人事・労務の注目用語
人材マネジメント
じんざいまねじめんと
公開日時:2022.04.18
人材マネジメントとは、企業がビジョンや経営目標を達成するために人材を管理する仕組みのことです。この仕組みには採用や教育、評価、配置など人材に関わる種々の業務が含まれますが、企業のビジョンや経営戦略とリンクさせる形で、これらを一体的に設計・実行することが重要とされています。適切に人材マネジメントを行うことで企業は自社にフィットした人材の確保が可能となります。また、従業員にとっても企業に対する満足度や業務への意欲向上につながるメリットがあると期待されています。
人材マネジメントを行う意義
少子高齢化に伴い働き手が逓減している日本において、企業にとっての「人材」はかつてないほど重要な経営資源となっています。
そうした状況で企業が人材面の競争力・優位性を確保するためには、働き手である従業員のモチベーションを維持しつつ、企業の発展に寄与するような人材を確保することが欠かせません。
その意味で、ビジョンや経営目標の達成を目的とし、かつ従業員のパフォーマンスを向上させる仕組みとして機能する人材マネジメントは、現在の日本企業において非常に重要な取り組みと言えるでしょう。
人材マネジメントの7つの構成要素
人材マネジメントは「採用」「教育」「評価」「報酬」「配置・異動」「休職・復職」「退職」で構成されており、それぞれの施策が一体感をもって行われることで効果を発揮します。ここでは、人材マネジメントにおける7つの構成要素について、それぞれの役割や効果などを解説します。
1.採用 | 経営目標の達成を目的とし、戦略にマッチする人材要件を定めます。企業理念に共感する人材を採用することで、授業員のエンゲージメント向上が期待できます。 |
2.教育 | 従業員の業務内容や役職に応じて、育成計画を設計し、教育訓練を行います。従業員に「なぜスキルアップが必要なのか」という目的を共有し、モチベーションを高めることが重要です。 |
3.評価 | 従業員の働きを適正に評価し、昇給・昇格などを行います。納得感のある評価制度を設計することで、従業員の業務に対する意欲を高めることができます。 |
4.報酬 | 従業員の働きに対して、給与や福利厚生、インセンティブを決定・支給します。成果と報酬を明確に紐付けることで、従業員のさらなるモチベーション向上が期待できます。 |
5.配置・異動 | 従業員の適性を考慮し、部署配置、異動、職種転換などを行います。また、適性だけでなく従業員の志向を汲み取ることで業務へのやりがいが生まれ、自発的なスキルアップと生産性の向上が期待できます。 |
6.休職・復職 | 従業員が休職した場合の復職支援を行います。具体的には、出産や育児に伴う休暇取得から復職までの精度を整備するなどの取り組みです。従業員のワークライフバランスに配慮することで、企業への定着率向上が期待できます。 |
7.退職 | トラブルなく円滑に従業員が退出するよう、最適な手続きの方法について検討します。 |
適切な人材マネジメントを行うための基本ポイント
人材マネジメントを行うにあたり、より高い効果をあげるために押さえておきたいポイントを3つ解説します。
1.経営戦略とベクトルを合わせる
人材マネジメントは企業のビジョンや経営目標の達成を目的としているため、人材マネジメントを計画する際は企業の経営戦略と方向性を一致させる必要があります。企業が掲げる目標と現場の施策がちぐはぐになれば、思うように効果が得られなかったり、従業員に迷いが生じたりする恐れがあるため、注意が必要です。
2.従業員に主体的に取り組んでもらう
人材マネジメントは基本的に企業が主導して計画するものですが、従業員を巻き込むことも必要です。例えば、経営課題に対する企業の目標を現場までブレイクダウンする場合、従業員自身に目標を考えてもらうなどで従業員も自分ごととして捉えやすくなります。また、目標達成に向けた取り組みの成果がどのように評価されるかを示すことで、モチベーションも上がりやすくなるでしょう。このほか従業員のモチベーションを高める方法として、目標達成時にインセンティブを支給するといった対応も考えられます。
3.状況に合わせて変化させる
経営戦略と連動する人材マネジメントは、戦略の変化に合わせて柔軟に変えることが重要と言えます。長期的なビジョンやバリューは変わらずとも、短期的な戦略は往々にして変化するものです。そのため、人材マネジメントの施策を都度見直し、経営戦略とベクトルがずれないよう調整する必要があります。人材マネジメントの施策を見直す場合は企業側の一方的な対応にならないよう、各施策の実務を担う従業員と協力して進めるとよいでしょう。
人材マネジメントの運用プロセス例
ここでは、人材マネジメントを計画・実行するプロセスの一例を示します。
1)取り組むべき課題を整理する
まずは企業が抱える課題を洗い出し、経営戦略と照らし合わせて取り組むべき事柄を整理する。
2)人材要件を設定する
整理した課題の解決に必要な人材像、要件を定める。
3)人材の採用・教育などの施策を計画する
必要な人材を確保するために「採用で獲得する」「既存従業員を要件に適う人材として教育する」などの方法を検討し、施策を計画する。
4)従業員に計画を周知する
計画を共有し、従業員一人ひとりが施策の趣旨を理解することで、計画の実行フェーズでずれが生じないようにする。従業員が教育を受ける場合は特に重要。
5)計画を実行し、振り返りと改善を行う
実行後はより有効な人材マネジメントを実施するため、結果の評価・分析を行い、改善を行う。
上記は基本的な流れを示したものですが、計画時点で各施策を連動させること、そして実行フェーズを担う従業員にしっかりと目的を共有することは、どのようなプロセスを経るにせよ重要なポイントとなります。
まとめ
人材マネジメントは、企業のビジョンや経営目標を達成するための手段のひとつです。採用や教育などの業務を個別に検討するのではなく、経営戦略と整合させつつ設計・実行することで、目標達成のための有効な手段となるでしょう。