月に政府の閣議決定で「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)が策定されましたが、その中に「選択的週休3日制」についても盛り込まれていることを知りました。

我が社の場合、仕事量の面から給与をそのままで全員を週休3日にすることは難しいかと思われます。また、実施した場合は労務管理も煩雑になることが懸念されます。選択的週休3日制について、今後は対応が求められるようになるのでしょうか? また、選択的週休3日制を導入した場合の労務管理におけるデメリットやリスクについても詳しく知りたいです。

A.選択的週休3日制を導入する場合、生産量が落ちる、労務管理が煩雑になるといったデメリットが考えられます。メリットとデメリットをしっかり把握した上で検討することが重要です。

選択的週休3日制は、国の働きかけがより強くなることで導入する企業が中長期的に増える可能性があります。今後、導入企業が増えるにつれて、週休2日の会社は「多様な働き方ができない会社」とみなされる恐れがあり、場合によっては離職者が増えるという状況も考えられます。多様な働き方の一環として、自社で導入すべきかどうかの検討が必要となることが予想されます。

ただし、選択的週休3日制はメリットばかりではありません。次のようなデメリットも考慮して検討する必要があります。

  • 人員を増やさずに導入した場合、労働時間の減少に伴い生産量も減少する
  • 従来の労務管理の方法を変更する必要があり、人事・労務管理部門の負担が増える
  • 週休2日と3日の従業員が混在し、業務の振り分けや評価に不公平感が生まれる

導入する、またはしないことを安易に決めるのではなく、メリット・デメリットを把握した上で検討してみましょう。

選択的週休3日制とは

選択的週休3日制とは、従業員が希望した場合に会社が週3日までの休みを認める取り組みと働き方を指します。2021年6月に発表された骨太の方針では、選択的週休3日制を多様な働き方を推進する取り組みの一つとして、企業への導入促進を図ることが盛り込まれています。そのため、大企業を中心に導入企業が増加するのではと予想されます。

国は選択的週休3日制を普及させることで、企業側が抱える労働力不足や従業員側が抱えるフルタイムの働きづらさを軽減したい狙いがあります。労働人口の減少が危惧される中で、企業としては離職者増加や採用数の減少を阻みたいところです。そこで、週休3日制により介護や育児などでフルタイムでは働きづらかった人材が働きやすい状況を作ることで、労働力の減少にストップをかけられると期待されています。

なお、選択的週休3日制は、給与や労働時間により大きく下記3つのパターンに分けられます。

  1. 給与を従来の8割に減らす
  2. 給与を維持し、1日の所定労働時間を増やす
  3. 給与と労働時間を維持し、生産性を上げることで成果を出す

1. 給与を従来の8割に減らす
労働時間に応じて従来の給与から減らすケースです。1日8時間、週5日勤務のフルタイムの場合、1週間の所定労働時間は40時間となります。週休3日により1週間の所定労働時間を従来の8割である32時間とした場合に、給与も同様に8割とするものです。企業によっては、週休日数を3日、または4日から選べる制度とし、週休3日を選択する人には給与を従来の8割、週休4日の場合は従来の6割に減らす、といった給与体系を取っています。

2. 給与を維持し、1日の所定労働時間を増やす
1日の所定労働時間を増やすことで給与を維持するケースです。例えば、従来は1日8時間労働×週5日勤務だったところを1日10時間労働×週4日勤務に変更した場合、1週間の所定労働時間合計はどちらも40時間となり同じです。1日あたりの勤務時間を長くすることによって、給与額を変えずに週休3日制を導入することができます。中には労働時間が長くなることに抵抗がある人もいますが、休日が増えることをメリットと考える人もいるでしょう。一方で、人件費の増加にも注意が必要です。1日の所定労働時間が8時間を超えることで割増賃金が発生するためです。企業側としては、変形労働時間制を導入することで割増賃金の経費増を回避する策がよく取られています。

3. 給与と労働時間を維持し、生産性を挙げることで成果を出す
労働生産性を上げることで1週間の所定労働時間を減らす一方で、給与は維持するケースです。所定労働時間が週40時間から週休3日により32時間まで減っても、業務量や生産量を保たれれば従来のキャッシュフローが維持できます。なお、このパターンを選択する場合は、業務フローを見直す、会議時間を短縮する、といった会社をあげて生産性を向上させる取り組みが必要になります。

選択的週休3日制が注目される背景

選択的週休3日制は企業側・従業員側双方にメリットがあり、多様な働き方を取り入れたい企業に注目されています。ここでは、企業側と従業員側に分けて、それぞれのメリットを見ていきましょう。

【企業側のメリット】
週休3日制を導入することで、企業側が期待できるメリットは下記の3点です。

  • 離職率低下につながる
  • 採用活動にプラスに働く
  • 生産性アップにつながる

・離職率低下につながる
従業員の中には育児や介護を理由に退職を余儀なくされる人もおり、週休3日制により仕事の負担を軽減することで継続して勤務してもらえる可能性があります。育児・介護を行っている従業員が多く在籍する場合は、週休3日制を好意的に受け取ってもらえるかもしれません。

・採用活動にプラスに働く
選択的週休3日制を導入している企業は、ワークライフバランスを重視する会社として採用において応募数の増加が期待できます。フルタイム勤務ができない能力が高い人材を採用できる可能性も高まります。応募者数が少ない、人材の多様化を図りたい、といった企業は、選択的週休3日制の導入について検討してみても良いでしょう。

・生産性アップにつながる
選択的週休3日制の導入により、組織・個人単位で仕事への取り組み方の見直しが求められ、結果的に生産性が向上するケースがあります。また、週の所定労働時間を減らし、給与を維持するパターンでは、生産性向上が不可欠です。この場合は、現実的な生産性向上策と合わせて検討する必要があります。

 

【従業員側のメリット】
選択的週休3日制を導入することで従業員側が期待できるメリットを2つご紹介します。

  • ワークライフバランスが向上する
  • スキルアップのための勉強や賃金を増やすための副業の時間に充てられる

・ワークライフバランスが向上する
選択的週休3日制を活用することで休日が増え、プライベートと仕事を両立しやすくなります。例えば、仕事をしながらの子育てや介護をしている人が多少余裕を持てる、リフレッシュする時間が増え心身の健康を保ちやすくなる、といったことが期待できます。ただし、給与のパターンによっては1日の労働時間が増え、1週あたりの所定労働時間を維持するケースもあります。

・スキルアップのための勉強や賃金を増やすための副業の時間に充てられる
選択的週休3日制の企業で働くと、スキルアップのための勉強や賃金を増やすための副業にまとまった時間を使いやすくなります。週休2日では時間が足りず挑戦できなかったことにも取り組みやすくなります。将来への自己投資に時間をもっと使いたいと考える従業員が多い企業では好まれる制度と言えるでしょう。

なお、日本では高度IT人材の不足が危惧されており、国は選択的週休3日により増えた休みで学び直しの機会を創出し、将来的な高度IT人材不足の危機に備える狙いがあります。

企業側が把握しておくべきデメリット

メリットが多いように思える選択的週休3日制ですが、デメリットについても企業は把握しておかねばなりません。ここでは、下記のよくある3つのデメリットについて影響や回避策を解説します。

  1. 従来の業務量を処理できなくなる可能性がある
  2. 勤怠管理が煩雑になり人事・労務の負担が増える
  3. 週休2日と3日の社員で業務の分配や評価方法を調整するのが難しい

1. 従来の業務量を処理できなくなる可能性がある

選択的週休3日制を導入したばかりに従来の業務量に対応できなくなり、売上や顧客の信用に悪影響を及ぼす可能性があります。1日の労働時間を増やし週の所定労働時間を維持する場合は例外ですが、その他のケースでは業務量に対する労働力が不足するためです。

この問題点を解決するためには、一人ひとりの生産性を高める工夫をする、または不足している労働力を補うために新しい人材の追加を検討するなどの対策が必要となります。

2. 勤怠管理が煩雑になり人事・労務の負担が増える

多くの企業では週休2日を基本として勤怠管理の仕組みを構築しており、週休3日制と週休2日制の従業員が混在すると勤怠管理が複雑化します。これは、従来の仕組みのまま所定労働時間が異なる従業員の勤怠を一括で管理することが難しいためです。複雑化により人事や労務部門の負担が増え、処理のミスが生じるリスクも大きくなります。

勤怠管理の煩雑さを解消するためには、新たな勤怠管理の仕組みを構築する方法が考えられます。中でも各従業員の週休日数を個別に設定できる勤怠管理システムがおすすめです。

3. 週休2日と3日の社員で業務の分配や評価方法を調整するのが難しい

週休2日と3日の従業員が混在する場合、労働時間や勤務日数が人によって異なるため、業務の分配や評価方法の見直しが必要です。例えば、1週間で40時間分の業務を処理する週休2日の従業員と1週間で32時間分の業務を処理する週休3日の従業員の場合、1週間あたりの業務量は週休2日の人のほうが多くなります。ただし、時間当たりの生産性を比較したときに両社の結果が同じだとしたらどう評価すべきなのでしょうか。

こういった週休日数や労働時間の違いによる業務対応量や評価の不公平感を是正するためには、まず企業側が週休3日制によって実現したいことを明確にしましょう。その上で、新たなルールを設定し従業員に導入の目的と現実的な運用策を理解してもらうすることが必要です。

選択的週休3日制の導入企業例

現在、選択的週休3日制を導入している企業はどのように運用しているのでしょうか。ファーストリテイリングとみずほフィナンシャルグループの例をご紹介します。

ファーストリテイリング

ユニクロやGUを運営するファーストリテイリングは2015年から選択的週休3日制を導入しています。週休3日制の対象者は店舗で働いており引っ越しを伴う転勤がない地域正社員です。ファーストリテイリングで導入した週休3日制は、1日の所定労働時間を10時間とし、週4日勤務で1週あたり40時間労働の変形労働時間制を採用しています。

選択的週休3日制を導入した目的は、地域正社員の多くを主婦が占めることから、仕事と家庭を両立しやすい環境を作るためでした。週休2日の人よりも勤務日が1日少ないことで業務の習得が遅れるという懸念がある一方で、1日10時間とまとまった時間働くことにより、短期間で業務を覚えやすいという側面もあるそうです。

みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループは2020年からグループの全正社員を対象に選択的週休3日制および選択的週休4日制を導入しました。は週休3日、4日制を適用する従業員の給与は所定労働時間に応じてフルタイムの給与から減額する方式です。具体的には週休3日の人が8割、週休4日の人が6割の給与を受け取れます。

選択的週休3日制・選択的週休4日制を導入した背景として、業務外の時間を生かして個々の従業員が専門性を高められる職場環境を目指していることが挙げられます。休日に自己を高められるように社内外での兼業制度も設けています。

まとめ

選択的週休3日制の導入は育児・介護等でフルタイム勤務が難しかった人たちを活用するために政府が推進している取り組みの一つです。今までフルタイム勤務が難しかった人でも働きやすい職場環境が整うことで離職防止となります。また、採用において求職者に対して多様な働き方をアピールできます。一方で選択的週休3日制を導入することで週休2日の従業員と週休3日の従業員が混在し勤怠管理が煩雑になる点が課題です。ほかにも、業務の割り振りや評価方法の見直しが必要となり、労務管理における負担が増えるでしょう。

選択的週休3日制を円滑に運営するためには、制度導入の議論と併せて自社に合った勤怠管理システムを検討する必要があると言えます。

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