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人事・労務なんでもQ&A

取引先との商談やイベント参加の予定がある従業員に、新型コロナワクチン接種証明書の提示を求めることは可能?

利用目的や範囲、拒否するデメリットを伝えた上で任意による接種証明書の提示を求めることは可能です。
公開日時:2022.06.27
詳しく解説

Q.取引先との商談やイベント参加の予定がある従業員に新型コロナワクチン接種証明書の提示を求めることは可能でしょうか。

全国に支社がある従業員6千人規模企業の人事です。取引先との商談やイベント参加で安全を期すため、これらに参加予定の従業員に新型コロナワクチン接種証明書(以降ワクチン接種証明書)の提示を求めるのは可能でしょうか。証明書提示の強制は法律上問題があると聞いています。あくまで感染防止、コンプライアンスの考慮という観点から、プライバシーに配慮した上で接種証明書の提示を求めることはできないかを知りたいです。

A. 接種証明書の提示を強制はできませんが、本人の意思に基づいた提示を求めることは可能です。その際は利用目的や利用範囲、提示を拒否することの影響を説明する必要があります。

新型コロナワクチン接種の強制および接種証明書の提出の強制は法律上できません。ただし、商談やイベント参加のために本人の意思に基づくという形で接種証明書の提示を求めることを禁じる法律はありません。その際は、接種証明書の利用目的や、個人情報である証明書に記載された情報の利用範囲、提示を拒否した場合は商談等の参加ができなくなるなどの影響についてあらかじめ説明する必要があります。

ワクチン接種証明書の提示を求めるための条件

ワクチン接種証明書の提示を義務付けることは差別にあたる可能性があります。ただし十分な説明の上、本人の意思に基づくという形でなら提示を求めることはできる、という見解も存在しています。弁護士や法学者で構成されている日本産業保健法学会によると、ワクチンの接種証明書の提示を求める際は以下の条件を満たしているか、確認する必要があるとしています。※

1)接種証明の提出を求められる海外勤務を行う、高密度ないし不特定多数の者と接触する条件で就労する予定がある、感染者との濃厚接触の疑いが濃いなどの業務上の必要性がある、

2)利用目的が説明される、

3)ルールと責任体制に基づき、利用目的範囲内での取扱いのための適正な管理がなされる、

4)提出を拒むことによる本人のデメリットや周囲への影響などが丁寧に説明される

一方で、社会活動の中でワクチン接種証明書を活用することについては「事実上の未接種者の差別にあたる可能性がある」という法律家の見解もあります。日本産業保健法学会の出している4つの条件は国の公式見解ではないため、今後ワクチン接種証明書をめぐる裁判が起きた場合、上記以外にも提示に関する条件が設けられる可能性もあります。

※あくまで産業保健法学会の見解であり、厚生労働省や法律家全体の公式見解ではありません。(2022年6月時点)

提示を拒否した場合に生じるデメリットについての説明

海外勤務をはじめ、感染対策の観点からワクチン接種証明書の提示が必要とされる場合についても従業員には「提示しない」という選択肢はもちろんあります。ただし、「ワクチン接種証明書の提示拒否を理由に海外勤務ができない」ことや、「その結果として査定への影響も生じうる」といった説明は十分しておかなければなりません

海外勤務をする場合、海外渡航先での入国時に行動制限緩和や防疫措置緩和を受けるためにワクチン接種証明書が必要となる場合があります。接種証明書の提示を拒否した場合に海外勤務ができなくなる可能性があるのはこのためです。

また、大人数が参加するイベントや、取引先との商談等の参加のため、自社従業員にワクチン接種証明書の提示を求める場合も「提示しなければ参加資格はない」と一方的に通知し、仕事から外すなどの対応は適切ではありません。事実上の接種表明の強制とみなされる可能性があります。「提示を拒否することもできるが、参加はできなくなる可能性がある」等の説明・周知は前もってしなければならないと考えられます。トラブル回避のためにもワクチン接種証明書を求める際の説明や従業員対応はあらかじめ決めておくとよいでしょう

証明書提示を拒んだ従業員を解雇したり懲戒処分にしたりすることはできない

ワクチン接種表明書の提示を義務付けることは予防接種法の観点や厚生労働省の方針に照らし合わせると法違反にあたる可能性があります。接種証明書の提示を従業員に強制する、拒否したことを理由に解雇や懲戒処分をちらつかせるなどの行為はハラスメントにあたる可能性もあります。

政府の見解では、「予防接種を受けていないことを理由として不利益な取扱いが行われることは適切ではない」とあります。

「接種することを求め、応じないことを理由に解雇や減給、配置転換など不利益な取り扱い」、「採用時に接種をしていることを条件とする、もしくは面接で接種の有無を聞くこと」、「接種することを求め、応じない事を理由に取引を中止することもしくは契約しないこと」、「取引先に接種の有無を聞くこと」及び「接種証明の提示を求めること」そのものを禁じる法令はないが、政府としては、予防接種を受けていないことを理由として不利益な取扱いが行われることは適切ではないと考えている。

それでも、感染防止対策の観点からワクチン接種証明書の提示を従業員に求め拒否された場合、従業員が望む勤務ができなかったり、従業員にとって有益な機会の損失が起きたり、という事態が生じるかもしれません。

「イベントや商談に参加ができない」「海外勤務ができない」などの機会損失については、従業員への事前の説明によって理解を求める必要があります。ただし、機会を得られない場合があるという事実以上に、ワクチン接種証明書の提示拒否のペナルティとして今の業務から外したり減給したりといった対応は政府の言う「不利益な取り扱い」にあたる可能性があります。

まとめ

新型コロナワクチン接種証明書の提示を従業員に義務付けることはできません。事実上の接種強制と見なされるおそれがあり、プライバシー侵害やハラスメントにあたる可能性があるためです。ただし、商談やイベント参加などワクチン接種証明書の提示を求めるのが望ましい場合、強制でなく任意という形でなら接収証明書の提出を求めることができます。ただし、提示を求める際にはプライバシー保護の観点や提示拒否のデメリットを事前に従業員が把握できるようにする配慮のため、日本産業保健法学会が説明している、複数の条件を満たすのが望ましいと考えられます。

このようなワクチン接種の有無や証明書の取り扱いなどを含め、ワクチン接種や新型コロナウイルスに関連する規定を新たに設けるには、就業規則変更が必要な場合があります。コロナ禍で臨機応変な対応が求められる可能性がある就業規則や雇用条件の変更などに素早く対応するには、労務管理システムが便利です。

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