人事・労務の注目用語

フレックスタイム制

ふれっくすたいむせい

公開日時:2021.01.27 / 更新日時:2022.03.22

フレックスタイムという言葉を耳にしたことがある方も少なくないでしょう。働き方改革が推し進められている昨今では、フレックスタイム制を導入する企業も増加傾向にあります。
そこで、ここではフレックスタイム制の基礎知識や、注目されている理由などについてまとめてみました。メリットやデメリット、届け出の方法などについてもご紹介するので、導入を検討している企業はぜひ参考にしてください。

フレックスタイム制とは

柔軟で多様な働き方が可能になる制度で、さまざまなメリットがあるため導入する企業が増えています。ここではまず、概要や注目されている理由をお伝えしましょう。メリットが多いのは事実ですが、少なからずデメリットもあるためどちらも知っておくことが必要です。

フレックスタイム制の概要

フレックスは、曲げるや曲がるといった意味があります。タイムは時間のことなので、直訳すると時間を曲げるということ。曲がるということは自由がきく、柔軟といった意味も持つため、それがフレックスタイムの語源になったと考えられます。

この制度では、労働者が自らの裁量で働く時間をコントロールできる特徴があります。企業側があらかじめ設定した総労働時間の中で、仕事を始める時間、終えて帰宅する時間、業務に従事する時間などを決められる制度です。

従来の働き方だと、会社が定めた始業時間までに出勤し、決められた時間までオフィスにいなくてはなりませんでした。しかし、この制度下ではそのようなことがなく、比較的自由で柔軟な働き方が可能になります。

企業によって具体的な制度は多少異なるものの、基本的にはフレキシブルタイムとコアタイムで構成されています。コアタイムとは必ず業務に従事しなくてはならない時間で、フレキシブルタイムは従業員の裁量で出社や退社のタイミングをコントロールできる時間帯です。

フレックスタイム制が注目される理由

ここ近年、特に注目が集まっていますが、その理由として政府が主導する働き方改革が挙げられます。法改正によって時間外労働に上限が設けられるようになり、違反した場合には罰則も科せられるようになりました。そのため、企業としては従業員の労働時間を少なくしたり、時間外労働を減らしたりするための対策が必要になったのです。

この制度を導入すれば、働く長さも労働者がコントロールできるため、総労働時間を減らすことができます。これが注目を集めている大きな理由といえるでしょう。

フレックスタイム制のメリット・デメリット

企業が制度を導入するメリットとしては、業務効率の改善や向上が期待できることが挙げられます。従業員は自らの意思で業務に従事する時間を決められるため、高いモチベーションを保って働けます。

また、優れた人材の確保や流出リスクの回避といったメリットもあります。たとえば、どうしてもその会社で働きたいものの、その時間帯には働けないという方もいます。一般的な企業は始業と終業、就業時間が定められているからです。この制度なら、自分の働ける時間に勤務できるため、企業としては優秀な人材の確保につながるのです。

残業の軽減につながるのも大きなメリットといえるでしょう。残業時間の軽減は働き方改革における目玉の一つでもあります。この制度下では個人の裁量で仕事の時間配分ができるため、トータルでの残業時間軽減の効果が期待できるでしょう。

従業員はライフスタイルに合わせた働き方ができるようになるため、仕事に対するモチベーションも高くなります。モチベーションを高く保つことができれば、生産性や業務効率の向上にもつながるでしょう。

デメリットとしては、従業員の出勤や退勤の時間が合わなくなることでコミュニケーション不足になる可能性が挙げられます。コミュニケーション不足の結果、業務効率が低下してしまう可能性もあるでしょう。

また、フレキシブルタイムのどこで社員が出勤するか把握できず、管理しづらくなるデメリットもあります。労働時間や残業代などの計算が複雑になりがちな点も大きなデメリットです。

取引先やクライアントなどが連絡してきたとき、まだ担当の従業員が出社していない、といった事態に陥ることも考えられるでしょう。この制度を理解できない企業も少なくないため、結果的に信頼を失ってしまう恐れもあります。

フレックスタイム制の導入要件

導入するにあたっては、就業規則への規定や労使協定の締結が必要になります。就業規則は企業におけるルールを定めたものなので、まずはここに規定しなくてはなりません。始業や終業の時間を社員の裁量に任せる旨を定めてください。

また、労使協定でベースとなる枠組みを決めなくてはなりません。制度の対象となる労働者や清算期間、基本となる1日の労働時間などを決めます。制度を導入するには、これら2つの要素を満たす必要があるので、忘れず覚えておきましょう。

コアタイムの設定について

コアとは、ものの中心や中核といった意味があります。つまり、コアタイムとはフレックスタイム制において中核となる、非常に重要な時間のことです。

この制度は自由かつ柔軟に働きやすいのは事実ですが、あまり自由が過ぎてしまうと業務が立ち行かなくなる可能性があります。たとえば、出勤や退勤の時間がいつでもよい、働く時間も1日の中で自由に決められるとなると、ほぼ間違いなく業務に支障をきたしてしまうでしょう。極端な話、ほとんどの従業員が午前中出勤してこない、といった事態に陥る可能性もあります。

こうしたことにならないよう、コアタイムが存在します。つまり、1日の中で絶対に仕事をしなくてはならない時間です。時間帯は協定で決めることができますが、すべての日に設けないといけないわけではありません。つまり、日によって個別の対応が可能です。また、日や曜日によってコアタイムを変えるといったことも可能とされています。

労使協定の策定・届け出方法について

制度を導入するには、労使協定の策定や届け出が必要になります。ここでは、具体的な策定と届け出の方法をご紹介しましょう。

策定方法

まずは、制度の対象となる範囲を定めなくてはなりません。もちろん、すべての従業員に適用することもでき、部署や社員を個別に選ぶこともできます。

次に、清算期間を定めます。これは、従業員が業務に従事すべき時間を定める期間です。従来だと1ヶ月が上限だったのですが、現在では3ヶ月に引き上げられています。長さを決めるのはもちろんですが、どこから起算するかも決めておかねばなりません。

清算期間内での所定労働時間も定めます。当然のことながら、法定労働時間の範囲内で決めることになります。次に、標準となる1日の労働時間も決めてください。清算期間内におけるトータルでの労働時間を、所定の労働日数で割った数字になります。

コアタイムやフレキシブルタイムについては任意での策定となるため、決めなくても問題ありません。

届け出方法

清算期間が1ヶ月を超すケースでは、そのエリアを管轄している労働基準監督署長へ労使協定届を提出しなくてはなりません。手続きを怠ってしまうと、30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。1ヶ月以内の清算期間なら手続きの必要はありません。届け出を行うときは、労使協定の写しを添えて協定届と一緒に提出します。

その他フレックスタイム制に関する注意点

すでに制度を導入することによるデメリットについてはお伝えしましたが、ほかにも覚えておくべき注意点がいくつかあります。注意点についてもきちんと理解し、その上で導入するかどうかを検討しましょう。

業種によってはなじまないことも

制度を導入する企業は増えているものの、だからといって自社も導入しようと安易に考えるのはリスクが高いといえます。業種によっては、この制度がなじまないことも考えられ、メリットを得るどころかデメリットだらけになることも考えられます。

たとえば、営業職や飲食店などの場合だと制度を導入してもメリットはあまりないかもしれません。営業職は顧客に合わせて臨機応変な対応も必要となり、飲食店は営業時間が決められているからです。

自分が消費者の立場になって考えてみるとよく分かりますが、いつオープンするか分からない飲食店を利用しようとは思わないのではないでしょうか。また、営業担当にこちらが都合を合わせなければならないとなると、敬遠されてしまう可能性もあります。

社員によっては向かない可能性も

出勤や退勤、労働時間をある程度柔軟に決められるため、従業員にとってもメリットの多い制度ですが、人によっては向かない可能性があります。特に、自己管理があまりできないタイプの人にとっては、この制度は不向きといえるでしょう。ある程度の自由が得られるため、人によっては次第にルーズさが加速していく可能性もあります。

業務効率が低下する可能性

本来その業務を担当すべき従業員がまだ出社していない、といった事態に陥ることは十分考えられます。このようなケースだと、すでに出社しているほかの従業員が代わりに業務を行わなければなりません。

そうなると、業務を代行した社員が本来やるべき仕事が滞ってしまい、結果的に業務効率を低下させてしまう恐れがあります。1日くらいなら大した影響は出ないかもしれませんが、これが何日も続くとなると事情は変わってきます。

本来自分がやるべき業務ができないため、その従業員はストレスも溜まってしまうでしょう。仕事に対するモチベーションが下がり、さらに業務効率の低下を招く恐れもあります。まさに負のスパイラルです。

うまく活用すれば業務効率の改善につなげられるのは事実ですが、導入すれば必ずしも業務効率が向上するわけではありません。それを理解した上で導入を検討してみましょう。

まとめ

フレックスタイム制の導入によって企業が得られるメリットはたくさんあります。働き方改革関連法が成立し、残業時間の上限も設けられた今の時代だからこそ、フレックスタイム制の導入は多くの企業が考えなくてはなりません。ただ、メリットだけでなくデメリットや注意点があるのも事実です。ここでご紹介したメリットやデメリット、注意点を参考にしつつ、導入を前向きに検討してみましょう。

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