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2024年開始予定の「医師の働き方改革」とは? 制度内容と対策について解説

公開日時:2022.03.08 / 更新日時:2022.05.20

2024年4月から適用される予定の「医師の働き方改革」。診療時間外や休日にも業務を行う医師が多い現状を変えるために、また長時間労働に陥りがちな医師の健康の確保や、仕事と家庭の両立を実現するために医師の働き方改革が求められています。本記事では、医師の働き方改革とはどのようなものなのか、また制度に対応するために病院等がとるべき対策について紹介します。

医師の働き方改革とは

2024年4月から開始予定の「医師の働き方改革」では、「勤務医の時間外労働の年間上限は原則960時間とする」「連続勤務時間制限、長時間勤務医師の面接指導などで、勤務医の健康確保を目指す」など、医師の労働時間に関する取り決めを中心として、医師の働き方の適正化に向けた取り組みが実行される予定です。

医師の働き方改革が推進される背景には、長時間労働が常態化し、かつ休日の確保が困難な医師が多いことがあります。一般の医師は勤務時間が長く、1週間の労働時間が60時間を超える医師は41.8%(※)に上ります。他業種と比べて労働時間が長くなる理由として、医師の業務が多岐にわたること、勤務体系が特殊であることが挙げられます。

患者の診療だけでなく、入院の説明や診断書の作成なども医師の業務に含まれます。また、宿直や呼出当番などによって、夜間に労働が発生する体制となっています。宿直の翌日に日勤に入るなどのケースもあり、医師の長時間労働は深刻な状態です。

不規則な勤務時間に長時間労働が加わることで、医師自身の健康問題が発生する可能性があります。労働時間が長く、睡眠時間が不足すると、作業能力が低下し、医療事故リスクが高まります。また、仕事と家庭の両立が難しくなるのも問題です。

これらの現状を踏まえ、導入が予定されているのが医師の働き方改革です。その中心となる時間外労働上限規制は区分ごとに異なる上限が設けられています。一般の勤務医はA水準、地域医療確保のために通算で長時間労働が必要となる医師はB水準、特定の高度な技能の習得のために長時間修練する必要がある医師や、長時間集中的に経験を積む必要がある研修医・専攻医はC水準とされ、次の通り時間外労働上限規制が設けられます。

対象時間外労働上限
A水準すべての医師
★診療従事勤務医
年960時間以下/月100時間未満(休日労働含む)
B水準地域医療暫定特例水準
★救急医療など緊急性の高い医療を提供する医療機関
年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)
C水準集中的技能向上水準
★初期臨床研修医・新専門医制度の専攻医や高度技能獲得を目指すなど、短期間で集中的に症例経験を積む必要がある医師
年1,860時間以下/月100時間未満(休日労働含む)

これら定められた月の上限時間を超えて勤務する場合には、各水準ごとに面接指導のほか、各種義務や処置が課せられることになります。

月の上限を超える場合の面接指導と就業上の措置

A水準:連続勤務時間制限28時間・勤務間インターバル9時間の確保・代償休息のセット(努力義務)
    ※実際に定める36協定の上限時間数が一般則を超えない場合を除く。
B水準:連続勤務時間制限28時間・勤務間インターバル9時間の確保・代償休息のセット(義務)
C水準:連続勤務時間制限28時間・勤務間インターバル9時間の確保・代償休息のセット(義務)
    ※初期研修医については連続勤務時間制限を強化して徹底(代償休息不要)

月の上限時間を超える場合、面接指導と就業上の措置はA水準・B水準・C水準とすべてのケースで義務とされます。健康確保措置については、A水準では努力義務、B水準、C水準では義務とされます。

健康確保措置とは、月の上限を超えて労働する医師に対して、28時間の連続勤務時間制限を設け、さらに勤務間インターバルを9時間確保または代償休息をセットとするものです。

「医師の働き方改革の推進に関する検討会」の中間とりまとめ(2020年12月)では、医師労働時間短縮計画策定ガイドライン(案)や、長時間労働の医師への健康確保措置に関するマニュアルが提示されています。これらを参考に、各医療機関は労働時間の把握や制度の見直しなどの対応を早急に行い、対策を講じる必要があります。

歯科医・獣医師を除く:「平成24年就業構造基本調査」より厚生労働省作成資料参考

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医師の働き方改革に向けて取り組むべきこと

医師の働き改革に対応するために、医療機関は徹底した労務管理を行う必要があります。しかし、医師の労務管理には課題が多く、正確な労働時間の把握が難しいのが現状です。

医師の労務管理における主な課題は次の5つです。

医師の労務管理上のよくある課題

・勤務時間の客観的な時刻の記録がない
・患者優先のため過重労働になりがち
・労働時間と自己研鑽時間の区別がつきにくい
・呼出当番の場合、複数回の呼出があるか管理できない
・副業や兼業を行う医師も多く実態が把握しづらい

医療機関の勤務形態は一般企業に比べて複雑であり、かつ勤務時間の管理は手書きで行われる場合が少なくありません。手書きの情報を各種データと照合する作業は手間が多く、ヒューマンエラーが発生しやすいというデメリットがあります。労働時間の集計作業だけで多大な労力と時間を必要になり、給与計算にも支障が出るでしょう。

医師の時間外労働に関しては、医師本人の申告のみで客観的なデータがない場合、労務担当者が実態を把握できないのも問題です。また、当直や宿直、呼出当番など特殊な勤務体制によって労務管理を複雑化しています。

特に医師が長時間労働をせざるを得ない宿日直も、勤務日の状況や勤務先によって実態が大きく異なります。ほとんど実働がない当直もあれば、救命救急センターのように一晩中実働状態の医師もいます。

また、医師の中には副業や兼業を行うものも多くいます。主たる勤務先は、派遣先における勤務も含めて、時間外労働や休日労働の上限、連続勤務時間制限、勤務間インターバルを遵守するシフトを組まなければなりません。この場合、正確な労働状況の把握と医師との話し合いが必須となります。

医療機関がこのように複雑な医師の働き方を正確に把握する手段として、まずは医師の労働状況を客観的に記録する必要があります。例えば、勤怠管理システムを活用してタイムレコーダーやスマートフォンから出勤・退勤時間を記録するといった運用が一般的です。

医師の勤怠管理においては、まず紙やエクセルによる管理からの脱却が必要です。これらの方法では、月締め処理をしなければ実際の労働状況を把握できないため、「気付いたら上限規制の基準を超えて労働していた」という状況になりかねません。

そのためにも、まずは客観的で正確な時刻記録を行い、労働状況をタイムリーに把握できる仕組みを作ることが医師の働き方改革におけるスタートラインと言えます。

医師の働き方改革への対応

医師の働き方改革に沿わない労働状況が発覚すれば、特に労働時間に関する取り組めへの違反などについては罰則を科されてしまう場合もあります。労務リスクを回避するためにも、医師の働き方改革への対応を行いましょう。

「医師の働き方改革に関する検討会」は、医師の時間外労働を短縮するために、次の6つの取り組みを各医療機関が行うよう周知を図っています。

  1. .医師の労働時間管理の適正化に向けた取り組み
  2. 36協定等の自己点検
  3. 既存の産業保健の仕組みの活用
  4. タスク・シフティング(業務の移管)の推進
  5. 女性医師等に対する支援
  6. 医療機関の状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取り組み

「医師の働き方改革に関する検討会」は、最初に行うべきことは「1.労働時間管理の適正化に向けた取り組み」としての労働実態の把握であるとしています。医師の在院時間の客観的な把握のために、ICカードやタイムカードを導入して出退勤時間の記録を上司が確認する等の対策が必要です。

医師の労働時間を把握したら、まず36協定を締結しているかどうか、また36協定の内容が適切かを確認しましょう。特に、業務や職種ごとに適切な定め方になっているかの確認が重要です。そして、内容として定められた限度時間を超える時間外労働はどのくらい起きているのかを確認しましょう。医師を含めた医療従事者の時間外労働時間数について自己点検と見直しを行い、36協定の適用対象となっている医師に対して36協定を周知することも重要です。

また、既存の産業保健の仕組みが十分に活用されていないことも多いのが現状です。産業保健の仕組みを活用し、長時間勤務となっている医師、あるいは診療科ごとに対応策について話し合いましょう。

4に挙げられているタスク・シフティングでは、医師の業務負担の軽減を図るため、多職種へ業務の移管を推進するものです。検査手順の説明や入院の説明、診断書の入力等は医師以外の職種に分担して実施することがよいとしています。各種ツールを用いて安全に医師の負担を軽減することもできるでしょう。

女性医師に対する支援では、出産、育児、介護等のライフイベントによってキャリア形成が阻害されないように、短時間勤務等の柔軟な働き方を推進するものです。

さらに、各医療機関は医師の労働時間の短縮に向けて、勤務時間外の緊急以外の病状説明等の対応を行わないようにする、勤務間インターバルや完全休日を設定するなどの対策を必要としています。

各医療機関は、まず「1.医師の労働時間管理の適正化に向けた取り組み」とされている労働実態の把握を始めましょう。

それには、労働時間を客観的に把握できるシステムの導入が必要です。ただし、導入するシステム選びは慎重に行わなければなりません。医師の勤務体系は特殊なため、一般企業向けの勤怠管理システムでは対応できない可能性があるからです。

医師の特殊な勤務体系にも対応できるシステムを選ぶ際は、次の点を注視しましょう。
詳しくは次項から説明します。

勤怠管理システムを選ぶポイント

1.自院に合った打刻方法が揃っている
2.特殊な勤務形態の勤怠管理を正確に管理
3.実働時間とそれ以外の区別ができる
4.次のアクションに迷わないシステム

1. 自院に合った打刻方法が揃っている

時間外上限規制を遵守するためには、大前提として「正しい出退勤の時刻記録をとる」ことが必要です。自己申告による時刻記録は改ざんが容易であり、隠れ残業の温床となるため、リスクの高い記録方法と言えます。そのためタイムレコーダーやスマートフォンなどで客観的な時刻記録をとることが有効ですが、医師に正確な打刻をしてもらうことに苦慮している病院が非常に多いのが実状です。

昨今ではさまざまな打刻方法がありますが、どの方法も一長一短あり、どれがベストかは病院によって異なります。重要なのは自院にとってどの打刻方法が適切か見極めて、それに対応できるシステム選定を行うことです。例えば医師はスマートフォンで、事務員はタイムレコーダーで、のように打刻方法の使い分けができるかもポイントの1つです。参考として各種打刻方法の特徴をご紹介します。

・タイムカード(紙)

システムを介さなくてもその場で打刻時間が確認できます。打ち忘れた時間を紙カードに記載しておけるなど、アナログならではの利点があります。一方で毎月カード発行が必要、集計にはシステムやエクセルへ転記作業が必要となります。昨今では紙カードで打刻しつつ、システムにも打刻データを自動で転送するタイムレコーダーもございます。
参考:紙カード(オンライン)方式

・ICカード

昨今では最もポピュラーな打刻方法となります。誰でも簡単にスピーディーに打刻が可能です。職員証やドアセキュリティで利用しているICカードをそのまま利用できる点もメリットの1つです。打ち忘れ対策には医師の導線に応じて複数台設置してどれからでも出退勤打刻ができるようにしておくことが有効ですが、その分機材コストも発生します。

・スマートフォン

いつでも、どこからでも打刻できるというメリットがあります。常時携帯させている病院であれば打刻方法としては有力な選択肢となるケースが多いです。一方で打刻には、「アプリを立ち上げる」、「ネットにつなぐ」といった一定のアクションが必要なことが多いため、ついつい打刻を忘れてしまうこともよくあると言われています。

・ビーコン

キーホルダーくらいの大きさのタグを携帯しておき、出入り口に設置しておいた受信機を通るだけで時刻が自動で記録されます。1日の1番早くに検知した時間を「出勤」、1番遅くに検知した時間を「退勤」とみなします。これにより打ち忘れの発生がなくなります。一方で「打刻」という明確なアクションがないため、忘れ物をとりに病院に入ると退勤時刻が上書きされてしまう、などといったことが発生するため、時刻記録の精度としては他の打刻方法に劣ります。
参考:非接触自動打刻「Linkit 勤怠」

2. 特殊な勤務形態の勤怠管理を正確に管理

医師は前述の通り宿日直や呼出当番など複雑な勤務体系となっています。

医師の働き方改革が本格実施となると勤怠データの正確な把握が必要です。つまり、複雑なシフト管理や突発的な業務にも対応できるシステム選定が必要となります。一般企業よりも遥かに難しい勤怠管理を求められるため、可能な限り柔軟な設定が組めるシステムが推奨されます。また、複雑な勤務体系であることから勤怠システムの設定も難しくなるため、選定時には導入前後のサポートの手厚さも重要なポイントになります。

3. 実働時間とそれ以外の区別ができる

医師の勤怠管理において重要なのが、実働時間と研鑽時間・宿日直時間・待機時間と呼ばれる非実働時間を区別してカウントできるかどうかです。現状、労働時間に含まれる時間と、そうでない時間の区別を明確につけず時間管理をしているケースが少なくないと想定されます。意識的に区別していない場合、多忙な医師はすぐに労働時間の上限規制に達してしまい、強制的に面接指導や就業上の処置を実施しなければならなくなります。
そのため、単純な出退勤の打刻だけでなく、勤怠管理システムで実働時間とそれ以外(研鑽時間・宿日直時間・待機時間等)を区別して計測できるものが望ましいです。また、ただ単に研鑽時間を記録するだけでは不十分で、何をしていた研鑽時間であったのか、というコメントを残せるかどうかが重要です。

さらに、宿日直勤務の回数により手当をつける病院も多いため、こうした回数カウントもできるかどうかもポイントです。

4.次のアクションに迷わないシステム

医師は多忙を極めていることが多く、その中で日々の出退勤打刻のほか自らの長時間労働のチェックを日々行っていくことは、実質難しいのが現状です。極力業務に支障のないよう、誰もが迷いなく操作できるシステムを選定し、医師に勤怠管理の負担をかけないことが重要です。

例えば、ただエラーを表示するだけでなく、「どのようなエラー(打刻漏れや労働時間の上限規制に触れそう等)が発生していて、エラーを解消するためには何をすべきか」をシステム上で教えてくれるものであれば、医師も迷いなく勤怠管理システムを活用することができます。自らエラーを探しに行かなければならないシステムの場合は、医師が使いこなせず、運用が浸透しないケースがあります。

まとめ

2024年に向けて、各医療機関はまず的確に勤務時間を把握できる環境を整える必要があります。ただし、医療機関では職種によって働き方が異なるため、フレキシブルな設定を行えるシステムでなければ労働時間の把握および労務管理の効率化を図れません。

また、医師の中には新たなシステムの導入に抵抗感を持つ人もいるでしょう。導入する勤怠管理システムを選定する際には、やさしくわかりやすいUIで誰でも簡単に使えるものを選択することをおすすめします。

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