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従業員の出勤時のストレス軽減のためには、「時差出勤」と「フレックスタイム制」どちらを導入すべきでしょうか?
Q.従業員の出勤時のストレス軽減のためには、「時差出勤」と「フレックスタイム制」どちらを導入すべきでしょうか?
小売業の人事を担当しています。従業員数は80人程度です。都内に複数の店舗があり、従業員が通勤ラッシュに巻き込まれるストレスを軽減させるために、時差出勤かフレックスタイム制の導入を考えています。この場合、どちらが効果的でしょうか?
A. 営業時間が決まっている実店舗では、時差出勤の導入がおすすめです。
フレックスタイム制は、一般的に実店舗で勤務する職種には不向きとされています。今回のように実店舗があり、それぞれの店舗での営業時間が決まっている場合には時差出勤の導入がおすすめです。
その理由について、時差出勤とフレックスタイム制の特徴を比較しながら解説していきます。
時差出勤とは
時差出勤とは、労働時間自体は変わらず、始業時間と終業時間を定時から変更する勤務形態です。
例えば9時~18時が定時の企業であれば、「8時~17時」「10時~19時」「11時~20時」といったパターンを企業側が作っておき、従業員は自身の都合に合わせて選択できるといった形態です。
時差出勤では従業員が通勤ラッシュを避けられるため、満員電車による疲労やストレスを軽減できるといった特徴があります。また、育児や介護などの事情に合わせて従業員が労働時間を選択できるため、家庭と仕事を両立しやすくなるのもメリットの1つです。
フレックスタイム制との違い
フレックスタイム制とは、従業員が自分の裁量で労働時間をコントロールし、企業があらかじめ設定した総労働時間の中で働く勤務形態です。時差出勤では、所定労働時間が8時間であれば、時間をずらして8時間働く必要があります。それに対してフレックスタイム制は、企業により規定は異なりますが、週や月で決められた労働時間と必ず労働しなければならない「コアタイム」を守れば、自由に出退勤することができます。
そもそもこの2つの制度は、作られた背景が異なります。どちらも従業員が働きやすいように作られたものですが、時差出勤は「通勤ラッシュを避ける」ため、フレックスタイム制は「従業員の生産性を高める」ことを目的としています。
フレックスタイムについて詳しく知りたい方は用語集「フレックスタイム制」をご覧ください。
時差出勤導入のために準備すべきこと
時差出勤導入にあたり、始業時間と終業時間のパターンを複数設定したり、労務管理体制を整えるといった準備が必要です。それぞれについて具体的に解説していきます。
■始業時間と終業時間の枠を複数設定する
始業・終業時間の設定や適用される条件については、労使間で協議のうえで決めていきましょう。適用条件を幅広く設定することで多くの従業員が利用しやすくなり、出勤時のストレス軽減だけでなく、ワークライフバランスの向上にも貢献できるようになります。
注意しなければならないのは、終業時間が22時を超えるパターンです。22時から5時の労働には、深夜労働に深夜手当(割増賃金)が発生します。人件費が追加されること、給与計算が複雑化するリスクがあることを理解したうえでパターンを設定しましょう。
関連記事:用語集「割増賃金」
そして、始業・終業時間は就業規則に必ず明記する必要がありますので、時差出勤の実施が決まったら、就業規則の改訂を行いましょう。
■誰が時差出勤しているのか分かる連絡の仕組みを作り社内で周知する
時差出勤する場合、誰がいつ出勤しているのか部署や課内で把握しておくことが重要です。誰がいつ出勤しているかが曖昧な状態だと、従業員の実労働時間が把握しづらくなるためです。時差出勤制度の挿入前に、時差出勤予定の前日までに社内メールなどで伝える、上司に連絡する、共有シートに出勤する時間を記入しておくなど、従業員の出退勤時間を周知するためのルールを設定しておきましょう。
■労務リスクに備える勤怠管理体制を整える
時差出勤を取り入れることによって、勤怠管理にかかる人事担当者の負担が増えるデメリットがあります。いくつかの勤務形態パターンを設定できるシステムでなければ、時差出勤を実施することは難しいでしょう。
また、一部の職種を除き、従業員に一斉休憩を与えることが労働基準法によって定められています。時差出勤によって休憩時間を一斉に取得できない場合は労使協定を締結して対処することも検討しましょう。
まとめ
時差出勤とは、始業時間と終業時間を定時から変更する勤務形態です。通勤ラッシュを避けられるため従業員のストレスを軽減できるほか、また、育児や介護などの事情に合わせて業務時間を変えられるため、仕事と家庭の両立支援にもつながります。
時差出勤を実施する際には、勤務形態が複数設定できる勤怠管理システムが有効です。実労働時間の正確な把握と給与計算の効率化のためにも、ぜひ導入を検討ください。
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