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【社労士が解説】在宅勤務(テレワーク)に関するFAQ 5選

公開日時:2022.02.18 / 更新日時:2023.11.30

Q1.在宅勤務導入時の主な注意点

最近、在宅勤務規程を定め、従業員と会社の合意があれば在宅勤務を可能する体制を整えました。現在は従業員の合意も取りやすい状況ではありますが、今後、恒常的に就業場所として在宅勤務を命じる場合、何か注意事項があれば教えてほしい。

A. 在宅勤務における主な注意点は、下記になります。

1.勤務実態の把握

在宅勤務を行う場合でも労働時間の管理をする必要があります。また、通常の労働者と同様に、労働者の健康を確保しなければなりません。在宅勤務の場合は、原則として、時間外労働を禁止するというケースも見受けられます。

2.情報漏洩

在宅勤務導入のための環境構築には、会社PCの社外に持ち出しや、オフィスに設置されたPCのデスクトップ環境を、オフィスの外で用いるPCなどで遠隔操作するシステムの導入が考えられます。万全なセキュリティ対策をしているテレワーク用アプリを正しく使用するなら、私物のパソコンを使うことも可能と考えられます。資料持ち出しやPCデータ保存範囲については、事前に取り決めをしておく必要があります。また、秘密情報に関する誓約書等を、事前に取り交わしておくことも策の1つです。

3.労災・安全配慮義務

在宅勤務を行う場合でも、通常の就業者と同様、労災保険の適用対象となり得ます。なお、業務災害と認められるためには、業務と傷病等との間に一定の因果関係があることが必要であるため、労働者が、私用(私的行為)または業務を逸脱する恣意的行為を行ったこと等による傷病等は、業務災害とは認められません。

4.費用負担

情報通信機器、通信費用、文具・備品・宅配便等の費用、水道光熱費についても、会社負担もしくは本人負担とすべきか、事前に取り決めをしておく必要があります。また、通勤手当についても、通常であれば定期代の支給とするところですが、出社日数が少ない場合は、実費精算とすることも策の1つとなります。

Q2.在宅勤務手当について

これから在宅勤務規程を作成の上、適用させる予定です。在宅勤務規程では在宅勤務手当を定めることを考えています。手当の定め方については、毎月定額が一般的だと思いますが、今回は日数に応じて、1日100円、半日50円とすることを検討しています。

  1. 在宅勤務手当を毎月定額ではなく1日100円(半日50円)といったように日数や時間に応じて支給させることは可能でしょうか。
  2. 1について、在宅勤務手当を日数や時間に応じて支払うことが可能だとしたら、時間外や休日の割増賃金の基礎となる賃金に含める必要はありますか。
  3. 2について、割増賃金の基礎となる賃金に含めるとしたら、日数や時間に応じて手当を支払う場合はどのように計算すればよいでしょうか。

A. 在宅勤務手当について回答します

  1. 在宅勤務手当を毎月定額ではなく、1日100円(半日50円)といったように日数や時間に応じて支給させることは可能です。
  2. 在宅勤務手当を支給する場合は、時間外や、休日の割増賃金の基礎となる賃金に含める必要があります。
  3. 日数や時間に応じて手当を支払う場合の割増賃金の基礎額については、以下のように求めることになります。 【(1か月あたりの割増賃金の計算対象となる額(一般的には基準内賃金)+一カ月あたりの在宅勤務手当の総額)÷1年間における1か月あたりの平均した所定労働時間数】

Q3.在宅勤務時の通勤手当について

テレワーク制度の導入に伴い、通勤交通費を定期代支給から出社日数に対しての実費支給に変更したいと思っています。通勤交通費の定期代から実費支給への変更に伴う社会保険料に関する取り扱いはどのようにしたらよいでしょうか。

A.通勤手当について

通勤手当について、一時的・臨時的な変更ではなく、就業規則等の改定を含む恒常的な支給ルール変更として、今まで通勤定期代として支給していたものを、都度の交通費精算に変更する場合は、通勤定期代(固定的賃金)が、都度の交通費精算(非固定的賃金)に変更になるタイミングで、随時改定の可能性が出てきます。

なお、通勤定期代(固定的賃金)が、都度の交通費精算(非固定的賃金)に変更になったとしても、基本的には、その実費精算した交通費は社会保険の報酬に含まれることになります。留意点としては、労働契約上の労務の提供地が自宅か事業所かに応じて、社会保険の報酬に該当するか否かが異なる場合があります。労務の提供地が自宅とされており、業務命令によって事業所等に一時的に出社した場合、当該費用は実費弁済と認められ、報酬には含まれないことになります。ただし、在宅勤務のみで、全く出社を想定していないケースであれば、通勤手当は報酬に含まれないことになりますが、在宅勤務でも会社への出勤も想定しているといった場合は、通勤手当については、通常通り報酬に含まれると考えられます。

Q4.在宅勤務時のみなし労働時間制について

当社はフレックスタイム制の運用がないので、在宅勤務であっても、通常通りの勤務時間での業務を適用していますが、保育所等に子供を預けられない場合は、在宅勤務者が幼児の面倒をみながら業務を行う事態が見込まれます。

そこで、事業場外のみなし労働時間の適用を行うことで、通常の勤務時間帯に限定せずに業務遂行をしてもらう運用が可能かと思うのですが、何か問題はありますか。

A.事業場外のみなし労働時間制について

 事業場外のみなし労働時間制は、事業場外で業務に従事し、かつ労働時間の計算が困難な場合に限り、みなし時間により労働時間を計算できる制度です。在宅勤務を行う際に、事業場外のみなし労働時間制を利用する場合は、下記の要件を全て満たす必要があります。

  1. テレワークが、起居寝食等私生活を営む自宅で行われること
  2. テレワークで使用しているパソコンが使用者の指示により常時通信可能な状態となっていないこと
  3. テレワークが随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと

貴社が在宅勤務を行う際には、パソコンや携帯電話を使用し、出勤や退勤時間の管理をされると想定されます。そもそもみなし労働時間制は、事業場外で業務に従事し、かつ労働時間の計算が困難な場合に適用される制度ですので、勤怠管理が可能な場合は該当しません。また、在宅勤務ではパソコンや携帯電話を使用し、事務作業やメールの確認等を行うことが想定され、「テレワークで使用しているパソコンが使用者の指示により常時通信可能な状態」となりますので、みなし労働時間制は適用されない可能性が高いと考えられます。

Q5.在宅勤務時の残業について

現在、当社では在宅勤務規程の見直しを行っています。その中の「在宅勤務時の残業に対する考え方」で、原則として禁止とするか否か、という点について社内で検討を重ねています。世間一般の他社では残業についてどのように運用しているのでしょうか。

A.在宅勤務時の残業について

在宅勤務時においても労働基準法や36協定は適用されます。したがって、法定労働時間(就業規則の規定によっては所定労働時間)を超えて勤務するような場合には、通常通り残業代が発生します。在宅勤務時であっても、使用者は労働者の労働時間の把握をしなければなりませんので、注意が必要です。
これまで在宅勤務においては、一般的には残業を認めないケースがほとんどでしたが、今般、在宅勤務が持続される状況から、在宅勤務時の残業を認める動きも出てきています。残業を認める場合は、事前に従業員から残業を申請させ、その内容によって上司(会社)が許可するといった方法で、在宅勤務下での残業を実施させることも一つの手法と考えます。

もし、会社として在宅勤務時の残業は認めないとするのであれば、「原則として、在宅勤務時の時間外労働(深夜労働)は禁止とする」等と規定することになります。ただ、業務上、全く残業させないということは難しいと想定されますので「ただし、業務の都合により所定労働時間外に業務を行う必要がある場合は、会社へ申請の上、承認を得ることとする」等と記載することが考えられます。

執筆:株式会社パイン総合研究所

パイン総合研究所グループは、豊富な経験と実績により、お客様の人事労務における業務をトータル的にサポートいたします。
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