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人材不足が迫る企業の人事制度改革 そのポイントと進め方

公開日時:2016.07.15 / 更新日時:2022.03.09

少子化がもたらす人口減少は、20歳から65歳までの働く世代の減少に確実につながっていきます。中でも会社を支える中心となる若い働き手の減少は深刻な状況にあります。このような環境の中で事業運営を進めるためには、まずは安定的な人材確保が不可欠ですが、そのためには採用強化以前に、現在の社員をいかに定着させ、その能力を向上させるかが課題となっていきます。
大津 章敬 氏

大津 章敬 氏

社会保険労務士

社会保険労務士法人名南経営 代表社員/株式会社名南経営コンサルティング 取締役

従業員と企業の双方が「この会社で良かった」と思える環境を実現する人事労務コンサルタント。企業の人事制度整備・就業規則策定など人事労務環境整備が専門。中でも社会保険労務士としての労働関係法令の知識を活かし、労働時間制度など最適な制度設計を実施した上で、それを前提とした人事制度の設計を得意とする。「中小企業の「人事評価・賃金制度」つくり方・見直し方」(日本実業出版社)など18冊の著書を持つ。

深刻な人材不足、その現状と変容を迫られる企業の人事労務管理

平成28年4月時点の有効求人倍率はリーマンショック前のピークを超え、東京においては戦後最高のピークであった高度経済成長期をも超えています。しかし、18 歳の人口が団塊ジュニア世代のピーク時のほぼ半分になるなど、労働力人口が急激に減少傾向となり、すでに「人材不足」が企業経営における最大の課題のひとつとなってきています。そういった状況の中では、「安定的な人材確保」ができる企業が優位性を持ち企業価値を高めることができるようになるでしょう。

経営者にとって「ワークライフバランス」という言葉は、ネガティブに捉えられることが多くありました。たしかに「バリキャリ×働き方の制約なし」の世界であるAグループから見れば、そのような感覚を受けるでしょう。しかし、すべての社員にAグループの働き方を求める時代ではなくなってきており、一定の制約のある社員にとってはワークライフバランスが就労の前提条件となり、それを実現できるかどうかが、人材調達力の差になる時代となっています。

夏の臨時国会で再度審議される改正労働基準法案では、年5日の年次有給休暇の取得義務化も盛り込まれており、今後、働き方・休み方、そしてワークライフバランスについて真剣な議論が不可欠となります。

さまざまな制約や意識を持った事情(わけ)あり社員を雇用するための柔軟な人事制度の採用が必要です。

  • フルタイムの正社員でなければダメですか
  • 1日5時間勤務ではダメですか
  • 残業できない社員はダメですか
  • 週休3日ではダメですか
  • 本当に毎日会社にこなければダメですか
  • 高齢者ではダメですか

多様な人材活用のための柔軟な人事制度

  • 勤務地限定正社員
  • 職種限定正社員
  • 短時間正社員
  • フレックスタイム制・時差出勤
  • 週休3日正社員
  • 在宅勤務(テレワーク)
  • 副業解禁
  • 事業所内保育施設
  • 退職者復帰制度

退職理由から逆算して考える「社員の定着を促進する」人事制度

昨今、若手社員の雇用においては「成長」「安心」「仲間」が重要なキーワードとなっています。働き手となる若者は自己の成長への意欲が非常に強く、キャリアの負け組にはなりたくないという意識や、女性は出産・育児というライフイベント後の継続雇用への強い意志があるなど、中でも「成長」は極めて重要なポイントとなります。会社としては、キャリアパスを明確にし、成長できる会社であること、そしてその支援体制があることを明示して安心と成長の実感を与えることが必要です。

基本給制度にはいつの時代も変わらないコツがあった

基本給制度の原則は、「貢献度の高さ=賃金の高さ」という軸で考える範囲給制度です。

経済成長の鈍化と技術革新のスピードアップ、労働者人口の高齢化により、生涯を通じた貢献度と賃金の精算システムが崩壊している中、「貢献度に見合った支給」という企業のニーズはいつの時代も変わりません。しかし、その貢献度を測定する基準はビジネスモデルや時代によって異なります。賃金制度は3つの要素の組み合わせにより構成され、その塩梅によって制度が決まります。

重要性を増す「正社員以外」の人事制度

現在、わが国の雇用のあり方は大きく変容し、全労働者の4割、職種によっては過半数が「非正規」という状況になっています。今後は正社員だけではなく、この「非正規」の雇用のあり方、人事制度に目を向けていかなければなりません。

≪2018年4月≫改正労働契約法による無期転換申込権の発生

2013年4月に施行された労働契約法の無期転換ルールとは、有期労働契約が反復更新され、通算5年を超えた時は、従業員の申し込みにより無期労働契約に転換されるというものです。

5年間の起算は2013年4月1日であったため、通常は2018年4月以降に無期転換申込権が発生します。無期転換を避けるためには、契約の間に6か月以上の空白期間を設けるクーリングを設定するしかありません。
現在の人手不足を勘案すれば、多くの場合は無期転換せざるを得ない状況になることが予想されます。「無期転換=正社員化」ではないことから、第3の雇用区分と人事制度を構築することが必要となります。

無期転換の対応に際しては、様々な条件整備が必要となります。

  1. 無期転換者選定基準の設定(雇い止めルールの策定)
  2. 無期転換時の「別段の定め」を含む労働条件の設定
  3. 第2定年の設定
  4. 無期転換者就業規則の整備
  5. 有期雇用特措法の対応(雇用管理計画の策定と認定)

通常、無期転換者については、まずは「限定正社員」としての雇用となるでしょう。今後、このような仕組みの整備が重要となります。

※限定正社員とは、地域、職種、時間などの一定の労働条件を限定した正社員の仕組み。

人事制度以前に「辞めたくなる職場の課題」を改善する

ここまでは人事制度改革の必要性やその内容について説明してきましたが、実際には有能な社員の流出の原因が人事制度と関係ない場合が多くあります。人間関係以外では、労働時間や環境の不満も大きな理由となっています。

常に退職理由の上位にある過重労働の撲滅のため、労働局は対策を打ち出しています。

社員に満足度を与え、安定的な雇用を確保するためには人事労務環境を整備することが重要です。

人材確保のための人事労務環境整備10ヵ条

  1. キャリアの道筋を分かりやすく明示する。
  2. 効果的な人材育成を行うと共に、成長実感を持たせる。
  3. 管理職になるのが唯一のキャリアという見方・見せ方をしない。
  4. 定期キャリア面談を通じ、会社の期待と本人の考えをすり合わせる。
  5. 職場内のコミュニケーションを図り、相互承認の環境を構築する。
  6. 個人任せではなく、チームで仕事をする環境を用意する。
  7. 社員への期待事項などは以心伝心ではなく、文書で明示する。
  8. 報酬制度は会社方針をベースに、説得力のある合理的内容を目指す。
  9. 長時間残業や過度の休日労働などがないようにする。
  10. ハラスメントなど社員が働きにくい要因を除去する。

これからの日本企業は「ヒト・モノ・カネ」の時代ではなく、「まずはヒト」の時代となっていきます。
人事労務管理の巧拙が人材確保力の差となり、企業の差として現れます。これからの時代は安定的な人材の確保、育成を通じて、人事が企業価値を高めていくことが重要です。

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